スレイヤーズ  

 セイルーン王城敷地内にある、神殿。  
 月は既にその尖塔にかかり、あとは沈み行くばかり。  
 満月の光の下を、アメリアが駆けていく。  
「アル、どこ………?」  
 昼頃にアルフレッドから「大事な用事がある」と言われて、彼女は厳しい乳母や侍女の目をかいくぐり、抜け出してきた。  
 しかし真っ暗な大聖堂の中を見回してみても、従兄弟の姿はない。  
 仕方なく手首にはめた宝石の護符(ジュエルズ・アミュレット)に光明(ライティング)を灯してみる。  
「アルー? 居るんでしょう?」  
「………ああ、アメリアか。ごめん、眠ってた」  
 大聖堂の一番奥、祭壇の傍まで来て、ようやく彼が応えた。  
「わ、びっくりしたぁ。何処で寝てるのよ、あなたは」  
 アルフレッドが顔を出したのは、参列者が座る長椅子の最前列。  
 くしゃくしゃになった黒髪を見ると、本当にそこで眠っていたらしい。  
「それで、大事な用ってなぁに?」  
 アルの隣にちょこんと腰を下ろし、本題を尋ねる。早めに用事を済ませて戻らなければ、彼女が居ないことに気付いた侍女達が大騒ぎするかも知れなかった。  

「うん、聞きたいことが幾つかあってね。  
 …………アメリア、君は今好きな人がいるかい?」  
「好きな人って……恋愛対象として? 居る訳無いでしょ。わたし、そんなに親しくしてるひとなんて居ないもの」  
 何を言うんだか、と呆れを多分に含んだ眼でアルを見上げる。  
 しかし、彼は長い睫毛の隙間から、粘っこい視線でアメリアを見下ろしていた。  
「そう、よかった。  
 じゃあ、もうひとつ聞かせて。………セックスに興味はある?」  
「…………………っ! な………変なこと訊かないでよ! わたし、帰る!」  
 アメリアの頬に、かっと朱が差す。アルの質問を自分への侮辱だと取ったアメリアは激昂して立ち上がると、くるりと踵を返した。  
「帰さないよ」  
 魔法の光を灯したままの手首を、ブレスレットごと掴まれる。  
 彼女が放して、と喚くより早く、アメリアの視界が大きく傾いだ。  
「っつ!!」  
 何が起きたか分からなかったが、躰が重力を感じ取ると同時に、左の肩が酷く痛んだ。頬に硬いものが押し当てられる。床だった。  
「ぶつけてしまったかい? 手荒にしてごめんよ、アメリア。でも大丈夫、そんなのは取るに足らないくらい、気持ちのいいことを教えてあげる………」  

 気が付けば、アメリアの両腕は背中一括りにされていて、無防備だった両脚の間にアルフレッドの躰が割り込んでいる。  
 魔法光に照らされた彼の表情は、笑みを形作っているというのに何故か禍々しくさえ見えた。  
「あ、アルフレッド……あなた、何を」  
「直に分かるよ」  
 くすくすと笑いながら、アルフレッドはポケットからバンダナを引っ張り出し、アメリアの手首を背中で固定してしまう。  
 そして乱暴に彼女の躰ひっくり返し、頭上に皓々と光明(ライティング)を放った。  
「警備の者には儀式を行うって言ってあるから、誰も来ないよ……  
 …ああ……やっと君を手に入れられるんだね……愛してるよ、アメリア…」  
 アメリアは光の眩しさに眼を細める。アルフレッドの表情は、逆光でよく見えなかった。ただ、ぞっとするほどいやらしい笑みを湛えた口許だけが、網膜に焼き付く。  

 アルフレッドは何も前触れもなく身を屈めると、アメリアの唇に自分のそれを重ね合わせた。同時に、彼の両手は巫女服の上からアメリアの乳房を鷲掴みにする。  
「んんっ?!」  
 食い付くような勢いで激しいキスを繰り返され、息苦しさに開いた唇から彼の舌が滑り込む。噛み付くことも思いつかないまま口腔を蹂躙され、アメリアはただ必死になって、顔を左右に振り続ける。  
「んぁっ……っは……あ……んぅぅっ…!」  
 ぐにぐにと無造作に乳房を捏ね回されて、痛みと屈辱から涙が零れる。  
「ふふ……アメリア、やっぱり叔母さんやグレイシアに似て胸が大きいね………ほら、ここをこうすると、気持ちいいだろう?」  
 揶揄なのか侮辱なのか。アルは彼女を言葉でじりじりと責める。  
 言葉通りに両胸の先端をきゅっと摘み上げられて、アメリアの躰に甘い痺れが走った。  
「っは、あぁぁあっ!」  
 乳房を揉み込まれていたせいか、それとも彼女の感度が良いのか。  
 摘まれた先端は見る間に硬くしこりだし、白い布地をツンと押し上げるまでになった。  

「いっ、や……ぁ…やめっ……っン…」  
「イヤ? こんなにここを尖らせておいて、イヤだって?」  
「い、イヤに決まってるでしょ……っ! 放して、アルフレッド……あなた…自分が何をしているか、分かって………っあぁ!」  
 立ち上がった先端を弄ばれ、首筋を舐められて初めて得る快感に耐えながら、アメリアはあくまで強気にアルフレッドを叱咤する。  
 しかし、アルは彼女の言葉などお構いなしに、アメリアの胸ぐらを掴むとそこを左右に引き千切った。  
「いやぁぁぁぁぁ――――――――っっ!!」  
 布の裂ける音と、アメリアの悲鳴が響く。  
 しかし彼が衛兵を言いくるめていたお陰か、それとも風の結界でも張られていたのか、誰一人として大聖堂の扉を開けるものは居なかった。  

 引き裂かれた布の間から、たわわな一対の果実がぷるんと顔を覗かせる。  
 こんもりとした白い肌の上に、赤く色付いた先端がふるふると震え、立ち上がっていた。  
「ほぅら………ちゃあんと勃ってるじゃないか。本当は感じているんだろう? セックスを経験してみたいんだろう? 素直になりなよ、アメリア」  
「ちっ…………ちが、う………ッあ!」  
 自分の思い通りにならない彼女に苛立ち、アルフレッドはアメリアの胸にむしゃぶりついた。柔らかく、たっぷりとした乳房を両手で掻き集め、その間に顔を埋める。  
 胸の中心に寄せた先端を両方同時に口に含んでは舌で転がし、或いは吸い上げ、その刺激はアメリアの悲鳴を嬌声に変えた。  
「んんぁっ……っは…あ……あぁ…ア……あぁぁぁぁぁンッ!」  
 それがアルフレッドを調子づかせたか、彼はまた深い笑みを面に湛える。  
「感度が良いね、アメリアは。ほら、分かるだろう? ここがこんなに濡れて、染み出してきてる………可愛いよ」  
 責める乳房を片方に絞り、アルは空いた手をアメリアのズボンに押し当てた。そこはじっとりと湿った熱を帯びていて、布地という僅かな壁を取り払えば、そこがどれくらい濡れているのかを赤裸々に表している。  

「さ、見せてくれ………君がまだ誰にも見せたことのない場所を、ね」  
「や、やめ………!」  
 アルは最初こそ、アメリアのズボンを脱がすつもりで居たのだが、  
彼女があまりに腰を揺らして抵抗するため――それは彼を誘っているようにも見えたのだが――  
ひとつ舌打ちをすると、またしても力任せに白い布地を引き裂いた。  
「あぁっ…………」  
 両脚を割り開かれ、隠すもののないソコが魔法の明かりに晒される。  
 誰も触れたことのない秘所は蜜に潤んでおり、充血した肉芽が襞の中に埋没して震えている。  
 アルフレッドは堪らずソコに顔を埋めると、慎ましく震える真珠をひと舐めした。  
「ふぁ…っ!?」  
 舌のざらついた部分で音がするほど舐め上げられ、アメリアの腰が大きく跳ねた。  
 逃げ出したくて躰を捻るが、それはアルの舌を思わぬ所に導いてしまい、結果、アメリアの躰から更なる官能を引き出すだけにとどまった。  
「ひっ、あ……んぁあっ……!」  
「美味しいよ、アメリアのココ………」  
 蜜を啜る、淫猥な音。それ程にまで溢れさせているのかと、耳を塞ぎたくて暴れてみても、手首を戒めるバンダナはびくともしない。  
 魔法で切り落とすという選択肢は、既に頭からすっぽりと抜け落ちていた。  
 もっとも、この状況では魔法に集中など、出来なかっただろうが。  

 どれだけ藻掻いても男の腕力に敵うはずもなく、やがてアルの舌先が彼女の秘められた場所に侵入する。  
「ひぃ……っ! あ、あ、あぁあああぁぁぁぁっ!!」  
 舌はアメリアの柔らかい内側をなぞるように愛撫し、引き抜かれれば蜜にまみれた唇が肉芽を吸い上げた。  
 暴れる脚から力が抜けたのを見計らって、脚を押さえていた手が離れ、性感の高められた乳首をこねくり回す。  
「……あァっ……やぁン…嫌ぁっ……許して…もぉ……ゆるし…ひぁ!」  
 やがて充分に濡らされたアメリアの入り口に、熱を帯びたモノが押し当てられる。  
 快楽に浮かされたアメリアの頭が急速に冷えて、彼女の顔からは一気に血の気が引いた。  
「い、イヤ! アル、許して! それだけはイヤ………!!」  
「大丈夫、これだけ濡れていればすぐに佳くなるから……痛いのは最初だけだよ………」  
 アメリアが垂らした蜜が、入り口に押しつけられた先端を伝い、床に滴る。  
 アルフレッドはいきり立ったソレを数度秘裂に擦り付けて、滾々と湧きいでる蜜をソレに塗した。  

 

 ぐちっ、と先端がめり込む。入り口が押し開かれる感触。  
「いや、いや、いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 痛い、やめてーっ!」  
 躰全体で暴れてみるが、腰をがっちりと抱え込まれていてはどうにもならない。  
 彼女が犯されていることを教え込もうと、アルフレッドは殊更ゆっくりと腰を進める。  
 しかし彼女のあまりの暴れっぷりに業を煮やして、彼はアメリアの下半身をぐいと向こうへ押しやった。  
「?!」  
 躰を「く」の字に折り曲げられたアメリアの上に、アルフレッドがのしかかる。  
 見開かれた彼女の視界に、間近でなど見たこともない自分の性器と、恐らく初めて見るであろう、そそり立つソレが見えた。  
 それも、自分の秘所に先端をめり込ませたモノが。  
「アメリアは痛いのが長続きするより、大きな痛みが一瞬で終わる方が良いみたいだね。そうしてあげるよ………ほら」  

 酷く自分勝手な解釈をして、アルフレッドは一気にアメリアの中に突き立てた。  
 引き裂かれる痛みと親類に犯される嫌悪、処女を喪失する恐怖がアメリアの中で爆発する。  
「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」  
 アルの肩に乗せられた、ブーツとズボンの残骸を纏うだけの彼女の両脚がぴんと伸ばされた。  
 アメリアの内部に深々と突き入れられたソレを、彼女の意志に関わりなく内壁が締め上げていく。  
「いやぁっ! 止めて! も、もう許してっ! お願い、抜いてぇぇぇっ!」  
 痛みへの反射から、アメリアの躰が痛いほど強張る。力を抜けば楽になるとは言え、それは出来ない相談だった。  
 溢れ出した涙で視界が滲む。  
 揺らめく涙のフィルタを透かして、アルフレッドの微笑みと破瓜の血が流れる様がぼやけて見えた。  

「すぐに佳くなるって、言っただろう?」  
 アメリアが泣き喚くのも構わず、アルフレッドは紬送を始めた。  
 引き裂かれたばかりの内壁を、凶悪な肉塊が掻き回す。  
「っ、ぐ……うぁ…やだぁ……止め、てよぉっ…アル……おねが…っ…」  
 アルフレッドのモノが抜き差しされる度、蜜と血の入り混じったモノが泡立って、外へ外へと掻き出される。  
 もはや抵抗は無意味と悟って、アメリアの躰から力が抜けた。  
 それすら意に介さず、アルフレッドは巧みな動きでアメリアが感じる場所を探り始める。  
 繋がり合った部分を膝の上に乗せ、両手を伸ばして胸を愛撫することも忘れずに。  
 引きつれる痛みにアメリアの気が遠くなりかけた頃、彼女はふと気付いた。  
(な、に………これ………気持ち………いい?)  
 痛いばかりだったはずの感覚の中に、異質のモノが混じっている。  
 言葉で表現しきることは出来ないが、甘いような、切ないようなその感覚は、  
アルのそれが内壁を擦りあげる度に痛みの比率を掻き消していく。  

「んっ…………………ア…………」  
 今までとは確実に違う、甘い感覚。それが快楽だと悟って、アメリアは戸惑うばかりだ。喉の奥から溢れ出す、とろけた声。  
 自分がこんな声を出すのかと、アメリアは自分を恥じた。  
「………アメリア、感じてるのかい? 言ったとおりだろう? すぐに佳くなるって………」  
 甘ったるく囁くアルの声も、何処か遠い。  
 突き上げられる腰の律動が早められるに従って、アメリアの頭の中で、幾つも幾つも光がまたたく。  
 燃え上がるほどに熱を帯びた躰と、息吐くたびに溢れる甘い声は、もうどうにも止められない。  
 肉のぶつかりあう感触と、自分の中を出入りするソレの熱さを知るころには、彼女は自ら腰を振るまでになっていた。  
「ふ、あっ…ア……やぁンっ、あ、あぁっ……アル…っ」  

 獣のような息遣いが二つ、魔法光の消えかかった大聖堂に響き渡る。  
 傾きすぎた月の光がようやく差し込んで、ふたりの淫らな姿を更に明るく照らし出した。  
「あんっ、あ、あぁっ……ぅン……ふ…んん…!」  
 自分のソコがキュッキュとアルのモノを咥え込んでいるのを感じながら、アメリアは戒めを解かれた手で自らの乳房を揉みしだく。  
 しどけなく開かれた唇の端から、唾液が一筋滑り落ちて煌めいた。  
「……っは……イイよ…アメリア。ほら、見てご覧」  
 アメリアにキスの舌使いを教え込んでいたアルフレッドが、不意に左手を指し示す。  
「――――――……………!!」  
 月明かりに照らし出され、神々しさを増した神像。  
 神聖なる大聖堂の、神の前で、禁忌の交わりに歓喜する自分たち。  
 巫女であるはずの自分の浅ましさに恐ろしくなっても、もう後戻りは出来ない。アメリアの限界は、近かった。  
「我らが神にも見て貰おうじゃないか……僕たちの交わりを」  
「っ、だ、ダメ…っ……や、あ、嫌、嫌ぁぁぁぁああああぁぁぁぁっっ!」  

 びくびくとアメリアの躰が跳ねる。彼女は一瞬、羞恥から両手で顔を覆い隠したが、  
その手もすぐにアルによって剥がされ、絶頂に駆け上がる淫蕩な表情を月光の中に晒した。  
「っ、あ、アメリア……アメリア……愛してるよ、アメリア…っ!」  
 絶頂の余韻に震えるアメリアの躰に縋るようにして、アルフレッドもまた、彼女の中にその精を吐き出す。  
 腹の中に注ぎ込まれるその熱さに、再びアメリアは歓喜の叫びを上げた。  
 遠ざかる意識の中で最後に見たのは、満足そうに微笑み  
「愛している」と壊れた自動人形(オートマータ)のように繰り返すアルフレッドと、  
永遠に溶けない氷のように冷たく照り映える神像。  

 いつかこの、禁忌の交わりに対する罰が自分たちに下るのだと、彼女は意味もなく確信していた。  

 
 
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