『落ちましたよ』  
はっきりとした低めの声に気付き、釣り道具を持った男が振り返る。  
思わず松井から、あ。と声が漏れた。  
へ?と言う顔をする男。  
「仙道だ………さんだ。」  
芸能人の名を呼ぶ感覚で呼び捨てにしたことに気付き遅れて敬称をつける。  
仙道はそんなことは気にも留めない様子で考えた挙句言い辛そうに口を開いた。  
「えっと…誰だっけ?」  
「知り合いじゃありません。私が知ってただけだから。これ。」  
釣り道具から落ちたらしいルアーをずいと前に出す。  
無表情で淡白な彼女の態度は初対面の人間に悪印象を与えがちだが、  
男も気が付く方ではないので問題はなかった。  
「あぁどうも。…君バスケ部?なんで俺の名前知ってるの?」  
「だって有名人でしょ?」  
「えっ?」  
「え?違うの??」  
男は明らかに困った顔でうっすら汗をにじませ、頭を掻きながら視線を泳がせた。  
「あぁそうか。普通自分で有名人だよとは言わないですよね。」  
「えっと…君はどこの学校なの?」  
話題を変えたい仙道は無表情な彼女の制服を指しながら言った。  
「湘北です。あー流川楓とかいる。」  
「あぁ〜!あいつのファンかぁ!」  
合点がいったと言う顔でうなずく男。  
松井としては今日も晴子から流川の話をされたばかりだし、  
“目だった選手=流川”という等式が出来ていたものだから言っただけなのだがどうやら誤解されたらしい。  
「いや私は好きじゃないけど。」  
「はは、いいよ気にしなくて。言ったりしないから。」  
「いや好きなのは私の友達…まぁいいや。」  
諦めが早い…と言うより面倒くさがりの松井は否定しなかった。  
 
気付けば並んで歩いている。駅に行くとのことだから電車に乗っても途中まで一緒らしい。  
「釣れました?」  
「ははは全然。ダメだねやっぱり。途中で眠っちゃうんだよなぁ。」  
「寝るんだ。っていうか寝れるんだ。」  
あははと笑う仙道を見る。こんな有名人(松井の中で)と並んで歩くのはもしかしたらめったにない状況なのかもしれない。  
ではとりあえず記憶に残るように見ていようと思った。  
高い身長。男らしい腕。細い、だががっしりとした体つき。  
 
 
「?なに?」  
品定めするような視線にさすがの男も気付き笑顔のまま聞いてみる。  
「いい身体してますよね、仙道さんって。」  
ぐっと仙道の喉がなったと思ったら何度か慌しく咳き込んだ。  
「?風邪?」  
そんな質問がむせる仙道に追い討ちをかけている。  
「い、いやいや。いい身体ってすごい言い方だなと思って。」  
「そうかな。」  
「うん。俺初めて言われたもん。」  
「そうなんだぁ。私思ったこと何でも言っちゃうから。」  
「なるほど。…多分言われたらわかるよ。」  
宙を見る彼女の心情は男には窺い知れなかった。  
「なんでこんなとこにいたの?松井サン。湘北からって遠いよね。」  
先ほど教えた名前をぎこちなく呼ぶ仙道。  
「あー…ちょっと悩むトコもあって。」  
「ふーん。」  
 
そう。松井は悩んでいた。どこか気持ちの晴れる場所を思っていたらこの海にたどり着いていた。  
先ほど晴子に何気なく「あの男に好きっていえば?」と言った。  
晴子に加えて藤井まで『え!?』って顔をしていて、  
そんなにすごいことを言った覚えのない松井は逆に2人の反応に驚いた。  
恋愛をしていなかったことが悔やまれる。悩む友達の気持ちをわかってあげられない。  
 
駅に着き電車に乗った。  
揺れに身を任せながら少しの沈黙後松井は仙道に向き直り唐突に言った。  
「好きってさ。そういう気持ちって直接言わないと何も伝わらないんじゃないんですか?  
 そこから始めるんもんじゃないの?」  
彼女の気迫に少し押された仙道だが、流川のことで相当悩んでるんだろうなぁと優しい気持ちになる。  
「うーん…。そうだな。でも言ってしまえば全部伝わるってわけでもないしね。  
 例えば俺が今ココで松井さんに告白したとして、どれだけ好きだったかなんて伝わらないよね。  
 性格とかも知られてないならなおさらOKされにくいんじゃない?」  
「じゃあ…まず仲良くなるってこと?」  
「うん。そうかな。」  
そっかぁと言ってまた窓の景色を見た。これでほんの少しでも友人の相談に乗ってあげられる。  
紅潮した頬は表情すら変わらないが彼女なりの喜んだ、満足した表情なのだろう。  
仙道はその横顔を見ながら『初々しいなぁ』などと年寄りのように微笑んだ。  
 
「俺はー…いいと思うよ、松井さん。」  
「は?」  
仙道としては当然の流れだが、急に何を言い出すんだという不信を松井に抱かれたのは仕方がない。  
そんな様子に気付かない仙道は組んだ腕を片方顎に置き、じっくり上から下まで少女を見た。  
「うん、かわいいし。それにいい身体してるしね。」  
目を丸くして穴が開くほど見つめる松井ににっこりと笑顔を返す。  
途端一生固まったままかと思わせる彼女の表情が緩み、  
ぷーっと噴出したかと思うと腹をかかえて大きく笑い出した。  
「ね?なんかやらしいでしょ?」  
「あははっや、やらしいっていうか親父だ!最低!」  
涙を流して大笑いする松井の視界に覗き込むような男の顔が映った。  
「あ、笑ったらもっといいね。」  
かぁっと赤くなるのを感じる。驚いて出ない声を押し出そうと口をパクパクするしかできない。  
『陵南高校前ー。陵南高校前ー』というアナウンスが慌てる松井の脳裏を掠めた。  
 
「じゃあここで。がんばってね。」  
そう言うと男はさっさと電車を降りてしまった。  
バタバタの事で落ち着かない頭を抱えながら、手を振る男が小さくなるのを見る。  
熱くなった頬に手を置きながら急に男の“がんばってね”の言葉を理解した。  
「そっか。あの人まだ勘違いしてるんだ。」  
 
 
ぽつりと言うとまた少し笑い、『変な人』と小さく呟いた。  
 
男は噛み締めるようにあくびをした。  
繰り返される波の音。風が気持ちよくぽかぽかした陽気は程よく眠気を誘う。  
「こんにちは。」  
低めの声がして顔を上げると松井が少し腰を屈めてこちらを見ていた。  
こんにちはと返すといつもの場所に松井が座る。  
 
日曜日の午後2時。この時間にここに来るのは松井と仙道の習慣になっていた。  
毎週釣りに行っているわけではなかった仙道も、海なんかほとんど行かない松井も、  
約束もしていないのになぜかここに来ていた。  
 
この二人の共通点は周囲の人間に変人扱いされることが多々あるということ。  
だからこそお互いに自分の欠点を気にしない相手といるのは楽しかった。つまり馬が合ったのだ。  
「あ、釣れてる。なんの魚ですか?」  
「カワハギ。あ、そっちはコチ。」  
「大きい。やりますね。」  
「あはは。」  
なんでこのコ毎週くるんだろ?などと当たり前の疑問を全く持たないのんびり屋の仙道は、  
淡々と思ったことを口に出す松井を素直なおもしろいコだと思っていた。  
そんな彼女も独特の性格のため嫌煙されることが多い自分を否定するでもなく、  
あくまで包むように接してくれる仙道との時間が心地よかった。  
「今日も湘北は練習?」  
「あーやってましたね。体育館こもるから暑いみたいですよ。」  
「うん暑い暑い。」  
のんびりと話してたまに笑う。  
こうやってぼんやり一日が終わるのもいいのかもしれない。  
そんな思いで松井は隣の男をチラリと見た。  
 
 
陵南高校が遠くに見えるいつもの駅で仙道と別れた。  
穏やかな思いで、しかしどこか物寂しい気持ちを抱きながら窓の外を見る。  
「あっ。」  
ポケットに触れる異物感で松井が小さく声を出した。  
慌てて取り出してみると先ほど話しの途中で見せてもらった仙道の生徒手帳だった。  
「これ…検査とかあるんじゃないの?」  
うっすらと手に汗をかく。自分が見たいと言ったせいでこの手に収まっている手帳。  
このせいで彼が教師に怒られてしまうのは嫌だ。いやそんなことあってはならない。  
停車した駅で慌てて降りると、今来た線路をまた戻る電車に乗り込む。  
 
早く。明日になるまでに、この手帳をあの男に返さなくてはならない。  
 
陵南高校の正門に立つ女がいた。  
生徒手帳に記載された男の住所がどこだか分からなかった彼女は  
とりあえず小さく見える陵南高校に向かうことにしたのだ。  
(落とし物ですって職員室に預けようか。いやそれでも絶対怒られるだろうな。)  
ちらほらといる生徒が松井を物珍しそうに見るが彼女は全く気が付かないほど真剣に手帳を見つめていた。  
きゅっと生徒手帳を握り、顔を真っ直ぐに上げると、わずかな願いをかけて体育館を目指した。  
 
「入り口…あいてる。」  
早足で来たせいで息切れのする身体をなお急かし、体育館へと近づく。  
ドリブルを繰り返す聞きなれた音が聞こえてきた。  
「すみません。」  
臆することのない松井の低めの声が体育館に響いた。  
一人で黙々とドリブル、シュートを繰り返していた男が振り返る。  
「これ、仙道さんに渡して欲しいんです。」  
見知らぬ女の口から仙道の名前が出て、越野は入り口に立つ彼女の元へ近づいてきた。  
「仙道さんに見せてもらって返すの忘れてて。」  
越野が急に得心した表情を作る。  
「あぁ。あんた松井さん?湘北の。」  
「?はい。」  
少し頭を掻くと手帳と松井の顔を交互に見る黒髪の男。  
「釣りしてんだってね、アイツと。…あんた仙道好きなの?」  
越野も聞き方を知らない。聞きたいことがあるとすぐに聞いてしまう。  
だが不快にはならない松井はその質問にしばし考えて突然言った。  
「もっと話したいとか、帰るとき寂しいって思うのは好きってことですか?」  
今度は越野が驚いた。恋愛なんて、そんな質問なんて、全くもって分からない。  
「あぁ〜いやぁ〜さぁ??まぁ一般的にはそうなんじゃないの?」  
「じゃあ、好きです。」  
即答する松井に驚き、吹き出して笑う越野。彼女の嫌味のない直接的な言い方に好感を持った。  
松井は笑う越野を視界に入れながら初めての感情に驚いていた。  
だが気付いてしまえば寂しかった気持ちも、沈黙でも楽しかった時間も納得がいく。  
「あんたさ、直接届けてやってよ。俺明日休むんだよね。」  
越野は優しい男だった。そして嘘つきでもある。  
「え?じゃあ明後日でも。」  
「いやいやウチ毎日持ち物検査あるんだよ。アイツ怒られるだろうなぁ〜。」  
繰り返すが越野は嘘つきだ。  
しかし松井は素直にその言葉を聞いた。怒られるのはいけない。  
わかりましたと告げると越野は紙とペンを持ち出しイソイソ地図を描いて説明を始めた。  
見た感じではそんなに遠くないようだ。  
松井はいつもの無表情でぺこりと会釈をすると体育館を後にした。  
 
いいことしたな〜!と満足気に微笑む越野を残して。  
 
コンコン。と軽いノックの音が薄暗くなった部屋に響きこんばんはと声が続く。  
「松井です。」  
「えっ!?えぇ!?」  
聞きなれた低めのハスキーな声に仙道はこけそうなほど驚いた。  
「あのっ、ちょっ、ちょっとまって。」  
きょろきょろと周りを見る。殺風景の部屋に雑誌が散らかっていて、慌ててそれをどこかに片付けようとする。  
(そうだ別に家に上がるわけじゃないんだから。)  
突然のことで大きくなった心臓の音を鎮めながらごくりと息を呑むとドアを開ける。  
両手でバックを持ち、きれいに立つ松井がいた。  
先ほど会っていた彼女の顔に沈みかけた夕日が射し別人のように見える。  
「松井さん?どうしたの??」  
改めて玄関先に立つ松井に驚く仙道。  
「これ持って帰ってて。陵南高校のバスケ部に行ったらここの地図描いてくれたから。」  
「あ、あぁそうなんだ。ごめんねわざわざ。」  
そう言うと細い指に納まる手帳を受け取る。  
「じゃあ。」  
「送るよ。ちょっと待って。」  
未だに驚いた余韻が残る男は慌てて家に入り用意をしようとした。  
「いえ大丈夫ですよ。あっそうだ仙道さん。」  
「ん?」  
引っ込めかけた頭をひょいとドアから出す。  
「私仙道さんが好きみたい。うん。好きです。」  
いつもの会話の延長線のようなサラリとした告白。  
「…あ…そうなんだ。」  
どうにも働かない頭をフル回転させ、頬を指で掻きながらなんとかその言葉を押し出す。  
こんな雰囲気もムードもない状態であっさり言われた気持ちをどう対処していいのかわからない。  
「はい。さっき確信しました。」  
「さっき!?」  
「あっ!そうか。イキナリ告白はまずいって教えてもらってたんですよね。」  
「い、いやそれはいいけどあの、松井さんは流川が好きなんでしょ?」  
その言葉に松井は驚いたように仙道を見て思いきり吹き出した。  
「あはは!やだぁおかしい!言ったじゃないですか好きなのは友達だって!!まだ勘違いしてたんだぁ!」  
笑う松井を見ながらまるで仙道が告白したように赤くなっている。  
大笑いされることにちょっとした悔しさがこみ上げて赤いまま顔を背け宙を睨んだ。  
だがそれと違う想いが大きくなってくる。  
彼女の告白を聞いて嬉しく思う気持ちが次第に膨れ、じんわりと心が温かくなった。  
視線を戻すと息も絶え絶えにお腹が痛いと苦しんでいる松井が目に入る。  
晴れやかな柔らかい笑顔。見ているとたまらない感情が押し寄せてきた。  
「あっ。」  
涙を拭う松井の頬から首に手を回し軽くキスをした。  
 
「!!??」  
真っ赤になり口を押さえる彼女の至近距離で、仙道もまた少し赤いまま松井の目を見つめた。  
「絶対ツボ変だよ。」  
照れたように言うと彼女の手を口から外し、もう一度重なるだけのキスをした。  
「て、手が早い。」  
珍しく動揺する松井がそう言うと仙道は人事のようにあははと笑った。  
「俺も好き。今確信した。」  
「うわぁうそくさ。」  
「あはは。」  
真っ赤な松井がかわいくて仕方ない。  
が、これ以上触れると押さえがききそうにないのですっと身体を離す。  
「送るよ。また来週釣りしようね。」  
初めて交わす約束に松井はまた顔を赤くして喜んだ。今は離れたくないと思っている。  
「あの。」  
「ん?」  
「あの…今の、もう一回だけ…してもらえないでしょうか?」  
あんなにはっきりとものを言う松井がもじもじと視線を逸らし小さな声を出している。  
このタイミングでかわいいことを言われて男はめまいがしそうだった。  
「分かってないね。我慢してんのに。」  
「我慢?なんで?私もしたいのに??」  
プツンと理性の糸が切れる音がした。大人びていても17歳。我慢の限界も近い。  
向き直りするりと彼女の身体を引き寄せて家の中に入れる。  
ドアを閉めると狭い玄関にどうしても身体が密着した。  
顔を近づける仙道にピクリと緊張させる様子にも男の身体が熱くなる。  
壁に押し付けるようにしてゆっくりと唇が触れた。  
なぞるような動きが、その滑らかさが先ほどのキスとは違うこと示している。  
この大人の動きにただ驚いて彼女は身体を硬直させる。  
ふと唇が離れ目を開ける。間近に仙道の目があった。  
「……口あけて。」  
低い声に、かかる吐息にドキリとする。  
え?と聞き返そうとした唇が再び塞がれ舌が入り込んできた。  
「んっ。」  
反射的に逃げる舌を絡めとり重ねるように舐めると硬直していた松井の身体から力が抜けた。  
だらりと座り込みそうになる身体を抱きかかえ歯列をなぞりまた舌を絡める。  
男の唾液を喉に下すと、なんだかとても淫猥な行為に思われた。  
ぼんやりとする頭で松井は妙な感覚に気が付いた。  
熱を持った身体の中で下半身がより熱く、じわりと不快な感触で濡れてくるのだ。  
意識の遠いところで『なにこれ?』と不思議に思うが、それはすぐに消されていく。  
しばらくして唇が離れると、朦朧としたようにお互いを見るともなく見た。  
 
動かない松井に向けてにっこり仙道が笑うと、意識を取り戻した彼女の顔が一層赤くなる。  
「…うわぁっやらしい…!」  
「はは。やらしいね。」  
未だ背に回る男の手を心地よく感じ、たくましい腕にそっと細い手を重ねてみた。  
「?あれ?」  
なにか太ももに感じる異物感に松井は視線を落とす。  
仙道がやばいと気付いた時にはもう遅く、  
彼女の目はズボンを押し上げるほど大きくなっている男のものに注がれている。  
「これ…知ってる。あの、なんで?」  
非常に答えにくい質問を悪気もなく聞く松井。  
「なんでって…そりゃあ…。」  
「え?キスで??」  
「…ぅるせーな。」  
あれだけで?と聞こえる言い方に赤くなり少しすねたように言う。  
「へぇ…そうなんだ。あはは。うれしいかも。」  
屈託のない笑顔と台詞にどきりとした男は、咳払いをすると顔を背けて目を閉じた。  
今ここで最後までやる気はないのだ。精神統一をかねて自身を落ち着かせようと試みる。  
「え?あれ。私変なこと言ったかな。」  
天然もここまでくるとタチが悪い。  
そっとしておいて欲しい仙道に手を休めることなく攻撃してくる。  
「ごめんなさい。本当、思ったこと全部言っちゃうから。」  
もうだめだ。  
松井のこれでもかというほどの素直さに白旗を上げながらもう一度キスをする。  
密着する体の間に手を入れて胸に触れた。  
ビクリと身体が震え力が入る。腕に置いた手にも力がこもったのがわかった。  
胸に触れた手に多少の力を入れるとそれにあわせて形が変わる。  
もう片手は服の下から入れてブラジャーのホックを外す。  
やっと仙道の唇から逃れた松井が焦った声を出す。  
「ちょ、ちょっとっま、まっ!」  
「待たないよ。」  
「あ…ぅっ…んんっ!」  
ただぶら下がるだけのブラジャーの中に両手を入れ、指に揺れた突起を転がし、擦り、軽くつまむ。  
漏れてしまった自身でも知らない甘い声に驚き、身体も火がついたような熱を帯びる。  
同時に今からどうなってしまうのだろうという不安もわいてきた。  
「ふっぅぁ…あっ……い!!??」  
「よっと。」  
胸を弄っていた仙道は、突然思い立ったように彼女を肩に担いだ。  
 
「な、な、なに!?」  
急に浮いた身体に驚き、力強く運ぶ男の背のシャツをつかむ。  
スタスタと歩く足が止まり、身体に感じた軽い衝撃で目を閉じる。  
気付くと一つしかない部屋のベッドの上に寝かされていた。  
「あ…れ?一人暮らし?」  
松井の質問には答えず、上にかぶさりながら笑う仙道はとても爽やかで、  
先ほどまで強引に攻めてきていた男とは到底結びつかない。  
が、その笑顔のままで当たり前のように行動を再開する。  
薄着の松井の服をめくると、何も隠されることのなくなった胸があらわになった。  
両手で胸を隠す彼女に目をやると今にも泣きそうになっている顔が映る。  
「やっぱ無理っぽい?」  
おそらく初めてだろう彼女が嫌だというのも無理はない。  
笑顔を心がけて聞いてみる。が、表情に切なさが溢れている。  
「もう本当無理、耐えられない。…こんな……は…恥ずかしくて…。」  
(勘弁してくれー!!!)  
大声で叫びたかった。  
ちらちらと光る濡れた目と唇。口に手をやり眉毛を下げ、横に背けている顔は赤く艶かしい。  
加えて恥ずかしいなどと言われては誘われているとしか思えないのだ。  
いやわかる。相手は松井だ。誘ってるようで本気で嫌がっているのだ。  
なんとか自分に言い聞かせ、身体を離すことを努力する。  
「触ってもらえるのは…その…うれしいけど…。」  
か細い声が仙道の鼓膜に到達した直後にわずかな理性も姿を消した。  
「そんなんじゃやめらんねーだろ!」  
顔を赤くして、もう止めることはかなわない自身を感じながらスカートの裾から手を入れる。  
なぜまた始まったのか理解できないまま松井は身体を少し浮かし仙道の手を止めた。  
「だめっ!ダメそこ!」  
明らかに強い口調で言われ瞬間手が止まり彼女を見る。  
「そこだけはダメ!わかんないけど…なんか、さっきから、その…。」  
(マママジデー!!!???)  
もじもじと足を摺り寄せる様に軽くトんだ仙道は松井の止める手を気にせずその中心部に触れた。  
 
くちっ…  
小さな音。だがはっきりと二人の耳に響いた。  
「!!!ゃだ…。」  
半泣きの状態で両耳を塞ぎ目を閉じる松井。  
「すげぇ…かなり、濡れてるね。」  
「やめて、やだ…本当無理…。」  
背けた顔の下の白い喉が呼吸を繰り返すたびに誘うように動く。  
 
「こうしたらもっと…。」  
触れる手を軽く上下に動かしてみる。  
もはや下着の意味を持たないほど濡れたそこは動くたびに音がして男の指先を湿らせていた。  
「んあぁっ…ひど、…ひどいぃっあぁっ!」  
だんだんと大きくなる声が、動くたびに結んだ髪から香る甘い匂いが、仙道の思考をままならなくしていく。  
下着を剥ぎ取るとそこは線を引くほどに濡れて、尻の方まで液が垂れているのが見えた。  
静かに触れるとひだをなぞるように円を描く。  
見ると松井は片手の甲を目に当て、耐えられない恥ずかしさを必死に抑えていた。  
「この濡れ方半端じゃないよ。松井さんってやらしいんだね。」  
からかうように言うとビクリと震えた松井から多く液が溢れ、仙道の指に伝わる。  
「わ、どんどん溢れてくる。」  
誰も触れたことのない桃色の部分は恥ずかしがる松井と対照的に物欲しそうに収縮を繰り返している。  
たまらず口をつけ音を立てて吸った。  
「ひぁっ!な…に…あっあっやだぁぁっ!!」  
敏感な部分を舌の腹で包むようにして舐める。  
逃げようとする彼女をつかみ同じ動きを繰り返すと自然松井の腰が浮く。  
ゆっくり人差し指を入れると松井はがくがく反り返った。  
すでに考えることができない松井は与えられる刺激を嬌声をあげながら受け入れるしかできない。  
絶えず敏感な部分をゆっくり舐められ、中に入れられた指は次第にスピードを上げていく。  
「あっあぁぁんっ!!やめっ……ぁっあっあっあぁ!!!」  
一際高くなった声が途切れ途切れに叫びだし、仙道の腕をぎゅうっと握る。  
呼応するように口に含む部分を強く吸い、指を増やして動きを早くした  
「あ…あっ!!!や、ふぁ…あ…あぁぁぁあああああ!!」  
ピンと伸びた肢体が、ビクンビクンと揺れる。  
その姿を見て我慢していた仙道も耐えられず服を脱ぎ捨てる。  
松井の意識がはっきりする前に彼女の服も脱がせ濡れてヒクつくそこに自分のものを押し当てた。  
「え!?ぁっあ、んぅうっ…!」  
充分に濡れて指で慣らしていたそこは達したすぐ後で力が抜けていたということもあって、  
初めてにも関わらず彼女の中にズブズブと入っていく。  
それでも辛そうにしわを寄せる眉間にキスをする。  
 
「平気?」  
「ん…。はぁっ…あ、きっつ…っ!」  
「うん。今、全部入ってるよ。」  
そう言うとゆっくりと動き始める。  
先ほどの余韻が残る松井の身体がビクビクと痙攣を繰り返す。  
「あっな、なんか変っあっやめ…あぁぁっ…!」  
松井の中は何度も収縮して、肉が吸い付くように仙道のものに絡まり急激に射精感を高めていく。  
「だめだ…松井さんの中気持ちよすぎ…。」  
苦しそうにそう告げるとスピードを速め奥に奥に何度も突く。  
初体験で時間をかけて挿入を続けるのは迷惑以外の何ものでもない。  
それを仙道も心得ていたし、辛そうな松井を見ていると早く終わらせてあげたかった。  
もうすぐイキそうだと感じたとき揺さぶられながら松井が男を見た。  
「あ……せんどぉ…さぁ…ん。」  
 
ヤバイ。  
 
慌てて抜くと、同時に出てきた白い液体が松井の肌を汚す。  
何度かに分けて出る液に背中を丸め身体を震わせながら仙道は少しショックを受けていた。  
もう少しもつと思われた限界が松井から名前を呼ばれただけで、それだけでいきなりイッてしまった。  
いや、あの紅潮した頬、一際甘い声、焦点の合わない目も限界を迎える要素になったのはもちろんなのだが  
…いやだがしかし名前を呼ばれただけなのに…。  
 
ぐるぐると考えながら動かない男をよそに、松井は腹に乗る液体に驚きながら上半身を起き上がらせた。  
視線だけは液体を凝視している。  
(本当にしちゃったんだ…。この人と。)  
興奮して、気持ちよくなってくれた証なんだとそれを見ながらうれしくなってくる。  
 
優しく頬に触れる唇の感触で仙道は我に返った。  
こちらを見る松井が母親のような笑顔だったので、なんだか全て見透かされている感じがして恥ずかしい。  
 
仙道は温かな感触が残る頬に触れながら、すねたような表情で顔を赤くした。  
 
 

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