「だれっ!」
栗毛の少女が勢い良く、ベットから跳ね上がる。
「ライティング!」
明かりの呪文を唱えながら戦闘体制を取ると――「ガウリイ‥‥」浮かび上がった人物に、リナは身体の力が抜けていった。
「――あ、アメリア?――アメリアは?」
本来そこにいるはずの少女がいない。とたんにリナの顔が険しくなる。
「ガウリイ、アメリアは?」
ここにいるはずの無いガウリイを、『なぜいるのか』と問いつめる事も忘れ、リナはガウリイを揺さぶった。
「落ち着けって」
「だって、だってアメリアが――っん‥‥」
動揺するリナにガウリイはいきなり口付ける。一瞬おとなしくなったリナがはっと我に返り、強くガウリイの胸板をたたいた。
「なにすんの!この一大事に!」
「や、だから落ち着けって。――ゼルガディスもいないんだ。多分二人一緒だと思う」
「‥‥ゼルも‥‥はあ」
へなへなと、また力が抜けていく――。なんだってあたしは気付かなかったの!と頭を掻きむしった。自慢の髪がぐしゃぐしゃだ。
セイルーンのお家騒動に巻き込まれたリナ達は、暗殺者からアメリアを守るため、交代で警護に付いていた。
女性であるリナは、アメリアの寝所にベットを運び込み、すぐそばで守る役目だったのだ。
「まだまだ、だな?」
「うーん‥‥、殺気ならわかるんだけどな‥‥ってガウリイ!あたしに殺気放ったってーの?」
「殺気――に近いもんなら」
睨み付けるリナにガウリイは手を伸ばす。軽く彼女の肩を押すと、あっさりひっくり返ってしまった。
すかさずその両手首を押さえ付け、「殺ってやる、じゃなくて犯ってやる――かな?」と、笑った。
「こんな時に冗談は止めてよね」
あっさりと押さえ付けられて腹が立つ――リナは蹴りで束縛から抜け出そうとした。しかし、身体ごとのしかかって来たガウリイにそれすらも封じられてしまった。
「交代の時間だから来たって言うのに、ゼルガディスいないしさ」
喋りながらリナの首筋に唇を落とす。
「っん‥‥」
「心配になって部屋覗いたらアメリアはいないし」
その唇を滑らせ、耳の後ろを嘗め上げる。
「はっ‥ん‥‥」
「隣じゃリナが気持ちよーくお休み」
ボタンに手が掛かった。
「ムカムカっと、いやムラムラっと来て、職務怠慢のお仕置きをせんとなーってとこだ」
「とこだじゃないっ!ここアメリアの寝室なのよ?」
「気にしなきゃいいだろ?」
「気にするって!それに――アメリア達が急に帰って来たらどうするのよ」
ガウリイがニッと笑う――「それでこそ、お仕置きだろ?」と。その笑みにサーっと血の気の引いたリナは急に暴れ出した。そんなとこ見られた日には一生ネタにされる!
「やだっ、絶対やだっ!ねえ、ガウリイいじわるしないで、ね?あやまるから!可愛いリナちゃんのお・ね・が・い」
「〜〜〜〜〜〜(可愛いけど)ダメ」
ガウリイはこの上なく楽しそうだ。まるで新しい悪戯を思い付いた子供のように、うきうきとボタンを外していく。上3つボタンを外したところで急にガウリイの手がとまった。――許してくれるんだ!
「これくらいでいいか‥‥」
「うんうん、そうだよねー。‥‥って?‥‥やんっ!」
襟を掴んだガウリイが手を左右に引き降ろし、パジャマがリナの腕あたりまでずれた。胸が剥き出しになる。
「全部脱がなくてもいいんだよなー。あ、言っとくけど動いたらボタン飛ぶぞ?」
「ほ、ほとんど動けないじゃない!やーめーよーよーガウリイぃ」
「ヤダ」
今までの経験から彼女は解り過ぎるほど、解っていた。
こうなったガウリイを誰も止める事が出来ないと。
「う〜〜〜。‥‥ちょっとだけだよ?」
「おうっ!ちょっとだけな」
こいつ解ってんのかしら――と、不安になる。ガウリイだからだ。
しかし、思考もそこまででストップしてしまった。
ガウリイが巧みな指使いで、リナの身体を愛撫しはじめる――
胸の谷間に顔を埋め、指を乳房の外周に這わす。ぞわぞわと、官能が呼び覚まされた。
「は‥‥んんっ‥‥」
「いい匂いだな、リナ」
乳房に頬ずりされ、彼の金の髪がくすぐったい。じらすように唇が乳房の円周を描いた。
なかなか先端に口付けしようとしないその唇に、『早く舐めて』と言えなくて――あぁ、これは本当にお仕置きなんだと、切なくなった。
「して欲しい?」
「――そう言う事言うんなら、今すぐどいて」
「――じゃ、する」
今さら止められても、身体が疼いて仕方ないのだが、そっちがそうくるならこっちにも考えがある。
そうやって言葉の駆け引きを楽しむのもセックスの醍醐味なのだ。
「っん‥‥」
堅く力を込めた舌先が、リナの乳首にあてがわれ、ビクッと身体が震える。もう片方の乳房にもガウリイの手が当てられた。指を立てて乳首をなぞる。
嬉しげに、まるで鼻歌を歌っているかのよう――リナの身体を愛撫する時のガウリイは、いつも幸福に満ちあふれた表情をする。その体全体で『愛している』と囁くように。
と、ふいにガウリイの顔が訝しげになった。
首をひねるような仕種でズボンの中に手を入れる。
「っん‥‥」
割れ目にそって指を滑らせ、どくどくと溢れる蜜をすくい取る。――そっと手を抜き取ってその指を見つめると、絡んだ蜜を丹念になめとった。
「濡れてる‥‥」
この人は一体何を言ってるんだろう。明らかにいつもと違う仕種に、首をひねりたいのはこっちの方だ。
「いやな、リナいつもと違ってあんまり声出さないからさ、感じてないのかなって」
「だせるかァ!」
「俺、リナの声が聞きたいな」
「〜〜〜〜〜じゃ‥‥出させてみれば?」
「そうする」
そう言ってガウリイはリナの背後に回りこんだ。
首筋に顔を埋め、チュッと音を立てながら軽く吸い上げる。指はリナの唇をなぞり、やがてその指が彼女の口に差し入れられた。
「舐めて、リナ」
「ん‥‥」
もう片方の手を下着の中に滑り込ませると、何度か割れ目を摩って、小さな蕾を攻めはじめる。
「はっ‥‥んんっ‥‥」
差し込まれた指の間から唾液がひとすじこぼれた。むしゃぶりつくような、首筋から耳にかけての責めと相まって、堪えきれない喘ぎに、ついガウリイの指を噛んでしまった。
「痺れそうだ」
唾液に濡れた指をなめとり、その手を乳房に移動させ、激しく揉み込む。蕾を嬲っていた指は、蜜の溢れるリナの秘所にずぶずぶと差し込まれ、激しく抜き差しをくり返して行った――
「はぁっ‥‥っん‥‥あぁっ‥」
あんなに我慢していた声がもれてしまう。今もしアメリア達が帰って来たら――と、思うと我慢の分だけかえって性感が高まってしまったようだ。それでも歯を食いしばるように耐える彼女の声は、まるですすり泣きのように聞こえた。
リナの耳の中に舌が侵入する。熱い吐息と、淫らな水音と――彼の優しい低い声――『愛しているよ』
「ああぁんっ‥‥!」
言葉でイってしまった。
ずり下げられていたパジャマがするりと肩に戻される。
「風引いちゃうからな」
「‥‥お風呂に入りたい」
「ぐしょぐしょだからな〜っ痛てっ!」
ほどよく(?)ガウリイの両頬を左右に引っ張って、リナは彼を睨む。「プッ‥‥」と、笑い声が漏れて、どうしょうもなく愛しい人にキスを一つ贈った。
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「遅いな‥‥」
「遅いよね‥‥なにしてるんだろ」
「『ナニ』シてるんだろ?」
「‥‥まさか」
「そのまさか」
二人は押し黙る。手持ち無沙汰な時間が流れ、ガウリイが痺れをきらしたように言った。
「なあ‥‥」
「なに?」
「ヤバい事になってる」
後、どのくらい時間が残っているだろうか?考えても仕方ないなと呟いて、リナは栗色の髪を耳にかけた。
■■■おわり■■■