取材と称し、退社し、気分転換に海岸沿いを歩いていた。  
雑誌記者になって5年。  
毎日毎日、取材、原稿書き、会議のローテーションで、自分を仕事人間だと思い込み、  
バスケへの情熱だけを力に、あちこちを駆け回っていた。  
けれど、流石に拠り所が無いとしんどいということに最近ようやく気付いた。  
 
等間隔に並んでいる街灯をぼんやりと見つめながら、当ても無く歩く。  
夕刻だということもあり、海岸にはほとんど人影は無かった。  
規則正しく聞こえてくる波音と、すっかり馴れ親しんだ潮の香りが心地良い。  
 
(…そろそろ現実に戻らなきゃ。)  
弥生は、自分には仕事しかないということを重々承知していた。  
一番情熱を向けられるのもバスケ、つまり仕事であるし、還る場所は此処なのだ、と。  
そう思いながら来た道を引き返そうとすると、前方に見知った姿を見付けた。  
ツンツンと立てられた短髪に、無造作にポロシャツを着こなす一際目を引く長身の男。  
(…!あ、やっぱり…)  
 
「仙道君! 仙道君やないの!! 週バスの相田です」  
沈みかけていた気分が途端に上向きになる。自分が神奈川で一番注目している高校生。  
あくまでも記者として彼のことを追いかけているつもりだが、実際はファンでもある。  
立場上、あまり大きな声では言えないのであるが。  
「ああ、こんちは。お久しぶりです」  
ニコリと微笑み、軽く会釈を返す仙道の手には釣具らしきものがあった。  
「あれ、今日は練習は?」  
「んーまあ、今日は骨休めってことで…」  
「そないなことでどうすんの! あんた陵南の新キャプテンでしょ。  
私こないだ思いっきり記事書いてやったわよ。天才仙道率いる陵南の時代が来るのも  
そう遠くは無いだろうってね。周りに嘘つき呼ばわりされるのはごめんだわ」  
「…」  
弥生の剣幕にしばしポカンとする仙道。  
「…ごめんなさい、私監督でもないのに…」  
「ふふ、そりゃどうも」  
「や、別に褒めたわけじゃ…」  
 
相変らずこの男は?めない。普通、言葉の裏から読み取れる当人の気持ちがあるはずなのだが、  
この仙道からはそれが全く読み取れない。  
試合中の仙道は、少々ムラはあるものの、素人さえも虜にしてしまうような出で立ちだ。  
夢中で目の前の敵との勝負を、ゲームを楽しんでいるように見えるからである。  
しかし、オフコートでの仙道は、一体何を考えて日々を送っているのだろう。  
皆目見当も付かない。  
 
 
 
「相田さんは何してるんすか?」  
「…まああたしも骨休めってとこよ。オトナには色々とあんのよ、色々とね」  
 
すっかり日が暮れて、星がちらつく時間帯になってしまった。  
砂浜の近くの階段に並んで腰掛ける。空の暗さで、海と砂浜との境界線はもう殆ど分からない。  
近くで花火を楽しむ若者の声が聞こえる。  
(そっか、今は夏休みだったのね…)  
 
「ごめんなさい、もうこんな時間になっちゃったわね」  
職業病なのか、ついついバスケに関する質問攻めを繰り返してしまっていた。  
何となく、仙道はインタビューがあまり好きではないだろうというのは予測出来たが、  
それでも自分の話に付き合ってくれていたことが、少し意外だった。  
適当にあしらわれて、すぐ帰ってしまうと思ったのに。  
折角休息の時間を自ら作ったのに、こんな風にしか出来ない。弥生は少しだけ自己嫌悪に陥った。  
 
「いい? 練習はサボっちゃ駄目よ!  
こうしてる間にもライバルが成長してたらどうするの。…って私もか。  
とにかく、頑張ってね。じゃあ私はこれで。時間とらせちゃってごめんね」  
そう言い残し、立ち去ろうとすると、急に腕を引っ張られた。  
 
「な、何よ?」  
思わず声が上擦ってしまった。  
眼下に、普段の飄々とした仙道からは想像も付かないくらい、  
まっすぐな瞳をした彼が居た。  
花火の光が仙道の整った顔を映し出し、チカチカと照らす。  
「相田サンは、何時もバスケのことしか聞かないね」  
「ど、どういう意味? そりゃ、私かて記者やし…」  
気持ちが昂ると、関西弁が出てしまう自分の癖。  
それを仙道に見破られていないか、弥生は不安になった。  
 
フ…と意味ありげに仙道は微笑む。空の暗さで、海と砂浜との境界線はもう殆ど分からない。  
夢と現実の境界線も、もう殆ど分からない。  
 
 
 
   
 
 
「んっ・・・・・」  
 
何が起こったのだろう。  
突如触れられた唇。その、甘美で溶けてしまいそうな感触が、弥生の脳内を侵食してゆく。  
その感触に、急激に胸が高鳴ってゆく。  
仙道は、左手で弥生の短い髪をそっと撫で、角度を変えながら、  
優しく触れるだけのキスを小刻みに紡いでいった。  
程なくして、唇をそっと離す。  
 
「ついちゃった」  
先程のまっすぐな表情とは打って変わって、おどけたように微笑む。  
仙道の薄い唇に、弥生のグロスのラメが点々と付いている。彼はそれを艶っぽくペロリと舐め上げた。  
「甘い」  
そう呟いて、弥生の頬にそっと触れ、再び口付けをしようとした。  
「な、何すんねん!」  
パチン。鈍い音を響かせ、弥生は仙道の頬を打った。  
それはまるで、高揚してゆく自分の感情を押し殺すかのようでもあった。  
「…やべ。オレってMかも」  
「何アホなこと言って…」  
「カワイーね。弥生サンは」  
かあっと、頬が熱くなってゆくのが自分でも分かる。  
美人だとか、綺麗だとかは言われるようなことはあっても、可愛いと言われるような年ではない、  
と自分では分かっていた、のに。  
 
平手打ちは逆効果だったようだ。彼の理性を打ち砕いてしまったことに、弥生は気が付いた。  
 
「オレんち、すぐそこなんすよ」  
 
 
 
東京の中学からスカウトされ陵南に入学した仙道は、  
近い方がいい、ということで一人暮らしをしている。  
もっとも、その近さが逆に災いし、遅刻魔のレッテルは剥がれぬままのようである、が。  
 
小奇麗なアパートの一室。青を基調にしたシンプルな部屋。  
カゴの中に洗濯物が粗雑に積み重ねられてはいるが、意外にも綺麗な部屋だった。  
 
「…お茶飲んだらすぐ帰るから」  
どうしてこんなところまでついてきてしまったのだろうか。先程の溶けてしまいそうなキスで  
冷静さを失ってしまったのだろうか。  
そんなことはないはずだと自分に言い聞かせる。  
大体、子供ではないのだ。  
部屋に呼ばれることがどういうことなのか、わかっているはずなのに。  
 
仙道は何も言わずに頬杖をついている。何か考え事をしているのか、それとも何も考えていないのか。  
どちらともとれるその様子が、いかにも彼らしかった。  
 
駄目だ。唇の感触、大人びた瞳、大きな腕、全てがフラッシュバックしてしまう。  
 
「仙道君、ちゃんと自炊してん…」  
取りあえず何かを言おうと言葉を放った瞬間、弥生の言葉は遮られた。  
目の前の男によって、彼女の唇は塞がれる。  
フラッシュバックが、再び現実となった。  
先程の甘美なキスは、もうそこにはなかった。  
 
 
 
「んっ・・・や・・・」  
仙道の熱くなった舌が、ぬるぬると弥生の口内を犯す。  
深く深く、舌を絡ませながら、弥生をきつく抱き締めた。  
その温かい胸の中で、ますます弥生の鼓動は早まってゆく。  
仙道の器用な舌は、歯列の間をもなぞり、上顎、歯茎と、縦横無尽に移動する。  
二人の唇から熱を持った吐息が漏れる。  
仙道から逃れようと、彼の胸を両手で必死に押し退けようとするも、力の差は歴然だ。  
呆気無くひょいと持ち上げられ、身体は宙を舞う。  
後頭部と背中に、柔らかなベッドの感触を味わった。ギシ、とスプリングが弾む。  
 
「あっ…や、やめなさい…」  
仙道は、制止の声を強く遮るかのように、左手で弥生の腕を掴み、  
右手でブラウスのボタンを一つずつ器用に外してゆく。  
「あっ、ちょ、ちょっと…」  
仙道の唇が弥生の唇から離れ、右頬、耳の裏側へと移ってゆく。  
耳にフッと吐息をかけられるだけで、下半身が呻くように熱くなってゆく。  
「んんっ…あ…」  
「…もう感じてるの…?」  
そう耳元で囁いた後、首筋に長い舌をツーッと這わせてゆく。  
弥生の首筋から女らしい、甘く香しい匂いがして、仙道は更に舌の動きを強くする。  
そのまま、鎖骨にキスを小さく落とす。  
「ん…あぁ」  
自分とは思えないような、甘い声が出てしまう。  
「可愛いね、弥生サン。もっと聞かせて…」  
「…るさいわ…ボケぇ…」  
「もっとよくしてやるよ…」  
 
 
 
ブラジャーのホックを手慣れた手つきで外し、鎖骨から降りてきた舌で乳首にそっと触れる。  
「あっ、あぁ…ん」  
チュ、と音を立てながら、乳首の周りも弄ばれ、硬くなった中心部を強く吸われる。  
もう片方の乳首は指先でクリっと捏ねられる。  
舌のざらついた部分でねっとりと舐められているうちに、  
快感を得る為のあらゆる熱が上昇してゆくのが分かった。  
 
乳首をじっくりと愛撫した後、脇腹、臍、背中…ありとあらゆる部分に、仙道は口付けた。  
弥生の全ての部分をいとおしく思うかのように。  
弥生の秘部は、もう下着の上からでも分かるくらいに、びっしょりと蜜が溢れて来ている。  
 
スラックスをするりと脱がされ、下着が露わになる。  
下着の一部分が、微妙に色濃く、更に膨れ上がっており、それが仙道を更に熱くさせた。  
「あれ…もうこんなになってる。やらしいな…」  
「……っ」  
下着の上からぬるっとした秘部を撫で上げ、焦らしてゆく。  
突起を軽く摘むと、弥生の太股がピクッと熱を打ったかのように弾む。  
仙道は両足首をガッと掴み、脚を開かせ、脚の付け根にキスをした。  
「あっ…ん…」  
弥生のスラリとした美しい肢体を眺めながら、下着をゆっくりと剥ぎ取った。  
その姿は、普段のボーイッシュな彼女とは全く違う、完成された女らしさと色気を醸し出していた。  
「弥生サンの格好、すげーやらしい…」  
弥生の両足首を掴み、高く持ち上げながら仙道は彼女を見つめた。  
「やめ…っ、あ、あんたが…」  
暗がりの中でも、テラテラとした彼女の秘部が際立っている。  
割れ目から半透明な蜜が、トクトクと流れ落ち、シーツをしっとりと湿らせていた。  
仙道はからかうように、露出された秘部にフッと息を吹きかけた。  
「な、何すっ…」  
「さぁ…? 何して欲しい?」仙道は悪戯っぽくニヤリと微笑む。  
「…アホぉ。…分からへんの…?」  
もうどうにでもなれというように、弥生は自分で秘部に指を宛がった。  
「淫乱」  
仙道はそう言うと、弥生の秘部に顔を埋め、柔らかな舌で割れ目をそっとなぞっていった。  
 
 
 
 
「ああああっ…」  
チュプ、チュルと卑猥な水音を部屋中に響かせ、仙道は唇で突起を軽く銜え上げ、小刻みに口付ける。  
久しく味わっていなかったその感触に、弥生はどうしても膝に力が入ってしまう。  
今までこんなに時間をかけて愛撫してくれた男がいただろうか…。  
快感の渦に支配され、薄れ逝く意識の中で、弥生はふと思う。  
突起を舌で愛撫されると同時に、何時の間にか、彼の長い指が肉襞に進入してゆく。  
「んんんっ…はぁ…あぁっ!」  
指は1本、2本と加えられ、弥生の中を激しく動かしてゆく。  
クチュクチュ、と先程よりも更に大きな水音が耳に入ってくる。  
「ほら…こんなにグショグショにしちゃって…そんなに気持ちいい…?」  
「あっ…あ…言わなくても分かるやろっ…」  
「へえ、まだ喋れる余裕あるんだ」  
そう言うと仙道は、指と舌の動きを同時に早めていった。  
余ったもう一方の腕で弥生の乳房を強く揉み上げ、刺激してゆく。  
まるで、弥生の快感の中枢を全部解り切ったとでもいうように。  
「あ・・・・あぁぁぁ・・・もう・・・」  
弥生の脚はガクガクと震え、秘部は小刻みに収縮し始める。  
仙道の額にも、弥生の身体にもうっすらと汗が噴出し、エロティックな匂いが部屋に充満する。  
弥生の意識が飛びそうになった頃に、仙道はスッと指と舌を抜いた。  
 
「……!!」  
はあ、はあと肩で大きく息をしながら、弥生は仙道をじっと見つめる。  
 
仙道は服を乱暴に脱ぎ、クスッと微笑む。  
鍛え上げられた仙道の身体が露わになり、思わず弥生は眼を逸らしてしまう。  
 
仙道は静かな瞳で弥生を見下ろし、彼女に近付くと、そっとキスを落とした。  
先程の激しい愛撫が嘘のような、優しく、控えめなキスであった。  
 
 
 
「…オレのになってよ、弥生サン」  
「・・・・・・」  
「オレ、こんなことでしか伝えられないんだ。…許して」  
 
 
 
下がり気味の眉を更に哀しげに下げ、少年のような表情を見せた。  
試合の時に時折見せる、嬉しそうな表情ではない。  
普段の大人びた、表情でもない。何時も何を考えているか分からない仙道。  
そんな仙道の、言葉の裏側に隠された気持ちが、狂おしい程に伝わってゆく、初めての瞬間だった。  
 
 
 
「ずっと、アナタが好きでした…弥生サン…」  
 
 
 
夢と現実との境界線は、もう跡形も無く、消え去っていった。  
其処に在るのは、仙道彰という、一人の男だった。  
 
 
 
 
 
こみ上げてくる想いに耐え切れず、弥生は一筋の涙を流した。  
「……っアホぉ。順番逆やないの……」  
精一杯の想いでそう返し、仙道の背中に腕をそっと回した。  
 
「……んんっ、あっ…あぁ…」  
弥生のしっとりと濡れた中に、仙道がゆっくりと入っていった。  
下腹部にキュウッと感じる違和感は、すぐに深い官能へと変化する。  
一段と大きく固い仙道自身は、弥生の中を、そして気持ちまでもを激しく突き刺す。  
「…っ、気持ちいい…? 今度はちゃんとイカしてやるよ…」  
肌と肌をぴったりと重ね合わせ、そして唇を重ね合わせながら、波のように律動を開始する。  
休む間もなく、二人は欲に溺れて、互いの胎内を突き動かしてゆく。  
 
「すげー気持ちいいよ…弥生サンの中…」  
「…ああっ、ふ…」  
ジュプジュプと弥生自身が紡ぐ水音と、ギシギシというベッドの軋む音が  
二人の淫らな吐息と共に、熱を上げてゆく。  
 
艶のあるふくよかな唇。恥じらいを残した瞳。  
そしてそれとは反して快楽に溺れる、恍惚とした大人の表情。  
彼女を形容する全てに、仙道は狂おしいほどの愛しさを感じ、我を失いそうになる。  
これまで、自分が一枚上手かのように振舞ってきてはいたが、  
彼も彼で、弥生から溢れ出す魅力の虜になっている。  
今にも射精しそうになるのを必死に耐えていた。全ては、彼女を絶頂へと導く為。  
 
「あ・・・せんど・・・くん・・・・」  
「…名前で呼べよ…」  
「あ・・・っ、あき…らぁ…」  
 
仙道は弥生の細い両脚を担ぎ、自分の肩に乗せ、更に奥深くへと自身を貫いた。  
腰の動きをさらに速め、狂ったかのように打ち付ける。  
二人の肌と肌の間、そして秘部の間にも強く摩擦がおき、クライマックスへと移行した。  
「あぁぁっ…も・・・駄目・・・」  
弥生は今にも限界を迎えようとしていた。  
足の指と、膝の裏がカクン、カクンと大きく震え、彼女の中は仙道自身を強く締め付けていた。  
弥生の瞳に再び涙が浮かぶ。  
仙道はそれを指で優しく拭い、彼女の脚を元に戻し、細い背中をきつく抱き締めた。  
「…っ、好き…だよ、弥生サン……」  
「……んっ、んぁ、あぁぁぁっ…!!」  
 
 
 
二人は同時に果てた。  
脳内が覚醒されたかのようにふわりと揺れ動くように感じる。  
汗はヒタヒタと流れ落ち、部屋の中は暑くなる一方だった。  
荒い息のまま、仙道は弥生を抱きかかえ、耳元で甘く囁く。  
「で、弥生サンのお答えは…?」  
「…何よそれ。んなの言わなくても分かるやろ…」  
「それ言うの今日何度目…?」仙道は子供のようにクスクスと笑った。  
「…アホ。生意気ばっか言っちゃって…」  
 
 
 
 
カーテンから差し込む日の光で眼が覚めた。  
何時の間にか、眠ってしまっていたようだ。  
昨夜の余韻は弥生の中にも、部屋の中にも、はっきりと残っていた。  
思い出すと、また下半身がジュンと疼いてしまう。  
そんな自分に顔を赤らめながら、身体を起こし、隣を見ると、  
スヤスヤと無防備に眠っている仙道の姿があった。  
 
「…フン、寝顔だけは可愛いのね…」  
 
髪の毛のセットも崩れ、だらりと垂れ下がった前髪が彼の鼻の辺りを覆っていた。  
長い睫毛に、小さく開けられた唇。規則正しく上下する、大きな胸板。  
どんなに大人っぽく見えても、寝ている時の表情は、高校生らしい姿であった。  
 
弥生は、仙道の乱れた髪をそっと撫でながら、優しく微笑み、キスをした。  
 
「・・・好きやで・・・彰」  
 
 
 

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