何でもその植物は、媚薬成分を蔦から出すという。
その汁は、かなり高値で売れるらしいが、植物本体の方は、未だに誰も栽培に成功したことがなく、価値は計り知れないという話だった。
その話に、飛びつかない訳は無く――――
「植物の分際で、このリナ・インバースに刃向おうなんて、ずうずうしいにも程があるわよね。」
カキンコキンに凍らせたその植物に蹴りを入れながら、リナは不機嫌に呟いていた。
「とにかく!あたしは、町までコレ届けてくるから、あんたはその辺りで、それ何とかしてなさい!」
そして汁塗れのオレは、あっさり森に置いて行かれた。
「明日の朝、迎えに来てあげるわよ。ありがたく思いなさい!」
朝まで一緒に居てくれた方が、よっぽどありがたいぞ。薄情者。
だってしょうがないだろう?
お前さんが掘れって言ったから、頑張って根っ子から掘り出していて、蔦が触手みたいに伸びてきたんだ。
オレは一応剣士だから、咄嗟に剣で切ってしまったんだ。
お前さんが、見つけたそれに全然近づこうとしなかったのは、実は触手の話を知っていたんじゃないかとか、
魔法を使わずに、オレ一人に掘り出させようとしたのは、実は囮にしてたんじゃないかとか、
色々思ったりしてしまうけれど、
その結果オレが少々欲情したって、仕方ないだろう?
「なんとかしなさいったって、なぁ」
思わず、イチモツに話しかけてしまった。
リナが汁被ったんなら、きっちりみっちり最後まで世話すんのに・・
2回ほど自家発電した後、横になってぼんやりしていた。
明朝リナが迎えに来てくれるまで、何もすることがない。
大体媚薬なんて、役に立たなくなったオッサンや、自力で女を落とせないヤローが使うモンであって、オレにはあまり関係がないんだ。
我慢できない状況なんて、毎日なんだぞ、リナ。
「腹減ったな〜。」
リナが居れば、野宿でも携帯食だけで済ませることは殆どない。魚でも木の実でもキノコでも、あいつに掛かれば山でも海でも、食べ物の宝庫になる。
留守番は珍しいことじゃないけど、何回しても慣れない。暇で暇で、気が狂いそうになる。
「川、あったよなぁ・・」
とりあえず、リナが帰ってきた時に愛想を尽かされないように、自分の生臭さを消しておかねば。
一人きりで誰に気遣うことなく、服をその辺りに脱ぎ散らかして、勢い良く水に浸かる。少し泳いだところで、暇さは減るはずもなく、魚を採ろうという気も起きない。
リナが戻って来るのなら、火を起こして獲った物を焼くぐらいの事はするのに。リナを思い出すだけで体が熱くなる。あんな汁より余程酷い媚薬だ。
一人でいて楽なことといえば、この熱を押さえ込まなくても良いぐらいか?
それでも、そんな気になりきれず水に浸かったまま、日が暮れていくのを見ていた。
かさりと遠くで風が葉を捲くる音がした。辺りを探りながら、近づいて来る。
リナだ。
そう感じただけで、さっきやり過ごした熱い塊が、何倍にもなって襲い掛かってきた。
それは、むくむくと鎌首をもたげて欲の放出を要求する。
駄目だ、せっかく帰って来てくれたのに。
オレは急いで、しごき始めた。
リナが近付いて来る。見られてしまうかもしれない。その羞恥が高まるにつれ、息があがって行く。
大丈夫だ。下半身は水に浸かっているから、解らないはずだ。息を抑えなければ。
リナが気配を消す。オレを見つけて、忍び寄ろうとしている。まだバレていない。
リナが、見ている―――。
視線が固定された。腕と水面を見ている。バレた。そして、見ている。
オレは勃起して反り返ったモノを、リナに見えるように川から出て、リナの方に向けて立ったまましごき続け、彼女の名を呼びながら、射精した。
素知らぬ顔で服を着て、焚き火を始める。彼女は未だ近付いて来ない。
オレが彼女の名を呼びながら、達したのを見て何て思っただろう。
汚らわしい? それとも 裏切り?
大丈夫。彼女は逃げた訳じゃない。まだ近付いて来ないだけで。
オレは寝たフリをして、彼女が傍にやってくるのを待てばいいだけだ。
早く来てくれるよう、願いながら。