「え?『動く』…?入っちゃって終わりじゃないの?」
「ち、違うみたいですね。」
花道のボロアパート。
先ほど晴子が入れたコーヒーは、テーブルの上で忘れ去られていた。
二人が肩を寄せ合い、一冊の本を相手に奮闘し始めて早30分。
『極めろ!48手』と、でかでか表紙に記される雑誌を
お互いに顔を赤らめ真剣に読んでいた。
「う…これはどっちが動くのかな?」
「女の人じゃないっスかね?あっほら『女性が腰を上下、または前後に動かし』って。」
ただいま開いているページは女性が男性の上にまたがる、
いわゆる“騎乗位”で絡む図が詳細に書かれている。
「〜〜〜!!んもぉ頭がおかしくなっちゃう!男の子ってエッチな本とか見るものなんじゃないの!?
なんで桜木くんまで知らないのよぅ!」
「す、すみませんっ!」
そろそろ湯気でも出しそうな晴子が両手を上げて花道に食って掛かる。
恥ずかしさを紛らわす為とは気付きもしない花道は素直に申し訳なく思った。
高校二年の初めから付き合い始めた花道と晴子。そろそろ恋人となって二年近くなる。
今年はお互い19歳になる年で、正真正銘のお年頃。
どちらともなく自然に相手を求め始めた二人は、そこで重大な問題にぶつかった。
―――――性行為のことを何一つ知らない。
温室育ちの晴子はもちろんのことだが、花道まで知らないとは予想外の展開だった。
彩子によると『男に任せとけば楽勝』らしく安心していたのに、
これでは任せるどころの話しではない。
ほとほと困りきった花道の頭によぎったのは、水戸の姿だった。
「たっ頼む洋平!一生のオネガイだ!!」
突然泣きそうな顔で家に押しかけて来た親友に
何事かと心配した水戸だったがその内容を聞いて呆れ返った。
「エロ本読めよ。」
冷たく言い放てば大きな身体を縮め、困りきった顔で無理だと赤くする。
そう。性行為に対して異常なほど潔癖、加えて異常なほどの照れ屋が災いして、
今まで純真無垢道を突っ走ってきてしまったんだ。
(コイツにゃハードル高いか。)
納得したところで、真っ昼間から男二人でセックス云々を語る気になれない。
呆れる水戸はそれでも面倒見よく本屋に行き、今二人が持っている雑誌を買い与えたというわけだ。
性行為自体疎い二人には、体位などよりまず始めから終わりまでの
一連を書いているものの方が必要な気もするが、ともあれ今頼るべきはこの一冊の本しかない。
それに幸いこの本にもオマケ程度、愛撫の仕方なども載っている。
まさに今晴子にぺらりと捲られてそのページが開かれた。
「きゃっ!」
思わず両手で目を隠す晴子。
うっすらと開けてみれば、男の大きく屹立した肉の塊を、
恍惚とした表情の女が舌を這わせている。
ゆっくりと両手を外し、上体を落として食い入るように本を見た。
薄くかかるモザイクはあまり意味を成さず、男の陰茎の姿がはっきりと窺える。
「男の人って…。」
こんなのついてるんだ。とおそらく続きそうな言葉を断ち切り晴子はごくりと息を飲んだ。
「さ、桜木くんもこんな…?」
「えっ!?は…まぁ…あんま変わらないですね。」
初めて見る男のグロテスクな欲情に明らかに引いているのが花道にも分かる。
説明されていたのはフェラチオの仕方。
瞬きもせずじっと見つめる晴子を花道は所在なさげにちらちらと横目で確認する。
「あの…覚えてもさせませんよ?」
あまりにも真剣な様子に気を使って小声で呟くと、晴子は驚いたように顔を上げた。
「えっ?どうして?」
「さ、させられませんよ晴子さんにこんなことっ!!
つ、次のページ次のページ。………っ!!ぅわっ!!」
晴子が止めるのも聞かず焦りの表情でページをめくると、
またもや二人に衝撃的なシーンが飛び込んできた。
今度はクンニの仕方。
つまり逆に女の股にうずくまる男の姿が、金槌で殴られるような衝撃をもって目に入ってくる。
「は…晴子さんも…こうなってるんですか?」
「わ…わかんない。ちゃんと見たことないもの。」
引いている花道に気付いている晴子も同じくらい引いていた。
写真の女の性器は黒ずんだ皮膚が重なるように、しとりと濡れ光っている。
男の人よりもグロいかも知れない。と、晴子は頭がクラクラした。
逆に花道は初めこそショックを受けたが、女性の身体のアンバランスさに妙な興奮を覚えていた。
どこをとっても美しい女性の身体の中で、潜めた淫欲がその部分一点に集まっているかのように見える。
自分の名を呼ぶ声に答えて晴子が顔を上げると、少し困った花道の顔があった。
「…その…触っていいスか?」
「えっ…あ…う、うん。」
ドキリと心臓が跳ねて、火が灯っていた体がより熱くなる。
落ち着かない鼓動を感じながら、胡坐をかいている花道に身体を向けてきちんと正座をした。
「ど、どうぞ。」
ぎしっと音がするほど固まる晴子に花道も正座で向かい合う。
小さな肩に触れると少し引き寄せ唇を重ねた。
数える程しかした事がないキスに、二人とも真っ赤になって見詰め合う。
「あ、じゃ、じゃあ…失礼します。」
ぎこちなく妙な前置きを言うと、肩の手を晴子の細い腕に伝い撫で下ろす。
そのたおやかな細さに感動しながら腰に触れると、バランスを崩した晴子が両手を後ろに付いた。
「ヌあっ!大丈夫ですか?」
「平気平気。気にしないで…続けて?」
計らずとも胸を突き出す格好をしている晴子に鼻血を吹きそうな花道。
髪の間からわずかに覗く晴子の恥ずかしそうな顔すらも興奮を誘う。
身体の側面をごつい手の平でゆっくりと何度も往復する。
次第に荒くなる自身の呼吸に晴子の子犬のような小さな吐息も交じった。
服に手をかけると無言で脱がすのに協力する晴子。
するりと服が落ちるとかわいらしいピンクのブラジャーが覗く。
憧れの、想像するにも恐れ多かった晴子の身体が目の前にある。
溢れてきそうな涙を堪えてスカートも脱がす。
すらりと伸びた手足に白い肌。
果たして現実であるのかと確かめるように身体を離して下着姿の晴子を眺めた。
「そんな見ないでよぉ!やだ、桜木くんも脱いで!」
「ハッ!す、すみません。」
じっくりと見ていた自分に気付き、慌ててTシャツを掴む。
一人だけ下着姿であることが恥ずかしい晴子は、花道が脱いでいく側でそれを待っていた。
が、すぐにもっと恥ずかしくなった。
自分とまるで違う体に酸欠のようにクラクラする。
部活でTシャツを脱いでいるのを何度も見たことがあるのに、
なぜか今日はまるで違う風に映った。
一言で言うなら色っぽい。
胸を両手で隠しながら身体を起こし花道を見つめる。
「私も、触ってみていい?」
「あ、…ドウゾ。」
ごくりと生唾を飲み目も口もぎゅっと瞑って晴子を待つ。
花道の様子を窺いながら、明らかに自分と違う胸にそっと触れてみた。
「硬い…ね。すごい筋肉…。」
言うと花道は目を開けて、今度は了解無くわき腹に触れた。
「…んんっ!」
またもやバランスを崩し両手を後ろに付く。
花道の眼前でふるふると胸が揺れる。
「あ…やっ!」
胸に注がれる視線に晴子は片手でブラジャーを覆う。
気にせず花道は片手を背に添えて、腹をゆっくりと撫でた。
「ひあっ…。」
ぞくりと鳥肌が立つ。確かめるようにゆっくりと動く手が心地いい。
「…柔らかい。」
想像以上の柔らかさ。これが女の身体かと驚く。
吸い付くような感触に夢中になって両手を動かし身体全体を撫でていく。
ふ、ふ、と晴子は小さく声を漏らしながら、触れた部分から身体をよじらせる。
艶めかしく動くたびに形を変える胸に、誘われるように触れた。
ピクリと震え唇を噛む晴子。
「………ぬ?」
「?…どうし……ぁっ!!」
花道は信じられない思いで、無遠慮にブラジャーの下から手を中に入れた。
ふにふにと自分の手の中で自在に揺れる乳房。
その柔らかさは想像以上のものだった。
どう思い出しても今まで触れた経験の無い柔らかさ。
弾力があるのにどのようにも形を変える。
動きを拘束するブラジャーが邪魔になり少々乱暴に外す。
形よい乳房が待ち構えたようにこぼれてきた。
小さく感嘆の声を出すと、じっと乳房を見つめる。
晴子は羞恥に顔を背け花道の視線に耐えた。
ふくよかな乳房の真ん中にサーモンピンクの小さな突起がある。
すくうように触れると晴子の身体が揺れた。
淡く色づく頂点は肌が桃色を帯びるに連れてその色を濃くする。
突起に触れると晴子が今までに無い高い声を出した。
苦しげに溢れる声は花道のみならず晴子自身も高めていく。
たまらず花道は指の間から顔を出す突起を口に含んだ。
ふにゃりと顔が埋まってうまく捉えられず、舌を伸ばし乳房を押し付けながら蕾を追う。
ぐいぐいと押された晴子は一層身体を手で支えながら空いた手で鮮やかな赤い髪に触れる。
堅めの赤い髪を指に絡ませ、引き寄せるでも引き離すでもなく切なげに掻き乱す。
促されるようにねっとりと舌を絡ませ軽く吸うと
ビクリと揺れた晴子の手から力が抜けその場にころりと寝転がった。
くたりと横になる姿を夢見心地に眺めながら目の前に放り出された足に手を置く。
「っあ…まって…っ!」
ひやりと外気にさらされた下半身に気付き制止しようとするも
既に下着は男によって膝辺りまで下ろされていた。
慌てて足を閉じようとするが、間にある大きな身体に邪魔をされ叶わない。
花道の興奮しきったうつろな目が彼女の隠したい部分を捉えると、
驚きにゆっくり見開かれていく。
瞬間、先ほど女性器を見てひるんでいた花道を思い出した。
「だめっ!やだぁ!!」
嫌われてしまうかもという思いと誰にも見せた事の無い部分を
よりによって好きな人にさらけ出す羞恥心に晴子は目を覆った。
しばらくの静寂。
あられもなく足を開かされた状態に泣きたくなってくる。
意識とは裏腹に花道の前にさらされた部分がどうしようもなく熱くなるのを感じた。
膝を着いたまま、晴子の濡れそぼるそこを見つめる花道は、ただ、感動していた。
本の女性とはまるで違う乳首と同じ色のそこは、触ることすらためらうほど彼女と同じく清廉に見える。
「…ふぅっ!ん…。」
恐る恐るそこを開くと中につれて鮮やかな赤色が濃くなっていく。
ともすれば晴子自身でさえ触れた事の無い部分。
この美しい部分を己しか知らない喜びに、花道は小さく身震いした。
「キレイです晴子さん。」
「…ぇ?…っ!あっ!んぁあぁ!」
そろりと筋を辿るように花道が指を滑らす。
充分に濡れたそこはおもしろいほどに指が動いた。
擦るほどに溢れてくる粘液に魅せられ、夢中でその動きを繰り返す。
「あぁ…うぅんん!…ぇ?あ…あああっ!!」
偶然思いの他滑った指先が一番敏感な部分に触れた。
「いぁ…や…だぁめ!!だめぇっ!桜木く…!そこヤダぁっ!」
じんじんと痛いほどの快楽に恐れを感じ止めようとするが、
晴子の声が一際甘くなるのに気付いた花道はそれに応じない。
鼻腔をくすぐる女の香が花道を煽る。
既に本の知識など飛んでいた花道であったが、
吸い寄せられるように赤く主張する芽を口に含んだ。
「!?っんああぁぁあああ!!な、あぁ…やめっっ!!!」
鋭く全身を駆ける感覚にそこを見ると、自分の股に顔を密着させている花道が目に入った。
本で見たよりも何倍も淫靡な光景に身体の奥から白い感覚が這い登ってくる。
膣内に舌を差し込み舐め上げて、芽をくるくると舌先で転がす。
「ふぁあ…あ…ああ…。」
離そうと花道の髪に添えた手も、その役目も忘れただそこに置かれていた。
ビクビクと痙攣が激しくなり、喘ぎ声も高くなる。
更に聞きたくてぷくりと腫れ上がる部分を中心に大きく口を開き、
じゅるるると音を立てて吸いついた。
「はぁっああ…ああああああああああああっっっ!!!!!」
花道の手首を掴んだ晴子の指に力がこもる。
身体を反らし腰を突き上げて、晴子は盛大に達した。
何度も大きく痙攣を繰り返す身体は、ビクビクと震えながらぱたりと脱力する。
お互いに落ち着かない呼吸で、しばらくその状態に呆然とした。
何度か気だるく瞬きをすると、ゆっくりと晴子が花道を見る。
「…今のって………もしかして……。」
「た、…多分。」
経験はないが、これが達したと言う事なのだろうとなんとなく二人は気付いた。
力が入らないのか、ふらふらとしながら上半身を起こす晴子。
しばし照れくさそうに花道を見つめると、顔を赤くしてにこりと笑った。
「あは。びっくり。こんなに気持ちいいなんて。」
彼女の笑顔に花道はおもしろいほど顔を赤くした。
自分の拙い愛撫でそう言ってくれるとは。と言葉だけで満たされた気分になる。
「そっ、そースか?」
照れ笑いをしながら頭を掻く花道を横目に、
晴子はまともに見られなかった花道の肉棒を決心して挑むように見た。
大きくそそり立つそれは、先ほどの本の男よりも大きく立派に見える。
口に手を当てごくりと凝視する晴子。
自分のあんな痴態を見てこんなにも興奮してくれているのかと思うと、
身体の中心がうずくような感覚がした。
「わっ!ちょ…!!」
視線に気付き身体の向きを変えて晴子から大きくなったモノを隠す。
そのぎこちない様子を見ながら晴子はむくむくと沸いて来るわずかな嗜虐心ににやりと笑った。
くるりと花道の前に行くとにこりと笑い、上体を倒す。
「は?わーー!!ちょっとちょっと晴子さん!!」
中心で立ち上がる肉棒にそっと触れると熱く脈打つ感覚に驚く。
慌てる花道から手を引き離されて、すぐに逆の手でそれをよしよしと撫でる。
「ぅっ…」
小さく呻くと先ほどの晴子と同じようにへたりと両手を後ろについて身体を支える。
自分がされた時と同じような反応がうれしく思えた。
「ぴくぴくしてる…すごい…。」
うっとりと言いながら両手を添えてゆっくりと撫で、傷つけないように優しく指を絡ませる。
グロテスクだと感じた陰茎もそう思ったことすら忘れていた。
むしろ血管の浮き出るそれを見つめていると冷めてきた熱が身体に戻るのがわかる。
しかし困った。どうして触れれば気持ちいいものか晴子は知らない。
「桜木くん…。どうやったら気持ちいい?」
上目遣いでかわいらしく聞く晴子に、それだけでイッてしまいそうな花道はとても声など出せず
一文字に口をつぐんでうつむいた。
「あー!ずるい!!」
言いながら無意識にきゅっと握られて花道の身体が揺れる。
ゆっくりと撫でている今でも充分花道にはこたえるものであったが、
晴子はもっと自分と同じように乱れて欲しかった。
自分はあのように恥ずかしい姿をさらしたんだから花道も…。という気持ちが彼女にある。
「いいもん。じゃあ…。」
ぺろり。
「ぅあ!」
指ではない感覚に驚いて見ると、あろう事か晴子が尿道口にぺろぺろと舌を這わせている。
「な…なにを!!」
花道を黙らせるように濃い陰毛を掻き分けて根から筋へと舐める。
器用に舌を動かしながら亀頭を舐める晴子は、本で覚えたての知識を存分に発揮していた。
花道にとって、こんなことはあってはならないことだった。
常に見とれてしまう、ぷっくりとした形のよい桃色の唇。
可憐で清楚な彼女の唇が今は自身の猛った欲望に沿って動いている。
細く長い指が自身に絡みつく事すら罰が当たりそうな気がするのに。
「…気持ち…いい?」
チロチロと赤い舌を覗かせながら晴子が花道を見る。
その上ずった声は、花道に奉仕をしながらも彼女自身が興奮している事を表していた。
唇を噛み背に伝ってくる快感を押さえつけ、なんとかこくりと頷く。
晴子は返事に気をよくしたのか口を大きく開けてかぷりと咥え込んだ。
「っぅぁ…は、る…!」
すぐにでも達してしまいそうで、刺激の強すぎる晴子の姿に目を瞑ると、
気を紛らわすため彼女の髪の毛を優しく撫でた。
花道の気持ちとは裏腹に、優しい手をうれしく思った晴子の動きが激しさを増す。
口内で舌を動かし亀頭を刺激しながら限界まで喉の奥に陰茎を飲み込む。
苦しくて溢れてくる唾液が肉棒を濡らしていく。
時折漏れる切ない声が晴子にはうれしかった。
どうやったらもっと気持ちよくなってもらえるのだろうと考える。
ふと、先に達した自分の事を思い出した。
そうだ。音を出して吸われて、それがすごく気持ちよかったんだ。と。
突然、強烈な刺激が花道を襲った。
じゅぶ。じゅぶ。と卑猥な音が部屋に響く。
顔を上下に動かすのに加えて射精を促すように晴子が吸い付いてくるのだ。
「くぁ!あ…!」
ぴたりと密着する口内が敏感なカリをも刺激する。
「……も…で…出る!……離し……!」
それを聞くと晴子は一際強く吸い付いた。
「ダメで……!ぁあ……っ!!」
咄嗟に晴子の身体を離そうとした手に力が入らず、そのまま彼女の口の中に大量の精を発射する。
しばし意識が飛び、びゅくびゅくと射精管を通る感覚に集中した。
快感の波が治まるに連れてうっすらと瞼を開く。
と、いきなり意識が覚醒した。
目をぱちくりとしばたかせる晴子が未だ自身のモノを咥えている。
「は、晴子さーーーんんん!!」
すみません。すみません。と繰り返しながら慌てて身体を離した。
驚いているのか晴子は口に手を当てて目を丸くしている。
「早く晴子さん!早く出してくださいペッて!!!!!」
吐き出す格好をする花道を、晴子が見た。
あぁよかったと花道が安堵したのもつかの間。
晴子は一瞬眉をしかめると…。
「…っはぁ…!飲んじゃった。」
顔を赤らめ満足気に微笑む晴子。真逆に青ざめる花道。
「な、なんてことをー!!!」
悲痛に叫ぶ花道をさらりと笑顔で流す。
「ま、マズかったでしょ?」
「ううん。うれしかった。」
オロオロと言う花道に笑顔で返し、きゅっと身体を抱きしめた。
彼女を不快にさせてしまったんじゃないかと思ったが、どうやらそれは心配ないらしい。
まるで犯されたようなショックは未だ消えなかったが、少しホッとする。
「?…晴子さん?」
小さな身体で抱きついてくる晴子の背を撫でながら花道は彼女の体温が異常に高い事に気付いた。
肌にかかる荒い吐息も心なしか熱い。
ふと晴子が男根を咥えながら興奮していた姿を思い出した。
「ん…?きゃっ!」
花道に身を寄せている晴子を押し戻し床に組み敷くと、彼女の秘部にすばやく手を這わせる。
…くちゅ…。
「……あ…。」
濡れていたことに気付かれて晴子の頬が真っ赤に染まる。
その表情に花道も萎えていた陰茎が頭をもたげてくるのを感じた。
「だ…だって…桜木くんすごくいやらしい顔するんだもん。」
困ったように眉毛を下げて恥ずかしそうに両手で口元を隠す。
そう呟く晴子の方が数倍悩ましい顔だということは理解していない。
ずっと刺激していたかのように濡れる入り口を、軽く指で弄る。
待ち構えていたかのように晴子は身をくねらせ花道を誘った。
粘液の量も然ることながらその熱に驚かされ、そして花道も呑まれる様に熱くなる。
「この中、入ってもいいですか?」
低い声に顔を向け、しばらくその真摯な目を見つめる。
こくりと頷くと、既に限界まで熱を取り戻した肉棒が晴子の入り口にあてがわれた。
身体が裂ける。
体内に押し入られる感覚に恐怖しながら晴子は思った。
すがりつくように桜木の背に手を回す。
応えて花道も晴子の背に手を差し入れ小さな身体を抱き寄せる。
腰を進めるほどに侵入を拒むそこに痛みを感じたが
それよりも晴子の苦しそうな様子が心配でならない。
亀頭の部分が全て入ると一旦息を付き晴子を見る。
「や…やめますか?」
声が出ないのか、ふるふると頭を横に振る晴子。
浅い呼吸を続けながら涙の浮かぶ目で花道を見つめる。
「…最後まで……。」
そう言うときゅっと鍛えた身体を引き寄せた。
晴子もまた、自分と同じように一つになることを望んでいる。
それを知りようやく迷いが晴れ、細い腰を掴むとやや強引に肉の壁の奥へと押し進めた。
「んんや、ぁっ…っいっ…!!」
痛い。と言おうとして唇を噛む。
かわりに背に爪を立てられたとき、桜木の亀頭が抵抗する膜を破り奥まで辿りついた。
しばらく強く抱き合っていた二人は少しだけ身体を離して間近にお互いを見つめる。
痛みを耐えて、ようやく好きな人と結ばれた喜びに、晴子は言葉なくきれいに微笑した。
彼女の額に貼り付く髪を外しながら、同じ気持ちの花道は赤い頬にキスをする。
もはや満足したような晴子を抱き寄せながら、花道はただただ耐えていた。
段々と弛緩していく晴子の膣内は、花道が動かずとも柔らかい収縮が繰り返され興奮を煽る。
先ほど知識に入れた通りこれで終わりではないのだと今身を持って痛感していた。
「ぇ?…あっ。」
身体を離し動き始めた花道に、またも壁がきゅっと締る。
腰を引くと全身に痺れるほどの快感が走り、意識が飛びそうになった。
「ぅっ!…はぁっ!はあ!」
今までにないほど荒く呼吸をしながら花道は両手を付いて昂ぶる波が去るのを待つ。
――――しかしなぜ?なぜこの熱く猛る欲望に従い彼女をかき抱くことがいけないのか。
ぼんやりとする頭でそんな考えが浮かぶ。
欲に任せてこのまま細い身体に腰を打ち付けたい。
逃げられぬよう腰を掴み、粘液にまみれた連なる肉を押し広げ、
何度も何度も奥に打ち付ければどれほどの快楽を得られることだろう。
待ちわびるように濡れた柔らかな肉壺が花道に絡み、
どのようにも絶頂に導いてくれることは想像に易かった。
(イ…イカン。)
「きゃあっ!?さ、桜木くん!?」
突然のことに痛みを忘れた晴子が声を上げた。
驚くのも無理はない。
覆いかぶさったまま急に黙り込んだ花道が、突然自分の頬を拳で殴ったのだから。
自分のもたらした痛みが想像以上だったのか両手で頬を押さえ呻いている。
「ふぐぐぐぐぐぐ。」
「どうしたのどうしたの桜木くん!?大丈夫??」
「ぅぐ……ワハ、ワハハハハ!大したことありませんよこんなもの。」
今度は強がっている。
何が何だかわからない晴子だったが、
情欲に呑まれそうな頭がすっきりした花道は小さくホッとした。
目の前の愛しい女性を大事にしたい。誰よりも笑顔にしたい。
出来るならば一生悲しい顔などさせたくない。
花道の底に根をはるその想いは何年経とうとも揺らぐ事はない。
ヒリヒリとした爪痕が残る自分の背に晴子の手を誘導する。
「桜木くん?」
小首をかしげる晴子の肩に顔をうずめた。
「ゆっくりします。手、力入れていいスから。」
一瞬考えるように沈黙した後密着する晴子の顔が縦に動く。
返事を確認すると襲ってくる快楽に拳を作り耐えて、引いた腰を再びゆっくりと押し入れた。
抵抗は少なくなったものの奥に挿れるに連れて背に回された晴子の手に力がこもる。
奥が辛いのかもしれないと、浅い位置で腰を動かす事にした。
何度か往復すると中の肉が包むように柔らかくなっていくのが分かる。
桜木の質量に少しずつ慣れてきた様子だが、おそらく痛みしか与えていない。
腕の下の晴子は異物感に眉を寄せ、涙をにじませながらも懸命に花道を受け入れようとしていた。
「ん!!っあ…やぁ!あぁあっ。」
ビクリと晴子が大きく震える。
花道が親指で、一番敏感な芽に触れたからだ。
「な…に?んんやっ、だ…やだ!…やめてぇっ…!」
せめて痛みが和らげばと思い触れてみたのだが、予想以上の大きな反応に花道も驚いた。
首を振り、花道を必死に引き寄せながら高く叫ぶ。
抵抗する言葉とは反対に明らかに拒否する声音ではない。
「でも、すごい…濡れてきました。」
呟くと横顔の晴子が瞑っていた目を見開き、頬が羞恥に色付く。
「ゃっ!…あっぁあああ!!!!」
既に耐えられず、花芽に与える揉むような刺激を続けながらずぐりと奥まで挿れた。
急激に襲う快感が背を走り脳髄を突く。
頭を反らし歓喜の声を上げる晴子を前に、もはや自制できるはずもない。
想像以上の柔らかさと弾力に包まれ、出し入れの度に水音が響いていた。
粘液にまみれた指は晴子の秘部で滑り思い通り動けなかったが、
焦らされている様なその刺激が一層晴子を昂ぶらせていく。
「あああ!ふあっあ。ま、た…!!また変、な感じ…っ!!ぁあ!!」
きゅうっと膣が締る。
拒絶の動きとはまるで違い、更に奥に飲み込もうと吸い付いてくる。
「ゃぁ…あ、あああああああああああああ!!」
晴子の嬌声を聞きながら、花道も膨れ上がった欲望を思い切り放出した。
「す…すみません。」
少しも動けないといった様子で横たわる晴子。
その身体に散らばる白い液体を心底申し訳なさそうな桜木がタオルで拭っていく。
この日のために買っていたコンドームの存在を思い出す余裕すらなかった。
絶頂を迎えるギリギリ前に思い出し何とか最悪の事態は免れたが、
自分の軽はずみの行動に落ち込む花道。
一方晴子は別に怒っているわけでもなく…
というより自分に精を放たれた事など気付きもしないほど脱力していた。
これは思った以上にすごい行為だ。などと考えている。
花道の誠実な気持ちを一身に受けたように感じた。
ふら付く身体を起こし、おろおろとする花道に寄りかかる。
肌に触れる温かさに、花道もまた、晴子と同じ感覚を抱いていた。
たどたどしく髪を撫でる。
顔を上げた晴子は、気だるそうに重い瞼をあげ花道を見た。
汗が引かない顔でにこりと微笑む。
それは初めて出会ったときと変わらず、晴れやかな美しい笑顔だった。
数日後。
偶然会った花道と晴子の二人を目の前にして、
水戸は何度目か分からぬ億劫そうなため息をついた。
手が少し触れただけで赤くなり『すみません。』などと言っている花道。
そして横にいる晴子までも顔を赤くしている。
(あーあ。こりゃヤるのなんていつになることやら…。)
何も知らない水戸は花道の不甲斐なさを憂い、もう一度深くため息をついた。