「じゃあ、賭けようか。」  
堂々と自信溢れる声。  
「…君はきっと、俺じゃない男を好きになる。」  
確信を持った笑顔で言う男に彩子はおかしそうに笑った。  
「牧さんも間違える事ってあるんですね。」  
楽しそうに微笑む女の無邪気な横顔は、まだ可愛らしい幼さを残していた。  
 
 
 
 
大学の体育館に心地よいバッシュの音が響いている。  
休憩の号令がかかると、牧はペットボトルの水を喉に流し込んだ。  
ぴちぴちの一年生である牧。だが先輩達の中でも浮いて、  
スーツの方が似合うような威厳に溢れている。  
 
「おい。あれ誰かの女?」  
「超かわええ!!つーか美人!?」  
ざわつく男共は皆一様に鼻息荒く、ちらちらと同じ方向を眺めている。  
声に気付いた牧がその視線を追うと、なるほど人目を惹く美人が入り口で姿勢よく立っていた。  
確認するだけで気が治まった牧は先輩達の若さをうらやみながら静かに屈伸を始める。  
……と  
「…!あ。」  
ぼそりと呟いた牧は遠巻きに眺める男達の前に出て、入り口の女の元へずんずんと歩いていった。  
 
彩子は心臓が止まりそうだった。勢い余ってストーカー並の行動力でここまで来てしまった。  
近付いてくる牧はさすが高校生の頃から帝王と呼ばれている貫禄で、逃げ出したい衝動にかられる。  
ぴたりと彩子の前で止まる牧。  
「こ、こんにちは。」  
「やぁ。その、間違いだったら悪いんだが…君確か、湘北高校のマネージャーじゃないかな?」  
一瞬懐かしの教師にでも会ったような感覚に襲われたが、  
それよりも覚えていてくれたことがとてもうれしく弾んだ声を出す。  
「そ、そうです!あの…お久しぶりです。」  
「あぁやっぱりそうか、懐かしいな。見学?この大学に入るのかい?」  
「はい!(あなたがいるなら☆)そうします!」  
「ははは。じゃあゆっくり見て行くといい。」  
背を向けて体育館の中へ戻ろうとする牧。  
ここで言わないとここまで来た意味がない。  
そう決心すると震える足を押さえ、彩子は思い切って口を開いた。  
「あ、あのっ!私牧さんに会いに来たんです!終わったら…どこかで会ってくれますか?」  
必死な形相で返事を待つ彩子の姿にきょとんとした後、牧はにこりと笑った。  
「いいよ。じゃあまた後で。」  
 
 
 
 
彩子の計画通り丁度いい時間だったので夕食をとることになった。  
そこは既に調査済みの居食屋。  
ガヤガヤとうるさい店ではなく、大人の雰囲気が溢れる落ち着く場所だった。  
「よく知ってたなこんな店。」  
「はい。調べたん……えぇっと雑誌に載っててたまたま。」  
苦しく言い訳をしながらも長年想い続けた牧との夕食を心底楽んでいる。  
憧れのカップル席に牧と座り、肩が触れるすぐ側に牧がいるのだ。  
 
(堂々と二人で会える立場になりたい。)  
 
そうずっと考えている。  
付き合わずとも一言『また会ってください。』と言えばいいものの、  
高校生の彩子には付き合うかこれで終わりかとしか考えが及ばなかった。  
ほとんど話した事もないこの状態で告白したとしてもフラれることは目に見えている。  
追い込まれた彩子は極論の決心をしていた。  
 
「お酒…飲みませんか?」  
幾分かトーンの低い声を出して男を見ると、ふっと笑う声がする。  
「いいけど、君は未成年だからダメだよ。」  
「牧さんだってそうでしょう?」  
そう笑う二人は欲目に見ても未成年とは思えなかった。  
彩子は今日の為に精一杯大人びた格好をしているし、牧は言うまでもない。  
 
 
恐ろしいほど似合う焼酎を口に運ぶ牧を見つめ、頼んだカクテルを一気に飲み干す。  
「ずいぶんマネージャーは大人っぽいんだな。」  
彩子の様子を見ながら笑う牧は背伸びをしていることをからかっているようで、  
少しムッとして気恥ずかしくなった。  
咳払いをすると高鳴る心臓を落ち着かせる。  
 
決心をして、長い指を男の足にそっと這わす。  
牧はそれに全く反応せず、持った焼酎を一口飲むとゆったりとした笑顔で彩子と視線を絡ませた。  
 
「…今日、泊まらせてくれませんか?」  
黙ったまま彩子を見る。彼女のすることなど子供の悪戯と大差ないとばかりの笑顔。  
対抗するように彩子も艶やかな笑顔を返す。  
照明が暗い店を選んでつくづく正解だったと思った。  
余裕の表情を作りながら自身の火照る顔に気付いていたからだ。  
 
傍目には、自信溢れる様子で言い寄る彩子が経験豊富の遊びなれた女に見えるだろう。  
彩子自身そう見えるように仕向け、一世一代の演技だと努力していた。  
「抱いて欲しいんです。」  
足に置いた手を付け根の方へ動かし、するりとももを撫でる。  
震えそうな身体をなんとか押し留めながら牧を見つめる。  
しばらく女の手を見ていた牧が変わらない笑顔で彩子を見た。  
「…部屋来るか?」  
「っ………………は…はい。」  
思ったより簡単に進んだ希望通りの展開。  
だがいざとなったら不安が身体を占める。  
一瞬の返事の間に気付いたのか、牧は楽しそうに残った焼酎を飲み干した。  
「いい度胸だ。」  
立ち上がりながら、子供を褒めるように彩子の頭にポンと触れると出口へ向かう。  
押し寄せる様々な不安を抱えながら大きな背に続いた。  
 
 
 
 
牧の部屋は一人暮らしには充分なほど広かった。  
むしろ大学生が住むような部屋ではない。  
ここに来たくて仕方がなかったはずの彩子はうつむいたまま部屋の入り口で  
ぴくりとも動かずに立っている。  
綺麗に整頓されている部屋で上着を脱ぎながら、女の様子を横目に見てにこりと笑う。  
「なんだ。急に大人しくなったな。」  
静かな部屋に響く声にびくりと身体を震わせて彩子は男を見た。  
ベッドの脇で手招きをする牧にぎくしゃくと近付く。  
 
「ぁっ!!」  
突然手首を掴まれ器用にベッドに押し倒された。  
横たわる彩子を見下ろしながら自分のシャツのボタンを2つ3つ外していく。  
「ま、待って牧さ…!」  
言葉を遮るように覆いかぶさり、首に唇を這わして舌で筋を舐め上げた。  
見知らぬ行為は手も足も舌も淫らに動き、思った以上の生々しさに言いえぬ恐怖が沸き上がってくる。  
(大丈夫…大丈夫!)  
なんとか自分に言い聞かし彩子はぎゅうと目を閉じた。  
男はそれを上目に確認して浅黒い大きな手の平で服の上から胸を掴む。  
「!!はっ…ゃ…………ぃや!!」  
(やっぱり出来ない!!)  
耐え切れず思い切り男を突き飛ばすと大きな身体があっけなく離れた。  
「ご、ごめんなさい…!」  
ベッドから起き上がると震えてうまく動かない足を引きずり慌てて部屋のドアへと近付く。  
ノブに手をかけ今にも開けようとした時、はたと気付いた彩子はそこで立ち止まった。  
振り返ると、追いかけるでもなく外したボタンを元に戻している牧が目に入る。  
逃げ帰ると思っていた彩子がじっとこちらを見ていることに気付き、あれ?という顔をした。  
少し首をかしげて苦笑すると穏やかな声を出す。  
「…続き、やるか?」  
やりたくないんだろう?  
牧の途切れた言葉はそう続く響きを持っている。  
ベッドに座ったまま前かがみになって彩子を見上げた。  
何もかも見透かされ、手の内で転がされた感覚に白い頬は一瞬で赤くなる。  
「わざと怖がらせたんですね…。」  
「ははは。だが抱くとしてもやる事はさっきと大差ないぞ。」  
(た、確かに。)  
ぐっと口ごもる。  
「実際今のはまだ脅そうともしてない。…あれだけで逃げるようなら何もできないな。」  
だから帰れと毅然とした目が言っている。  
その目が彩子の感情を沸き立たせた。  
違う。そんな簡単な決心で牧の大学まで行ったんじゃない。牧の部屋にまで来たんじゃない。  
この決心が牧に伝わっていない上に、全くの子供扱いであること。  
なにより揺ぎ無いと思っていた意思が少し触れられただけで  
すぐに揺らいでしまった自分自身にも腹が立った。  
 
 
「もう、逃げません。」  
牧を真正面から見る。  
「…へぇ。」  
近付いてくる彩子をからかうように笑いながら目で追う。  
手を伸ばせば触れるところまでくると、女はピタリと止まり宙を睨んだ。  
(……よし!!)  
決心してキッと牧を見ると、初めて牧が驚いたような顔をして少し身体を引く。  
「ぉおお!?」  
じいと呼ばれる男は驚く時ももれなくおっさんらしい声を出す。  
突然後ろに押し倒された牧は軽い衝撃の後目を開けると、  
鬼の形相で上に覆いかぶさっている彩子がいた。  
「私本気ですから…っ!」  
真っ赤になって睨みつけながらそう宣言するとぶつかるように唇を重ねてきた。  
驚いた牧はとりあえず首に巻きつく腕が息苦しくゆっくり離す。  
(どうしたものか。)  
唇が重なっているにも関わらず困り果ててぼんやりと考えた。  
ふと見るとこれでもかというほど目を瞑って硬直する少女がいる。  
見かけは大人びているがどう見ても未経験の少女。  
不安を押し殺してまで求めてくる姿に嫌な気を抱くはずもない。  
震える唇を必死で押し付けてくる彩子がひどく健気に感じ、温かい感情が奥から沸いて来た。  
(やれやれ。)  
彩子を抱き込むとそのまま体制を変え、大きな体で覆いかぶさる。  
触れていた唇を離すと眉を下げて真っ赤に頬を染めている。  
「女に押し倒されたのは初めてだ。」  
おかしそうに言うと彩子の唇を咥えるように口に含んだ。  
上唇を咥え舌でなぞり、次は下唇…とその動きを繰り返す。  
びくりと震えた肩を大きな手の平で包み、優しく撫でた。  
空いた手で髪を撫で、ただ彩子から恐怖が消えるように触れる。  
(…あったかい…。)  
触れる唇から、指先から、牧の高めの体温が流れてくるようにじんわりと温かくなる。  
凍った氷が溶けるように身体からだらりと力が抜けると、いつの間にか震えも止まっていた。  
彩子の身体が温かくなってきたのを感じると、牧は少し舌を入れて歯列をなぞる。  
ふっと息を吐く女の口が、無意識に舌を求め開いたのを見逃さなかった。  
「んっ…んぅ…。」  
角度を変え深く差し込まれた舌に、ため息のような声を出すとその動きに合わせる。  
身体のラインに沿って動く手も、摺り寄るように動く足も何も彼女は感じなかった。  
ただ、口内による刺激に全身が支配される。  
(…わ…な…にこれ…。)  
ただ這い回るようなキスではない。  
確実に、動く度に彩子の意識を遠く霞がからせていく。  
 
 
ようやく唇を離すと、頬を染めとろりと目を潤ませている彩子。口の端から唾液がつぅと伝った。  
「かわいいな君は。」  
指で唾液を拭い、笑いながら呟く。  
浅く呼吸を繰り返す彩子の上の服を脱がしブラジャーを外すと、張りのある胸が現れた。  
舌を硬くして突起の周りをなぞる。  
数回繰り返し、待ちわびるように硬く主張する乳首を口に含んだ。  
びくびくと反応する様を見つめながら彩子の足の間に自分の足を割り込ませ、  
中心部を膝で擦り上げる。  
「ふっぅうっ…ん!」  
「は…すごい濡れようだ。」  
膝に感じたぬるりとする感触に含み笑いで言う。  
触れると下着の上からでも分かるくらいに次から次へと溢れてきた。  
「初めてでこれほど感じるとは…。湘北のマネージャーは相当にいやらしいな。」  
かぁっと赤くなり目を瞑る彩子。  
下着の脇から指を入れると粘液を絡ませ上下にゆっくりと刺激する。  
「あっあっや、だめぇ…!ま、牧さん…ぁっ!!」  
「だめ?ここは喜んでいるようだが…。」  
牧の腕を掴み止めようとする女に、お仕置きとばかりぐりっと花芽を親指で押した。  
途端彩子の手に力が篭る。  
「っ!!はっ。ぁ…あ…ああああああああああっ!!!」  
突然身体を収縮させびくっびくっと何度か跳ねる身体に驚き、牧は女を見た。  
あれだけの刺激で軽く達してしまったらしい。  
足を閉じ、白い体が悩ましげに痙攣を繰り返す。  
「まいったな…。」  
(……素直すぎる…。)  
息も絶え絶えに微かに意識を取り戻したような彩子がうつろな目を男に向け小さな声を出した。  
「…あ……い、今の…?」  
なに?と続く言葉。  
あまりに純真な言葉に、牧は自分の身体が今までに経験がないほど熱を持ったのがわかった。  
達するという事も知らない少女という事を忘れてしまっていた。  
艶かしい体と声がつい男にそう勘違いさせてしまう。  
記憶に残る彩子は健康的な美人という印象で、  
思い出すのは元気に部員に檄を飛ばす溌剌とした姿だというのに。  
色香漂う見事な身体を持ちながら、与えた快楽を抵抗なく受け入れ  
信頼しきった様子で全てを委ねてくる幼い子供のような部分。  
かつて出会った事のない相反する部分を持ったアンバランスな女が  
牧をこれ以上ないほど混乱させていた。  
女の興奮に今にも呑まれ、赴くまま力任せに抱いてしまいそうだった。  
 
眉を寄せ一瞬苦い顔をしたあと苦笑すると彩子の顔に着く髪を後ろに流す。  
わずかに残った女の服を脱がし、自分の服も荒っぽく脱ぎ捨てた。  
 
 
筋肉質の男らしい身体を定まらない意識の中見る。  
どれほどこの腕に抱かれる事を夢見たか知れない。  
この時間が終わればもう二度と牧と会うことはないんだとぼんやりする頭で思った。  
白い腕が浅黒い肌に巻きつき、自分の身体に引き寄せる。  
何も言わず牧もそれに答え柔らかい身体を抱きしめた。  
少し身体を離すとごつい手を足に這わして付け根へと移動する。  
「ヒクついてんのわかるか?物欲しそうに指に吸い付いてきやがる。」  
低く笑うと足を大きく開かせ情欲に染まる目で彩子の花芯を見つめた。  
充分に濡れそぼったそこは収縮を繰り返し、本能的に男を求めている。  
牧の視線に耐えられず、彩子は腰を動かしその目から逃れようとした。  
「あ…は…。ゃだ…。」  
「?…恥ずかしいのか?」  
「あ、当たり前です。…こんな…こんなとこ…。」  
顔を逸らし困った表情をしながらも、いつもの勝気な彩子が見えた気がして牧は少し笑った。  
「こんなに俺で感じてくれるのは…俺はうれしい。」  
呟くと誘うように色づくひだに舌を寄せて形に沿って上へ舐め上げる。  
逃げようとする彩子の足をきっちりと掴んで口を大きく開き舌を奥へ差し入れた。  
そのまま口に花芽を含み舌で刺激しながらわざと音を立てて思い切り吸う。  
「あああああっあっ…ふぅ…んぁっ、すご…きもちい…い、あっ。」  
喘ぐ声を聞きながら牧はこの女が他の男に抱かれることを考えていた。  
 
今日彩子は牧に抱かれようとして訪ねてきた。それは分かる。  
だが神奈川No.1と言われる男に興味本位で群がる女達とは違う。何より彩子は処女だ。  
(好かれてるのか?…いや、だったらそう言うだろう。)  
気持ちを伝える事を躊躇した事などない牧はそう考えている。  
だから余計に今日ここに来た真の目的がわからない。  
ただ、恐らく誰も見たことがないだろう彩子の可愛らしい声や乱れる様を  
この先別の男が見ることになるのは、かなり不愉快だった。  
ならばせめて忘れられない程の快楽を植え付け、記憶の端に留まる事を願う。  
(まだいもしない男に嫉妬とは…。)  
自嘲気味に笑うと唇を離し、脈打つ肉の棒を彩子の中心に押し当てた。  
「挿れるぞ。」  
彩子はようやく働いた頭でその言葉を理解すると唇を噛んでこくりと頷いた。  
 
すべりをよくする為粘液を己に擦り付ける。  
その度に花芽を刺激され、彩子は声を抑えてぴくぴくと反応していた。  
「本当に敏感だな。」  
くすっと笑う牧に、からかわないで下さいと赤い顔を背けたまま言う。  
牧はまた微笑んで、かわいくて仕方がないと言うようにふてくされる彩子の髪を撫で、  
ゆっくりと液に光るそれを奥へ挿れ始めた。  
 
 
きゅうっとシーツを握り締める彩子。  
突然の侵入を拒むように肉壁が牧を圧迫する。  
顔をしかめながらも男は連なる壁を押し広げ、止まることなく腰を進めた。  
せめて力が抜けるようにと、女の噛み締めた唇を舐めて開き舌を絡め取る。  
少し力が抜けたのを感じ一気に奥まで突き上げた。  
苦痛に顔を歪めて叫んだ彩子の声は牧の口に消えていく。  
ぺろりと女の唇を舐めるのを終わりに牧の顔が離れた。  
「……………平気か?」  
「少しだけ…ま、待ってください。このまま…。」  
「ああ。」  
涙でにじむ瞼にキスをして、頬、首筋と唇を這わす。  
髪を撫でると、彩子の潤んだ目を見た。  
「よく我慢したな。」  
微笑む牧は変わらず子供に接するような口調だったが、  
その掠れた低い声に今はこれ以上ないほど安心する。  
「もう…平気です。」  
小さくそう告げると軽くキスをした男がゆっくりと動き始めた。  
淫猥な響きをもつ水音が部屋に響く。  
眉を寄せ痛みに耐える顔も、すばらしく艶やかで目を奪われる。  
「んん!!あっはぁ…いっ…っ!!あぁ…っ!?牧さんっ!そこぃ…ぃやっ…!」  
頭を振りびくりと跳ねる。  
「?…ここか?」  
「あぁ!!だめっだめえ…!!いやそこっ!やだぁっ…!」  
一際甘い声できつく腕を握り締めてきた。  
数回そこを強く突き上げ、浅く深くざらりとした感触の部分を擦り付ける。  
「あ…なんか、…ほんとダメ…っぁぁっああああっ!!」  
「……っ!く…そっ!」  
苦い顔をすると我慢できないと言ったように腰の動きを早め子宮口に自身を打ち付ける。  
その動きに合わせて彩子もどんどん上り詰めていく。  
が、先ほど達した時とはまるで段違いの感覚に、言い知れぬ恐怖にかられた。  
 
(…なんか…くるっ!!)  
シーツを握っていた手に一層力を込めると、牧の力強い手がぎゅっと上から握り締めてきた。  
「し、心配する…な。ちゃん と捕まえてて…やる、から…っ!」  
途切れ途切れの低く艶のある声と、握る手の力強さに不思議なほどするりと不安が抜けた。  
大きな手を握り返し全身を占める感覚に身体を明け渡す。  
「は…ぁっ!ま、ま……き…さ…っっっ!!」  
髪を振り乱し、反り返った白い喉の上で唇が微かに動く。  
声にならずに消えた言葉。  
小さく開いた口は  好 き  と動いた気がした。  
 
 
それはあまりにも望み通りの都合のよい言葉だったので  
 
高まる感情と共に、意識の奥底へと押しやった。  
 
 
 
 
規則的なリズムを刻む牧の心臓の音が心地いい。  
温かな胸に頬を寄せていた彩子は遠慮がちにそっと広い胸板に手を添えてみた。  
気付いた牧は少し笑うと彩子の髪を撫で身体を引き寄せる。  
男の行動に彩子はうれしそうに微笑むと、  
決心したように大量に息を吸って上半身をがばりと起こした。  
「…私、牧さんが好きです。…い、一度でも抱いてもらえたら諦めがつくと思ったけど  
 …ダメみたいです…。」  
先ほどの告白は間違いではなかったのだと牧は表情に出さずともうれしかった。  
だが、若い感情は移ろいやすい事もよく知っている分素直に喜べない。  
「彩子くん…。」  
「彩子って呼んでください。(まじで)」  
「…距離もあるのに付き合って拘束する気はない。何しろ君はまだ若いんだ。」  
「そんなっ(1つしか違いません)!私牧さん以外の人はイヤなんです!!」  
必死に訴える彩子。  
ここで説き伏せようとしてもきっと頑固らしい彼女を説得できないだろう。  
 
真剣な瞳を見ると諦めたように息を吐き、女を見て笑う。  
「わかった。…じゃあ来年。一緒の大学に来ることが出来て、  
 その時も君の気持ちが今と変わりなかったなら付き合おう。」  
「ほ…本当ですか…!?」  
ぱぁっと赤くなる彩子。可愛らしい笑顔で口に手を当て喜びに涙を溜めている。  
「だけど合格まで会いに来たらだめだぞ。」  
「え…えぇ〜!?そんなぁ。」  
「受験勉強でもしてろ。結構難しいんだぞウチの大学も。  
 それに会わないって言ってもあと半年足らずじゃないか。」  
不機嫌そうに抗議を続ける彩子の声を聞き流して鼻歌を歌いながら服を着る牧。  
「もぉ〜会わないなんて…そんなの絶対意味ないことなのに。」  
それを聞くと牧はにこりと笑った。  
意味のないことではない。その間にいい男が来たらそっちにいけるじゃないか。  
今までの女同様、バスケしか見られない自分をそのうちに嫌になってくるはずだ。  
 
「じゃあ、賭けようか…。」  
 
穏やかな声はやはり心地よく、改めて彩子は自分の感情を確信する。  
あと半年もこの声が聞けなくなるんだ。  
 
そう思うと急に寂しさが募り、一言も逃さず記憶に刻もうとじっと牧を見つめた。  
 
 
 
 
 
4月―――。  
 
大学の校舎を颯爽と歩く女がいた。  
長くウェーブのかかった髪はそのままで、薄く化粧をしているからか幾分大人っぽくみえる。  
バッシュが床と擦れる音がする体育館を目の前にして、高鳴る胸を抑え側にある満開の桜を見上げた。  
深く呼吸をすると体育館をきりっと見つめて一直線に歩き出す。  
 
きっと彩子を見ると牧は驚いた顔をするだろう。  
そして優しい笑顔を浮かべてゆったり近付いてくるのだ。  
 
余裕に満ちる愛おしい男に、彩子がずっと言いたかった一言が今日言える。  
 
 
 
(ほらね牧さん。やっぱり賭けは私の勝ち―――。)  
 
 

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