何かを調べるとやらで、セイルーンにやって来た。
以前一緒に旅をした王女の計らいを目当てにしていたらしいリナは、当初の目的通り王宮に泊まり宿代を浮かせ、且つ王宮図書館使い放題の立場をせしめ、ゴキゲンに食い放題・見放題な日々を堪能していた。
オレはというと、リナが図書館に篭っている間、ほったらかしにされ、フキゲンな日々を堪能していた。
それでもまあ、リナがゴキゲンならと我慢していたのだが、僅か数日で王宮魔道士やら司書やらと仲良くなり、オレを置いて町に繰り出したり、その仲間に若い男が混じっていたりした辺りで、我慢の限界がきた。
浮気か?捨てる気か?とゴテてゴテてゴテ倒し、図書室に「イビキをかかない」という条件付で同行した。
プライドが何だ。そんなモンとうに捨ててある。
図書室ではリナの隣にデンと居座る。リナはオレのものだと、周りにはっきりと解らすためにも。
同室で泊まっているのだから、ある程度は知れているのだろう。近寄ってきたのは、リナと既に仲良くなっているらしい女の子数名。ひそひそ声で数言挨拶を交わして去っていく。
「キョウハ、カレシトイッショナノネ」
「コノヒトガ、リナノコイビト?」
もっと言ってくれとそのやり取りを聞いていると、
「チガウチガウ」
とリナの照れた声。
「ふーん、違うんだ。」
低く篭ったのは、オレの声。
人が去った後のその声に、リナはバツの悪そうな顔をし、本に没頭するフリをする。
オレはといえば、形ばかりに持ってきていた本を枕に、机に突っ伏していた。
「オレのだと、思ったのになー。」
机の下に隠れた、太股に手を這わせぼやく。リナの目線はまだ本の上だが、顔は火を噴いたように赤くなっている。手は無遠慮に進んでいく。
内股をくすぐり円を描き、舌の変わりに舐め上げる。
周りから見れば、ただの恋人同士のやりとり。リナの紅い顔も照れているだけにしか見えないだろう。
まさか今こんなことをされているなんて、思いもしないだろう。
股間に辿り着くと、さすがに足を閉じてくる。一旦膝まで退却し膝裏に進出しくすぐると、逃げ場を求めて足が浮く。それをゆっくり自分の腿の上に置き、大きく股を開いた形にすると、さすがにリナの顔が険しくなる。
それが可愛くて面白くて、伸ばした手でアソコに「オレの」と指先で書いてみる。リナの顔が再び赤くなり、ちらりとこちらに目線をくれる。目があった瞬間、だろ?とばかりににっこりすると、くらげと小さく唇が動いた。
しばらくリナはその変な体勢でいてくれた。借り受けたその足をマッサージの様に揉んでいた。
ピクリとした反応が来たのは、太股の裏から内側に手を伸ばしていたときだった。
リナは知らん顔をしている。
少しずつ少しずつ、足の付け根に近付いて、敏感な彼女が我慢できる程度の刺激を繰り返す。
それでも次第に、顔や耳だけでなく、首や首下に朱が広がっていく。服越しに胸の突起が見て取れるようになる。オレは気づかぬフリをして、足を揉み続けた。
アソコに指が当たる。故意ではなく、偶然のように。彼女は何事もないようなフリをする。
でも無理だろう?お前さんが15の頃から、オレは―――。
リナは、認めない。自分の中に沸いてきた熱を。オレの手で簡単に煽られる事を。そして押さえつける。
リナは、知らない。それが更に熱を呼ぶことを。オレ自身を煽る事を。
そして、熱の発生地に指を這わす。
ズボンの上からでもはっきりと解る、その熱と湿度。
緩やかに指を上下に動かせば、息が飲み込まれる。この快楽を受け止めるだけで精一杯の彼女から、未だ抵抗がないのを良い事に、芽吹き始めたばかりの、しこりを弄り、嬲る。そこから指を外さぬまま、おそらく開きかけているであろう部分にも、指をじわじわと沈めていく。
突然、彼女が本を持ったまま席を立った。オレの明確な行動は、彼女の只でさえ強い羞恥心に、より一層の羞恥をもたらしたに違いない。でも、オレから逃げられる訳がないだろう?オレが逃がす訳ないだろう?
本を棚に戻そうとするその手から、わざわざ本を取り上げてから棚に戻す。周りからしてみれば、仲睦まじい二人にしか見えないだろう。リナはもう完全に拗ねていて、こちらを見ようともしない。意識を切り替えようとして、奥の棚に向かう為にオレに背を向ける。
壁を感じる瞬間だ。
なあ、お前さんを縛る気は更々ないけれど、オレは全部お前さんのモノなのに、これは不公平じゃないか?
仕返しじゃないけど、意地悪じゃあないけれど。
「乳首、立ってるぞ。」
そう言ってそこを突付くぐらいのいたずらは、許されるだろう?
ごすっと、肘鉄が鳩尾に入った。
そこからは、オレが拗ねる番だ。本棚の奥で立ったまま本を読んでいる姿の横に立ち、通路からの視線を遮り、いきなり尻を揉んでみた。
「止めてよね、こんな所で。」
低く怒った声。知らん顔をされた分知らん顔をかえし、そのまま腰を撫でる。マントの下は人目に着かないのに、無防備で。
身をよじって拒絶を示そうとしているリナの意識は背中に向いていたから、シャツを引っ張り乳房の形を曝してみた。咄嗟に本を抱えそれを隠す。今度は意識が胸に向かっていた。それじゃあ、駄目だって。
掴んでいたシャツを上に引き上げ、その中に手を差し込む。ようやく生肌にありつけた。肩をすくめて前屈みになってまで、すがり付いている本を取り上げる。すがりつく相手がちがうだろ?
その泪目の上目使いも、駄目だって。余計に苛めたくなるじゃないか。両手で胸元を押さえるのも。
腹ががら空きだ。ベルトをつかめるじゃないか。
「隙だらけだなー、リナ」
オレも前屈みになって、リナの顔を覗き込む。目を逸らさずに、怒った視線が真っ直ぐに送られてくる。
ぞくぞくした。
オレの手がベルトを掴み、動揺を誘う。マントの下の手はその間に、後ろから股間へと伸び、そこへの責めを開始する。
「誘ってるのか?」
ほら、足をキツく閉じ手を外せないようにして、胸を押さえる腕からは、その柔らかさを見せ付けている。
だからほら、こんな場所でも我慢出来なくなる。
「なあ、‘オレの’だろ?」
耳を舐め首筋に顔を埋めたところで、頬を引っ張られ剥がされる。かなりキツイ光を宿した瞳が、オレを射竦める。
「じゃあ、オレがリナのもの。」
「それも違う。」
はっきりとした否定。はっきりとした拒否。拒絶されて尚、その声も言葉も彼女らしいと思ってしまう。
必要とされていない、オレが勝手に彼女に付随しているだけだ。
黒くて澱んだものがオレの中に、昔から在って、その存在を忘れていたものの面積が、痛みを伴って広がる。
股間への刺激を強め、その隙にベルトを掴んでいた手をその中に進入させる。そしてそれによって、できた隙に尻に回していた手を前に回し、ベルトを緩める。ようやく自由を得た中の手は、すぐさまワレメを侵し始める。ワレメの中は既に熱が溢れていた。
「びちょびちょじゃないか。」
あっさりと指の出入りを許すソコを、わざと音を立てるため浅い挿入を繰り返す。
「ほら、こんなに音させて、回りに丸聞こえだな。やらしい。」
中指と薬指を入れ、親指でクリを剥き擦る。人差し指でアナルとヴァギナの間を責めると、リナの愛液の量は一気に増える。
「あーあ、掌までびちょびちょになっちまった。全然関係のない男に、こんな人目のある所で指入れられて、こんなになるなんてなぁ。只のインランだったのか、リナは。」
彼女は目の前の棚に手を尽き、必死に快感に耐えていた。唇をかみ締め震える膝を伸ばし、声を殺し続けている。
「チガウ・・」
たどたどしく否定し、また唇をかみ締める。どうしようもなく大量に湧いてくる苛立ちを、そのまま指先で伝える。
膣内から押し上げた指にクリを、ぐりぐり押し付け、体を持ち上げるばかりに、アナルへも指を滑り込ませる。耐え難いほどの刺激が彼女を襲っているのが、その顔や首に流れる汗が物語っている。
そして膣は急速に指を締め上げ、体は硬直し、彼女は達した。
「アンタのは・・」
余韻に深く誘われながら、まだ強い光を放つ瞳は、魔法の拘束より酷くオレを拘束する。オレはお前に、囚われているんだ。何故それが解らない?
「アタシが傷付かないようにとか、何処かへ行かないようにとかは、恋愛感情なんかじゃない。執着っていうのよ。」
好きなものを欲しいと、願うのはいけないことなのか?好きなものを守りたいと思うのは、お前には重荷だと言うのか?
「そんなの、愛じゃない。恋じゃない。」
力の無くなった指を自分で引き抜き、身繕いを整え、何事もなかったようにいつもの顔に戻る。
「そうね、ただの保護者の方が、いいかもね。」
捨てられるのだ、オレは。今あっさりと引き抜かれた指が、オレ自身なのだ。だから
「行くわよ。」
そう声を掛けられた時に、酷く間抜けな気がした。
「チガウって言ったの、そんなに腹が立ったの?」
図書室を出て人気の無くなった場所で、リナがそう訊いて来た。どのチガウに対してのものなのか、解らない。
返事が出来ずに只黙ってリナの後を着いて、部屋に戻った。
「アタシはアンタのものじゃないし、アンタもアタシのものじゃないわ。」
ドアを閉めた途端、振り返りもせずに彼女はそう言った。
「光の剣があったら? オレはリナのものに成れたか?」
辛うじて考えられた事は、そんな情けないことだった。
「それもチガウ。光の剣はアタシのだけど、アンタはそのオプション。それから」
陽当たりの良い部屋。窓から溢れる光。振り返った彼女は光の中に居て、オレは陽の届かない部屋の隅に突っ立って居る。
「今日みたいなのも、当分ダメ。我慢できないんなら、部屋も別にして貰うわ。」
体の関係も当然ながら拒絶され、本当にもう赤の他人になるのか。
せめて保護者なら、一緒に居てもいいんだろうか。もしそれを許してもらえるのなら、最初からやり直すチャンスを与えて貰えることになる。
「アタシは好き好んで、くらげと一緒に居るだけだし。アンタは好き好んでアタシにくっ付いてきてるんでしょ? アンタが言ったのよ?一緒に旅するのに、理由はいらないって。」
どちらかのモノでは無くて、ただ傍に居たくて、一緒に居たくて。それは、きっと真実で。
だのに、埋められない欲がまだある。見つけたかった筈の真実は、見つけたかった幸福なのに、まだ足りないと何処かで感じる。
「オレは、お前の何だ?」
弱音だと解っていて、訊かずには居られなかった。この飢えを満たして欲しかった。
「アンタは、アタシの子供のお父さんよ。」
子供のように顔を真っ赤にして、えらく憤慨したリナが目の前に居た。
何も解らずに突っ立つオレに、慣れたスリッパの感触が襲ってくる。
「図書館でアタシが何の本見てたか、気付かなかったの?! 気付かれるのがイヤで連れて行かなかったアタシの努力は、丸々無駄? アンタの耳に入らないように、みんなに口止め料に奢ったのものも、ぜーんぶぜーんぶ無駄だったの?!」
暴れ出そうとするいつもの調子のリナを押さえるために、名を呼び抱きしめて、オレは当の昔に満たされて居る事を思い出し、そしてその上を行く更なる幸せが自分の身に降ってきたのを理解し、彼女の髪に顔を押し付け咽び泣いた。