顔を上げた三井の10m程前に、驚いた表情の晴子がいた。  
続いて男の方も同じ表情になる。  
三井が卒業するのを最後に、実に3年の間二人は会う事もなかった。  
 
「よ。久しぶりだな。」  
「お…お久しぶりです…。」  
ぺこりと頭を下げる晴子は身体に力が入っている。  
「あれ?お前この辺住んでんの?」  
「あ、買い物にきたんです。服と…あと大学で使うノートと…。」  
ギクシャクと答える晴子に引き換え三井は緊張というには程遠い様子だった。  
「おおー!もしかして女子大生か?おいおい女紹介しろよ女。」  
その言葉にぴくりと身体を揺らすと、赤らんでいた晴子はみるみる表情を冷たくしてじとりと睨んだ。  
「お。な、なんだぁ?」  
「……知りません。」  
迫力はないが、不機嫌であることは鈍い三井でもさすがに気がついた。  
三井には彼女を怒らせる原因に思い当たる事がある。  
一度だけ赤木の家で集まったときに悪戯をした。  
全て経験させてしまったわけではないが、触れられたことのない肌を侵したのは確かである。  
 
「今から宮城と飲むんだわ。彩子も後から来るらしいけど…お前も来る?」  
袋に入った酒を持ち上げながら苦し紛れの提案をしてみる。  
だが意外にも晴子は楽しそうに話題に食らい付いて来た。  
「えー!?行きたーい!もうちっとも会ってないんですよ。」  
「来い来い喜ぶだろ。あいつらも付き合って長いよな。もう3年だってよ。」  
「えぇ!?すごい!!」  
先程とは一変してうれしそうに話す晴子を見ながら、三井はつくづく女がわからなくなる。  
大体、事があったすぐ後の晴子は会うたびに顔を赤らめたり、よく話しかけてくるようになっていたのだ。  
しかし時間が経つにつれて三井との間に壁をつくり、  
怒っているかのようにじとりと睨むようになっていったのである。  
「あそうだ。お前まだ流川流川言ってんの?」  
楽しそうに話していた声はピタリと止まり、三井を見た晴子はあの迫力のない睨み顔だった。  
「……えーえー言ってますよ。流川くん大好きだもん!」  
やけくそのように言う言葉に、変な女だと三井はまた首をかしげた。  
 
■  
 
気のせいか落ち込んで見える晴子を引っ張りながら古びたアパートの前に着いた。  
部屋の前で変色したベルを鳴らすとピンポーンと部屋に響く。  
軽快な音とは違いぐったりした宮城が現れた。  
 
「よぉ。」  
「…あぁ…三井さん……と、あれ!?晴子ちゃん?」  
「わぁ〜!お久しぶりです宮城さん!!さっきそこで三井さんと会って…。私もご一緒していいですか?」  
一瞬浮かんだ笑顔も晴子の言葉に消えてしまい、変わりに大きなため息をついた。  
「あ?なんだ?なんかあったのか?」  
ふらりと中に入っていく宮城を眺めながら三井も靴を脱ぎ後に続く。  
三井が手招きすると、心配そうに顔を顰めた晴子もそれに倣った。  
和室に不似合いなベッドに崩れるように座った宮城から低い声が聞こえる。  
「浮気…してたんですよ。…アヤちゃん…。」  
部屋がシンと静まり返る。  
「そんな…そんなことあるわけないじゃないですか。彩子さんが浮気なんて…!」  
いち早く否定したのは晴子。しかし宮城は反応しない。  
「ま、まぁ気ぃ落とすなよ。な?これやるから。」  
酒の入ったビニール袋を押し付け、この場から逃げようとした三井の腕を宮城が掴んだ。  
「男と町歩いてたんですよ!?俺はアヤちゃんと付き合ってくためにヤルのも我慢してきたってのに!!」  
「え?やる??」  
「あ、歩いてただけだろ?浮気とは限らな…。」  
聞き返した晴子の声は消され、声を荒げた宮城が立ち上がり、血走った目で三井ににじり寄る。  
「肩組まれてたんすよ!!??俺と目が合ったらしまったって顔して…!!」  
「わ、わかった。わかったから。」  
三井は一歩間違えれば自身が殴られてしまいそうな危機を感じた。  
 
そのとき…  
ピンポーン とチャイムが響く。  
 
「リョータ?……私。」  
思わぬ助け舟にいそいそと帰り支度をしていた三井はその体制のまま動きを止める。  
晴子にとって久しぶりの彩子の声は、幾分大人びて、少し震えていた。  
2人が見上げると怒りなのか悲しみなのか、複雑な顔をした宮城がじっと玄関を見据えている。  
「ちゃんと話し合えよ。じ…。」  
「ち、ちょっとここ隠れててください!!」  
じゃあなと言いかけた言葉は宮城の焦った小声に遮られ、  
気付いた時には晴子と二人、押入れに押し込まれていた。  
 
「いて。イテテ。何すんだあいつ。平気か?」  
「は、はい。いたぁ…何コレ?」  
置かれていた荷物が少ないおかげで、端に追いやると十分に二人分のスペースが出来た。  
「お、彩子だ。」  
ようやく落ち着いた頃、三井が薄く空いた隙間から覗き小さく言った。  
「ダメですよ三井さん見ちゃ…。」  
 
「今日、町で会ったよね。」  
彩子の静かな声が閑散とした部屋によく通る。  
三井を止めていた晴子までピタリと止まり話に集中した。  
下を見つめたままの宮城が少しうなずく。  
「…うん。」  
「あの人にずっと言い寄られてたの。でも、さっきちゃんと断ってきたから。…黙っててごめん。」  
彩子を見ていた宮城の視線も下がり、拳に力が入る。  
覗いていた三井が晴子を振り返りひそひそと耳打ちした。  
「…なんか拳握り締めてんだけど。殴る気じゃねーよな。そうなったら間入るの俺?俺がするの?」  
「そーですよ!三井さんがんばって!!」  
晴子の都合のいい応援に、三井が恨みがましそうな視線を送る。  
二人の心配をよそに、張り詰めた空気をより一層強める宮城の低い声が響いた。  
「言い寄られてるような奴と肩組んで二人っきりで会うの。」  
「…いつも断ろうとしたら逃げて行くから今日は追いかけてもう構わないでって言ったの。  
 肩組まれたのは…私も驚いた。…ごめん。」  
シンとする部屋。ピクリとも動けない三井と晴子も息を飲んだ。  
「…信じられないよ。」  
ぼそりと呟くと顔を上げた彩子をきつく睨む。  
後ずさった彩子の片腕を掴みながら一歩近寄った。  
もしもの事を考えて、三井が押入れのふすまに手をかける。  
そのただならぬ様子に思わず晴子も三井の上の位置で、ふすまの隙間から二人を伺った。  
「そんなの信じらんねえだろ!?なんであんな奴に触らせんだよ!!!」  
宮城が彩子に大声を出したのは初めてなのだろう。  
彩子はビクリと身体を震わせ悲痛の表情で宮城を見つめる。  
「ごめん。」  
何度も同じことを呟く彩子に宮城の目が見開いた。  
その迫力に彩子と一緒に晴子も目を瞑る。  
三井は身体を起こしふすまを掴んでいた手に力を込めた。  
 
が、次の瞬間、宮城以外の三人は驚きに目を見開いた。  
薄暗い部屋に、宮城が細い肩を引き寄せ乱暴に唇を重ねている。  
 
………ゴクリ。  
 
少しして、晴子は見てはいけないと顔を背けた。  
その下では三井がふすまを突き破らんばかりに集中して二人の様子を見つめている。  
「…ちょっと。」  
呆れて言うと、振り返った三井は水を得た魚のように目を輝かせてうれしそうにしていた。  
「アイツ俺らの存在すっかり忘れてやがる。おもしれー!」  
「止めた方がよくありません?彩子さん嫌ですよ絶対。」  
 
「…んっ…う。」  
声に振り返り隙間を見ると、宮城と彩子の舌が絡まっているのがちらりと見えた。  
逃れようとする頭を押さえ呼吸を止めるように舌を差し込んでいる。  
三井はもとより晴子も生々しい二人のキスを、身体が動かなくなったように見つめた。  
しばらく征服させるかのように続いていたが、  
離れると宮城は泣きそうな顔をしてきつく彩子を抱きしめる。  
「………抱き、てぇ…っ。」  
「…リョータ…。」  
彩子の肩に顔を埋め、搾り出すような掠れた声が狭い部屋に響く。  
一瞬震えた彩子の身体が緊張に固まった。  
 
 
ヤバイな。と呟いた声に晴子はやっと我に返った。  
「あ…ぇ。え?ヤ、ヤバイって何がですか?」  
「あいつら3年も付き合っててまだやってねーんだと。」  
「へ…ぇえ!?」  
「彩子が前の男に騙されたとかなんとか…どーでもいいけど、宮城止まんなくなるぞ。」  
 
どうしたものかと二人が考えている内に、宮城の顔を見つめていた彩子が了承を示すキスを返した。  
「ど、どうしよう三井さん…!ホラホラ服脱ぎだしちゃったじゃない!」  
シャツのボタンを開き、白い肌が見えた部分からそっと唇を落としていく宮城。  
もともと大人びてはいたが、年を経て彩子は女の色香がいや増していた。  
薄暗くなった部屋に差し込む淡い光に白い肌が映える。  
すらりと立つ彩子は、上半身は既にブラジャーをまとうのみになっていた。  
「やべー彩子むっちゃ乳でかい。」  
「なっ!?だめだめだめよぅ!!三井さんなんとかして!!」  
三井は面倒そうに困りきった顔で訴える晴子を見上げた。  
男としてもう少し見ていたい。が、こうも騒がれては気分も乗らないというものだ。  
「…ん…ぁ、あっ…。」  
首筋を舐めていた宮城が谷間辺りに舌を這わせると、身体をくゆらせた彩子から甘い声が漏れる。  
目を瞑り耳も塞いで必死にこの状況から開放されるのを望む晴子が三井の目に映った。  
未だ昔の憧れの男を追い回しているところを見ると、それほど経験豊富には思えない。  
ではこの状況はやはり耐えられるものではないだろう。そう三井は苦々しく理解した。  
(………くっそー。)  
人の生セックスなんかそうそう拝めるものじゃない。  
妙にワクワクしていた気持ちを三井はなんとか押さえた。  
 
「あー、ゴホン。」  
 
これ見よがしな咳をする。  
2人の動きが止まった。  
「えっ!?だ、誰かいるの!!??」  
大慌てに彩子は落ちていた服で肌蹴た前を隠す。  
やっと思い出した宮城も、三井と晴子がいる押入れを見つめた。  
 
「三井さん…!」  
「ったくしょーがねーな。」  
うれしそうな晴子に仏頂面で答えた。  
「え!?え!!??誰!?」  
宮城の視線を追って彩子も押入れを見ている。  
かすかに荒くなった呼吸を繰り返しながら宮城は何も言わない。  
 
「……リョータ?」  
すねる三井とホッとしている晴子は、そんな彩子の声に顔をあげた。  
服を着ようとしていた彩子の手首を宮城が掴んでいる。  
顔を寄せようとする宮城を信じられない思いで彩子が身体を引く。  
ゆらりと顔を上げた宮城は腹を空かせた獣のように凶暴な目をして、  
眉を顰め驚きに目を開く彩子と視線が交じり部屋が静まり返った。  
「な、に…やだ…離して。」  
じっと見つめる宮城の見たことの無い冷たい表情に、彩子の顔が強張っていく。  
空いた方の手で男の身体を離そうとするが、その手もなんなく掴まれ無理矢理口を塞がれた。  
ずっと我慢していた反動なのか宮城に行為をやめる気配はない。  
「!!何考えてるの!?人がいるんでしょう!?」  
ガタガタと暴れる身体を畳みに押し倒す。  
覆い被さり体重をかけ、彩子の自由を奪った。  
首筋に舌を這わせ耳朶を口に含む。  
「ん…っ!い、いい加減にして!!やめなさいリョータ!!」  
抵抗を続ける様子に不快に眉を寄せた宮城は、  
うつ伏せにした彩子の手を掴み、空いた手で自分のベルトを外した。  
「…!?なに、をっ……!!??」  
白い背に回したブラジャー姿の彼女の両手首に、ベルトを巻きつけ拘束する。  
やっと顔だけ振り返った彩子は、言葉なく真っ青な顔で自由のきかない手首を見つめた。  
 
「マニアックすぎねぇ?なぁ?」  
三井が後ろを振り返ると、彩子に負けず劣らず真っ青になった晴子が口を押さえている。  
「ど…どうしよう…彩子さんが…。」  
震える声で呟く晴子に小さくため息をついた。  
「怖いか。その辺座って耳塞いでろ。」  
ぼんやりと三井の言葉を聞きへたりと座り込んだ晴子は、言われたとおりきつく耳を押さえた。  
 
上着を脱いでいく宮城の隣で、肩で身体を支えて何とかベルトを外そうともがいている彩子。  
自然尻は持ち上げられ、宮城と、ついでに三井の目の先で誘うように揺れていた。  
短めのタイトスカートから、摺り寄せるふとももと共にちらちらと下着が覗いている。  
「そうしてると肩痛いでしょ。」  
妙に淡々とした言い方で宮城は彩子の上体を起こし、後ろに座って抱きこむように彼女を支えた。  
「リョ…タお願い…もう…。」  
普段勝気な彩子が背にいる宮城に震える声を出す。  
「………。いいよ。アヤちゃんが嫌ならやめる。」  
首から肩にかけて舌を滑らせながらあっさりと了承した。  
「リョ、リョータ…!……あっ!」  
ホッとして笑顔を浮かべたのもつかの間、彩子は胸から来る刺激にビクリと身体を震わす。  
言葉とは裏腹に宮城の手はブラジャーを引き上げ、頂点をクリクリと摘まんでいた。  
「んぁっ…ゃ、やめてよ!!」  
「だって。イヤじゃないんでしょ?アヤちゃんのココこんなに固くなってるよ。」  
からかうように耳に口付けながら、指を舐めピンと勃つ乳首をぬるぬると交差する。  
ビクビクと跳ねる彩子はうつむき、唇を噛み締めて喘ぎ声が漏れるのを抑えた。  
それをうっとりと眺めながら宮城は足に触れ付け根へと滑らせる。  
「…ふっ!…ぅっ…。」  
「…あれ、こっちも嫌がってないね。アヤちゃん縛られるの好きなの?」  
宮城の笑い声が一層彩子の羞恥心を掻き立てた。  
既に濡れ始めていたそこは軽く指で押すとクチリと小さな水音を立てる。  
「あぁすごい。押すたびにとろとろ出てくる。ほら、見える?」  
下着の上からひだに沿って動かすと、端から溢れた粘液が彩子のふとももを濡らした。  
 
たまらないのは三井だ。  
三井の場所からはほとんど宮城の背しか見えない。が、それが余計想像を掻き立てる。  
既にジーパンの下のものは痛いほどに大きくなっていた。  
(イテテ。くそー抜くか?)  
ちらりと晴子を見る。  
壁に寄りかかり耳を塞いだ状態でうつむいていた。  
さすがに少女の前でやるのは気が引ける。  
が、三井は自分の中で最良の案を思いつき、耳を塞ぐ晴子の腕を揺らした。  
 
「ぇ?…終わりました?」  
「おい。ちょっと舐めて。」  
…………。  
言っている意味が分からず固まる晴子。  
やっと理解すると大げさに身体を逸らして息を吸い込んだので、三井は慌てて彼女の口を押さえた。  
「ばっ!大声出すな!!」  
「な、な、何考えてるんですか!嫌です!ぜーったい、イヤ!!」  
「クソッこのガキ。…じゃあてめー後ろ向いてろ。」  
「?どうして?…あっ。」  
気付いた晴子は慌てて後ろを向く。  
確認して三井がファスナーを開けると、押さえつけられていたモノが出てきた。  
沿わした手でゆっくりと上下にしごき始める。  
自分の世界に入ってしまいそうになっていると、突然勢いよく晴子が振り返った。  
「ちょっおま…!後ろ向いてろって!!」  
舐めろとまで言っておいて、三井は薄く顔を赤くし下半身を隠す。  
晴子は深呼吸すると三井に近付き正座した。  
決心した顔で、隠している三井の両手に自分の手を沿わしゆっくりと外す。  
屹立する肉の棒をしばらく見つめ、ぺロリと先を舐めた。  
小さく呻く三井の声に、真っ赤に染まった顔で見上げてくる。  
「…変ですか?…やり方、わかんなくて。」  
恥ずかしそうな表情と、そのかわいらしい言葉で三井の鼓動が早まる。  
咳払いをして自らを落ち着かせると、晴子の頭を撫でた。  
促されるように晴子はまた舌を這わせる。  
「下からカリまで舐めて…そう…。」  
指示する三井の声が興奮に揺れる。晴子も自身の呼吸が荒くなるのに気付いた。  
「舌、全部出せ。………はっ…お前、すげぇエロい顔。」  
ククっと低く笑う声に晴子はどんどん身体が熱くなっていく。  
加えて遠くから聞こえてくる水音が彩子のものと気付くと、余計に熱が上がっていった。  
三井の指示通り亀頭部分を咥える。唾液が口の端から溢れ、鈴口に舌を沿える。  
「奥まで咥えれるか。」  
応えるように喉に当たるところまで深く咥える。  
途切れ途切れになっていく三井の声に、晴子は動きを早くした。  
限界が近付くと、ぎりぎりの所で腰を引き晴子の顔を離す。  
息も荒くとろりとした目をしている晴子の前で、三井は自身を扱き大量の精を吐き出した。  
 
「あーふすまに付いた。宮城に怒られるかな。」  
肩で息をする三井は、それと似合わずのんきな声を出す。  
無反応の晴子を見ると、初めての射精に驚いた表情で固まっていた。  
苦笑して手招きをすると、我に返った晴子が近付いてくる。  
先ほど宮城がしていたように晴子を前に座らせると後ろから抱きしめた。  
「悪かったな。」  
「い、いえ…。」  
以前抱きしめられたのは忘れてしまうほど前だった。  
髪にかかる男の吐息にくらくらするほど心が乱されていたが、そこで自分の位置にはたと気が付いた。  
ちょうど目の前には宮城と彩子の見える隙間がある。  
「ぇ?…ぁ…やだっ。は、離してください。」  
「なんで?」  
「だ、だって…。」  
言いながらちらりと見ると、うつ伏せになり背に手を縛られたままの彩子が映る。  
ちょうど始めにさせられていた、尻を高く上げて肩で身体を支えている体制。  
違うのは宮城も彩子も既に全裸になっており、  
宮城が彼女のポタポタと液が溢れてくる部分に口を付けていた。  
「見ろよ。宮城の舌がまんこん中ズボズボ入ってくぜ。」  
硬直したように見ていた晴子は耳元で囁く低い声に意識を取り戻した。  
腕の中で逃れようとしてみても、強く抱きしめられている身体はびくともしない。  
 
晴子が視線を逸らせないでいると、はぁと呼吸して口を離した宮城が、  
指を一本そこに差し込みゆっくりと出し入れを始めた。  
彩子の身体が何度も跳ね、くぐもった苦しそうな声が聞こえる。  
晴子の目にはいつかの三井と自分自身に二人が重なって見えた。  
「懐かしいな。」  
ぽつりと呟く声に同じ事を考えているのだと知り、晴子の下半身からじんじんとしたうずきが沸いてくる。  
「お前の中すげぇ熱かったな。こうやって指折って擦ったらビクビク揺れてよ。  
 涎垂れそうなくらい感じた顔して。」  
晴子の目の前で、見せ付けるように三井が指を折って動かしてみせる。  
カタカタと小さく震えながら、赤く頬を染めその動きをじっと見つめる晴子。  
「物欲しげにヒクつかせやがって。どれだけぶち込んでやりたかったかわかんねーぜ。」  
「はっ…ん、ぅっ…。」  
目を閉じた晴子が、うつむいて荒い吐息と共に小さく声を漏らす。  
「なんだぁ?触ってもねぇのにビクビクしてんぞ?」  
もはやはっきりと聞こえるほど晴子の呼吸は荒かった。  
 
反応を楽しみながら三井は腕に力を入れてきゅうっと強く抱きしめる。  
「…三井さ…。」  
耳にキスをしながら、震える身体をゆっくりと撫でる。  
「なぁ。お前……きれいになったな。」  
「み、三井さん!」  
あまりにも混乱する頭がよもや爆発するかもしれないと思った。  
晴子が泣きそうな声で叫ぶと、三井は笑いながらあっさりと身体を離す。  
ホッとした晴子は、しかしそこで自分の異変に驚いた。  
立とうとした足が動かず、それどころか力が入らない。  
呼吸だけはせわしなく落ち着いてくれず、その場に手をついてがくりとうなだれる。  
「はは。素直な女。」  
力の入らない事をいいことに、晴子に膝を付かせ、手際よく四つんばいにさせた。  
「きゃっ…え!?」  
やっとそれに晴子が気付いたのは、三井が下着の上から秘部に触れたときだった。  
「おーぐっしょり濡れてんじゃねーか。もっと早く弄ってやりゃよかったか?」  
上下に軽く擦っただけで抵抗しようとしていたはずの晴子は、力が抜けて肘を付き動けなくなる。  
下着を膝まで下ろすとひだに沿って同じように指を上下に動かした。  
「んぁ!や、やめ…。」  
がくがくと身体が揺れる晴子の顎を掴み、顔を上げさせる。  
彩子の亀裂に限界まで大きく勃ち上がったものをあてがっている宮城が映った。  
「や…そんな…。」  
目を見開く彩子の代弁のような台詞を無意識に晴子が呟く。  
彩子の肩に手をのせ、宮城がじわじわと腰を沈めていく。  
「ぅ…ぅ。」  
顔を畳みに擦り付ける彩子から時折漏れる苦しげな声。  
宮城の動きに合わせて三井も1本の指を晴子の中へと侵入させていく。  
「ふぅう、あぁ…ああっ。」  
水音の交じる部屋。押し込まれる異物感。晴子は混乱の中にいた。  
クラクラとする視界で彩子の内部に埋まっていく肉の棒が  
自らをも犯している錯覚を起こさせる。  
「ん…ああぁっ…!!」  
小さく震えると、晴子の壁は三井の指に吸い付いた。  
待ちわびていた刺激に軽く達した晴子から力が抜けて、崩れるように床に寝転ぶ。  
三井は楽しそうに粘液に光る指を舐めた。  
「あっけねぇなあ。ちったぁ我慢しろよ。」  
仰向けになりビクビクと身体を揺らす晴子に関係なく、  
未だ痙攣を繰り返す中心部に顔を近づけた。  
「さて、まだまだしっかりお返ししないとな。」  
「ひぁ…やぁあっや、だ…あ、あ…やめてぇっ!んあ!!」  
必死に止めようとする言葉を無視し、敏感になりすぎている花芽に舌を絡ませる。  
まだ落ち着いていない分くすぐったく、刺激を逃れようとするが三井はそれを許さない。  
 
上下の唇で挟み軽く引っ張ると、狂ったように晴子が声を上げる。  
溢れ続ける愛液を舌ですくうと、擦り付けるように芽に絡ませて思い切り吸った。  
「く…ぅうっ…ああぁあっっ!!」  
くすぐったいのか快楽なのかわからない感覚。  
しかし身体は達したときと同じく痙攣し、はじけたような余韻が残る。  
ぐったりと身体を横たえることすらさせず、口を離した三井はそこに指を挿入した。  
晴子は泣きそうになりながら腕を離そうとするがお構いなしに行為を続ける。  
「はぁあっ…!や…んあっ…いやぁっ!!!」  
本能的に男を欲しがっているそこはヒクヒクと動いて誘う。  
だが三井に挿入する気はなかった。  
晴子は解放されず執拗に続く攻めに意識が逃げ出してしまっている。  
呼吸するのも苦しげにただ三井の愛撫に身体をよじらせ喘いでいた。  
入り口を広げるように浅く擦っていた指を2本に増やし、一気に奥まで挿し入れる。  
激しく襲ってくる刺激に細身の身体が反り、逃げようとする腰を三井の手がつかんだ。  
動きを早くし、壁を擦るとだんだん声が大きくなっていく。  
溢れる液は粘度を増して指に絡み付き、音を更に卑猥なものへとしていた。  
嫌がる晴子とは逆に、瑞々しい体は三井の指を収縮して飲み込み貪欲に快楽を貪ろうとしている。  
桃色の陰唇は奥に行くほど赤色を濃くし、動かす度に形を変え粘液を分泌しながら絡み付いていた。  
(…ちくしょう…やりてぇ!)  
晴子の甘い声も汗のにじむ身体もあどけない顔も、その全てに三井は酔っていた。  
けれどこれ以上は決して手が出せない三井は、  
憤りをぶつけるように晴子を半ば無理矢理に絶頂へ追い込んでいく。  
「はっ…あ……あぁぁっ!!!」  
掠れた声で何度目かの嬌声をあげ、その余韻にひくひくと痙攣しながらぐったりとした。  
愛液を掻きだすようにゆっくり抜くと、  
服と共にブラジャーを押し上げ、ぬらつく指を乳首にこすりつける。  
乱れる呼吸と淫らな水音が響く部屋の中で彩子が漏らした声が混じった。  
既に限界が近いのだろう。苦しそうな声は大きさを増し、抑えようがなさそうだ。  
声に反応して何気に宮城たちを見た三井は、弱々しく腕を掴む感触に晴子に視線を戻す。  
視線の先の少女は、眉を寄せ、わずかに頭を横に振った。  
「なんだ。もう降参か?」  
荒く呼吸を続ける晴子が一息飲むと、潤んだ目から涙が溢れ出して三井は驚いた。  
「…ゃ……こっち…………みてて…。」  
涙声で訴える言葉に身体が沸騰したような熱を持つ。  
 
―――――目の前の少女は別の男が好きだという。  
 
(なんで…なんでてめーが泣くんだ…!!)  
涙の意味も分からず、ただ熱に突き動かされるように三井は晴子にキスをした。  
薄い柔らかな唇をこじあけ舌を差し込み捉えた女の舌を軽く吸う。  
衝動に呑まれ存分に温かい体温を味わったあと、  
じきに頭の冴えた三井は瞬時にしまったと思いガバリと顔を離した。  
「わ…わりぃ。つい…。」  
キスを拒んだいつかの晴子を思い出す。  
 
今まで三井はどの女とも互いに負担にならない付き合いを心がけてきた。  
いただける部分はいただき、拒む所まで侵しはしない。  
なのに気を抜くと、まだ幼さの残るこの女の全てを無理矢理奪ってしまいたくなる。  
自身の変化に本人が一番驚いて、理解できない己の行動に困惑する。  
が、次の瞬間、三井の思考は全て真っ白にかき消された。  
ふいに頬に添えられた手から引き寄せられ、またも唇が重なったからである。  
働かない頭のまま晴子を見ると、間近で柔らかく微笑んでいる美しい少女。  
「…お前。」  
怪訝に眉を寄せたまま呟く。  
温かな感情が晴子から流れてくるような気がしたが、にわかに信じる事が出来なかった。  
 
「んぁあ!!あ…あっ!リョータぁッッ!!ぃやっ…ぁあっ!!」  
突然大きく喘いだ彩子の声にびくりと三井は身体を起き上がらせた。  
晴子のあまりにも意外な行動に二人がいることを忘れてしまっていた。  
もはや耐えられなくなった彩子は、堰をきったように高い喘ぎ声をあげる。  
それは拒絶の声とは程遠く、突き出した尻はおずおずと動き始めていた。  
「いや?腰動いてるよアヤちゃん。突く度にこんなにやらしい液出して喜んでるじゃない。ほら…ほらっ…!」  
証明するように強く腰を打ち付ける宮城。  
肉棒と共に溢れ出る愛液は彩子のむっちりとしたももを伝い畳に垂れていく。  
「あーあ。ありゃもうすぐ彩子イクな。」  
二人を見ていた三井が晴子に視線を戻すと、未だ晴子は宮城と彩子の絡まる姿から目が離せないでいた。  
荒い呼吸を隠すように抑えた手の下から、物欲しそうな赤い舌が動くのが見える。  
「…おい。人に注意しといてテメーは凝視か。」  
「ぁ、え!?ち、ち、ちが…。」  
「いいさ。勉強してろよ。めったにないぜこんな機会。」  
言いながら手を戻し、ひだに指を沿わせた。  
「はぁっ…うう、ん…っ。」  
「おーおーたっぷり濡らしやがって。今度彩子にばらしてやるよ。  
 『赤木晴子は世話になった先輩たちのセックス見ながらクリトリス腫らして興奮しまくってたぜ』ってな。」  
粘液にまみれた指と指の間に芽を挟み、きゅうっとつまみ上げる。  
「あっ!!はああっ、んぅあっああっ!!」  
痛いほど芽を締め付け擦り上げながら、空いた手で中をかき回す。  
部屋には重なり合う女の卑猥な喘ぎ声で満ちていた。  
「あっリョ…も、ぉ…だめっ…あっあっ、ダメェ!ぁぁあああ!!」  
「ふ、ぅう…ん!あっっ…ああっ。」  
4人が4人とも目の前の相手しか見えなくなっている。  
頭を振り快楽に溺れる晴子を見つめながら三井は長い間熱くくすぶっていた胸の奥の感情をようやく認めた。  
どうやら会わずにいれば消えてしまうような、簡単なものではないらしい。  
「あぁあっ!!あああああああーーーーーっっっ!!!」  
どちらともつかない嬌声をあげ、二人の女の身体はほぼ同時に脱力した。  
 
「す……すみませんでした。」  
呼吸が落ち着かない状態のまま、ぽつりと呟いた宮城の声が情けなく響く。  
三井がひょいと覗いてみると、汗の浮かぶ彩子の身体は脱力しきっていて動かなかった。  
「なんだ?彩子気ぃ失ってんの?」  
「……らしいス。…殺される……。」  
「ごちそーさん。」  
三井のからかうような言い方で慌てて彩子に服を被せる。  
自身ものろのろとあと始末をしながら宮城は盛大にため息をついた。  
「晴子ちゃんも本当…ごめんね。…あぁー!俺もうダンナに顔見せ出来ねぇや…どうしよー!」  
「オイ、そんなんどーでもいいからちょっとティッシュ取ってくれね?」  
………。  
一瞬の沈黙の後、宮城が勢いよく押入れを振り返る。  
「ぇぇえええ!?ちょ、ちょっとぉ!?アンタ何やってんスか!!!」  
「お前に言われたかねんだよ。てかあんだけでけー声で喘いでたら普通気付くだろ。なぁ?」  
話を振られた晴子は服を着ていた手を止め、顔を真っ赤にしてうつむいた。  
「え…マジで?全然わかんなかった…。」  
「わかんなかったって。よかったな…イテッ。」  
ニヤニヤと笑い、顔を覗き込む三井の腕をパシリと叩く。  
なんにせよ彩子が気を失ってくれているのなら都合がいい。  
さっさと準備をして帰ってしまう方がよいと意見が合致した。  
 
■  
 
「あーあ。三井さんといたらいっつもひどい目にあっちゃう。」  
すっかり暗くなった道を口笛を吹きながら歩く能天気な男に、晴子はため息をつきながら呟いた。  
「なんだよその言い方。あんだけアンアンよがっといてよく言うぜ。」  
「しーっ!しぃーっ!!声おっきいですってば!!」  
焦って三井の口を抑えようとする晴子を笑いながら、伸ばされた細い手を避けて掴んだ。  
悔しそうにもがいていた晴子は、にこにことして手を離さない三井に抵抗を止める。  
不思議そうに動きを止めた晴子を見て、その手を握り直し駅へと歩みを進めた。  
見た目には平静に口笛を吹く三井だったが心中気が気ではない。  
一瞬身体を緊張させた晴子だったが、三井の予想に反して怖々と握り返してきた。  
男の心臓がどくんと一際大きな音で鳴る。  
(クソッ。情けねーな。)  
心の中で舌打ちをした。  
 
晴子の考えがよくわからない。  
 
駅に着くと数分後に電車が到着するようだった。  
三井はこの近所のため、乗るのは晴子のみである。  
「どうして最後までしなかったんですか?」  
小さく呟いた声が夜に心地よく通った。  
三井は少し考えると、面倒臭そうな声を出す。  
「やってもよかったっての?冗談じゃねぇよお前は…。」  
流川が好きなんだろ?  
なぜかこの一言が喉から出ない。むしろ死んでも言いたくない。  
イライラの募る頭で見ると、無垢な表情で首をかしげる少女の様子に一層腹が立つ。  
「できるかボケ!お前見てるとなぁ、あのクソ生意気なヤローがちらついてしょーがないんだよ!!!」  
因縁をふっかけるような言い方に、案の定晴子は目を丸くした。  
バツが悪そうに顔を赤くした三井は、正面を向いたまま頭を掻き顔を背ける。  
「気に入ってんだぜ俺は。お前のこと。」  
電車がホームに到着する轟音に消されながらも、確かにそう呟いた。  
 
大きな音を立てる電車が晴子との間を断ち切るように到着する。  
「じゃあな。」  
呆然とする晴子を追いたてるように電車の中へ押し込めた。  
ぼんやりと振り返る彼女の眼前でドアが閉まる。  
途端、我に返ったようにキョロキョロと顔を動かし、席へと移動するのが見えた。  
一生懸命に窓を開けようとする晴子を不思議に眺め、三井はそちらに歩く。  
やっと窓が開くと電車が動き始めた。  
「あのっ!」  
突然身を乗り出した晴子がいつもより大きな声で話し出す。  
「お、おい。それ以上出るな。危ないぞ。」  
だんだんとスピードを上げる電車は二人の距離を離していく。  
 
「私も…私も気に入ってます…!三井さんのこと!!」  
 
恥ずかしげもなく叫ぶ声に呆気にとられる三井。  
対照的に晴子は満足気に頬を赤くし、笑顔でぶんぶんと手を振った。  
 
小さくなる電車。カーブに差し掛かり彼女も見えなくなる。  
三井は頭を抱えたくなった。  
案外自分は女に振り回されるタイプなのではないだろうかと不安になる。  
 
 
(ガラじゃねーぜ。)  
 
小さく息を吐き短髪の頭に触れると、見えなくなった電車に手を振った。  
 

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