あの事件のあと、彩子は時々考えることがある。  
三井たちが体育館に殴り込みにきた事件だ。  
状況が悪化していくなかで、彩子は自分を抑えることができずに、暴力のにおいのする男たちの間に  
割り込み、仲裁しようとした。宮城が必死で自分を止めようとする声も耳には届かなかった。  
あの時、男たちが自分に向けた、なめるような視線。  
「いい女だな」  
彼らはそう言って、彩子を品定めするように見つめ、あきらかに薄い布地の服の下の肉体のラインを想像していた。  
彩子はあの時、苦い唾液が口のなかにたまって、それを飲み込んだ。  
荒々しい獣のような目つきだった。  
あの事件は無事に解決し、廃部になることなく、本当に良かったと彩子は胸をなでおろしたものだ。  
ただ、してはいけない想像だと自分でもわかっているけれど、彩子は一人になると、ついこんなことを考えてしまう。  
もし、あの時部員たちがみんな倒されてしまったら、三井をはじめとする、あの男たちは自分をどうするつもりだったのだろう。  
体育用具倉庫に連れ込んで、自分を裸にして、かわるがわる犯したかもしれない。  
散乱した誰かのタオルを使って、自分の手を後ろ手にしばりあげる。  
暴力を人に与えたあとの興奮や怒りをしずめるために、何度も何度も繰り返し犯される。  
血の味のするキスを無理矢理される。  
「濡れてるじゃねえか。いやらしい女だ」  
耳元でそんなことを言われながら、後ろから突かれて。  
 
夜ベッドに横たわりながら、そんなことを考えていると、かあっと身体中が火照ってくる。  
触れてもいないのに胸の先端が堅くなる。ためらいながら、おそるおそる胸に触れてみる。  
「あっ・・・」  
身体がうずいてしまう。  
肌の感覚が鋭敏な彩子は、Tシャツの上から胸をつつんだだけで、火照りが下半身に伝わった。  
Tシャツの下に手を入れ、胸をやや乱暴に、はげしく揉んでみる。  
「ん・・・」  
つい声が出そうになってしまう。荒くなった吐息が闇のなかに漏れた。  
手の中で、豊かな乳房の肉が様々に形を変えている。硬い乳首を指で転がす。  
荒々しい男の手がそうしていることを想像しながら、彩子は目を閉じている。  
(三井先輩は、どんなふうにあたしを犯しただろう)  
そんな想像をする自分がけがらわしいと思う反面、片手がショーツへ伸びていくのをおさえられなかった。  
わずかに膨らんだ前の部分に手のひらをあて、ショーツの布が二重になっている部分を指先で  
触ってみる。そこは湿っている。  
熱く、柔らかくなっていて、ショーツの下がぬるぬるしてしまっている感じが指先に伝わってきた。  
(だめっ・・・)  
そんなふうに自分をいましめながらも、指は彼女の意思に反してショーツをくぐり、熱く濡れた突起を探しあてた。  
そして、表面を執拗になで続ける。  
やめて、と何度叫んだとしても、あの男たちは自分をいたぶることをやめなかっただろう。  
この言うことを聞かない指のように。  
そんなことを考えながら指を動かし続けていたら、絶頂に達して、彩子はシーツに顔をうずめた。  
(今日も、しちゃった・・・)  
 
練習が終わると、日が短くなったのか部室の窓はすでに漆黒にそまっている。  
彩子は鏡のようになった窓ガラスで、乱れた髪をなおした。  
部員が部室で着替え終え、帰ったあとで、彩子は一人で部室を使うことができた。  
キャップをぬぎ、結わえていた髪をほどき、ブラシを当てた。  
このごろ本当に自分はどうかしている。  
髪をとかしながら、彩子はそんなことを思った。  
あんな想像を毎晩しているせいで、練習中、三井を知らず知らずのうちに目で追ってしまうのだった。はっと気づいて目をそらしても、いつのまにか視線は三井に向いている。  
それに気づいた三井が、こちらに向きなおって笑った。  
「なんだよ。オレの顔になんかついてるか?」  
彩子は気まずくて曖昧に笑みをかえした。  
部に復帰した三井は、深い悔恨をかかえたまま、毎日努力している。  
彩子にもそれが、痛いほどわかった。  
それなのに、あんなみだらな想像をしてしまうのは三井に対してもなんだか悪い気がする。  
今日は絶対、あんなことはしないんだ。  
そう強く決心しながら、カーテンをしめてから汗で湿ったTシャツとスパッツを脱いだ。  
ブラとショーツだけの姿になると、自分の白くてやわらかい果物のようなふたつの乳房が目にはいった。  
(最後にもう一度だけ、部室で・・・)  
部員はみんな帰ってしまったし、誰かがやってくる心配はなかった。  
一応ちゃんと引き戸がしまっていることを確認して、彩子はブラのなかに指を這わせる。  
本当は彼女は鍵をかけるべきだったのかもしれない。  
でもそうしなかったのは、何かを期待していたからかもしれないと、彩子は後になってから気づいた。  
 
部室でこんなことをしている。  
その興奮のせいか、乳首も硬くなり、ぴんと立っていた。  
そこを指先でもてあそんでいるうちに、ショーツの奥が潤んでいくのがわかった。  
震える手を、割れ目の奥にすべらせていく。  
体育館に一人立ちすくむ彩子をナイフでおどし、部室まで取り囲まれるようにして連れていかれる。  
そんな想像を彩子はしていた。  
もし、あの人たちに、三井先輩に、部室で襲われたら・・・そんなことを考えながら、指をクリトリスに  
あてがい激しく動かしていた。  
ロッカーに手をつかせるように立たせられたまま、下着をはぎとられ、後ろから胸を乱暴に揉みしだかれる。  
いたずらされるように濡れた突起を愛撫されつづけて、太ももに透明な熱い液体がとろりと垂れる。  
それを指にからめて、三井は彩子の顔に近づけて、意地の悪い笑みを浮かべる。  
そして彩子の白いすべすべしたお尻を手のひらでなでながら、一気に身体を沈めてこようとする。  
「いや・・・あ・・・ああっ・・・!やめて先輩っ」  
声が大きくなってしまう。  
そこを触っている指のうごきが早くなって、クチュクチュといやらしい音をたてた。  
部室でこんないやらしい音をたてていることに、彩子は興奮していた。  
目の前がぼやけてきて、もうすぐ・・・と思っていたら、不意に部室の引き戸が静かに開いて、  
彩子はこの上ないくらいに驚いた。  
白いブラとショーツしか身につけておらず、ブラからは乳房がこぼれていて、ショーツはぐっしょりと  
濡れて黒い陰が透けている。  
右手がそこにもぐりこんでいるのだから、誰が目にしても何をしているかがわかる状況だった。  
それに部室のなかは薄れかけた男の汗のにおいをかき消すような、女のはじけるような蜜の  
においが充満していた。  
彩子は絶望して、入り口にたっている人物に目をやると、それは三井だった。  
三井は眉ひとつ動かさず、彩子をじっと見て、それから目を逸らした。  
「悪い。ちょっと忘れ物しちゃって」  
彩子はロッカーからあわてて制服を取り出すと、それを急いで身につけた。  
三井は彩子にはいっさい視線をむけずに、自分のネームが書かれたロッカーを開けると、そこからタオルを取り出した。  
そして再びロッカーの扉を音高く閉めると、部室を出ようとした。  
 
「待って。待ってください、三井先輩」  
三井はゆっくりと振り向く。  
「どうして何も言わないんですか」  
このまま立ち去られるより、責められたほうがまだましだった。  
「どうしてって・・・・・・」  
「あたしがしてたこと、わかってるんでしょう。このこと、お願いですから誰にも言わないでもらえませんか」  
いつのまにか声は震え声になっていた。  
こんなことを他の部員に知られたら。そんなことを考えると足ががくがくした。  
「そりゃわかんないな」  
三井はあっさり言った。  
「こういう話って、男が喜ぶからさ、口がすべって誰かにしちゃうかもな。  
宮城にしてやったら面白いかも。あいつ喜ぶぜ」  
彩子は自分の顔から血の気がひくのを感じた。普段の強気な自分はどこかへ消えてしまったようだ。  
「お願いです、三井先輩。なんでも、なんでもしますから」  
「なんでも?なんでもすんの?」  
三井は彩子に近づき、身をかがめて顔をのぞきこんだ。  
「じゃあ、さっきの続きしてもらおうかな。オレ、おまえがしてるとこ、最初から全部見てたよ。  
まだイってないんだろ?オレの目の前でイってくれたら、誰にも言わないって約束する」  
三井は彩子の制服のボタンに手をかけて、それを外そうとする。  
「これも全部脱いで。さっきの続きだからな」  
彩子は制服をのろのろと脱いで、ブラとショーツだけの姿になった。急に寒さを感じ、肌が粟立つ。  
 
「ほらロッカーに手ついて」  
三井はまるで陰険な教師のように言いながら、彩子の背後に回った。  
彩子はおそるおそるショーツのなかに手を入れて、再びクリトリスをゆっくりと撫ではじめた。  
後ろから三井の視線を感じた。荒い息づかいも聞こえてくる。快感が波のようにおそってきて、  
下唇をかんで声が出るのをおさえた。  
「んっ・・・」  
「なあ、お前、さっき『先輩』って言ってたよなあ。オナニーしながら。それって誰?赤木?木暮?」  
彩子は首を振る。  
「み・・・三井先輩です・・・」  
「何お前、オレにやられること想像してたの?ほんとエロい奴だなあ、お前って」  
彩子は快感に耐えながら、うなずくのがやっとだった。  
三井は後ろから彩子の細い腰に手を回し、その肉感的なラインを手のひらで楽しんでいる。  
「こーんなエロい身体して、ちゃんと淫乱なんだからなあ」  
三井の手が後ろから抱きすくめるように、彩子の胸を包んだ。  
「やっ・・・」  
彩子は身をよじった。二つの手が、胸の肉を中央に集めるように揉んでいく。荒々しい手つきだった。  
「じっとしてないと、みんなに言っちゃうよ。彩ちゃん、どんな想像して、オナニーしてたの?  
正直に言おうね」  
「三井さんに・・・無理矢理・・・、あっ・・・犯されるところを・・・想像してました」  
「へえ・・・正真正銘の淫乱だな」  
不意に両腕を取られ、後ろ手に交差させられた手首を三井が片手で押さえつける。  
三井はテーブルの上に置かれていたテーピングテープを手首に巻きつける。  
「いやっ・・・何をするのっ・・・痛っ」  
 
身体をひねっても逃れられない。手首が固定されていく。痛みが走った。彩子は目を閉じた。  
「ほら、目開けてみろよ」  
三井の言葉は、抵抗を許さなかった。彩子はおそるおそる、まぶたを開いた。  
腕を後ろで縛られた彩子が、鏡のようになった夜の黒い窓ガラスに映っている。  
乳房の肉はブラからこぼれそうで、ショーツは前がシースルーになっていて、うっすらと黒い影が透けている。  
 三井は、背後に立って、彩子の肢体を舐めるように眺めていく。  
脚の先から、彩子の目までを、視線が何度も往復する。  
三井が、唾を飲み込む音が聞こえた。  
「いい身体だなあ。たまんねー。前からいい身体してんなあと思ってたけど、脱ぐとお前ほんとエロいな」  
「…み、見ないでください」  
再び、胸が包まれる。握るように揉みしだかれ、色の薄い小さな乳首が下着からこぼれ出た。  
その乳首に、指先が当たる。  
「こんなに淫乱な身体なのに、オナニーでいかせたらかわいそうだよなあ。オレがお望みどおり犯してやるよ」  
お腹の上を、三井の手が下へ滑っていく。  
真っ白なショーツに、指先が這い、シースルーの部分で、輪を描くように彩子の敏感な部分を撫でる。  
「…んっ!」  
心とは裏腹に、体が反応してしまう。後ろで、三井がにやりと笑った。  
 
ショーツの薄い布の上で、三井の指がじらすように這い回っている。  
触っているかいないかわからない程の微かな感触が、彩子の恥ずかしい部分を熱くしていく。  
「…おねがい…さわらないで…」  
「これ以上触ると、どうなんの?ん?彩ちゃん」  
「あっ!だめっ!」  
三井の指が、形良く盛り上がった丘を越えて、彩子の最も敏感な場所に突き立てられた。  
体全体がびくんと大きく震えた。割れ目に沿って、指はショーツにくい込んでくる。  
 彩子は唇を噛んで、突き上げてくる快感と闘った。しかし、三井の指は巧みだった。  
強弱をつけて、彩子の秘部全体を揉みほぐしていく。  
「熱くなってきたよ。すっげえ濡れてる。ぐっちょぐちょだ」  
三井の息使いも荒くなっていた。ブラのホックが外された。肩紐が肩からはずれ、縛られた腕の途中で  
止まった。熱くなった泉が、三井の指から解放された。三井は、両手を使って彩子の乳房を弄ぶ。  
乳首に指先が絡んでくる。  
「もっとあそこ、さわってほしいんだろ?」  
「そんな…いやっ!」  
三井の言葉に、彩子はどうかなってしまいそうだった。  
火の出るような恥ずかしさに、むしろ興奮を煽られていく感じがする。  
「脚開いて。…もっと…。」  
「いや…」  
体が、彩子自身の思いから離れていく。三井の言葉に従って、彩子は立ったまま脚を広げていた。  
バランスを失った体は、後ろの三井にもたれていく。  
「見てみろよ。すごいエロい格好」  
三井の言う通りだった。乳首を指先で転がすようにされながら乳房を揉まれ、大きく開いた脚の付け根に、  
割れ目がわかるほどにぴったりと張り付いたショーツが蜜に濡れて透け始めているその姿が、窓に映っている。  
 
「…ああっ…!」  
三井の指がショーツをくぐった。ざらっとした指の感触がじかにやってきた。  
「もう、びっちょびちょだよ。ほら、クリトリスも固くなって…」  
「いやあっ!」  
指から逃れようとしてバランスを崩し、彩子はそのままそこに倒れた。  
肩で大きく息をつきながら、彩子は、動けなくなった。  
三井が服を脱いでいる。その気配が背後でしていた。  
倒れたまま、細い体を震わせる。だがすぐに、三井の手が戻ってきた。  
ショーツに手が掛かり、強引に剥ぎ取られた。強い力で半身を抱き起こされる。  
「ずっとオレに犯されたかったんだろう?だったらこんなに濡れないよなあ」  
ざらついた舌で、唇を舐められる。両脚がこじ開けられて、露わになった陰部に五本の指が這う。  
「んんっ…!」  
電気が走って体が硬直し、一瞬の後に体じゅうの力が失われた。  
唇の間から、舌が入ってくる。  
更に大きく開かれた脚の根元が、クチュクチュと音を立てている。混乱と倒錯の中で、彩子は激しく感じていた。  
「あっ…ああっ…!」  
三井の唇が離れると同時に、彩子は大きな声を上げた。  
「誰も来ないんだから、もっと声出せよ。それとも誰か見てるかもな、あのドアのすきまから」  
「ああっ…やめて…」  
恥ずかしい。甘く、しびれるような感覚が頭の中を支配する。  
腰が浮いてしまう。浮いた腰が、震えてしまうのが抑えられない。  
 
三井は彩子を抱えあげ、手首のテーピングテープをはがした。  
彩子の全身はすでに気だるく力を失っていて、三井の腕から逃れることなど、到底できそうになかった。  
「もうオレ我慢できねえ。部室でオナニーなんかしてるお前が悪いんだからな。お仕置きだ」  
そう言った三井の声は、荒い息にかすれた。彩子の濡れた泉の入口に、先端が当たった。  
「いやあっ!」  
彩子が叫ぶのと同時に、三井は腰を沈めた。  
ずん、という鈍い感触とともに、頭の先までが突き通されたような快感が全身に走って、彩子は  
三井にしがみついた。三井がゆっくりと動きだした。  
「ああ…あっ…いや…あ…」  
奥まで突かれるたびに、彩子は鼻を鳴らすような吐息を漏らした。  
両足首が掴まれ、大きく開かれて三井の肩に担ぎ上げられる。  
こんな格好をさせられたのは生まれて初めてのことだった。乳房を掴まれる。  
三井の腰の動きが激しくなっていく。こすられた肉の襞から、全身に快感が広がっていく。  
突き入れられるペニスの先が、彩子の体の最も深いところに届くと、悲鳴のような喘ぎ声を上げてしまう。  
「あっ…あっ…あっ…」  
屈辱的な姿が、その快感を増していくように思えてくる。  
「お前はほんとに淫乱だ」  
さらに激しく突き上げられる。  
「ああっ…!」  
突然、大きな快感の固まりが、彩子におおいかぶさった。  
「い…やあっ…」  
どうしようもなく感じてしまう。頭が真っ白になって、次に目の前が暗くなり、彩子は絶頂に達した。  
「オレもお前のこと、ずっとこうやって犯してやりたかったんだ。初めて会ったあの日からな」  
ぐったりと全身の力を失ったまま、彩子は三井のそんな言葉を目を閉じて聞いていた。  
 

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