どういう訳で練習後の体育館で2人、彩子と肩を並べて話しているのか、リョータはよく思い出せなかった。  
しかしそんな事はどうでもよくて、彩子と喋っているその事実がただ単純に嬉しかった。  
 
「聞いてる?」  
「・・・うん、聞いてる」  
彩子の鋭い声でリョータは我に返った。  
「嘘つき。…まぁいいわ、たいした話じゃないし」  
「…なんの話?」  
「やっぱり聞いてなかったんじゃない」  
すっかり日が落ちて、ただでさえ寒い冬の体育館は冷え切っていた。  
呆れたように笑う彩子の顔は、寒さで紅潮していて、部活やクラスで見せる表情  
とはまた違った魅力があった。  
(うわっ、可愛い)  
思わず口に出しそうになってリョータは慌てて言葉をのみこんだ。  
 
「・・・あんた、さっきから変ね」  
怪訝そうに言う彩子から目をそらして、リョータはなるべく冗談に聞こえるように拗ねた。  
「彩ちゃんと一緒だから緊張してんの」  
(馬鹿だな、俺。せっかく彩ちゃんと2人っきりなんだから違う事考えてる場合じゃねえ)  
「・・・なに、それ」  
 
くだらない事をニ、三言交わしては沈黙。その繰り返しだったが、リョータも彩子も不思議と  
居心地の悪さを感じなかった。  
 
こんな風に会話ともいえない会話を続けて、何分経っただろうか。  
沈黙の後、リョータは無意識のうちに言葉を発していた。  
「ねぇ彩ちゃん」  
「ん」  
 
「…俺さーちゃんとキャプテン出来てる?」  
 
「出来てるわよ」  
やべ、何言ってんだ俺、リョータがそう思って慌てて取り消そうとすると同時に  
彩子はあっさりと答えた。  
即答だった。  
 
「えっ…、あ、そう。そりゃよかった…」  
拍子抜けした、と言わんばかりのリョータの顔に彩子は吹き出した。  
「変な顔」  
「…ひどいよ」  
「冗談よ」  
 
話そうか話すまいか悩んだが、リョータは口を開いた。  
「別に、ずっとそうやって不安がってやってた訳じゃないんだ」  
彩子の視線を感じながら言葉を続ける。  
「とにかく冬の選抜に向けて頑張らなきゃって必死だったからさ。  
でも…だからさ、この前の選抜で負けて…なんか気がぬけた、っていうか、俺がやってきた事  
ってこれで良かったのかなってすげぇ思ったんだ」  
「…うん」  
「それで情けない事にちょっとへこんだ。赤木のダンナを思い出すと特に  
自分の不甲斐なさに腹がたってさ」  
リョータは照れ笑いをしながら、彩ちゃんはそんな自分を見兼ねてこうやって練習後に自分の話に  
付き合ってくれたのかな、とふと思った。  
 
「練習の事だけじゃない。さっき・・・部室見てさ、散らかってんなーと思って。ただそれだけなんだけど。  
そしたらまたなんか情けなくなった。赤木のダンナは部室もなにもかも綺麗にしてたし  
練習の事だけじゃなくて他の事も全部しっかりやってたんだ。今さらそれに気づいた。でも俺は  
出来てないんだよな、コレが。バスケの事だけで精いっぱいだよ」  
彩子は、最近元気がないとは思っていたが、初めて聞くリョータの弱音に、自分はマネージャーとして  
きちんとキャプテンを支えられていただろうか、と胸が締め付けられる思いだった。  
 
「山王戦のすぐあとだったもんね。プレッシャー・・・すごかったでしょ」  
リョータは素直に頷いた。  
 
「…赤木先輩は赤木先輩、リョータはリョータ。みんなキャプテンが出来るのはリョータしかいないと思ってる。  
みんな嫌々ついていってるわけじゃなくて、アンタの事信頼してるんだからついてってるのよ」  
彩子は慰めでもなんでもなく、思った言葉を口にした。必死に頑張るリョータを一番身近で、そして客観的に  
見てきたのだ。  
彩子はそこまで言ってリョータの背中を思い切り叩いた。  
「しっかり!」  
「痛っ!」  
 
 
「…彩ちゃん、ありがと」  
リョータはぽつりとそう言った。  
「・・・別に何もしてないわよ。でもたまには誰かに頼ってみてもいいんじゃない?」  
 
「彩ちゃんにしか言えないよ」  
リョータは、好きな人の一言で驚く程軽くなった自分の心に若干呆れながら言っ  
た。  
「そ?」  
 
「惚れなおした」  
「バカ」  
「やっぱ俺、彩ちゃんが好きだよ」  
いつもと声のトーンが少し違う。  
彩子は少しドキリとしながらも、リョータの言葉をいつもどおりはいはい、と聞き流した。  
 
「…どうしたの?ほら、帰るわよ」  
彩子が立ち上がったのに倣ってリョータも立ち上がったが、足に根がはえたように突っ立ったまま動けなかった。  
「……あ、のさー」  
「なに?」  
「…俺、本気にみえない?今の、冗談に聞こえた?」  
「え?なに言っ…」  
彩子はいつになく真剣な顔つきのリョータを見て押し黙った。  
 
「俺が彩ちゃんの事好きだって事」  
「…」  
「冗談だと思ってる?」  
「そういう訳じゃ…」  
見たこともない程動揺する彩子をみて、リョータは慌てて言葉をつないだ。  
「あ、いや、怒ってる訳じゃないよ?!」  
「…」  
「でも、彩ちゃんいつも本気で答えてくれないからさ。・・・振るなら振ってもいいんだよ、  
俺なんかに気を使わなくても、迷惑なら迷惑だってはっきり言っていいよ。  
・・・でも1回ちゃんとした返事が聞きたいんだけど・・・」  
彩子は今まで何度か受けた告白を、軽く流してしまったことを思い出して胸が締め付けられる思いだった。  
 
「・・・迷惑だなんて思ってないわ。でも・・・」  
「友達以上には見られない?」  
「・・・」  
頷こうとしても、首が動かなかった。  
 
そうだろうか?自分は本当にリョータを友達としてしか見ていないのだろうか?  
彩子は頭の中で自分に問いかける。  
 
「・・・」  
なにも言えずうつむく彩子の態度をどう受け止めたのか、リョータは背をむけた。  
「・・・わかった。困らせちゃってごめんね、今日は話聞いてくれてサンキュ。帰るね」  
「あ・・・」  
「じゃあ、また明日!」  
リョータはいつもどおりの明るい声で体育館から出て行った。  
 
彩子はしばらく呆然としたが、追わなきゃ、そう思い、玄関までふらつく足で歩いた。  
しかし、気づけば下駄箱の前に座り込んでいた。  
「私・・・・・・・・最低・・・」  
手で顔を覆って、彩子は目を閉じた。  
 
ほんの数か月前の自分は、確かにリョータの事を友達としか思っていなかったはずだ。  
しかし、この数カ月、キャプテンとして頑張るリョータを見てきて、惹かれた事が一度もなかっただろうか。  
責任を負うことで引き締まった表情や、息を飲むようなプレイ。  
ふと、背が大きくなったなぁとか、手が大きいなぁと気づいた時。  
なによりも自分を一番大切に想ってくれるところ。  
彩子は確かにただの友達だったリョータに、何か違う感情を抱き始めていた。  
 
(・・・リョータは何度も私に好きだ、って真剣に言ってくれてたのに、私は全部ごまかして本気で応えなかった。  
告白って勇気がいるのに、全部なかった事にしようとして・・・)  
「最悪ね・・・」  
 
「なにやってんだ?」  
「!」  
三井の声で彩子は我に返った。  
気がつけば、数十分がすぎていた。彩子は、リョータの事ばかり考えていたことに気づいた。  
彩子の頬には涙の筋があったのを見て、三井は怪訝そうな顔をした。  
(山王に勝った時も泣かなかったこの女も泣くのか)  
どうでもいい事を考えながら三井は無遠慮に聞いた。  
「なんで泣いてんだ、おまえ」  
「な、泣いてないです・・・!なんで先輩、いるんですか」  
部活などとっくに引退した三井はバスケの推薦で大学に行くのが決まり、毎日さっさと学校を出ていくのを  
彩子はよくみかけたいた。大学のバスケの練習に出ているらしい。  
「バカヤロウ、俺だってたまには勉強すんだよ。・・・補習だけどな、出ねえと卒業できねーんだってよ」  
ちくしょう、練習にもでねーといけねえのに、と文句を言いながら三井は彩子の横に腰をおろした。  
 
「で?何やってんの、もう部活おわってからだいぶたつんじゃねーか?」  
時計を見ながら三井は尋ねた。半分は野次馬根性、もう半分は彩子になにがあったんだろうという心配であった。  
「・・・何・・・って、言われても」  
「まーたリョータに告られでもしたか?」  
なんという事のない三井のからかいは、彩子を動揺させるのには十分だった。  
「・・・」  
「・・・え、マジかよ。俺、勘いいな。・・・で、どーすんの」  
三井の声色が若干深刻味を帯びたものになった。  
「どー・・・って。どうしようも、ないじゃないですか」  
「なんでよ」  
「なんでって・・・」  
「まぁ、何回言われたところで、彩子が好きじゃねえならしょうがねーけどなぁ」  
彩子が好きじゃねえなら、その言葉は彩子の胸に深く突き刺さった。痛くて痛くてしょうがなかった。  
 
「・・・けど、おまえ、リョータの事好きじゃねえんだな」  
「・・・どういう意味ですか?」  
「どうって、そのままの意味だけど。てっきりおまえも好きなのかなーってなんとなく思ってただけだよ」  
「・・・」  
沈黙したままの彩子が何を意味しているのかわかってのことだろうか、三井は言った。  
「まぁ、おまえが好きじゃないならいいんだけどさ、そうじゃなかったらちゃんと言ってやれよ。  
相手が本気なら、こっちも本気で。コレ勝負の基本な」  
三井はひとつ息を置いて続けた。  
「あいつ程、おまえの事想ってくれるやつ、後にも先にもいないんじゃねえの。  
・・・まぁ、付き合え!っていうんじゃねえけどさ。俺優しいから後輩を思ってすすめとくわ」  
 
彩子は送ってやるよ、という三井の言葉に素直に従って黙ってあとをついていった。  
 
「さて、と」  
三井は振り返って彩子の背中を軽く叩いた。  
「ここでいいか?」  
今いる十字路は、まだ彩子の家の前ではなかった。  
「え?・・・あぁ、はい。ありがとうございました」  
彩子が言い終わらないうちに三井は背を向けて去って行った。  
 
一歩踏み出そうとして彩子は気づく。この別れ道を右に行けば自分の家。左に行けば・・・  
(おせっかいな、先輩ね)  
彩子はため息をついた。  
「勝負の基本・・・、ねぇ」  
彩子は正直なところまだ自分の気持ちがわからなかった。  
それでも知らず知らずのうちに左の道を歩いている自分は、速まる心臓の鼓動がなにを意味するかを  
そろそろ認めなければならないのかもしれない。  
 
「どちらさーん?」  
能天気な声が聞こえて、彩子はにはりつめていたものが一気に切れるのを感じた。  
「彩子です」  
彩子が息を整えて言うと同時に、ドアの向こうの男の息は乱れた。と、同時にもうドアは開いていた。  
「は、はやいわね・・・ι」  
「うっ、うんっ!えっ、なに?なんでいるの?遊びに?!」  
遊び、という言葉に、彩子は少しあきれながらも笑ってしまった。  
「ごめんね、こんな遅くに」  
「いっ、いいよ!いつでも来なよ!散らかってるけど、あがる?」  
「じゃあ、お邪魔します」  
彩子はいつもと変わらないリョータに少しホッとする反面、はじめてあがるリョータの部屋に緊張もした。  
 
「あれ、俺の部屋きたのはじめてだっけ」  
「そうね、場所は知ってたけど」  
「なんか飲む?」  
「ありがとう、じゃあお茶くれる?」  
彩子は床に座って、床に散らばるバスケの雑誌やボールをながめた。  
「で、どしたの?」  
台所で、彩子に背を向けたままリョータが何気なく聞く。彩子は少し間をおいてから、正直に答えた。  
「わからないわ」  
「え?」  
「・・・わからないけど・・・来ちゃった」  
リョータは目を丸くして振り向いた。  
「・・・そ、そう。あ、もしかして、さっきの事気にしてるとか?やだなー」  
軽く笑いながらリョータは湯をわかしているコンロに目を戻した。  
「大丈夫だよ、俺、気にしてないから。ごめんね、困らせちゃってさ。返事が欲しいんだとか  
言っちゃったけど、もらう前にもう振られてる事に気付けって感じだよな。しつこくして、気に  
病ませちゃったなら、謝るよ」  
情けなさそうに笑いながらお茶を持ってくるリョータの顔を見て、彩子は、あぁ、今まで私はどうして  
悩んでいたのだろうとぼんやり思った。  
 
 
「うわっ」  
一瞬、リョータは何が起こったのかよくわからなかった。  
目の前にやわらかい黒い髪があって、自分の背中は彩子の細い腕にしっかりと抱きしめられていた。  
「・・・な、ななな、なにやってんの?!」  
絶対にありえない、と思っていた事態に嬉しさよりも驚きが先立ち、リョータは彩子を引き剥がした。  
「・・・ご、ごめんなさい。嫌だった?」  
「いっ!嫌な訳ないじゃん!・・・でも、何?彩ちゃん酔ってんの?顔赤いし」  
「酔ってないわよ。・・・ええと、ごめん・・・」  
彩子もまた、自分の行動に驚いていた。気づいたら、触れたい、という欲望を行動に移していた。  
「い、いや!謝んないで。・・・なんなら、続きを」  
あわてて彩子を引き剥がした事を少し後悔しながらリョータはまだ動揺していた。  
 
「リョータ、あのね、・・・私、リョータがすきなの」  
 
「え」  
リョータは『固まる』という言葉を忠実に再現した。  
「・・・ごめんね。私、いつも本気で答えなくて。・・・怖くて」  
「怖い、ってなにが?」  
すきなの、という言葉を理解しきる前に、リョータは聞いた。  
「・・・ずっと、いつも、私を支えてくれたから、私にとってはすごく大切なのよ、リョータは。  
だから、・・・なんていうのかな、付き合ったり、そういう事で壊れるのがどうしても怖かったの  
かもしれない。ずっと、気付かなかったけど」  
「・・・どうして、付き合うと壊れると思ったの?」  
リョータが神妙な顔つきで聞いた。  
「・・・だっていつかは別れがくるじゃない」  
彩子の目から涙がこぼれた。  
「私、それが怖かったのよ、たぶん。もしも別れたりしたら、普通に前みたいに戻れないもの。  
どうしてもリョータを失いたくなかった。・・・リョータはいつも本気で、好きって言ってくれたのに、  
私には勇気がなかったの。ごめんなさ・・・い」  
 
リョータは思いっきり首を横に振ったが、数秒後にえ、と間抜けな声を出した。  
「?」  
「え、あのさ。・・・ん?...彩ちゃん、俺の事好きなの?」  
「・・・」  
彩子は涙をぬぐって声を出して笑った。  
「遅いわよ。今の話聞いてたの?」  
「聞いてたけど・・・もし今日の事気にして言ってくれてるなら、ほんとに俺、大丈夫だよ」  
「違うわよ。本当に私、リョータが好きよ」  
「ほんとに?・・・夢じゃないの、これ・・・・俺こんな夢何回もみたし・・・朝起きた時の喪失感かなりヤバいんだよ。  
・・・!ご、ごめん。勝手に夢みてごめん。ひかないで」  
彩子の微妙な顔を見て、リョータは慌てて付け足した。  
 
「・・・ごめんね」  
好きだという言葉がなかなか信じられないのはほかでもない自分のせいだと彩子はもちろん自覚していた。  
「そんなに謝らなくたってさ、俺は彩ちゃんがそばにいてくれればそれでいいよ!  
ありがと、俺を好きになってくれて」  
リョータは彩子をひきよせて、頭をなでた。  
彩子は安堵してリョータの胸に頭をもたげて腕を背中にまわした。  
 
 
「・・・あの」  
「・・・ん?」  
「もう遅いし、帰らないとやばいんじゃないの?送ろうか?」  
「まだ大丈夫よ」  
何気なく彩子は答えたが、リョータはうーんと唸った。  
「でも・・・夜だし、その・・・こうやって抱きしめられてるとさ、俺、我慢できなくなるよ」  
「・・・いいわよ、私は」  
彩子がそう答えると、リョータは彩子をゆっくりベッドに押し倒した。  
が、その直後にそういやゴムがない!と叫んで部屋をとびだしていった。  
彩子はあきれながらも、自分を大切にしてくれるその心に感動した。そして3分後にはコンビニの袋を持って  
戻ってきたリョータに笑うしかなかった。  
 
「え、えっと・・・ごめん」  
「・・・いいわよ、私が突然きたんだもの。・・・」  
彩子はリョータの首に腕をからめた。  
「途中でやめらんないよ?」  
「いいわよ、もちろん」  
リョータは真剣な顔つきで言った。  
「彩ちゃん。俺が言うのもなんだけど、あんまり男の趣味よくないね」  
「・・・そうかもね」  
「・・・ひどい」  
「冗談よ」  
短く言葉をかわして、2人はキスをした。  
 
リョータは彩子の唇、頬、首筋、鎖骨を舌で優しく丁寧に愛撫していった。  
「ん・・・くすぐったい・・・」  
彩子は体の奥から妖しい感覚が沸々わき上がってくるのを感じずにはいられなかった。  
リョータは何も言わずに彩子の制服のボタンをはずした。彩子も黙って身をまかせたが、リョータの指が  
少し震えているのに気がついた。  
「・・・ごめん、俺、ちょっと緊張してる」  
オレンジ灯の下で、リョータのはにかんだ笑顔がうっすら見えて、彩子の愛しさは一気にふくれあがった。  
「私も、どきどきしてる」  
彩子はリョータの手に自分の手を添えて、ボタンをはずしおえた。  
「・・・触るね」  
リョータの指はぎこちなかったが、それでもすぐに彩子のブラジャーを手際よくはずした。  
前の女の影だろうか、そういうものに少しだけ嫉妬をおぼえながらも彩子は胸をさわる優しい手つきに  
体をよじった。  
「あ・・・っ」  
リョータは形の良い乳をやさしく揉みながら、乳首を指先ではさんで彩子の反応を楽しんだ。  
「気持ちいい?」  
「ん・・・あんた、も脱いでよ」  
彩子の照れ隠しに、リョータは素直に頷いて上半身は裸になった。  
 
彩子は胸板に手を伸ばした。  
「さすが、すごい筋肉」  
仕返し、と言わんばかりに、彩子はリョータを抱き寄せてその胸に舌をはわせた。  
「・・・ッ」  
リョータは我慢出来ないとばかりに彩子の下着の中に指を入れて、その秘部につきたてた。  
「いっ・・・」  
「ご、ごめん。痛い・・・?」  
「へ、平気」  
その言葉を聞いてから、邪魔だとばかりにリョータは彩子の下着を抜き取って横に投げた。  
指が潤いがまとわりついてくるまで、何度も指を抜き差しした。  
少しつらそうな彩子の唇にキスをしながら、膨らみ始めた肉芽を擦った。  
「んっ・・・ッ!や、ぁ・・・!!!」  
リョータは本能にまかせてそこを重点的に攻めた。  
「う、ん、あっ・・・っ!!」  
シーツに落ちるほど蜜が溢れても、執拗な愛撫はとまらなかった。  
「リョ・・・やめっ・・・」  
「気持ちいい?」  
彩子は、答える余裕もないほど彩子は乱れた。  
「だめ、もう」  
「いっていいよ」  
 
リョータは人差指と親指で少し強く、突起をつまんでしごきあげた。  
彩子は息をのんでびく、と大きく一度けいれんしてぐったりと体を落とした。  
 
「・・・ごめん、疲れちゃった?」  
「だいじょうぶよ・・・」  
荒い息をしながら、彩子はリョータの首に手をまわして、頬にキスをした。  
「いれてもいい?」  
彩子の秘部から指をぬいて、リョータは体勢をととのえた。  
「うん・・・」  
リョータは彩子のしなやかな足を大きく広げて持ち上げた。  
「ん・・・ちょっと恥ずかしいわね」  
顔を上気させながら言う彩子に、リョータは苦笑いした。  
「今さら、だよ」  
リョータはゆっくりと自身を沈める。  
「・・・っ!!」  
さっきまで快感の余韻でとろんとした目をしていた彩子の顔が歪んだ。  
「・・・キツ・・・」  
リョータはゆっくり、ゆっくり押しすすめていったが彩子は唇を噛んで痛みにたえた。  
「ごめんね、大丈夫・・・?」  
「・・・ん。・・・!」  
「俺の背中つかんでて」  
彩子はリョータにしがみついて必死にたえた。  
「・・・もしかして、彩ちゃん、はじめて・・・じゃないよね?」  
「は、はじめてよ」  
彩子の答えに、一瞬リョータの動きが止まった。  
「う、嘘?!ご、ごめん!すげー痛いだろ?!」  
「大丈夫だから、・・・早くしてよっ・・・」  
彩子にもう余裕はなかった。  
「そっ、だって。そんなに辛そうなのに・・・。それならもっと後でも・・・」  
「ばか・・・。私がいいって言ってるんだからいいのよ。早くても遅くても最初の人はリョータ  
なんだから関係ないわ。・・・お願い、やめないで」  
リョータはもちろんやめたくはなかったし、こんなことを涙ぐんだ目で言われて、余計火が  
ついてしまった。  
「わ、わかったけど・・・。どうしても痛かったら言ってね」  
彩子のはじめての人が自分、ただそれだけで嬉しさが2倍にも3倍にも  
なってしまいそうだったが、リョータは心を少し落ち着けてゆっくりと彩子の中に入っていった。  
「・・・っ」  
彩子は顔を横に向けて痛いと叫びたいのを必死に我慢した。  
 
「・・・入ったよ。本当に平気?」  
汗だくで平気よ、と答える彩子の顔がものすごく痛々しいのに、ちっとも萎えない自分に  
リョータは若干呆れながら少しずつ動いた。  
お互いがぶつかりあうじゅぷ、という水音が部屋に響いても、それを恥ずかしいと思う余裕は  
もう二人にはなかった。  
 
彩子はリョータを無意識のうちに締め付ける。  
集中力が切れたら、リョータはすぐにイってしまいそうだった。  
ゆっくりとした腰の動きを感じながら、彩子は痛みによるうめきと共に、いつの間にか  
喘ぎの声もだしていた。  
 
 
優しくしようと思えば思うほど、リョータは自分がおさえられなくなっていた。  
「彩ちゃん・・・っ、ごめんっ...」  
強く腰をうちつけるほど、リョータにしがみつく彩子の力は強くなった。  
 
「あっ・・・!んっ・・・・」  
彩子もまた、痛みの中の気持ちよさと、好きな人と繋がれているという事実は快感であった。  
 
 
「も・・・、だめ・・・だ」  
リョータは彩子の上に体を密着させると、動きを止めた。  
「くっ・・・」  
リョータは達して、彩子から自身を抜き取った。  
 
 
 
数分は、お互い荒い息をして、なにも話せなかったが、彩子はリョータの手や背中に  
そっと触れた。  
「ごめん、私、すごく強く爪、たてちゃって・・・ちょっと血出てる・・・?」  
「平気だよ」  
二人並んで横になりながら、リョータは彩子の頭を撫でた。  
「その位痛かったて事でしょ。・・・俺、余裕なくて、ごめん。・・・つらかった?」  
「ちょっと、ね」  
彩子はふふ、と笑った。  
「でもさ、初めてならそう言ってくれればいいのに。・・・やけに大胆だから慣れてるのかと  
思ったよ」  
「・・・リョータこそ。緊張してるって言った割には慣れてたじゃない。前に何人いたのよ」  
彩子はいたずらっぽく笑ってリョータの脇腹をつついた。  
「っ・・・。えと・・・そんなには・・・。も、もう彩ちゃんしかいないって」  
責めている訳じゃないのに、必死になるのがリョータらしい。彩子はそう思ってまた笑った。  
 
「ねえ彩ちゃん」  
リョータは真剣な声で言った。  
「さっきさ、もし付き合って、別れることになったら、それが怖い、みたいなこと言ってたよね」  
「・・・ええ」  
彩子は頷いた。  
「それっていらない心配だよ」  
「え?」  
「だって、俺がどれだけ彩ちゃんを好きか知ってるでしょ?俺、振られることはあっても  
振る事はないよ、絶対」  
リョータが自慢げに言う。その言葉に、彩子はなぜか感心してしまった。  
よく考えればそうなのかもしれない。  
「それもそうね」  
「・・・そうハッキリ言われるのも複雑だけどさ」  
リョータは惚れたら負けだよなぁと言って、数分後には眠ってしまった。  
 
彩子は私も振ることはないだろうな、と思いながら、だるさと眠気に心地よさを感じながら  
眠りについた。  
 

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