「あっ、牧 紳一」
「え?」
「・・・さん」
午前中の日差しが目映い、十一月間近の日曜日。市内の図書館に勉強をしに来た翔北高校
バスケ部マネージャーの彩子は、窓辺で晩秋の光を浴びながら読書をしている海南大附属高校
バスケ部の元主将・牧 紳一と会った。いつもの癖で、初対面のはずの牧をフルネームで呼んでしまう。
(このウェーブの髪はたしか・・・)
牧の記憶の中の彩子はキャップ、Tシャツ、スパッツ姿でベンチからかけ声をかける旺盛な女生徒だが、
私服姿で長い髪を下ろした彼女は鮮やかな大人っぽさに加えて少女の可憐さを漂わせている。
「あ、アタシ 翔北のマネージャーで」
「ああ わかってる」
「彩子ってみんな呼んでます」
「彩子さんか。いい天気だな」
受験勉強の息抜きに読書をしにきた牧は、メガネをはずして挨拶。淡々としてるが決して
無愛想ではない応答は、自分よりたった一つ年長だとは思えない落ち着きぶりだと、彩子は思う。
牧の使うテーブルの空席が異常に誘いかけるようだ。
***
「アタシ、弟が二人いるんで期末が近づくと図書館に入り浸りなんすよ」
「へえ」
「静かに勉強なんてできっこないから」
「なるほどな、弟が二人もいりゃ流川と桜木を手懐けられるはずだ。経験ゆえ」
「・・・そー言われてみれば。そうなのかも」
考えてみれば、部活で問題児たちをハリセンではたく早業は自宅で弟たちを両成敗する時と同じだ。
牧の指摘が当たり前のようで今まで気付かなかった事に、笑ってしまう。
「おれの家もちょっと難しいな」
「牧さんにも?弟、妹?」
「ウチのフォワードが週末押しかけてくる」
「・・・清田信長が?」
「そう。犬を連れて」
「犬を」
「しかもゴールデンレトリバーだぞ」
「へー そりゃ大型で」
「やけに元気なやつで、飼い主にそっくりなんだよ」
夏のIHでバスケ部を引退した牧は、秋の国体の結果も向かう冬の選抜の話題も出す事もなく、
とりとめのない会話が続く。お互いもう何遍も会話を重ねた様な自然体なのに、
言葉を交わすたびに新しい情報が増えていくのが新鮮だ。
(なんだか落ち着く・・・)
彩子は牧の安定した口調と身振りを観察する事に全神経をそそいでいて、時間が経つにつれ、
もっと彼のプライベートを知り、自分の事も知って欲しいと願っていた。
***
その日以来度々図書館で彩子と牧は雑談を弾ませ、自然の成り行きで交際するまで至った。
秋が過ぎ冬を越し、春を共に迎えた二人の熟年した雰囲気とは裏腹に、今だプラトニックな
関係だと誰が信じるだろうか。卒業を控えた牧は高校生活最後の春休みを派手に過ごすことなく、
公園で彩子の膝を借りながら桜を仰いでいる。
「四月から彩子も受験生か」
「マネージャーはIHまで引退しないけどね。桜木花道も復帰できたし」
「ますます手がかかりそうだ」
「もうあの子は晴子ちゃんにまかせちゃう」
「新部員が入ったら姉貴分の腕の見せ所だな」
変わりなく大人びた牧の頭に、淡い色の花びらが数枚。彩子はそれらを落とさずに、真ん中から
分けた牧の髪をすいてみる。通行人が見ればしっとりとした大学生のカップルで、絵になる光景だ。
「・・・そういう牧さんも、女性の扱いが慣れてる」
「そうか?」
「わたしの前に、・・・いたでしょ?」
「去年の夏まで彼女がいたが、それっきりだ」
「長い付き合い?」
「三年」
(やっぱり・・・そんなに)
十代の三年間は長く、重い。微妙な空気の変化にむくりと起き上がると、人目もはばからず牧の
首にすり寄って来る彩子。彩子を支配する嫉妬心の働き。伝わる鼓動と同じ頻度でまばたく瞼のせいで
彼女の長い睫毛が牧の首をくすぐり、頬に当たるウェーブの髪の甘い香りが牧の感性を高めた。
「・・・・・・紳一」
「どうした、急に」
「別に・・・」
彩子が牧の名前を呼び捨てにしたその時、何かが吹っ切れたようにしきりにキスを求めてくる。
普段見られない、ためらいと不安を含んだ視線を上げ、牧の首やあごに唇をあてがいながら彼の反応を待つ次第だ。
***
「彩子?」
牧が優しく合わせる彩子のふくよかな唇は瑞々しい。場所が場所なだけに深く熱の籠もったものではなく、
彼女の心境を察した、緊張をほぐす一種のセラピーだ。牧の行き届いた配慮に比べた自分の未熟さが歯痒くて、
数年間内に潜めていた気持をとうとう打ち明ける。
「アタシ、紳一・・・がサーフィンしてる所見たことあるの」
「いつ?」
「二年前の春。高一の時に。・・・・・・・・・女の子と浜辺にいたのを見た」
「そうか」
「決勝リーグを観た時 海南のガードだって知って、海南に進学すれば良かったって思ったわ」
「男子校だぞ」
「わかってるけどっ・・・」
顔をそむけた時に白いうなじの上を流れる黒髪が、ゆるやかなカーブの模様を連想させ、
この時ほど牧が彩子のくびれた体躯を隅から隅まで堪能したいと感じた事はないだろう。
しかし心を乱した彩子に己の欲望をぶつけることは善策ではない事は百も承知だ。
大人の余裕とも言えるその態度が、そもそも彩子の不安の元だとは思いにもよらない。
「ちゃんと付き合い始めて四ヶ月も経たないのに、卒業したら忙しくなるでしょ」
「どうかな」
「大学に進学して・・・・・・・・・・・・」
「なんだ、彩子」
「他の女の人に」
強い風が吹いて彩子の言葉は遮られ、二人を包む桜吹雪。きらきらと輝く瞳を向ける彩子の
頭、肩、胸、膝に花弁が舞い落ちる。ちらつく過去の女と、前途に潜む女の影に怯える彩子は
目を離せないくらい秀麗だ。牧が懸命に読もうとしている彼女の唇は羞恥心と覚悟に震え、
最後の一言だけはかろうじて聞き取れた。
『アタシを欲しがってよ・・・』
***
共働きの両親が家を空けていて、今は春休み。文句の付け所のない頃合いだ。牧は寝室で
タオル一枚纏い精神統一中。ベッドに腰を掛け片手で水滴が転がる髪をほぐしながら、
廊下の突き当たりの洗面所からかすかに聞こえるシャワーの音に耳を澄ましている。
(欲しがれ、だと・・・人を何だと思ってるんだ)
『言われなくても』、と伝えたい気持はやまやまだがここは堪え所だろう。彩子を大事にしたい、
といった感情の他にわがままがあったのだから。受験中の大事な時期にたがが外れないように
抑制していたというのは彩子の要求を無視した判断でもあり、彼もたいがい自分勝手だった。
しかし大学進学が決まった今、抑えることはない。待たせることもない。
「・・・待った?」
寝室の入り口で様子を伺っている彩子が、同じく純白のタオル一枚で裸体を隠している。濡れた髪は重みで
腰元までストレートに垂れ、露出する柔肌から立つ熱と香りが牧を急した。牧は彼女を抱き竦めたい
逸りを押さえ、立ち上がり手を差し出す。その手を取った彩子を誘導しベッドに座らせた。
「なにこれ・・・」
「牧 紳一のしんは、紳士のしん、だ」
「―ばか」
自分で言ってみて気恥ずかしい。彩子の緊張を緩める、捨て身のリラックス法だ。
白昼の日光を遮るため寝室の窓にはカーテンが引いてあり、室内は心地良く薄暗い。
(・・・いや、リラックスしてどうする)
少々自己中心的な牧は、思い直すのも行動も早い。彩子の丸い肩を撫でつつ頭にキスをし、
唇は潤う額、瞼、頬を下がり、口元で停止。噛み、舐め、吸うにつれて彩子も加わる。
石けんの香りが立つ牧の首筋をいたずらに強く吸った場所が、アザになった。
「おいおい」
「年上の虫がつかないように、マークつけてやった」
「フケ顔だっていいたいだけだろうが」
「あはは ごめん、気にしてたんだっけ?」
調子を取り戻した彩子のほがらかな笑い顔。快活で一途で、ここぞと言う時は可愛らしい、
こんな相手がそこらで見つかるものか。
(こっちが心配する方なんだよ、まったく・・・)
***
「・・・ふ・・・っ・・・ん」
自分の口の中を隅々探る牧の巧みな下使いだけで、終わりが見えそうだった。牧はウォームアップの
つもりだろうが、キス一つで腰の力を抜かれた彩子は、迫る高潮を振り払うようにぷるっと身震いをする。
「まだだぞ、彩子」
(とーぜんよ・・・)
「できるだけ 穏やかにするからな」
(そんな心配いらないっての・・・)
ベッドの端に座っていた彩子はそのまま後ろに崩れ倒れ、閉じた足を床に付いたまま仰向けで
牧を待っている。その拍子にはだけたタオルから覗く、盛り上がった胸の先端が小さな塔を築き、
その間から息の乱れた彩子が熱っぽい眼差しを送ってくる。ベッドシーツの上に泳ぐ長い濡れ髪が
彩子の首や半開きの口にまとわりつき、牧が今まで幾度も想像してきた以上に官能的だ。
(こりゃ すごい)
牧ほどの男でも、久々に体感する女性に気分が高揚し、腕が鳴る。手始めに、重力で脇にこぼれる
彩子の豊かな乳房を両手でそっと集め、揉みはじめた。水気を含んだ肌を絞るように揉み上げると、
彩子の厚めの唇から弾ける吐息と声が洩れる。
「ぁ・・・ん」
牧の大きな手にも有り余るその柔らかい肉は中心に寄せられ、二つが重なり出来上がるは魅惑的な谷間。
顔を埋めてみると、接触が待ち遠しかった彩子が覆い被さる牧の頭を撫でてくる。牧は褐色の指先で
ゆっくりと桃色の乳首のまわりに円を描きながら、ますます固くなるそれを口に含みいじった。
***
「いじわる・・・」
「なにが」
牧は別に返答を求めていない。愛撫に濡れた胸を後にし、牧の舌は滑るように下降してゆく。
ひんやりとした彩子の二の腕を撫で下ろしながら、舌はみぞおちあたりからへそにかけて、
ぴくつく彼女のくびれとくぼみを制服していった。白い下腹に辿りつく頃でもまだ愛撫を受けた
彩子の乳房は余韻に震えていて、次なる快感に追いつけそうにない。
「平気か」
「・・・余裕・・・」
『初めてじゃないのよ』、彩子はそう言おうとしたが、息をするのが精一杯なのだ。
もう少し乱暴にしてくれても構わない、と伝えたらどうなることか。床に座る牧が披露する、
肉付きの良い太股に舌を這わせつつ無理なく門を開ききる流れ技。
「―いくぞ」
「望むところよ」
自分に胸ごしに見える牧の頭のてっぺん、内ももに触る髪の毛。細かい接触一つで全身に電撃が走る。
股の付け根に濡れたキスを重ね、しまいにはお返しにアザも作られた。じらしにじらして最終的に
茂みをかき分けた舌が彩子を出入りする。
「・・・・・・っ・・・あぁ・・・ん」
(望むところ、か)
(・・・これを経験したヒトが他にいるのね)
激しくのけぞる彩子。敏感にしなる身体を固定させるため、牧はその汗ばむ腰に片手をかけた。
もう片手の指は舌と共に彩子の準備に励んでいる。嫉妬と快感に悶える彩子の秘所は熱を発し溢れかえり、
辛抱強い牧も刺激され上がる呼吸を隠せない。
(もうすこしだ)
張り切る牧の瞳には貪欲な光、身体中に沸騰する血気。湿った彩子の脚の間からちらりと
顔を上げると、汗の滴る谷の向こうから円らな瞳が物欲しそうに訴えている。
「いつまで、待たせる気・・・?」
***
彩子の性感を高める事に夢中に努めていて気付かなかったが、牧自身もこれほどとないまでに
準備が出来ていた。膨張したそれは腰に巻いたタオルを押し上げ、牧が膝についた途端に布が
ぱさりと床に落ちる。布の音に反応し首を上げた彩子、牧の割れた腹筋より視線を更に下げると、
そこ以降はサーファーらしく褐色の肌が途切れていた。
「地黒だと思ってたか?」
「・・・顔とか、冬の間も黒かったじゃない」
「半永久的な日焼けだな」
「そこは、普通なのね」
「なにが言いたい・・・」
「色の事よ」
彩子は火照る身体を起こすとベッドの端で屈み込み、四つん這いよりも更に腰を空に上げ、
牧の先端を口へ運ぶ。苦しい体勢のままじっくりと奉仕する彩子のすべてが妖艶だ。感触も、香りも、音も。
呼吸と運動で上下するなまめかしい曲線を見下ろしていると、ものの十秒で牧は『きわどい』と脳内で唱えざるをえない。
「おい」
「・・・え?」
「無理しなくていい」
「無理なんて・・・」
牧は見上げる彩子の涙と口を拭う。労るように。そっと離させ仰向けに戻し、彼女の片足を肩に引っかける。
形を判別しがたいまでにとろける部分を目掛け、牧は深く、より深く彩子を満たしていった。
限界までじわりと腰の力を強めてゆき、彩子は侵入される感覚に、牧は吸い付く熱い壁に眉を歪ませている。
「ん・・・・・・・・・ぅう」
(なるほど)
牧をたやすく受け止める彩子のさきほどの態度といい、自分が彼女の初めての相手ではないことは
重々察している。彼女も、自分の初めてではない。どちらにしろ自分を欲し迎え入れてくれる相手を、
精魂を込めて丁重に持て成すのが道理だろう。
「き・・・きて」
***
「どうしたの・・・」
「急かすんじゃない ―」
なだめるようにそう言うとベッドの端に跪いた牧は、彩子の白い太股のなめらかさを脇腹と腹に
感じつつ、自分が奥まで到達したことを確認する。すると彩子の催促に応じるまでもなく、
己の要求を満たすためにも動き出した。自分も、待ちすぎたのだ。
「あ・・・ ああ・・・っん」
彩子を塞ぐそれは野獣のように荒々しいかと思えば、慈しむようになだらかに働く。
次第に膝から足に立った牧は彩子の脚を肩から外し、手押し車を支える姿勢になった。
弓なりに反る細い腰をベッドから浮かせ、彩子は重力と共にそそぐ牧の動作を受けている。
熱中する牧は、ついさっき余裕ぶったセリフを吐いた自分が恨めしい。
(穏やかに、なんてそもそも無理だったな)
(す すごい・・・)
深奥まで押して寄せる快楽の波が彩子を襲い、荒い喘ぎに伴い肢体はねじれる一方だ。
弾力のある胸は左右に行き場を求めている。その艶姿は牧の愛欲に火を掛け、
より一層速まる活動に身がくずされそうになる。
「はっ・・・・・・っはっ」
「ぁあっ・・・あっあっ」
途切れる息づかいと求め合うほとぼりが充満する密室。汗がほとばしり揺れ動く、日に焼け茶を帯びた牧の髪。
彩子が絶頂を堪えつつ絶えず内側を収縮させる。その度にしかめる牧の泣きボクロが、彼女をなによりも興奮させた。
(―色っぽい)
「あやこ」
「・・・・・・し、紳っ・・・!」
振り乱した髪がシーツに模様を描くように、牧はさっきと同じ指使いで彩子の白い腹をゆるやかになぞる。
その指はへそから尻をさ迷い、痙攣する場所へ行き着けば、痛みとも感じる最高潮へ導く。
「も もう だ・・・」
――
「・・・・・・・・・っっあ」
浮遊感から脱した彩子は目には見えない山頂を登り詰め、容赦なく落とされた。
華々しく咲き乱れる桜が潔く散るように――。
***
「・・・・・・・・・悔しい」
甘みを含んだ浅い吐息の合間に、彩子がぽつりと言った。横たわる身体にタオルが巻かれている。
「気が付いたか」
窓際に立つ牧は、水入りのグラスを口から離した。ベッドに腰を掛けそのグラスを手渡そうとするが、
彩子はきまりが悪そうにそっぽを向いて壁を見つめる。
「なにが悔しいんだ」
「自分に。・・・猛省中」
「ぶちまけてみな」
一線を越えた彩子が語るは、自分を蝕んでいた不安感の原因だ。
「浜辺で紳一と彼女を見た時、アタシは大学生の彼と一緒だったな」
「ふうん・・・」
「色々ためらってる内に愛想つかしたひどいヤツ」
「・・・」
「それ以来、男性相手だと焦っちゃうのよ」
「どういう風に」
牧は熱心に耳を傾けている。
「背伸びしないと置いてかれる、って」
「おれは一つ違いじゃねぇか」
「そうだけど・・・」
「桜木といい、どうしておれをおっさん扱いしたがるんだ」
「あの子はホント遠慮を知らないのよね。悪気はないわよ、たぶん」
彩子は後ろから牧の胸板に腕を回し、すねる牧の耳を甘噛みしてみた。
顔をかたむけた牧と舌をからませ、第二ラウンドを挑戦している。
それに受けて立とうと牧が彩子の腰を抱き寄せた時、窓の外から無遠慮で無邪気な声が弾む。
「まーき、さーん」
「・・・・・・・・清田だ」
海南バスケ部の後輩・清田が、春休み中の遊び相手欲しさにやってきたのだ。
二階建ての牧の家の寝室からカーテンを分けて見下ろすと、清田がバスケットボールを脇に、
ペットのゴールデンレトリバーと共に玄関先にいる。今にも飛び跳ねそうな落ち着きのなさは、
犬同様しっぽを振っているようで可笑しい。
インターホンが響いた。
***
「お互い後輩に手を焼くのね」
「引退してから、ずっとこうだ」
「可愛いじゃない」
「ん?」
「卒業したら、きっと寂しくなる」
「まあな」
「アタシが重荷になったら言ってよ。しばらく距離を置いて寂しがられる方がいい」
「ったく・・・」
「放置するのは二ヶ月間まで。それ以上は待たないから」
「強気なのか弱気なのか・・・」
牧は彩子の肩に寄りかかり乾いた髪の毛に顔を埋めてくる。くすぐりから急に恥じらいが湧いて、
自分のあらわな胸元に髪の毛を被せてしまう彩子。構わず匂いを探り続ける牧は、粘るインターホンに対し
居留守を決め込んでいた。清田が諦めたが早いか、彩子の股の付け根に作ったアザを撫でながら、耳元で低く囁く。
「温かくなったら、海へ連れて行く」
「ほんと?」
「ああ」
「じゃあ待ってる。・・・牧」
「どっちだよ」
「ホントは、名字呼びの方が性に合うの」
恋人としての自信が回復した彩子は、艶やかで眩しい17歳。夏が来れば嫌というほど
注目を浴びるであろう彼女の心配をする反面、太陽を目一杯吸い込んだ後の、
水着を象った小麦色の裸身を想像しただけで牧の中で楽しみがふつふつと湧いてきてる。
「好き・・・」
春を待ち望んでいたつぼみは開花され、二人は狂わさんばかりの芳しさに酔っていった。
完