艶のある黒髪をそっと手ですくう。
心地よくその流れは指を通った。
「藤井サン。」
名を呼ぶと少女の身体がぴくりと反応する。
桜木はどうして今までこの愛らしい少女の名を覚えきらなかったのか不思議に思った。
奥二重の目がゆっくりと開き真っ直ぐに桜木を捉える。
それだけで男の心臓は早鐘のように動いた。
「桜木く…。」
呟く声は静かに消える。緊張しているのかその声は震えていた。
下着姿の藤井。
白く伸びる腕は胸の前でクロスして居心地悪そうにブラジャーを隠している。
冷たい体温の藤井とは対照的に桜木は燃え上がるように身体中が熱かった。
そっと肩に触れてみる。
またも身体が撥ねるが、抵抗はない。
そっと引き寄せ唇を重ねる。
んっ。と小さく漏れた声に桜木の体温が上昇した。
舌を深く差し入れ女の口内を味わう。
「ふっんん…!」
それは相手を気遣う余裕のない無我夢中の動きで、
息苦しくなった藤井は預けた身体に力を込め遠慮がちに押した。
少ししてそれに気付いた桜木は慌てて身体を離す。
「あぁっす、すみません!大丈夫すか?」
その場に手をついて思い切り息を吸う藤井を見つめながら桜木はおろおろとしている。
「だ、大丈夫…ちょっと…びっくりしただけです。」
男を気遣うように笑顔を浮かべる藤井。
ほっとした桜木は手を伸ばし女の身体を支えた。
「すみません。ちゃんと…ゆっくりします。」
「はい。お願いします。」
本気で心配する桜木をクスリと笑いながら見つめる。
しばらく彼女の深い瞳に捕らわれていたが、
桜木はもう一度軽くキスをすると藤井の胸をブラジャー越しに触れた。
壊れ物のようにゆっくりと力を込める。
小さくうめき、頭を下げる藤井を心配そうに見た。
「い、痛いですか?」
「いえ…もっと…強くして大丈夫です…。」
言われた通り若干力を込めると藤井は唇を噛んだ。
ぴくぴくと撥ねる反応が桜木を昂ぶらせる。
床にゆっくりと藤井の身体を倒すと、背に手を回し胸を覆う布を外す。
あらわになった柔らかな乳房は藤井が荒く呼吸をする度に上下して、男を誘っているようだった。
桃色の頂点に優しく触れる。
明らかに激しく藤井が反応した。
乳輪を指でなぞると大きく口を開けた藤井が息苦しそうに呼吸する。
その様子に釘付けになりながら、硬くなりはじめたそこを摘まんだ。
「あっ…!!」
「…痛かったら言ってください。」
頭を小さく横に振る藤井。ふわりと香る甘い髪が呼吸と共に揺れる。
「大丈夫ですか?」
「ん…あ…わかんないです…あ、の…ジンジン、します…っ。」
耐えるように唇を噛む様が余計男に熱をもたせた。
大きな手を藤井の下半身へと移動させる。
「ぇ…っきゃっ!?」
ぬるりと指が滑った。
「あ…すごい、濡れてます。すごく…。」
「ぃや…っ言わないで…。」
顔を両手で覆い泣きそうな声を出す。
自身の心臓の音が聴覚を占め、女の声を意識の外側に聞きながら布の端から指を侵入させた。
「きゃっ!や、まっ…んあっ、ああ…!」
「どんどん…溢れてきます。」
「やだぁっ動かさないでェっ!…あぁっ!」
温かな中心部にゆっくりと指を挿し入れる。
藤井の身体に力が入ったのがわかった。
「痛いすか?」
「わ、わかりません…んんっだけど変っ…です。」
柔らかく絡みつく肉の壁を傷つけないようにゆっくりと折り曲げざらつく部分を少し擦る。
「あぁっそれいやっぅんんっあっダメぇ!」
「でも、出てくる量…半端じゃないですよ。」
「あ…ぁあ!やめてっ!も…それされたらっ…っ!!」
真っ赤にそまった頬で頭を振る様に、我慢できなくなってきた。
藤井の中から指を抜くと自身をそこにあてがう。
「あ…さ…桜木くん…。」
不安げに見る目がたまらなく愛おしく感じた。
「大丈夫です。ずっと、大事にします。」
ぐっと腰を押し込める。
「あっさ、さくら…。」
甘く聞こえる声は瞼に差し込む光にかき消された。
「………ヌあ、……お??」
目を開けると更に眩しい光が入ってくる。
ぼりぼりと赤い髪を掻きながら何度か瞬きし、大きな身体を起き上がらせる。
「な…ゆ………夢っ!?」
生々しい肌の感触を思い出し火が出そうなほど頬を赤くする。
「ふぬーーーーー!!」
振り切るようにボロいアパートの柱を殴ってみても焼きついた藤井の裸体が離れてくれなかった。
その後、藤井の名前を完璧に覚え
しばらくの間、か細い少女を避け続けたのは言うまでもない。