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「エッチってどうやってするんですか?」
部活後の女子更衣室で晴子がポツリと言った質問に、彩子は汗のかいたTシャツを脱ぎながらうーんと考えた。
「どうやって…ねぇ。なに晴子ちゃん、したいの?」
「どうだろ〜?怖い方が大きいかも。でも気持ちいいんでしょう?」
「気持ちいいわよ〜。一人でやったこともないの?」
「やり方分かんないし…やっぱり怖いですよ〜!!」
ふーんと言いながら制服を着た彩子は雑然と置いてある机によいしょと腰掛け、まだ着替えている晴子を見た。
「一人でするのも怖いんだ。そりゃどうしたものかしらね。」
「初めてって痛いんでしょう?」
「え?」
「血とか出るって…。」
思わず噴出す彩子。晴子は制服に袖を通したままの体制で笑う彩子をきょとんと見た。
「それはエッチの話しでしょー!?一人でやったって血なんか出ないわよ。」
「えぇ?そうなんですか?」
「そうねぇ……。下着の上から優しく撫でてみたら?」
「?それだけ?」
「あとは自分がしたいようにすればバッチリよ。」
「えぇ〜。どの辺撫でれば…。」
困ったように下を向く晴子に彩子が近付く。
「だから、この辺りを全体的に…。」
「きゃあっ!やだ、口で言ってくれたら分かりますよー!!」
「そう?照れなくっていいのに。」
突然スカートに入ってきた彩子の手を外すと、晴子は膝立ちになってゴソゴソと示された位置に手を置いた。
「ん…と、こんな感じ…かな?」
「どう?」
「えぇっと…うーん。変な感じです。」
「気持ちよくない?じゃあもうちょっと力入れて擦る感じで。」
「こう…かな。………ぁっ…!?ん………ふっ。」
「あっそうそう。そんな感じ。」
少し息が上がりうつむき加減になる晴子。
「上の方に気持ちいい所があるでしょう?」
「え?上??」
「下着に手を入れちゃった方が分かりやすいかも。ぷくっとしたところがなぁい?」
「えぇ〜?どれだろう?」
「ほら、貸してごらんってば。」
「わっ!ヤダヤダ分かりますって!んぁっ…!?えっなんか……指に触った。」
ビクリと身体を震わせ驚いたように下を向く晴子。
「あ、それそれ。多分それ。そこがクリトリスっていって…。」
「あっ!きゃ…な、ん…あっああぁ…っ!!」
人差し指でクリトリスを軽く押しつぶすと同時に、晴子はへたりと寝転んだ。
肩で息をする晴子に呆れた表情で見下ろす彩子。
「…。」
「…はぁ…はぁ。」
「え…ぇぇえええ?」
「ぁ…今の…って??」
「うそ。いっちゃったの?」
「いくって…これが??」
「ちょっと…あんな一瞬でいけるの晴子ちゃん。赤木先輩並に下手な人でも勘違いしそうな感度よ。」
「ちょっとーなんですかそれ!!お兄ちゃんにひどい!」
「あっ、違うからね?あくまで想像だから。」
「余計ひどいですよ!どーしてお兄ちゃんがダメに確定してるんですかー!?」
「だってー。どう転んでもうまくはない顔だよね?
それに晴子ちゃんがそんだけイキやすいなら先輩なんか数秒もたない早漏よきっと。
いいもの持ってそうなのに残念だけど…。でかさ重視か時間重視か…晴子ちゃんはどっち重視?」
「知りません!だけど…お兄ちゃんだって素質はあるんだから、これから先早漏が治るって事もありますよね?ね?」
「うーん。でもねぇ。素質って言ったって第一見たことあるの?」
「えっと…小さい時にお風呂で…。でも、お、大きいと…思います。」
「勃起したのは?」
「みっ見たことあるわけないでしょー!」
「ほーらご覧。赤木先輩くらい意外な人は何が起こるか分かんないわよ。勃起状態で縮んだりしてね。」
「えぇっ!?そんな人いるんですか?」
「晴子ちゃんが見た時から成長してないかも知れないし。そうよ、おかしいわあの身体のでかさ。
栄養が全部身長にいかないとああはならないはずよ。
真面目一色なのも全く性欲ありませんって顔してるのも実は諸々の事情を隠そうとしてるのかも。
そうして見ると極めて胡散臭いわあの勤勉面。」
「どうしよう…そんな…。お兄ちゃん…。」
晴子がおろおろとしているのを彩子は楽しそうに眺めている。
(あーおかしい。これだから晴子ちゃんて大好きよ。)
そんな和やかな二人を、声を潜め覗く集団がいた。
「あ、あ、あ…彩子のやろぉおおお…!!」
「ま。ま。赤木。落ち着けよ、な?いつも通り晴子ちゃんをからかってるだけだって!」
思いもかけず降りかかった災難に顔を真っ赤にしてうっすら涙を浮かべる赤木。
拳を力強く握り今にも更衣室に乗り込まんとしている赤木を必死で木暮はなだめていた。
そんな木暮の口元ももはや崩壊寸前。
既に後ろにいる部員の数人は更衣室から遠く離れ声高らかに笑っている。
「ちぇーもう終わりかよー。にしても晴子ちゃんイキやすいなー。かわいいなー。」
うれしそうに談笑する宮城と三井に、赤木の彷徨っていた拳が行き場を見つけて炸裂。
鼻血が止まらない桜木の足がこそこそとトイレに向かう。
ただただガン見している流川だけが未だに大人しく二人を覗いていた。