スレイヤーズ  

───いつも求めるのは俺ばかりで  

「・・・はあっ・・・・・・ああああっ!!」  
ひときわ甘い嬌声を発しリナは達した。  
味気無い宿屋の部屋にお互いの荒々しい息づかいだけが響く。  
しばらくすると胸の上のリナは息と髪を整え起きあがった。  
「・・・どうした?リナ?」  
「用が済んだから自分の部屋帰る」  
「・・・・・・は?」  
「だーかーらー、用が済んだから帰るっていってんのよ!バカクラゲ!」  
「用が済んだからってお前・・・」  
「いいじゃない、あたしの勝手でしょ?」  
こんな関係になってからもリナは相変わらずそっけない。  
やっと思いが通じた俺はずっと側にいたいとすら思うのに。  
「なんでそういうコトいうかなぁ・・・」  
あまりの冷たさに少し意地悪をしたくなり、彼女の首筋に顔をうずめた。  
「・・・なぁ、リナっていつもいい臭いするよな。もしかして俺の為に香水とかつけてくれてる?」  
「なっ!単なる石鹸よ!自惚れないで!」  
予想してたとはいえあまりの言われっぷりにやっぱり困らせたくなった。  
「ちょ、ちょっと!ガウリイ離して!」  
立ち上がりかけたリナをひっぱり、ベットに組み敷く。  
なにかを言おうとしたリナの柔らかな唇をキスで塞ぐ。そしてじょじょに口づけを深くしてゆく。  
一度登りつめた躰はたらすく火がつくから、リナの瞳にはすぐに甘い光が灯った。  
そのまま耳のフチからたどるように唇を下ろしていく。  
「ガウリイ・・・ダメ・・・だってば・・・ぁあっ」  
さきほどつけた胸元の紅い印をなぞるように柔肌を強く吸い付けるとリナは耐えきれずに声を上げた。  

小ぶりの胸をもみしだき、濃く色づいた先端を口にふくむ。  
「ふあっ・・・やっ・・・ぁあん」  
「ヤダっていっても、ココは随分素直だな」  
リナのなかに指を入れると、すでにソコは溶けそうな程潤んでいた。  
ゆっくりと身を沈めてゆき、全てがリナに包まれると動きを止める。  
「あっ・・・ガウリ・・・なんでっ」  
「どうして欲しいかいって、リナ」  
「・・・・・・っ!」  
けれど、リナは甘くにらみつけただけで唇を噛む。その眼はそんなにも誘っているのに何も言わない。  
いつもそうだ、どんなに焦らしても、たとえイク寸前で止めてもリナからは決して求めない。  
「ったく、可愛くないなぁ・・・」  
思わず苦笑してしまう。そろそろコッチが限界だ。  
リナのナカは熱くて、狭くて、ギュウギュウにしめつけてくるから、入れただけでイッてしまうそうになるのに、ガマンなんてできるはずもない。  
だからいつも折れてしまうのは自分の方だ。そう、いつも狂おしいまでに求めてしまうのは自分だけ。  
「ひあっ・・・ああああっ!」  
情けなさとイラつきに急かされるように腰をうちつけるとリナが喘いだ。  
せめて、せめて求められなくとも、快楽だけでも共にしたい。  
噛みつくようにキスをし、舌を吸う、花芯をねぶりリナを更なる高みへ導くと、彼女は最後の抵抗といわんばかりに背中に爪をたてる。  
その爪痕の傷すら愛しいモノになるとは知らずに。  
「───っ!リナっっ!」  
「ああっ!ガウリイッ!ガウリイ!」  
リナのナカに全てを吐き出し、彼女の香りに包まれて俺は眠りについた。  
夜明けが永遠にこなければいいのにと思いながら。  

 
 

翌日、リナは文句を言いたいだけ言ってさっさと魔導士協会へ行ってしまった。  
やることもないので街の市場をぶらつくことにしたけれど、隣にリナがいないからうまそうな食べ物のにおいも味気なく感じてしまう。  
ふと、その焼き鳥や果物の香りに混ざって、とある香りが鼻孔をくすぐった。  
・・・・・・これはリナのにおいだ・・・・・・  
なにかに惹きつけられるように香りがする方向へ向かう。一抹の期待を抱きながら。  

「ああ、やっぱし」  
がっかりと言うか、やっぱりと言うべきか、香りの正体は石鹸だった。  
気を取り直して、たとえ俺の為じゃなくても、リナが気に入ってるものならばプレゼントするのもいいかもしれない、珍しそうに飾ってあるしきっと手に入りにくいのだろう。  
「すいません、コレ、包んでもらえますか?」  
店のオヤジは不思議そうな顔をして尋ね返してきた。  
「兄さん、コレ、女物の石鹸だけどいいのかい?」  
「・・・・・・ああ、いいんだ彼女へのプレゼントだから」  
少し答えに迷ったのはリナのことそう呼んでいいか迷ったから  
「兄さんの彼女、コノ石鹸使ってるのかい?」  
「ああ、そうみただけ・・・」  
店のオヤジは言い終わるか終わらないかのうちに満面の笑みを浮かべて、俺の背中をバシバシ叩いた。  
「いいねぇ!いいねぇ!アンタ幸せものだねぇ!コノ石鹸使って貰えるなんて羨ましいよ!」  
「な、なんなんですか、急に。なんかあるのか?コノ石鹸?」  
「ありまくりだとも!いやね、コノ石鹸、ゼフィーリアの女達に古くから伝わるものでね」  
・・・・・・ゼフィーリア?確かリナの故郷だ  
「この石鹸の香りをまとって好きな人と結ばれるとね、永遠に幸せになれるという言い伝えがあるんだよ!」  
・・・・・・あ。  
「なんでもゼフィーリアの女はとびきり素直じゃないっていうしね、あははは」  
「ああ・・・ホントに素直じゃないよ」  
抑えようとしても、笑みがこぼれてしまったのは仕方のないことだろうと思う。  
コノ石鹸を見せたときリナがどんな顔をするのか楽しみでたまらない。  
少し自惚れてしまってもいいのかもしれない。  

───求められなくても、ずっと好きでいさせてもらうよ、リナ  

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