行動に責任を持つのが大人の務めなのかもしれない。  
だがやはりアルコールは飲みすぎるとただの毒水で…。  
呑まれれば限りなく責任の取りたくない行動をしてしまうことが多い。  
「あ…いったぁ…。」  
「平気ですか?」  
頭を抑えていた手を外し、水を差し出す男を見て愕然とする。  
服を着たばかりなのかシャツは少しはだけていつも見るときよりラフな格好だ。  
「なっ堂本監督!?な、なんで。」  
「覚えていらっしゃらないようで。」  
コーヒーを飲みながらちょんと指で示された自分の姿に目玉が出そうになる。  
布団から出た上半身は布一枚も羽織ってない裸体。  
慌てて下半身に集まるシーツをかき集め身体に捲くと堂本さんがおかしそうに笑う。  
「つまり、あなたと…?」  
問いにただ笑顔を返され気が遠くなった。  
やばいやばいやばーい!取材対象の人とやっちゃうなんて!!  
「わ、私っ…すみません…こんな…。」  
「女性に謝られるとはおかしな話です。さぁ水を。気分がよくなります。」  
促されるままに水を受け取り一口飲む。  
堂本さんを見ながら必死で昨夜の事を思い出そうとするけど全く思い出せない。  
いや落ち着いて。そうそうインターハイで広島に来たんだ。  
それで昨日居酒屋でたまたま会った堂本さんと飲むことになって…。  
「さて、そろそろ行きます。」  
「え?ど、どこに?」  
「全国大会真っ只中です。あいつらももう練習しているでしょう。」  
「あ、あ、そうですね。」  
カップを置くとにこりと笑って立ち上がり、ドアノブに手をかけてこちらを振り返った。  
「ごゆっくり…と言いたいところですが、相田さんお仕事は?」  
「え?あっやばっ!こんな時間!?」  
「鍵はフロントに預けていてください。」  
低く抑えた笑い声が閉じたドアの向こうに続く。  
慌てて下着を探して身に着けながらぐるぐるとまとまらない考えが頭を渦巻いた。  
(起きたらホテルとかありない。い、いえ。今は仕事の事考えなきゃ。  
 今日は陵南行って山王に行って……てえぇ!?監督とどんな顔して会えばいいの?  
 もう!全く覚えてないなんて最低!!)  
どうしても昨夜に繋がる考えをもてあまし、とりあえず部屋を出る。  
ちゃんとしたホテルでよかった…ラブホ出勤は痛いもの。  
きっと広島にいる間ここに泊まってるんだろうな。  
 
外に出るとため息をついた。爽やかな日差しが目に痛い。  
まずは陵南か…。彦一に会いづらいな。すみませんこんな姉ちゃんで。  
 
思ったほど罪悪感なく淡々と彦一と話せた。  
まぁ当たり前か。何にも覚えてないんだしね。  
堂本さんも据え膳食わぬはってヤツだったんだろうし。  
うん。気にしないのが一番なんだろう。  
 
「どうしたんですか相田さん。」  
キャッと喉まで出かかった声を抑え見ると山王の河田くん(兄)が立っていた。  
練習場の入り口でブツブツ独り言いってりゃこんな顔もするよねってくらい不審な顔で見てる。  
タオルを持ってるとこを見ると、控え室で休憩でもしていたんだろう。  
「あ、あーこんにちは。ちょっとインタビューいいかな。」  
練習場へ歩く河田くんについて2、3質問し、  
最後に一番聞きたかったことをそろりと聞いてみた。  
「堂本さんって優れた名監督として注目度が高いんだけど、  
 君から見てどうかな?普段はどんな人なの?」  
おいおい私…かなり意識してるよ。  
河田くんは立ち止まりしばらく考えて声を出した。  
「そうですね。僕らの為に色々考えて刺激のある練習をしてくれますけど…  
 普段は変な人です。」  
「えぇっ?」  
「なんだと河田。」  
急に後ろから聞こえた声で河田くんと私は同時にびくりと震えた。  
「ほら休憩終わりだ。早くコート行け。」  
不機嫌そうな堂本さんの声に従い慌ててコートに走る河田くん。私もついて行きたい。  
静まり返る廊下。  
意識は背に立つ堂本さんにあるものの、コートを凝視する私に同じ声が響く。  
「私の人柄か気になりますか?」  
冷や汗がにじむ。  
『まぁ堂本さんったら。ただの取材ですよ。』って言えない。  
身体を硬直させてただ顔が赤くなる。  
ふっと暗くなる視界に顔を上げると、屈んだ堂本さんの顔が横にあった。  
「そんな顔をしていたら生徒にばれますよ。」  
楽しむように微笑みぼそりと言うとコートに入っていく。  
バクバクバクバクとうるさくなり口から出そうな心臓。  
生まれて初めて腰が抜けてその場にへたへたと座り込む。  
 
この時から耳元で聞いた声が頭から離れなくなった。  
 
 
数日後の8月3日。午後10時。  
仕事が終わり、一度だけ来たホテルを走る。  
 
山王が負けた。ありえないことだった。  
瞼の裏にコートから去る堂本さんの顔が焼きついている。  
悲しみに揺らぐことなく真っ直ぐに前を見て…その立派な様子が一層辛かった。  
 
「…ぁ……いた…。」  
廊下の長いすに座って考え込むように指を組み、じっとマットを見つめる彼に近付く。  
一度顔を上げて私を見ると、また視線を下に戻した。  
心配になってここまで来たけど、なんと声をかけていいのか分からず静かに隣に座る。  
ふぅ。と微かに聞こえる小さなため息。  
「…彼等は素晴らしかった。精神力も体力も充分でした。…悔いはありません。」  
しばらくしてそう呟いた。  
そうは言うけどがっくりとうなだれる様はどこから見ても悔いが残ってるような…。  
でも選手の前ではこんな姿見せられなかったんだろうな、なんて思うとかわいそうになった。  
そっと肩に触れるとがっしりした身体がピクリと揺れる。  
「あれほどの試合を見ることが出来て感動しています。本当に素晴らしい試合でした。  
 また全国で堂本監督率いる山王工業と会えるのを、楽しみにしています。」  
少し顔を上げる堂本さんと目があった。  
つまらない言葉しか言えない私は早々にこの場を去った方がいいのかもしれない。  
精一杯にこやかに笑うと立ち上がった。  
「では、いずれまた。」  
足を踏み出した瞬間、手首を掴まれる。  
早くなり始めた鼓動を抑え振り返ると、やはり落ち込んだ目をした彼が私を見上げている。  
「…帰るの?」  
いつも毅然として自信に溢れている堂本さんが掠れた声で呟いた。  
や、やめてー!こういうの弱いんだってば!!  
「でも…飛行機の時間が…。」  
うそだ。飛行機なんて取ってない。  
惹かれているのに逃げたくなる。  
だって私は神奈川に、彼は秋田に帰るんだもの。  
その場だけの恋愛なんて私には向いていないのよ。  
立ち上がった堂本さんと目線の高さが逆転する。  
逞しい腕で絡め取られると私の頭は簡単に真っ白になった。  
「いてください。」  
頭上の静かな声に怖れも不安もなくなり、先のこともどうでもよくなる。  
異常にドキドキするのに心地よく感じるのはどうしてなんだろう。  
 
ゆっくりと首を縦に振る。  
ほっとするように、大きな手が私の頭を撫でた。  
 
グラスに注がれたワインを口に含む。  
赤ワインは苦手だけど、今日は幸い味どころではなかった。  
部屋の小さなテーブルに向かい合って座っている。  
普通のテーブルに比べてかなり近い距離。  
なんでこの人の前だとこんな緊張するんだろう。  
部屋の淡いライトでも私の頬が赤いのは目立つらしい。  
「まだ赤いんですね。ずっとそのままのつもりですか?」  
「えっ?だ、だって仕方ないです!私の意思じゃどうにも…!」  
「貧血になりませんかそれ。」  
笑う堂本さんは、その言葉が余計に熱を持たすと分かってて言ってるようだった。  
悔しくてワインをぐいと飲み干す。  
グラスを置く手に、堂本さんの手が添えられた。  
椅子から立ち上がった彼は私の頬に手を添えて顔を寄せた。  
重なる唇からふわりと同じワインの香りがする。  
「今日はもう飲ませません。」  
「……は…。」  
浅く呼吸をすると柔らかな舌が入ってきた。  
無意識に堂本さんの顔に両手を添えて温かな感触を味わう。  
流れ込む唾液を喉に下しもっと欲しくて口を開いた。  
そのままの動きで堂本さんが間にあるテーブルを動かし私の前に跪く。  
離れた唇は肌に沿って首元に落ちた。  
「この間のこと、思い出しました?」  
「そ…それが……恥ずかしながら何も…。」  
喉を上下する舌に声が上ずりそうになりながらなんとか言葉にする。  
「んっ。」  
耳朶を甘噛みされ思わず声が漏れた。くすりと笑った声が耳元で聞こえる。  
「敏感なところは同じようですね。」  
からかうように言い、胸に顔を寄せて鎖骨にキスをしながら  
背に回された手が黒のベアトップをたくし上げていく。  
気付くとブラジャーも器用に外され、  
膝をつく彼の眼前にあらわになった上半身を突き出す格好になっていた。  
すでにぼんやりとし始めていた意識がはっきりとして、  
慌てて背もたれに預けていた上体を起こす。  
「……ぁっ!」  
片手で乳房を掴み、空いた方の頂点を口に含まれた。  
 
温かい水気を帯びた体温と意思のある舌が蕾に絡みつき、  
堂本さんの口の中で自分でも分かるほどその硬さを増していく。  
「…はぁ…あ…。」  
それを確かめると彼は口を開け太い指でなぞりながら舌先で刺激した。  
目の端で堂本さんの手が足を伝いストッキングと下着を掴む。  
腰を上げるとするりと脱げ、既に濡れたそこは下着と糸を引いた。  
「触れてもないのにこんなに濡らして。いけませんね。」  
「……ぇっ…きゃっ!」  
突然監督が私を抱きかかえ、壁に取り付けられている棚に座らせた。  
事態が分からずきょとんとしているとくるりと身体を回される。  
「あ…や…いや…っ。」  
目の前に現れた壁鏡に映る、タイトスカートだけを身に着けた卑猥な姿の女。  
「ダメですよ目を逸らしちゃ。」  
横に背ける私の顔を鏡に戻す。  
少しでも後ろに下がれば棚から落ちそうな私の身体を、  
堂本さんが背から抱きこむようにして支える。  
きちんと服を着た彼の姿が余計に私とギャップを感じさせ羞恥心を煽る。  
「…あっ!!」  
堂本さんの両手が腕を伝い下に降りて、そのまま力任せに足を開かせた。  
タイトスカートはももまで上がり、  
開いた足の中心部は淡い光を浴びてテラテラと光っている。  
「見えますか?」  
「ど、堂本さん!お願い…いやですこんな…っ!」  
直視できない自分のあさましい姿に、耐えられず声を荒げる。  
「いやだったら…どうしてこんなに溢れてくるんでしょうね。」  
彼の指に広げられたそこは、言葉通り絶えず奥から粘液を溢れさせている。  
あまりの恥ずかしさに死んでしまいたいのに、  
身体はこの姿を見られるのを喜んでいるようだった。  
「…っふ…ぅう…。」  
反応を見ながら彼はゆっくりとひだに指を這わせ上下に動かしはじめた。  
緩慢な堂本さんの動き。ひだを辿るのみで決して敏感な部分に触れようとしない。  
いつになっても望んだようにしてくれない動きに、  
誘うようにゆらりと鏡の中の自分の足が動いた。  
 
いつもこんな風に身体をくゆらしていたんだろうか。  
本能的に男を誘う女の部分を、目の前にして初めて気付かされる。  
 
―――――見ていられない。  
 
そんな私を楽しむように堂本さんの動きが止まった。  
「どうしましたこんなに涎を垂らして…ぬるぬるじゃないですか。」  
現実味のないこの状況に脳が溶けていく。  
…はっきりとした刺激がほしい。  
「ぁ…も…。……さわ…って…。」  
「…どこをです?」  
縋るように鏡の中の堂本さんを見ても、ただ静かに見返してくるだけ。  
動かした手は羞恥に震え、それでも欲情に従いそろそろと身体の中心部分に向かう。  
「…こ…ここ……。」  
「あぁ。はしたなく真っ赤に腫れ上がったここですか。」  
「…っ!!ひぁ…あああっ!!」  
きゅうっと指で摘ままれると意識が途切れそうになる。  
指の腹でくにくにと潰し、粘液を絡ませて左右に転がし撫でるのを繰り返す。  
意識がうすくなる頭に、背に伝わる堂本さんの早い心音が響いた。  
彼もまた興奮しているんだと思ったら余計に身体が熱くなる。  
頭を後ろに倒しキスをねだるとすぐに応じてくれる。  
突然ごつごつした指が一気に奥まで入ってきた。  
衝撃に顔を背けようとしても許されず、喘ぎ声は堂本さんの口内に消える。  
私の中で太い指は折り曲げられたり入り口を擦ったり、まるで生き物のように動いていた。  
「…中がすごく熱い。ご自分でわかりますか?」  
心地よい声に答えることも言葉を理解する事も出来ず、ただ赤ん坊のように声を出す。  
身体の一番奥がうずいていた。もっともっと奥に…。  
「堂本さ…もう…。……っ!!!はぁっ!!…くぅうっ!」  
中を擦る指が増える。激しく出入りする度に液がとろりと溢れお尻のほうに流れていく。  
「2本でも足りませんか?ほら、相田さんのここ。  
 ヒクヒク動いてこんなに咥え込んでますよ。」  
言うと見せ付けるように思いっきり奥へ突き立てる。  
訳が分からなくなる意識の中で何度も達してしまいそうになるのをなんとか抑えていた。  
「ふ…ぁあ……い、意地悪です…っ…どうして…。」  
堂本さんが私の耳に舌を差し込みながら低く呟く。  
「…忘れられるなんて…悔しいじゃないですか。」  
「んああっ…ああ…。…………えっ!?」  
快感に呑まれる頭でやっとその言葉を理解すると、急に頭が冴えて勢いよく振り返った。  
その様子に堂本さんの方が驚いたようで少し顔を引く。  
じっと見る私に、彼は余計な事を言ったという表情をして顔を背けた。  
 
…忘られるって…もしかして。  
「なんと言うか…こっちだけ喜んで覚えてるって言うのはなんとも…  
 まぁ…そんな訳です。やり過ぎましたか?」  
しんとなる部屋。  
なんだ。強引だったのはそれでだったのか。  
確かにちょっと…いやかなりおもしろくないかな。自分だけ覚えてるのって。  
 
見ると先程まで余裕に溢れていた堂本さんが居心地悪そうにしててつい笑ってしまった。  
「ふふ…ご、ごめんなさい。あまりに意外でしたので。」  
余計に顔をしかめると、ひょいとまた私を抱えてベッドへと移動した。  
どさりとシーツに降ろされてもまだ笑いが止まらない。  
「しつこい人ですね、もういいでしょう。…あぁつまらないこと言ったな。」  
そんな事言うから笑いが止まらないんですよ。  
いい加減うるさくなったのか無理矢理キスをして口を塞がれる。  
私のシワシワになってしまったタイトスカートを堂本さんが脱がし、自分の服も脱いでいった。  
生徒と一緒に鍛えてあるのか見惚れるほど均整のとれた身体をしてる。  
「不思議。女性も男性の裸を見て欲情するものなんですね。」  
「え?何言い出すんですか。」  
あまりにも自然に出た素直な感想だったけど、堂本さんの驚いた声で正気に戻る。  
「わ!すみません私ったら。こういう気持ち初めてだったから…。」  
途端に真っ赤になる私に唖然としていた堂本さんが笑い出した。  
さっきまで私が笑っていたのにもう笑われる番になってる。  
あーもう本当私って…。  
「いや、うれしいですよ。ありがとう。」  
覆いかぶさってきた堂本さんは胸から下腹部まで撫で、未だ濡れる部分に口をつけた。  
「えっ!?あっ…っ!」  
音を立ててひだを吸い、舌を硬くして敏感な部分まで舐め上げる。  
堂本さんの髭がそこに触れると痛みとも快感とも付かない鋭い衝撃が背を走った。  
少し冷めていた身体も急激に先程までの熱を取り戻す。  
「あ…堂本さん…堂本さん…っ。」  
ずっとじらされていた身体が欲しがる刺激は、もはや一つだけになっていた。  
うまく言葉が出ない代わりに彼の腕をぎゅうっと握り締める。  
 
伝わったのか堂本さんが身体を起こしてこちらを見た。  
「辛いですか?」  
「も…もうほんとに…我慢できません…。」  
抱いてもらえるなら今の状況よりこの恥ずかしい台詞を言う方がよっぽど楽に思えた。  
直接すぎるお願いに堂本さんは少し笑うと、自分のものを入り口にあてがう。  
私の腰に当てた手にぐっと力がこもると同時に、堂本さんのモノもゆっくりと入ってきた。  
「んん…はいって…く…あっ…あ…!」  
圧迫感に息が出来ない。  
今まで経験のない、身体全てが堂本さんで満たされていく感覚。  
「は…すんなり入りましたね。そんなに欲しかったんですか?」  
言いながらゆっくりと腰を動かし始める。  
グラインドさせては入り口辺りをくすぐり、またゆっくりと差し込む。  
慣れさせているのか気遣っているのか、優しく優しく動いていく。  
「い…いや……もっと…。」  
「…わがままな人ですね。」  
口の端で笑うと一度ぎりぎりまで抜いて突然奥まで腰を打ち付けられた。  
「きゃ…あ、ああああああ…!」  
繋がっている部分に手を移動させると芽をつまみ指で弄ぶ。  
私を壊すような強さで子宮口を何度も突きたてていく。  
「はぁっ!!あああ…あ…っ!」  
聞こえる水音が大きくなり静かな部屋に響いていた。  
「だ…め…あっだめっ!…いきそ…っ!!」  
動きはそのままで身体をぴたりと堂本さんがあわせてくる。  
頬にキスをして抱きしめられ、私も必死で縋りつく。  
「きれいですよ相田さん。本当に。」  
低い声が耳に届くと身体の芯がきゅうっと締め付けられた。  
「ぁあ!い…くぅ、あ…あああああああ!!」  
 
 
彼の腕に力がこもる。  
息も出来ないほどの強さが、私にはひどくうれしかった。  
 
 
さすが強豪山王の監督。  
恐ろしいほどの体力を持つ彼の永遠続く行為に、一瞬終わりがないのかとさえ思った。  
明け方近くに解放されたときには私はもうよれよれで。  
少し寝てようと言われて二人で布団に潜ったのがついさっきの話し。  
「しかし…残念です。」  
ぽつりと呟いた堂本さんに力尽きそうな視線を送ると天井を眺めたまま続けた。  
「今回ばかりはどうしても勝ちたかった。  
 …監督として私情をはさんではいけないんですけどね。」  
「へぇ…私情ですか?堂本さんでもそんな事あるんですね。」  
そう言うとなぜか頬をうっすらと赤くして困ったようにため息をついた。  
 
「もうちょっと相田さんといたかったんです。」  
ごろりと後ろをむく堂本さんの広い背中が視界に広がる。  
言葉を理解すると火が出るほど顔が熱くなるのに気付いた。  
「は…光栄です。」  
もっと気の利いた言葉があるでしょーが!!!  
記者だと言うのに自分のボキャブラリーの少なさには呆れてしまう。  
ふと気になっていたことが頭に浮かび沈黙する背中に話しかけてみた。  
「堂本さんって奥さんいらっしゃるんですか?」  
ガバリと上体を起こし振り返った堂本さんはまじまじと私を眺める。  
「あ、あなた私が妻帯者だと思ってたんですか?」  
「い、いえ万が一そうだったら不倫はやだなと思って。…今更なんですけど。」  
呆れたよう静止していた堂本さんが、突然噴出して笑い出した。  
私はなんだか恥ずかしくなって宙を睨む。  
「はは。行き遅れましてね。相田さん奥さんになってくれますか?」  
………。  
「ぇえ!!??」  
驚いて身体を引く私をまた笑う。  
「か、考えさせてください。まだ少ししかお会いしてませんし、  
 こういうことはすぐ決められな…。」  
突然気付いて口をつぐんだ。  
(何大真面目に返事してんだ!普通に考えて冗談に決まってるじゃない!)  
そう思ったのもつかの間…。  
「ゆっくりどうぞ。一生の問題ですもんね。私は自分の直感を信じます。」  
……………?  
え?まさか………本気?本気なの?  
堂本さんが変わった人と言った河田くんの言葉を思い出す。  
ちらりと見るとまどろむように目を閉じている堂本さんが映った。  
職業病なのか『いつ私をいいと思ったんですか?』『どんな直感なんですか?』  
等を聞きたい衝動で口がムズムズする。  
 
でも嫌われたら困るので、代わりに布団の中の大きな手をきゅっと握った。  
 

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