スレイヤーズ  

平和主義者で、誰からも愛されていた。  
私に正義を教えてくれた。  
とても、とても大好きだった――  
■  
セイルーン  
王宮内の1室で小柄な身体が何度も寝返りを打っていた。  
神経が高ぶって眠れない。身体はとても疲れているはずなのに。  
隣のベットに視線を移すと、栗毛の少女が気持ちよさそうに眠っている――うらやましい人――なぜだかホッとする気分だ。彼女はいつも変わらない。  
少女はそっとベットから抜け出すと、ドアに向かって歩き始めた。  
重いトビラを軽く軋ませ、滑るように廊下へ出るとふいに声がかかった。  
「アメリア!」  
「――ゼルガディスさん‥‥」  
「どこへ行くつもりだ?リナはどうした」  
「ふふっ、気持ちよさそうに眠ってらっしゃいます」  
「――あのバカ‥‥」  
寝ずの番とは行かなくても、保護する対象が部屋を抜け出す気配に気付かず、眠りこけるとは。真面目な彼は半眼でドアの向こうを睨んだ。  
「いいんですよ、リナさんだって疲れてるでしょうし」  
「お前はどうなんだ」  
「わたし、ですか?」  

アメリアの父、この白魔法都市『セイルーン』の第一王位継承者であるフィリオネル皇子。  
彼が死んだと聞かされたのは、長い旅から帰ってすぐのことだった。――暗殺。亡骸もなく、彼女が手にした物は生前の父が愛用していた短剣のみであった。  
リナの言によると『第一王位継承権を狙う何物かの仕業』で、『次に狙われるのはアメリア』だそうだ。  
実際ほんの数時間前、やって来た刺客をゼルガディスが撃退した。  
「どうしても、眠れなくて」  
と、笑ってみせる。しかしその笑顔は力ない物だった。  
「ゼルガディスさんも休んで下さい、わたし、大丈夫ですから」  
ゼルガディスは、大きく溜息を付くとかぶりを振った。  
肩の当たりで切り揃えたつややかな髪、パジャマの袖から見える細い手首――。  
普段ならキラキラと生命力に溢れる大きな瞳が赤く充血していた。  
「おまえをほって、眠れるものか」  
「ぜルガディスさんは仕事熱心ですね」  
仕事熱心――と、言うのか。  
「‥‥アメリア、どこへ行こうとしてたんだ」  
「父さんの‥‥執務室に‥‥」  
行ってどうなる物でもないが、ここから一番近い。暗殺の危険がある今、一人で遠くに行くのは得策ではないだろう。思い出に浸るだけならどこでもいい。  
「一人になりたいのかもしれんが、行くと言うなら付いてくぞ」  
「――はい」  
アメリアがにっこりと笑った。  

■  
「わたし仕事してる父さんを、よくここで見てました」  
広い執務室の中央より少し後ろには、大人がひとり寝そべってもまだ余りあるような大きな机、フィリオネルの巨体を受け止める頑強な椅子があり、壁伝いに本棚が並んでいる。  
今アメリアがいるのはもっと手前で、大きなソファアが鎮座していた。  
「ここに座って待つんですよ、父さんの仕事が終わるのを」  
アメリアはソファに腰を下ろすと、机を懐かし気に見た。  
『もうちょっとで終わるからの』  
――自分に向けられる優しい笑顔。胸が高まるような――父はいつでも彼女のヒーローだった。  
「うっ‥‥」  
何かが喉の奥から込み上げてくる。  
「くっ‥‥うっく‥‥」  
そしてゼルディガスは困っていた。  
自分にリナの舌の100分の1でもあれば、なんとかなるのかも知れない――余り多くを語らない彼は、掛けるべき言葉が見付からず、ただ視線だけを動かしていた。  
小さな肩を震わせ、口を押さえながらなんとか堪えようとしている彼女。  
俺は好きな女に慰めの言葉も掛けられないバカか――  
「アメリア‥‥」  
「ごっ、ごめん、なさい‥‥わたし」  
「いやっ、その‥‥貸そうか?――じゃなくて、っていうか‥‥」  

 

思考力が低下して、何も考えられなくなる。頭で考えるより、身体が先に動いたと言う表現が正しいだろう。  
「泣くな」  
ゼルガディスはソファに片方の膝をのせ、アメリアに覆い被さると強く抱き締めた。  
「‥‥!ゼルガディスさん!ゼルガディスさあん!」  
堰を切ったようにアメリアが声を上げて泣き出した。  
「お前に泣かれると‥‥辛いんだ‥‥」  
■  
嗚咽をくり返し、泣きじゃくるアメリアが少し落ち着いて来た。  
すんすんと鼻を啜っている。  
「‥‥‥‥‥」  
「‥‥‥‥‥」  
一段落すると、いきなり周りがよく見えてくるものだ。お互いの身体にしっかりと腕がまわされている。  
こんなふうに抱き合うのは今回が初めてで、緊張に広い執務室の中、二人の心臓の音が響き渡る。  
「あーその、アメリア?」  
「は、はい!なんでしょうゼルガディスさんっ!」  
上ずったアメリアの声がどうしょうもなく可愛らしい。それにこうやって強く抱き締めてみると、年の割にはよく育った胸の感触がいやにリアルだ。  

「アメリア‥‥もしお前を傷つける事になるのなら、断ってくれてもかまわない――お前にキスしたい――」  
「は‥‥はいっ!――え、と‥‥どうぞ!」  
顔を真っ赤にさせながら、きつく目を閉じるとアメリアは顔を上げた。ふるふるとした震えが密着した身体から直に伝わる。  
(こいつ――可愛すぎ)  
ゼルガディスはゆっくりと唇を落とした。  
角度を変えてついばむようにもう一回。  
しばらくして、そうっとアメリアが目を開けた。その大きな瞳には熱がこもっている。  
「――ゼルガディスさん‥‥わたし、ゼルガディスさんの事が‥‥」  
その言葉を言わせまいと、もう一度口付ける。  
「愛してる――アメリア」  
「わたしも、私もゼルガディスさんの事が大好きです!」  
とさっ――。軽い音を立ててアメリアの身体がソファーに沈んだ。  
片手はアメリアの身体に回したまま、もう片方の手で彼女のつややかな髪をすく。  
そのまま彼女の唇に自分の唇を強く押し付け、舌を侵入させていった。  
「っん‥‥ん」  
初めての感覚に震える小さな舌を、ゼルガディスの舌が絡めとっていく。口内を激しく貪られ「はっ、はっ」と息も絶え絶えに、我知らず――アメリアは彼の首に手を回していた。  

ゼルガディスの唇が、唇から顎へ、顎から喉へ徐々におりてくる。  
スライドさせるようにその唇が肩と首の付け根にたどり着き、きつく吸い上げていった。  
赤い花びら一枚――  
「――わるい‥‥アト‥‥付けちまった」  
「‥‥あ、と‥‥?」  
「だから‥‥キスマーク‥‥」  
「キスマークってなんですか?」  
無垢の瞳がキラキラと好奇心に輝いている。――これは実際目に見えるところに、付けてやるしかないか――  
「アメリア手を貸せ」  
「?、はい」  
アメリアの手を取り、パジャマの袖をめくると唇を付けて吸い上げる――ほどなく完成。  
「ほら」  
「あっ‥‥これ‥‥。これがキスマークなんですね!リナさんの身体によく付いてます!」  
「は?」  
「いつもなんだろうって思ってたんです」  
「(ガウリイのヤツ‥‥)で――場所は?」  
「えーと、背中とか、首とか――あと胸‥と、か?‥‥あっ」  
思わず口に手を当て赤面するアメリア。分かってしまえばこんなに恥ずかしい事はない。  
「ゼルガディスさん、いじわるです。わかっててわたしに言わせたんですね。そんなの正義じゃないです」  

おかしくてたまらない――喉の奥から込み上げて来て「クッ、クッ」と、笑いがもれてしまった。  
つられてアメリアも笑い出す。  
ひとしきり笑ったあとで、アメリアはふと気が付いた。  
「ってことは、リナさんてばガウリイさんといつもこういう事してるんですね」  
「まぁそう言う事だな」  
「なんか、スッキリしました。これで良く眠れそうです」  
(待て!)スッキリしてどうする!――と、突っ込みたくなったが、今日はこれくらいでいいのかも知れない。ゼルガディスはソファーから立ち上がると、アメリアに手を差し伸べた。  
「いいなぁ‥‥そっか、だからリナさんて綺麗なんだ」  
「はあ?」  
「いつも思ってたんです。リナさんって胸はないけど、ほんとにセクシーなんですよ」  
「さらりとひどい事を‥‥殺されるぞ?」  
「へへ‥‥でもほんと。愛されてるんだなって思って。うらやましいです」  
その言葉に、ゼルガディスは差し伸べていた手をアメリアの肩に置き、ゆっくり体重を掛けた。  
突然の事にバランスを失ったアメリアが「きゃっ」と短い悲鳴を上げた。  
「なら、もっと先を知ってみるか?」  
愛されると言う意味を。  
驚愕の瞳が熱を持って潤んでくる。  
「――教えて‥‥下さい‥‥」  

■  
狭いソファーの上で、からみ合う身体。お互いをむさぼるような激しいキス。そっとパジャマの上から膨らみを揉みしだくとアメリアが身体を捩った。  
「直に触るぞ」  
「う‥‥はい」  
片手で器用にボタンを外し、するりと手を侵入させる。柔らかな膨らみだ。軽く揉み込んで乳首に指を立てると一瞬で硬く熱を持ちはじめた。  
「っん‥‥」  
「我慢しないで声を出せ?」  
「でも‥‥ふ、っんん‥‥」  
恥ずかしさにか、口をきゅっと結んだままアメリアは悶えた。そんなアメリアから声を引き出そうと、ゼルガディスは更に刺激を強めていく。ちゅっ‥‥と音を立て、敏感な乳首を吸い上げる――赤く色付くほどきつく。  
「‥‥っん、あぁっ!」  
とうとうアメリアから歓喜の声がもれた。舌先で転がされ、ますます高まる性感に我を忘れてよがり出す。  
「あっ‥‥っん‥あぁん‥‥き、もち‥いいで‥す」  
「そうか――でもまだまだこんなもんじゃないぞ――」  
一旦離した唇を、今度は腹部に持ってくる。パジャマのズボンに手をかけるぜるガディスに、アメリアはハッと我に帰った。  

 

「だっ、だめですゼルガディスさん!」  
「お前でも何をされるのか解るのか?」  
「‥‥そ、それは‥‥でも――」  
言い淀むアメリアに苦笑しながらも、そのままズボンを下着ごとずりさげ「諦めろ、アメリア」――そう言い放ち一気にそれを脱がせた。  
「う‥‥」  
両手で顔を隠すアメリアをチラリと見、視線を下にやる。髪と同じ色をした茂みに早くも雫が付いていた。  
この様子では、先程脱がせた下着も大変な事になっているだろう。そう思わせるほど、そこはしっとり濡れていた。  
指ですくって、丹念に味わう。ふだんの子供っぽい彼女が想像出来ないほど、女の味がする。もっと、もっと深く味わうために、ゼルガディスはその茂みへと舌を伸ばした。  
「っん、あぁんっ、あっ、あっ!」  
アメリアの短い喘ぎ声がこだました。水音を啜るそれと相まって、部屋全体に淫媚な靄がかかったようだ。  
割れ目にそって舌をなぞらせ、震える小さな花心を転がす。唇で挟んで器用に擦ると、アメリアの秘所から止めどもなく蜜が溢れて来た。それを下唇ですくうように嘗め取り、吸い上げる。  
「あ‥‥っん‥‥ゼルガディス‥さ‥ん」  
未だ経験した事のない、甘美な快楽――彼女は切なげに愛しい男の名を呼んだ。  

一方ゼルガディスも、自分の手の内で乱れていく少女に、激しい情愛を募らせていた。もう、己のモノもすでにはち切れんばかりになり、早く彼女に入りたいと猛っている。  
(もっと、ほぐしてやらないと)  
「アメリア、力を抜け」  
「はっ‥‥っんん‥‥」  
まずは1本。ゼルガディスは出来るだけゆっくりと、アメリアの秘所に指を挿入した。  
異物の侵入に、アメリアの身体に力が入り、指を締め付ける――が、内壁を擦る彼の巧みな指使いに、その力も徐々に抜けていった。  
悦びに震えるアメリアの内壁は、新たに増やされる指を難無く受け入れヒクついている。  
始めはゆっくりだった擦り上げも、徐々に動きが激しくなった。  
「あっ‥‥あぁっ!なっ‥‥あっ‥あぁんっっ!!」  
アメリアの身体がビクビクッと震えた。―――いったい何が起こったの?と、いいたげな顔で呆然とする彼女の耳元に「イった?」とゼルガディス囁く。  
「あ‥‥イくって‥‥っこれが?」  
「ああ」  
「はぁ‥‥なんか‥素敵な気持ち、です」  
「それはよかった――さて」  
さて――と。ゼルガディスはズボンをずり下げ、己のモノを取り出した。剛直にそそり上がったそれが、アメリアの目にさらされ「きゃっ」と、彼女は目を覆う。  

「入れるぞ?」  
「は‥‥入るんでしょうか‥‥」  
アメリアは覆っていた手を少しおろして、チラリとそれ見た。初めてみる物だ。大きくて、硬そうで‥‥なんだかグロテスクで――  
「う‥‥」  
「さわってみるか?」  
「え‥‥遠慮しときます‥‥」  
真っ赤になって固まっているアメリアが可愛らしい。ゼルガディスは優しく彼女の頬を撫でた。  
「お前の中に入りたいんだ――」  
「――」  
アメリアはきゅっと唇を結んで、コクリと頷いた。  
■  
アメリアのそこはまだ先程の熱を持っていた。  
入り口にゼルガディスのモノが押し当てられ、緊張に身体が固まる。ガチガチになった太ももを、優しく摩りながら「力を抜け」と言う彼の囁きが聞こえるのだが、彼女の身体は本人の意志に反してほぐれない。  
「筋肉痛になるぞ?」  
「え、ええー?」  
「深呼吸でもしてみるか?」  
「は‥‥深呼吸‥‥ですね」  

間延びした声で「はぁあ〜〜〜あ、ふうぅぅ〜」と、アメリアは深呼吸を始めた。ここは笑うとこじゃない――わかっているのだが、なんとも愛らしい仕種だ。  
夢中になって深呼吸をくり返すアメリアに、(不意打ちですまん)と、心の中で呟き彼は己のモノに力を込めた。  
「あっ‥‥つうっ!」  
めり込むようにゼルガディスの剛直になったそれが中ほどまで挿入され、引きつれる感覚にアメリアは顔をしかめた。  
「つらいか?」  
「‥‥だ、大丈夫‥‥です」  
わずかに眉を寄せたままではあるが、なんとか笑顔を作り、求めるようにゼルガディスに手を伸ばす。  
自分の体重を支えていた手を片方だけ浮かせると、彼は伸ばされたその手に指をからめた。  
少しだけ腰を引いて、抜けない程度に挿入を緩めると、今度は力を込めて一気に打ち付けた。  
「っん‥‥はっ、はっ‥‥はぁ‥‥」  
短く浅い呼吸をくり返すアメリアの目が、ゼルガディスに注がれる。  
「はっ‥‥入った‥ん、ですか?」  
「ああ‥‥はいったよ‥‥」  
「――うれしい――」  
「うん‥‥」  
嬉しいのはお前だけじゃない――そう口に出す代わりにゼルガディスはゆっくりと、けれど強くアメリアを抱き締めた。そしてもう一度――  
花が咲くような笑顔で、彼女は言うのだった――うれしい――と。  

■  
「あれ?リナさんとガウリイさん‥‥」  
寝室に帰ると、もともといたリナと、もとはいなかったガウリイが二人揃っていた。  
「アーメーリーアー!あんたどこに行ってたのよ!」  
「‥‥え、と‥‥散歩‥‥ですが」  
「もう!目が覚めたらいなくなってるし、心配したじゃない」  
詰め寄るリナにおびえつつ後退すると、背後にいたゼルガディスとぶつかる。  
「――心配してる人間がこんなとこで待機してるのか」  
「やっ、それは」  
「おれが探さなくていいって言ったんだよ」  
「ガウリイさんが?」  
リナのすぐ背後から、大柄な金髪の青年――ガウリイがのそっと立ち上がってこちらにやって来た。  
「交替しようって思ってさ、来てみたらゼルガディスはいないし。で、部屋を覗いたらアメリアもいないだろ?――ま、一緒にいるんだろうしめったな事はないと思ってな」  
まあ、そう言われればそうなのかも知れないが、なんとなく納得出来ない感は拭えない。しかし、そんな事を今議論してもどうなる物でもない――そう自分に納得させ、ゼルガディスは引いた。  
「じゃあ、おれは休ませてもらう」  
「あぁ、後は俺に任しとけ」  
「――アメリア」  
いきなり名前を呼ばれ、身体がビクッとなる。  
「は、はい」  
「おやすみ」  
「――はい、ゼルガディスさん‥‥おやすみなさい」  

 

くるりと踵を返すと、ドアの向こうにゼルガディスの身体が消えた。続いてガウリイも出ていく。  
残された少女二人は互いに顔を見合わせた。――女同士――なぜだか解る。  
「リナさん‥‥ガウリイさんとシましたね?――しかも、わたしの寝室で」  
「そう言うアメリアだって‥‥ゼルとシたでしょ。――どこかで」  
「職務怠慢ですね」  
「あ、そゆ事言うかなぁ、このコは。――あたし指だけだもーん」  
「偉そうに言う事じゃないですよ?」  
女同士――恥じらいなんて言葉は、一体どこの混沌の海に消えたのか。結局明け方近くまで、暴露トークがくり返される事になるのだ。  
嬉しい事は続く物。  
死んだはずの父は生きていて、別の意味で歓喜の涙を流す事になるのだが、それはまた別のお話。  
もちろんあの日の男性陣のトークも――。  

■■■おわり■■■  

 
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