初めて告白した時はびっくりしてたなぁ。
真っ赤になってあたふたしたりメガネを直したり。
でも一つ咳をしたら大人びた顔になって…。
“バスケが一番”
本気なのか体よく断られたのかわからないけど、別にどちらでもいい。
諦めなければうまく転がるかもしれないから。
「もうすぐ受験ですね。」
部活の片付けをしながら赤木先輩に言った。
「そうしたら卒業かぁ〜。来年もいい一年が入ってくれれば…。」
「彩子。」
「はい?」
「お前…木暮とはどうなんだ。」
「あ、バレてました?」
こんな話しが苦手なんだと容易に想像が付くほど苦い顔をしている。
「晴子も気付いてるぞ。まぁあれだけ態度で表していれば当たり前のことだがな。」
「晴子ちゃんがどうしたって?」
いつの間にか近くに来ていた木暮先輩に、赤木先輩は珍しく、わ!と言って驚いた。
「な、なんだよ赤木。晴子ちゃんなら流川に付いて帰っちゃったぞ。」
「ま、またかあいつは…!帰ったら一言言ってやらんといかん。」
「まぁまぁ。流川はもてるからなぁ。」
あははと笑う木暮先輩。今日もかっこいいです。
「木暮先輩の方がかっこいいのに不思議ですねー。」
「ははは…は…。」
笑いの止まった先輩の頬が赤くなっていく。ついでに赤木先輩も。
「ゴホンッ!…あー、お疲れ。」
バツが悪そうに赤木先輩が部室へ向かう。
赤面したままじろりと木暮先輩が私を睨んだ。小声なりに声を荒げる。
「彩子!お前はどうしてそーゆーことを言うんだ!恥ずかしいだろ!?」
「だって〜本当のことですよ?ほらほら先輩!着替えなくていいんですか?」
ブツブツと私を振り返りながら部室に行く先輩を見送る。
もうすぐ体育館で先輩を見ることはなくなるんだ。
部活に好きな人がいなくなるのは普通辛いことなんだろう。
私だって辛い。でもそれ以上にバスケのことで頭がいっぱいと言えなくなる先輩にわずかな期待を抱いていた。
■
「うわぁ。やっぱりみんなすごい食欲ですね。」
ガツガツ口に肉を運ぶ部員を見ながら晴子ちゃんが耳打ちしてきた。
本当すごい食べっぷり。見ているだけでお腹いっぱいになりそうだ。
今日で赤木先輩と木暮先輩は引退する。
送別会にと近くのしゃぶしゃぶ屋を選んだのだけど、これって予算足りるのかしら?
ひとしきり食べると席を自由に移動し、がやがやと入り乱れる状態になる。
なんとなく実感が沸かないまま時間だけが過ぎるが、
時折赤木先輩や木暮先輩の前で泣いている一年生たちを見るとその都度すごく寂しくなった。
「彩子。」
声をかけられて顔を上げると赤木先輩と木暮先輩が立っていた。
「あ、お疲れ様でした!受験、がんばってくださいね!」
「おう。」
そう言うと先輩たちが両隣に座ってきた。大きな2人に囲まれてなんだか照れる。
3人で改めて乾杯をした。
入部当時から、くじけそうになった時や諦めそうになった時、必ず2人は傍にいてくれた。
引っ張ってくれた赤木先輩と支えてくれた木暮先輩が、絶妙なバランスで私をここまで導いてくれたんだ。
色々と思い出していたら何も言葉が出てこなくなった。
他の部員のざわめきがやけに遠く響く。
「彩子。」
「はい。」
赤木先輩の声に…なんか、やばい。泣きそう。
ここで急に赤木先輩が立ち上がって朗々と歌い出したとしても泣けそうだ。
「俺は、常に部員に限界以上を求め日々無理をさせてきた。」
ポツポツよ低く話す赤木先輩の言葉に、動かないままはいと返事をする。
「だがそれは部員に限ったことじゃない。お前にも色々な注文をつけてきたはずだ。」
もう口を塞ぎたい。こんな空気は苦手なのだ。
声を出すと喉に痞えた塊が溢れてきそうで、ただうつむいて手に持ったグラスを見つめる。
「よくついてきてくれたな。この湘北が全国に行けたのも、お前のおかげだと思ってる。」
「彩子。お前の元気にみんなどれだけ助けられたかわからないよ。本当にありがとう。」
赤木先輩に続く木暮先輩の穏やかな声。
耐えられず頭をブンブンと横に振ると今にも出そうな涙を抑えるようにジュースを飲み干す。
「や、やめてくださいよ!泣かせる気ですか!?」
怒ったように言うと先輩2人が笑った。
ホッとした勢いでまた涙が出そうになる。あたふたと近くの飲み物を探すと向かいの三井先輩のグラスが目に入ってきた。
「あっちょっと先輩もらいますねっ。」
「あーっ!お、おいっ…!!」
勢いよく飲み干す様子を驚いたように見る赤木先輩と木暮先輩。
ターンッ!といい音を立ててテーブルにグラスを置くと、三井先輩が「あ…あ〜ぁ。」と情けない声を出していた。
あれ?これなんか味が変。これって……。
「オイ!?彩子!」
目の前がクラクラして気付いたら赤木先輩に寄りかかっている。
え?今のお酒??なんでお酒が…。
ちょっとした騒動になるかと思ったが周りもざわついているせいでみんな気付いていない。
「!!三井!お前〜!!!」
液体の正体を察した木暮先輩が睨むと、「しーっ!しーっ!」と必死で隠そうと慌ててる三井先輩が目に入る。
「ま、全く!呆れたやつだなお前は!彩子、大丈夫か?」
赤木先輩が支えてくれてなんとか起き上がる。ダメだ。クラクラする。
ここにいたら安西先生に間違いなくばれるだろう。
そしたら冬の選抜どころではなくなってしまうかも…。
「ちょっとヤバイですね…。すみません帰ります私。」
フラフラと立ち上がるとなんとか外に出た。
店から出るときに部員が色々言ってたけどよく思い出せない。
とりあえずここから出来るだけ遠くに離れとこう。
何重にも重なる景色をなんとか見分けて家の方へと歩く。
よろめいた身体をどこからか伸びてきた逞しい腕が支えてくれた。
「平気か?しっかりしろよ、フラフラじゃないか。」
その声にふらりと顔を上げると木暮先輩がいた。
「先輩?一人で帰れるから…。今日で最後なのに戻ってください。」
「心配するな。お前送ったらまた戻るから。」
それはこっちの台詞ですと返したくなるほど心配そうに顔を覗き込まれる。
いやだなぁ酔ったとこなんて見られたくないのに。
先輩が腕をつかんでくれているおかげでなんとか前に進む。
タクシーが通るたびに手を上げてみるものの、止まってくれる様子はない。
少しすると気のせいだと思い込もうとしていたものが存在感をもってきた。
(気持ち悪い)
クラクラする頭は落ち着くどころか激しさを増し、比例するように吐き気がしてくる。
(ウッ…やばい、吐く!!)
…あぁ。
今日は最後だから勇気を出して告白しようとか思ってたのに。
「大丈夫か!?吐きたいのか彩子?水飲むか?」
不安顔して恥ずかしさに追い討ちかけてくる先輩。
「ちょっと休んでもいいですか?」
「え…えぇっ!!??」
?なんだこの反応。
不思議に思い、ぼんやり立つこの場所を見渡してみる。
「ぁっ!」
気付くといつの間にかラブホテル街のど真ん中にいた。
そうだ。ここ通らないと帰れないんだっけ。
気分の悪さとは別の汗が額に浮かぶ。
真っ赤な顔で見ると先輩も同じだった。
私は木暮先輩が好き。木暮先輩もそれを知ってる。
ち、違うんです。いわゆる酔ったふりをして好きな人をラブホに誘うあの有名すぎる手段じゃないんです。
「あ、あのあのそうじゃなくって…。」
少し焦ったせいだろうか。忘れかけていた気持ちの悪さがまた押し寄せてきた。
今度こそダメかも。
周りにコンビニ等はなく、ただホテルが並ぶばかりだ。
酔っていて判断が鈍っていたこともあるが、
正直このまま帰るのは無理なので決心してホテルに入ることにする。
「せ、先輩店に戻っててください!わ、私ちょっと休んで帰りますから!!」
そう言うと口を押さえたままフラフラと近くのホテルに駆け込んだ。
(あーしくみわかんない。どうすんだこれ。)
もはや何を見ても視線が定まらない。ふいに足の力が抜け、ガクリと跪いた。
気付いた女の店員が慌てた様子で近づいてくるのがわかる。
(トイレ貸してくださいって言おう。言わなきゃ…。)
意識が朦朧とする。と、急に視界が高くなった。
「えっ!?」
「平気です、すみません。あとは大丈夫ですから。」
穏やかな声と間近にある木暮先輩の顔にドキリとする。
なんだ?なにごと??
ふわりと浮いている身体はしっかりと先輩に抱きかかえられたままどこかに移動している。
(お、お姫様だっこぉぉ!!!!????)
一瞬で酔いが覚めて吐き気も吹き飛んだ。
私の赤い顔をちらりと見た先輩は、同じく赤い顔で不機嫌に声を出す。
「全く。飲む前に酒だってわかるだろう?」
「す、すみません。」
先輩の怒った顔が照れ隠しのように見えてますます顔が熱くなる。
困った。
こんなことならまだ酔っていたかった。
素面の状態、加えてラブホテルで…先輩とどうしろって言うんだ。
トイレから出てくると、先輩が水を渡してくれた。
「少しはよくなったか?」
メガネの奥の心配そうな静かな目。
どうしよう…吐いてもないのにめちゃめちゃ気分よくなりました。
「はい。もう平気です。」
「よかった。ちょっと横になってろよ。」
まだ少しはクラクラするものの一人でも帰れる状態なのだが、
なんと伝えればいいかわからずとりあえずベッドに横になった。
静かな部屋にBGMだけが流れている。激しい鼓動は治まりそうもない。
鏡の前の椅子をベッドの脇に運んだ先輩がそれに座る。
優しく笑う先輩を直視出来ない。おかしいな、いつもなら私が攻め側なのに。
「彩子ってしっかりしてるようで抜けてるとこあるよね。」
思い出したように笑う先輩。
「豪快にイッキしてたもんなぁ。ははは見ててびっくりしたよ。」
「だって…お酒入ってるなんて思わないですもん…。」
「あはは。俺も彩子が急にふらつくから驚いた。」
考えたら2人でこんな風にゆっくり話すの初めてかも。そんな機会もなかったし。
いつもみんなに優しい先輩を独り占めしているようですごくうれしくなる。
こんな状況だけど、2人きりだし…告白するには一番いいときなのかもしれない。
決心してちらりと先輩を見ると、笑ってた先輩が視線に気付いてこちらを見る。
「せ…先輩。」
声が掠れる。私の固い表情でなにか悟ったのか先輩も赤くなった。
「あ、あーっと…水、横置いておこうな。」
焦ったように立ち上がろうとする先輩の指先を軽く握る。
先輩がギシッと固まった。
「ダメ。…ここに。」
流れるBGMがどこか遠いところで聞こえる。
もう告白するしかないのに心臓だけがせわしく動いて、何も言葉が浮かばない。
これでフラレるのかもと思ったら声が出てこなかった。
赤い顔をした先輩が一瞬私を見て視線を逸らす。
苦い顔で宙を睨んだ後、考えるように目を閉じた。
やっぱり迷惑なんだろうなぁ。
でも
どう思われても やっぱり好きなんです。
「…こっち見てください。」
消え入りそうになる声を押し出すと触れる指がピクリと震える。
先輩は眉根を寄せて真っ直ぐに私を見つめると、諦めたようにもう一度目を閉じてため息をついた。
「わ、私……ぇっ?」
しゃがみ込む先輩の顔が近づいたと思ったら、私の言葉を遮るようにいきなり温かな唇が重なった。
押しのけようとした両手をつかまれ、ベッドに押し付けたまま先輩が馬乗りになってくる。
何が何だかわからなかった。
力強い腕が、容赦ない舌が、普段の穏やかな先輩とはまるで結びつかない。
呼吸をさせないほどの強引さで押し付けるように唇が重なる。
「…っや、せっ先輩…!!」
唇が離れると熱を持った唇が頬を伝い耳へと移動する。
「あ…先輩っ…い、いゃっ。」
「騒ぐなよ。」
耳の傍で言われた言葉にぎゅっと閉じていた瞼を開いた。
信じられない。この人はあの優しい先輩なのだろうか。
体中がひやりとしたものに包まれていく。
低く低くうめくような冷たい声が頭をぐるぐると回り、言い知れぬ恐怖がまとわりついた。
「…んっ!」
耳に聞こえる水音と共にぬるりとした感触が耳の裏に伝わる。
丁寧にそこを舐め上げると耳朶を含み舌で転がす。
絶えず舌を動かしながら先輩の手が私の身体を撫でるように伝い布団の中に入って来た。
動きが予想できない大きな手に恐怖を感じ、触れる箇所にあわせて体が跳ねる。
「やっぱり…。彩子は敏感だね。」
くすりと笑う声は普段の柔らかな先輩のまま。
無理矢理私を押し倒している男は間違いなく、
ずっと想っていた先輩なのだと再確認させられ絶望的な思いに駆られる。
震える私には気付いているのだろう。が、かまわず先輩は身体を密着させたまま胸を掴んできた。
やわやわと力を込めながらじっと胸を見つめる先輩。
服の上からであるのに、まるで透かして肌が見られているような感覚に陥る。
胸からの刺激と羞恥心が加わり、冷えた身体が少し温かくなるのを感じた。
呼吸が荒くなるのを悟られないよう大きく口を開くが、その方がバレバレなことに気付く余裕はない。
反応を楽しむように先輩の指が胸の頂点に触れた。
「あっ!…はっぁ…!」
頭がパンクしそうなほど状況についていけない。顔に熱が集中する。
目に映る先輩はどこか冷静に私を見ていた。
「せんぱ…。」
呟く声を遮るように、再び口が重なる。
強引に唇を割り入ってきた舌が私の舌をなぞった。
さっきと同じ動きなのに、今はその感触に意識が飛ぶ。
体中の感覚が敏感になっているような気がした。
動かない私の舌を誘うように絡め、少し離すと口の際をなぞる。
たまらず声が漏れると急に荒っぽく奥へ舌を押し込めてきた。
先輩の二の腕を掴んだ両手から、熱い体温が伝わってくる。
自分自身、引き剥がそうとしているのか引き寄せようとしているのかわからなかった。
気付くと私の舌がより気持ちのいい刺激を求めるように自然に動きだしている。
貪欲に先輩を求める自分自身に気付いてにわかに戦慄した。
ぺろりと私の唇を舐めるのを終わりに先輩が離れ、満足そうに微笑む。
変化を悟られているのか押さえつけられている力を緩くした。
またがったままの体勢でゆっくりと大きな手がメガネを外す。
その下にある先輩の目はいつもの優しさがない。
怖いのになぜか侵食されることを喜ぶように身体の熱が高まった。
「彩子、顔赤いじゃないか。もう抵抗しないんだね。」
「そ、そんな…。」
突然私の手を掴み、先輩の大きくなって形が浮き出た下半身に触れさせた。
「ぇっ!?やっ…。」
押さえつけられる手から熱く硬くなっている感触が伝わってくる。
「興奮してるのわかるかい?彩子はどうだろ。」
「え!!??あっ!!ゃぁっ…!!」
いつの間にかスカートの中に入り込んだごつごつする指が下着の上からそこに触れてきた。
「あれ。濡れてるの?」
「…っ!!??」
ぬるりとした感触が下着と共に上下したことで、目をきつく閉じ唇を噛む。
先輩の笑い声に反応するように恥ずかしいほど溢れるのがわかった。
掴んでいた手を離し、服とブラジャーを一緒に荒っぽく胸の上までたくし上げる。
指で2、3度乳首を弾いたあと、口に含んだ。
「…っんぁあっ!!あっあぁああ!!」
我慢していた声が大きく出る。
自分の声ではないような高い声が意識の外側で響く。
声を出したのを確認したように下着に手を差し入れた先輩は直接敏感な部分に触れて擦り始めた。
強弱をつけ、その部分を圧迫する。
段々にはっきりとしてくる水音を楽しむようにわざと大きく響かしているようだ。
「んぁ…あぁああっ!!せんぱ…あっだめっき、気持ちい…ぃっあぁっ。」
ピクリと揺れた先輩が胸から口を離しこちらを見る。
下半身を弄る手は休めずに絶えず動かしながらにこやかに笑った。
「気持ちいいんだ。」
「んぅう…あっあっ。」
指の刺激に身体を揺らす。先輩の話が全く入ってこない。
下着から突然指を抜き、先輩がジーンズと下着を脱いだ。
引き締まった身体の下につく初めて見るモノに釘付けになる。
呆然となっている間に私の下着もスカートも剥ぎ取られていった。
覆いかぶさってくる先輩は吐息がかかる程近くにより、自分の大きくなったものに私の手を引き寄せる。
「ここ、擦って。」
そう言うと手に握らせたまま軽く上下に動かした。
先輩の手が離れ、戸惑った私はすがるように先輩の顔を見つめる。
「っ!?きゃっ!!」
突然叱るように敏感な部分を激しく擦られ痛みが走る。
「ぃたっ!…や、やだっ!せんぱぃ、やめ…っんんっ。」
「早く。」
低く楽しむ声に従いおずおずと手を動かす。
ぐりぐりと押し付けていた指が柔らかくなった。
「そうそう。いいコだね。」
子供をあやすように穏やかに呟くと、シーツにしみを作るほどに濡れた部分にゆっくりと指を差し入れる。
「ぅあ…あっ…!ぃ…たあい…っ!!」
あまりの異物感に声が漏れ、先輩の腕をきつく握り締める。
「えっ?」
熱い先輩の身体が反応するように震えた。
不意に内壁を犯す圧迫感から開放されきつく閉じていた目を開ける。
驚いたように私を見つめている先輩。
「…あ、…初めて…なのか…?」
先輩の表情が和らぎ動揺の色が見えて泣きたくなる。
ホッとしたような変な気分。
声を出すと泣きそうだったから頭を微かに縦に振った。
「…ご、ごめん。そうだよな。…バスケ一筋だったんだもんな。」
頭が冴えたのか先輩が密着した身体を少し離す。
え、だって…先輩は…先輩だって一筋だったんじゃないの?
混乱する私に先輩は頭を掻いて困ったように笑った。
「ごめん。…優しくしないとな。」
言葉を発しようと口を開いた途端、私の手を取った先輩が人差し指を口に含む。
舌先で、伸びた爪の間にまで侵入し指の腹に沿って股まで舐め上げた。
「せ…先輩…。」
唾液でしとりと濡れるそこはライトにちらちらと光り、今までされたどんな行為より官能的な光景に見える。
指股にぐりりと舌を押し付けられると思わず吐息と共に声が出た。
妖しい魅力を放つ挑発的な動き。大きく口を開けた先輩と目が合うと一際心臓が跳ねる。
きっとこれ以上ないほど顔が赤いはず。
指の刺激がそのまま体中に伝わって熱を上げて行くのがわかる。
そんな私を見ていた先輩が、甲に唇を押し当てるのを終わりに覆いかぶさってきた。
間近に私を見ると、頬にキスをする。
もう一度視線を絡ませて唇が重なった。
脳が痺れていく。何度も唇を柔く咥えられては離れる。
その合間に低い声は同じ言葉を浮かされたようにささやいていた。
遠のく意識を呼び起こすとようやく言葉は意味を成して耳に届く。
「…好きだよ。大好きだ。…彩子。」
「……………えっ?」
理解すると驚いて先輩の身体を押しやった。照れたような顔が映る。
困ったように視線を泳がせると、居心地悪そうに私を見た。
「好きだったけど…付き合ったりしたら襲っちゃいそうでね。」
あははと笑う先輩はいつも通りの先輩。
そんな理由で断られたんだ私。
気が抜けて呆れているのに、震える口からは本当?という言葉しか出てこない。
私の問いには答えず、もう一度キスをすると舌が侵入してきた。
同時に充分に濡れた部分をなぞる。
「ゆっくりしようね。痛かったらやめよう。」
「え?…あっ…。」
入り口を慣れさせるように弄りながら言葉通りゆっくりと指が中に入ってくる。
触れられたことのない部分を侵される不安が襲ってくるけど、止めて欲しくなかった。
半分ほど入るとそこで広げるように動かしている。
「平気?」
「ん…ちょっと、くるし…です。」
「そう。ちょっと慣らそうか。」
そう言うと反応を見ながら丁寧に奥へと指をおさめ、動かしながら出し入れを始める。
「んん…あっ…なん…かダメ…ですっ。あっ!先ぱぃっ…!」
きゅうっと抱きしめると、若干呼吸の荒くなった先輩は奥まで入った指を折り曲げ、間接の部分で上側を擦ってきた。
「はっ…!やだ…ぁ、激しくしないで…っ!」
痛みとは違う味わったことのない感覚が湧き上がってきた。
身体の芯がじれったくうずく。
「彩子。最後まで出来る?」
淫靡な音を一層響かせる先輩に、呼吸が整わないままぼんやりとうなずいた。
押し当てられたそれは熱く、指とは段違いの大きさは到底中に入るとは思えない。
「乱暴にはしないよ。」
泣きそうな顔をしてると、先輩がしわの寄る眉間にキスをしてそのまま唇を重ねてきた。
先輩の身体に力が入ると同時に押し寄せる圧迫感。
漏れる声は先輩の口に飲み込まれていく。
中を押し広げながら入ってくる痛みは想像以上にきつい。
力を抜きたいけどどうしたらいいのかわからなかった。
薄く開いた目に映る先輩も苦しそうに顔を歪めている。
唇を離した先輩が息を吸い込んだ。
何度かに分けて、ぐ、ぐ、と腰に力を入れる。
腿に、先輩の引き締まった身体が密着したのを感じた。
眉根を寄せ荒く呼吸を繰り返しながら、ふぅと息をした先輩が微笑む。
「…よかった。全部入ったみたいだ。」
うなずくと大きな手で髪を撫でられた。
肩を上下させている先輩はやはり苦しそうに見える。
「先輩も…痛いの?」
質問ににこりと笑った。
「少しね。だけど彩子の方が何倍も痛いよ。」
「…どうしよう…力の抜き方がわかんなくて…。」
「はは。そんな気にすることないけど…それに結構柔らかくなってきたよ。」
ホラ。と言いながら先輩が腰を引く。
全身に鳥肌が立つような感覚。
「あっ!ぅんん!!…っん…ぁ!」
「痛い?」
「わ…わかんなっ…でもや、やめないで…。」
「…うん。」
私の反応を慎重に窺いながら動く先輩。
「すごいよ彩子の中。ギチギチに締めつけて俺を搾り取ろうとしてる。」
からかうような声が水音に交じる。
これはなんなのだろう…。
気持ちいいのかと聞かれれば違う。だけど平常ではいられない。
「………そんな顔初めて見る。」
大きな手の平が頬を包み、奥に身体を沈めながら低くそう呟く。
――私、どんな顔してるの…?
「あっ…く…ぅっ!んん!」
一瞬の表情も見逃すまいとするかのように熱っぽい目で私を見下ろす先輩。
たとえ今私がどんなにだらしない顔してたとしても、こんな風に見つめられるならどうでもいいやと思ってしまった。
先輩の体温を私の中に感じる。
それはこの上なく幸せで、先輩を想う気持ちが身体から溢れていくようだった。
急速に意識が戻ってきて目を開けた。
果てた先輩の白濁した温かな液がお腹に飛び散っている。
何も分からないほど熱していた頭が行為の終わりと共に静かに覚めていく。
息も荒く私を見つめる先輩の目は優しく、まぎれもなく好きになった人だった。
「…彩子。」
一つ名前を呟いた唇が重なる。
途端に先ほど感じていた恐怖がこみ上げてきた。
「ふ、うぅ…うーーーーっ!!」
重なった口から聞こえる声に驚き、先輩が身体を離してまじまじと私を見る。
涙が止まらない。
声が届かないような先輩が怖くて、普段の先輩に戻ったことでホッとしてしまった。
とりあえずおどおどしている先輩に何でもいいから文句が言いたい。
「あ、彩子…。」
「もぉー!なっなんなんですかぁ…こんなのってっひどいぃぃ!!」
「ご、ごめんよ。悪かった。」
「わ、私初めてなのにぃっ!し、し、信じられないっ!」
「すまん!この通りだ!!」
深々とあわせた両手を前に平身低頭謝る先輩。
「ずるいっ!先輩の鬼畜!!」
涙声で訴える私を心底申し訳なさそうに見上げる。
「なんていうか、歯止めが効かなくて…。その、我慢したんだけど…ラブホテルだし…彩子は色っぽいし…あはは…。」
「わ、笑い事じゃないです。」
釈然としない気持ちとは別に顔が赤くなり、口の端がヒクヒクする。
こんなことで許さないわよ。許さないけど…色っぽいって本当ですか?
ぎりぎりの所で喜びを隠すが、突然先ほどの先輩の言葉を思い出した。
『ずっと好きだったけど我慢してた。』
やばい…と思ったがすでに口は左右に引っ張られ、へなへなとうれしそうな表情を作っている。
「あ、機嫌なおった?」
図々しくも見破ってくる先輩。
機嫌なんて直るわけないでしょー!?あんなのほとんどレイプですよレ・イ・プ!!
「…えーっと。鬼畜だけど、精一杯大切にするよ。俺と付き合ってくれる?」
いつもの笑顔で首をかしげて顔を覗き込む先輩。
コクン
即答すぎる自分の返事に愕然として、うなずいたままの体制でハッと我に返る。
たった今まで怒っていたのに情けないわよ彩子!!
「はは。よろしくね。」
ぽんぽんと頭に感じる大きな手が心地よい。
怒りなんて吹き飛んでしまった。そうだ、こんなときに不機嫌でなんていられない。
撫でられる心地よい感触の中、誰彼かまわず手当たり次第に報告したい気持ちをもてあました。