「ただいまー」
靴を脱ぎながらそう声をかけると奥の方で彦一の声
「おかえりー」
リビングの扉を開くと彦一ではない大きな人影が視界に入る。
「あら?」
「お邪魔してます」
2人で何か作っていたらしく、キッチンから首だけこちらを向く二人。
そのまま一人が軽く会釈をしてにっこりと笑った。
「仙道くん!いらっしゃい。」
「すいませんいつも。」
「あらいいのよ!一人暮らしって大変でしょう?」
この頃彼はよく家に来るようになっていた。なかば彦一が無理矢理連れてきている感がある。
私は、この状況を喜んでいた。
彦一ですら、私が仙道君のバスケに惚れ込んでいると思っているが、
実際家に来るようになってからは惹かれていくのを止められなかった。
キッチンに近づきチラリと見ると豚肉と野菜をみじん切りにしているのが目に入る。
「なに作ろうとしてたの?」
「チャーハン。あーもう姉ちゃんつくってー!」
「え?な・・ばかね。チャーハンにキャベツなんか入れないわよ?」
「えぇー!?」
お手上げだと言いたそうな彦一を見て、仙道君がはははと笑った。ふいに私と目が合う。にっこりと笑う彼を見て小さくドキリとした。
「着替えてくるわ。」
顔を背け、2階へと上がる階段の方へ向かう。少し不自然だったかもしれない。
高校生を好きなんてダメだ。だけど仙道君のなにも邪心がない笑顔を見ると、どうしても惹かれていくのを止めることができなかった。
(私みたいな年上の女が好きだと言ったら…彼は困るだろうな)
チラリと脳裏によぎる考えを振り切りながら着替えて下へ降り、チャーハンを作り始める。
「やっぱり俺達とは違いますね。はは。当たり前か。」
上から低い声がした。笑う声がとても心地いい。
「あはは。こんなもので褒めてもらえるならありがたいけど。」
チラリと見るとまたにっこりと笑う仙道君。
彼が笑うとホッとする。
「はい出来た♪」
作った料理は気持ちのいいほどの2人の食べっぷりでドンドン皿から無くなっていく。
たわいない話をし、笑い、食器をみんなで片付ける。見送る一瞬までも大事に感じるこの時間が大好きだった。
ずっと、こんな時間が続けばいいと思った。
「悪いわね。中村くん。」
「いいえ〜。どうせ帰り道ですから。」
この日の取材が終わり、直帰するため社用車で中村君に家へと送ってもらっていた。
チャーハンを3人で食べてから1週間。あれから仙道君は家に来ていない。
まるで高校生の片思いのように、彼に会えないことがなんだかやるせなく、切ない思いがまとわりついてくる。
「・・・ぃださん!相田さん!!」
「!?」
「着きましたよ。どうしたんですかこの頃?ため息ばっかりじゃないですか。」
「え?あぁ・・悪かったわ。私事なの。ダメね仕事に持ち込むようじゃ。」
そう言いながらドアを開ける。一緒に中村君も降りてきた。
「相田さんらしくないじゃないですか。大丈夫です?」
言いながら駆け寄ってくる中村君。彼なりに心配してくれているようだ。
「大丈夫よ。じゃ、ありがとう。悪いけど車会社に戻しててね。」
「はい。・・あっ相田さん」
スッと中村君が私の髪に触れた。
「!!な、なに!!??」
大げさなまでに身体を離す。
「なにって・・・コレついてましたよ?」
中村君の手には、小さな葉っぱがあった。
そうだ。今日は風が強く現場でもよく葉っぱが舞っていた。
一瞬カァッと顔に血が上ってくるのがわかる。色恋沙汰などで悩んだりしているからこんななんでもない仕草にまで反応してしまうんだ。
ふと何かが視界に入る。目に入る人影はじっとこちらを見ていた。
誰なのかすぐにわかるのに、一瞬頭が白くなる。
私が固まっているのに気付き、中村君が私の視線をたどる。
「あれー!?君陵南の仙道君じゃない?ほら!相田さん!」
Tシャツに下だけ制服の姿。いつも目が合うとにっこり笑う仙道君は、今は無表情に私を見ている。
いつも彼の前で精一杯大人っぽくしている分、こんなに動揺しているのをみられるのが恥ずかしかった。
なにも言えないで黙っていると、仙道君がいつものようににっこり笑って近づいてきた。
「こんにちは。」
「どうしてここにいるの?帰り道??」
中村君が元気よく話している。並んで見ると仙道君の大きさがよく分かる。
「ち、違うのよ中村くん。仙道君一人暮らしだから一緒にご飯に誘ってるの。多い方が楽しいし。ね?仙道君。」
「すみませんいつも甘えて。あ、弥生さん。彦一ちょっと忘れ物して・・もう少ししたら来ると思うんですけど。」
中村君が感心した声でうなずいている。
「そっかぁ。大変だなぁ高校生で一人暮らしなんて。あ、だったら相田さん頼むよ。今日は体調がすぐれないみたいだから。じゃあ僕はこれで。」
片手を上げながら車のドアの方へ歩いていく中村君。二人になるのは少し気まずかったが仕方ない。
「それじゃあ。お疲れ様です!」
車が去っていく。
中村君を見送る間に少し冷静さを取り戻してきた。
「じゃ〜あ・・彦一が帰るまでに作っちゃいましょうか!どうぞ仙道君。」
そう言いながら家のドアを開け彼を招き入れた。
「今日は何食べたい?野菜が残ってるから炒め物でも・・・」
そこまで話すと後ろでガチャリと音がした。
振り返ると仙道君が鍵を閉めている。
「いいのよ仙道くん。彦一が帰ってくるし。」
「一応用心で・・。今日、ご両親はいないんですか?」
「えぇ・・。共働きで・・どちらも遅いからね。」
どうしてこんなこと聞くんだろう?
いつも両親は遅く、仙道君が来るときは常に家には彦一と私しかいなかった。
どうして今更…?
「だったら…なおさら用心した方がいいですよ。」
声のトーンが違う。靴を脱ぎながら顔を上げた仙道君は、いつもの笑顔はなく見たことのないほど鋭い目でじっと私を見る。
ドキリとした瞬間、彼はいつもの笑顔を見せた。
「お邪魔します。俺も、手伝いますよ。」
「あ…え、えぇ。ありがとう。」
ドキドキしていた。何か仙道君がおかしい。にっこりと笑ってはいたが、後ろから先ほどの視線を痛いほど感じる。
仙道君がいつもよりとても大きく感じて怖い。
「じゃあ…そうね、冷蔵庫からなんでもいいから野菜取ってくれる?」
リビングに入りながら、いつも通りを装う。少し声が震えていたので咳払いをして取り繕う。
「・・弥生さん。着替えなくていいんですか?」
ドキンと心臓がはねた。
「そ、そうねじゃあ着替えてくるわ。野菜出しててくれる?」
そう言いながら振り返ると、すぐ後ろに仙道君がいた。
「…!!」
突然壁に押し当てられキスをされる。
「んぅ・・・やっ・・」
もがいてもなんなく引き寄せられまた口をふさがれる。
乱暴に口を吸われ口内を犯されていく。生き物のようにうごめく舌は脳を溶かしていくようだ。
ふっと開放され目を開けると間近に仙道君の顔がある。
受けた快感で私のひざはガクガクいっている。
今にも倒れそうな私を支えるように壁に押し当てたまま、無表情で私の髪をすくう仙道君。
先ほど中村君が触れた部分だった。
「せ、仙道君…」
少し首を傾け、不機嫌にじっと私を見つめてくる。
「さっき、なにをしてたんですか?」
低い低い声。質問され、ぼやけていた頭を無理矢理に動かす。
「か、髪に葉がついてたから…とってくれただけよ?」
「ふぅん。」
そう言うとまた口をふさがれた。2度目は抵抗することも忘れ、ただその快感に身をゆだねる。
高校生とは思えないほど、乱暴さの中にツボを知った繊細な動きがある。
仙道君の足が私の足の間に割り込んできて、濡れつつあるそこをこすり上げてきた。
タイトスカートは捲り上げられ、ストッキングを通しての制服の感触が上下する。
「ん・・んぅう!・・・っは・・」
「ねぇ弥生さん。ここで着替えてよ。俺弥生さんの裸見たい。」
私の反応を見ながら耳元でささやく。
何もかもどうでもよくなってきた。
そのとき・・
ガチャガチャ!
とドアを開けようとする音がした。
「姉ちゃんあけてー!!なんで鍵かけてんの!!」
外から聞こえる彦一の声。いつも言ってるのにまた鍵を持っていくのを忘れたらしい。
一瞬にして頭が冴える。玄関の方を見ていた仙道君がこちらを向きなおす。
「裸は、見せない。」
彦一が帰って来てくれたおかげで声が甘くならずに済んだ。キッと睨んだままはっきりとそう言う。
私の言葉を流すように彼が視線をはずし、壁に押さえつけていた私を解放した。
そのままリビングのドアの方へ歩く仙道くん。何とか壁に寄りかかり、座り込みそうになるのを抑える。
ホッとしていると仙道君が振り返りぽつりと言った。
「俺が脱がすから、別にいいですよ。」
私がその言葉に驚いて見ていると、にっこりといつもの笑顔を見せ玄関へ彦一を迎えにいった。
「あぁすみません!仙道さん。」
「悪かったな、俺がかけたんだ。一人暮らしだと用心する癖がついて。」
あははと笑いながら二人でリビングへと入ってくる。
「なにしてんの姉ちゃん。今帰ってきたの?」
「あ、あぁうんそう。ちょっと・・着替えてくるから待ってて。」
それから30分後、夕食を3人でとる。
怖いほどいつも通りの3人。
ただ、チラリとこちらを見る彼の目は獲物を眺めるように妖しく光り、私は逃げる気が失せているのを感じていた。
それから何週間過ぎてもずっと何も無い日が続いた。
相変わらず仙道君は夕食に来るが、もちろん彦一は一緒だしそんな機会があるはずも無い。
もう2度とあんなことは無いように思えてきた。あの出来事すら夢だったように思う。
だがその日を私は突然迎えることになる。
「え?出かけるの?」
「うん。だから仙道さんになんか作っててよ。ね、姉ちゃん!」
「すみません。お邪魔します。」
いつものようににっこり笑っている仙道君。突然彦一が出かけると言い出したが、
仙道君を目の前にして引き止めるわけにも行かず、そのまま2人で見送った。
横にいる何も裏がなさそうな仙道君の笑顔に、心臓がドキドキいっている。
「じゃあ着替えてくるわ。」
仙道君はにっこりしてはいと言って、いつものようにソファに座り、彦一のバスケ雑誌を取り出して読みだした。
(あれ?反応なしか。)
なんだか肩透かしだった。2人きりなのに。
あの時のことがあってから、正直ずっと仙道君に抱かれたかった。
服を無理矢理脱がされ、あの余裕の目に裸を晒して、大きな手で身体に触れて欲しかった。
ふとクローゼットの前でボーっと立ちすくんでいるのに気づく。
(いけない。早く着替えて料理作らないと。)
思い直して上着を脱ぎ、シャツのボタンに手をかける。
そのとき
コンコンとノックの音が響き、返事を返す前にガチャリとドアが開く。
あれ?という顔で私を見る仙道君。とっさに前のはだけたシャツを手で隠す。
「そろそろ脱いだかと・・。残念、着替えるの遅いんですね。」
ドクドクと心臓がなる。この大きな男に対して多少の恐怖と、それよりも大きな期待。
どうして彼はこうも余裕があるんだろう。私が声も出せないでじっとしているのに、笑顔のままゆっくりと近づいてくる。
お願いぎゅっとして。息が苦しくなるほど抱きしめて。
「服。脱がないとシワになりますよ?」
なにも言葉が見つからない。声がでない。
仙道君の大きな手が私の顔に触れ、片手は柔らかく私の腰を包んでいる。指で唇をなぞり、そのままゆっくりと顔を近づけてきた。
唇が触れるほんの少し手前でピタリと動きを止める。
「いいんですか。キスしますよ・・」
仙道君の息が唇にかかる。なにか麻酔でもされたように思考がままならない。
とにかく早くキスしたい。私は目を見ながらうなずいた。
「キスして、いいんですか?」
もうどうでもいい。どうでもよかった。
「・・お願い。キスしたいの。」
ぼんやりとつぶやくと、仙道君は突然乱暴に私の口をふさいできた。身体を密着させ、筋肉質の腕で力強く抱きしめられる。
私は彼の首に腕を絡ませ、もっともっととせがむように顔を引き寄せる。
初めて感じる仙道君の温かい体温にどうしようもないほど興奮していた。
仙道君の舌は執拗に私の感じる部分を探して動く。キスってこんなに気持ちよかったっけ?
キスをしたままの状態で大きな手のひらが私のはだけたシャツから滑り込み、ブラジャー越しに包んでくる。
その長い指は乳首の上を左右する。
「・・っ!」
ブラジャー越しなのに敏感になりすぎているのが恥ずかしい。
「感じやすいんですね。」
からかう言葉が気持ちよかった。支配されているこの状況だけで下半身はトロトロに溶けていきそうだ。
シャツが仙道君の手に操られながら音も無く床に落ちる。
「・・弥生さん。その格好いいよ。すげぇそそられる。」
仙道君の呼吸が少し荒くなる。そのまま軽々と抱えられてベットへと移動された。
私にまたがったまま彼が服を脱いでいる。その様子を見るとも無く眺めている。
筋肉質の身体。
こうやって見るとどこもかしこも立派な男だった。
彼の手がブラジャーを外す。何もつけてない胸が彼の目に晒されている。
「やらしい身体。乳首立ってるよ、触れても無いのにね。」
「ぃや・・やめて。」
「やめていいの?ほら、ここは触って欲しそうだよ。」
片手で胸をつかみ指先で乳首を転がしながら、もう片方の胸は口の中に含まれる。
「あっあぁ!ハッ、うっん!・・」
「弥生さん、すげえ声エロイ。もっと聞かせて。」
乳首をいじっていた指が、スルリとスカートの中へ移動し、ストッキング越しにグリっと割れ目に押し付けられる。
「あ!!あぁ!ん・・あ!」
「こんなとこまで濡らしてる。弥生さんたまんない・・。」
そう言うと今までに無いほど乱暴にわずかに残っていた服を脱がされる。
彼は裸になった私を、身体を離して少し遠くから眺めた。
「キレイだね弥生さん。俺ずっと裸見たかったんだよ。」
そのまま上体を低くして私の恥ずかしいほど濡れている部分に口をつけてきた。
「はあぁぁ!!あぁんん!!だ・・だめっ!」
舌が割れ目をなぞる。チロチロとクリを刺激されると気がおかしくなりそうだ。
「どうして欲しい?イカせてあげようか。」
「あ!ハアっ!あああ!!」
部屋にいやらしい水音が広がり、ドンドン愛液が溢れているのがわかる。もう、我慢できない。
「せ、せんど・・く・・も、もぅ・・」
早く仙道君のものが欲しい。先ほどから熱く硬くなっているものがほしかった。
声を聞いて彼が身体を起こし、私にモノを当てる。
「弥生さん。どうして欲しいか言ってよ。」
彼の指がやわやわと私のももをなでている。刺激も無くてどうしようもないほどの疼きが襲ってくる。
仙道君が私の上に覆いかぶさってきた。
「弥生さん入れたい?ねえ俺を欲しがってみてよ。」
こんなに、こんなに求めてる。あなたのことを私ずっとずっと欲しかった。想う気持ちの大きさで狂ってしまいそうなのよ。
「お願い仙道君。・・好きなの。」
彼の驚いた目。
私にとっても思わず出た言葉だったが、それをきっかけにしたように体中から想いがあふれてくるようだった。
窓から射す月の光があふれ出る涙でゆがみ、いくつもの色を発してきれいだ。
「ずっと、好きだったのよ。」
彼が一瞬泣きそうな顔をして、そのまま一気に奥まで熱いものを入れてきた。
「んん!!ああぁ!!」
叫びにもにた声が出る。彼がぎゅっと眉間にシワをよせる。
「すげぇ・・熱い。弥生さんの中・・。」
言いながら動きを止め、私をぎゅっと抱きしめる。
「・・・ごめん。」
耳元で聞こえる大好きな人の声。
いいの。何も言わないで。そう想いを込めながら、彼に腕を回す。
わかっていたことだった。仙道君にとって遊びでもよかった。大好きな人に私は抱かれている。
この時を、ずっと覚えていたかった。
「あぁ!んぅ、あ!きもち、イイ!!んあっ、そこもっとしてぇ!!」
「マジでだめだそんな声で・・。俺、そっこーイキそうだよ。」
動きが早くなっていく。射精を耐えている様子は大きい彼がなんだか小さく感じ、とてもかわいく見えた。
「あっ・・イっ・・くぅ!!」
「や、弥生さんっ!」
ぎゅうっと彼がしがみついてきた。
(あぁ終わってしまう。)
チラリとそう思ったこともこんなにも好きな気持ちも、すべての感情が混ざり合い頭の中で浄化されていく。
それはただ、何もかも白く。
ぼーっと天井を見ていた。
全てが終わり、なにか展開についていけない感覚だった。
息を荒く疲れた様子の仙道君。チラリと見ると照れたように笑う。
きっと彼はもう家にこないんだろう。そう思うと涙がまた出てきた。
知られたくなくて背を向ける。
「?弥生さん?」
彼が上体を起こし、私の顔を覗き込む。あぁばれてしまった。これじゃあ引き止めるようで悪い。
静かに仙道君が私の髪を撫でながら言った。
「ごめん。本当にごめん弥生さん。」
無言で頭だけ横に振る。そして付け加えられた一言に頭は完全に?になった。
「こんな無理矢理。だけどどうしても抱きたくて。・・・ずっとずっと大事にするから。」
今なんて?どういう話になったんだろう。
ぐずりながら肩越しに彼の目を見る。いつもの笑顔でにっこりした。
「ずっとって・・またウチに来てくれるの?」
「なんで?弥生さんさっき俺のこと。」
「好きよ。だけどどうして・・」
「俺も好きだよ。ずっと好きだった。じゃないとこんなあつかましく家に来させてもらわないですよ。」
ふわりと笑う彼。本当に?
顔がくしゃくしゃになっていくのがわかる。
泣き止むまで仙道君は優しく優しく頭を撫でてくれていた。
なんだか今日の夕食に激甘のケーキでも作りたい気分だった。