ガウリイに手伝って貰うのは、最初から抵抗がなかった訳じゃない。流石に恥ずかしいと思うし、見られたり触られたりするのも、かなり恥ずかしい。  
でもガウリイは、はっきりと言わなくても、察してくれたし、次の日には何も無かった顔をしてくれる。それにもう日常的に何回もお願いしているのだから、今更なカンジなのだが、どういう訳か前より恥ずかしさが増しているのは、なんでだろう。  
今日は天気が良くって、急ぐ目標もなくって、本当にのんびりただ歩いていただけだった。先を歩いていたのはあたしで、ガウリイはのんびりと後ろを歩いていた。ただそれだけなのに、本当に急に、ぞくりと、その欲求はあたしの奥からやってきた。  
体がオトナに成りかけているからだと、ガウリイは言っていた。何度ヤってもヤりたくなる、それこそ昼夜の区別なく、そのコトにしか頭が回らなくなると。  
 
でもだからって、こんな昼日中にこんな道端でなんて、本当に自分がどうかしているとしか思えない。ガウリイが当たり前の顔をして、相手をしてくれているから良いものの、ひとりだったらさぞ悩みまくっていただろう。  
 
下着が擦れてしまう。そんなささやかな刺激すら心地よく感じる。どうしよう、ちょっと休憩しようとでも言ってしまえば、大体察してはくれるだろうけど、こんな小さいとは言え街道の脇に隠れてするのは、さすがに度胸とかの問題じゃないように思う。  
「どうした?」  
いきなりにゅっと、顔の横に顔が出てきて驚いた。だがその覗き込んできた顔のやや心配そうな笑顔にほっとする。  
「な、なんでもない。」  
宿屋まで我慢するしかないから、できるだけソツの無いように笑うが、やっぱりこの相手には通じないらしい。  
「火照ってる。」  
ヒトのほっぺたを突付くのは辞めて欲しい。  
「あれか?」  
親指で示された方向を見ても、ただ木々が茂っているだけで、何も変わったところはない。目を凝らして見ても何も見つけられないのだが、それよりも耳がその音を聞き取った。  
「・・っ・・はぁ・・」  
心臓がドキリとはっきりと音を立て、頭は真っ白になった。  
 
肩に回された手が、ヤケに熱っぽく感じる。  
押されるままに進んだ森の中で、さっき聞こえた音がだんだん大きくなっていく。  
どんなに大きくなっても、明瞭になったりしない音、声。  
あの時の声。  
 
肩を強く押され、その場にしゃがみ込むと、目の前の茂みをガウリイがそっとかき分ける。  
本当にすぐ目の前に、ソレは在った。  
女の人の足。男の人のお尻。  
ぱんぱんと音を立てて、ぐじゅぐじゅと音を立てて、繰り返される動き。草の擦れる音。  
その光景と音は、真っ白になっていた頭にダイレクトに響く。  
ただ女の人の声が、リズム良く気持ちよさ気に聞こえてくる。  
 
実際覗きという行為は、それだけで緊張感があると思う。少し引っ張られて横に移動すると、また別の角度で見えてしまったそれは、そんな緊張や興奮、罪悪感といったものは軽くふっとばすものだった。  
太くてテラテラ光るものが出し入れされていて、下になっている女の人のアソコはそれに引っ張られていて、匂いがここまでしそうなぐらいだった。その動きにあわせて、先程から頭に響いていた女の人の声が、快感のリズムを伝えてくる。  
経験したことのない感触なのに、それがどんなモノなのか体が知っていて、自分の体なのに勝手に再現したように快感を生み出してくる。  
 
「やっ、あっ・・!」  
ひときわ大きくなった声に吊られて、声が漏れそうになったのは、ガウリイに口を押さえられて気が付いた事だ。逃げなきゃ、ここから離れなきゃと思うのに、目が離せなかった。  
びちょびちょのアソコの周りの筋肉がしまり始めると、男の人がぐいと、今までより強く圧し掛かる。その動きで完全に影になって見えない筈なのに、アソコがどうなっているのかはっきり解る。  
女の人の声が高く、細くなって消えていき、ぴたりと動きが止まった。男の人のお尻もぴくぴくと何回か動き、その後どっと女の人の上に全体重を乗せた。  
口を押さえていた大きな手に後ろに押され、尻餅をつきそうになりながら、ようやくその場所から離れることができた。  
 
いくらか森の奥に進んで、ガウリイに手を引かれて歩いているのに気付いた。自分が動揺しているのは解っていたけど、こんな事にも気付かないのには、自分で思っているより酷いのかもしれない。  
「どうだった?」  
笑顔で爽やかに振り返って尋ねてくるガウリイが、すごく大人に見える。平気なんだ、あれぐらいどうって言うことないんだ。  
「ああ、びっくりしたな。悪かった。」  
ちょびっとだけ尊敬したのが嘘のように、その大人が慌てて謝り出す。何を謝るかと思えばいきなり抱きしめられ、あやされる。頭を撫でられいつものように、子供扱いするなと言おうとしたところで、自分が泣きそうになっているのに気付いた。  
「まだ早かったな、オレが悪かった。オレが悪かったから、泣かんでくれ。」  
泣いてなんかいないし、平気だと言おうとしたのに、ぽすんと収まったガウリイの胸の中が、余りに居心地が良くてそのままじっとしていた。ただ・・  
 
ただ、居心地が好いのに慣れて落ち着いてしまうと、さっき見た光景や音がリアルに思い出されて、心地よかった筈のガウリイの体温や匂いが、別の意味を持ち始めてしまった。  
ようやく、前より恥ずかしくなっている理由が解った。自分がガウリイに欲情しているなんて、そりゃあ恥ずかしくって言える訳がない。知られた日には、恥ずかしすぎて死んでしまう。  
 
胸の中でムズムズしはじめると、直ぐに悟られてしまう。  
「どうした?」  
でも言える訳なんか無い。顔を見せるとそれだけで、悟られる。  
「さっきの・・・」  
俯いたまま答えれば、勝手に誤解してくれるだろうから  
「興奮した?」  
素直に頷いた。そうすれば、知られたくない事は、知られないままで済む。ゆっくりとベルトを解く手に、体を任せた。  
 
あたしを気持ち良くさせる手、立っていられなくても平気で支える腕、顔を誰にも見られない様にその胸の中に沈めて、自分は中途半端な無理のある体勢でのまま、あたしを弄る。  
声も息も揚がって、さっきの女の人と同じ声を出して、その指を感じていた。  
 
いつもと同じ快楽を感じているのに、物足りなかった。その先を今日見てしまったからか、本当に欲しい物が解ってしまったからか、判別は付かない。  
ガウリイはさっきの男の人みたいにならないんだろうか?  
焦ったような動きや、苦しそうな呻き声を、さっきの人はしていた。キスをしていた。舌を突き出して絡ませて、それにむしゃぶり付いて、腰を突き動かしていたのに、ガウリイはそうならないんだろうか。  
あたしでは相手にならないから?今腰を引いているのは、あたしの背に合わせるためだけ?あたしの声や息では、熱くならない?体を擦り付けても、何も感じない?  
少しでも感じて欲しくて、首を振るフリをして彼の首に唇を着ける。喘ぐフリをして唇を這わせて、舌で彼を舐めて、もっとと言ってみた。入れて欲しい、入れてくれと。  
 
でも与えられたのは、指で。  
その探るような動きは、少し痛くて気持ちよくて、中の皮膚でないトコロを引っ張る動きは、それまでの疼きを快感に変えた。  
「痛いか?」  
心配そうに訊く声に答えることも出来ずに、いくらも経たない内にあたしは達してしまった。  
 
望んだモノを得られず、ただ心配するだけの相手に、自分の子供っぽさがイヤになる。やっぱり自分では相手にならないのかと。  
「初めてだから痛かったろ?何回かやって慣れてきたら、もっと太いのでも入るようになるから。」  
そう言われて、その意味深な説明に、一瞬にして凹んでいた気分が、別の気分になる。スケベと言ってやりたかったけど、その説明をスケベにとる自分や、それを期待する自分を悟られるのがイヤで、ただ  
「くらげ」  
とだけ、言っておいた。  
 
 
夜を待ってガウリイの部屋へ行く。  
理由なんかどうでもいい。その時々に応じて何とでも言えばいい。  
行って気持ちよくしてもらう。それが目的で、そのことはガウリイにも解っていることだから、彼も殊更に理由を求めたりしない。  
 
宿屋に着いて夕食を済ませたあたし達は、いつもどおり別々の部屋へ入る。余程混んでいなければ、大抵は隣室を宛がわれる。  
さっさと風呂を済ませて部屋に篭ったあたしは、今日の昼間覗き見た光景を思い出し、自分でイタシテみた。ガウリイにされた事を思い出しながら、指を入れて声を挙げて、隣室に居るガウリイを意識しながら。  
 
さっきの声は必ずガウリイも聞いている筈だ。以前声を殺して、していた時もばれた事があるし、ヤツの超人的な耳の性能なら、聞き漏らしはしない。どう思っただろう。少しは興奮した?小さな期待を胸に、いざノックしようとした時、中から声が掛けられる。  
 
「開いてるぞ。」  
彼は床に座り込み、爪の手入れをしていた。  
剣を使う者にとって爪はとても重要だ。割ったり折れたりしてしまえば、その指はもう力が入れられなくなる。彼の爪は、その剣と同じくよく手入れをされていて、その剣ダコのあるゴツゴツした手には、不釣合いなほどだった。  
その様子を横に座り込み、黙って見ていた。  
 
「自分で指入れたのか?」  
 
案の定、何をどうしていたのかまでバレている。  
「で、イマイチだったと?」  
そして案の定、ガウリイはいつもどうりで、興奮したような気配すらない。情けない気持ちでいっぱいになってしまって、それが顔にでてしまって、それを見られるのがイヤで、背後に回って首に抱きつきガウリイの髪で顔を隠した。  
おんぶに似たような格好を自分からしたのに、今度は胸があったらなんて思ってしまう。こんな凹凸のない体では、何の刺激も与えられやしない。  
「まあ、リナの指は細いから、仕方ないよ。」  
前に回した手を取られ、指をぺろりと舐められる。さっきあたしが自分に使った指だ。匂いが残っていたのか、躊躇なくその指を、彼がしゃぶっていた。すっぽりと口の中に入れられた指が、吸われて嬲られている。  
想像するしかない舌の動きは、今日見た舌の動きを思い起こさせた。ああいうのも、キスというんだろうか。唇の外で行われていた舌の動きは、頭にあったキスのイメージとは程遠いのもだった。  
「ほれ」  
今までガウリイの口の中にあった指が、目の前に突き出される。訳が解らずに、え?と動きかけたあたしの口の中に、それは差し入れられた。  
「ちょっと舐めてて。」  
白くふやけた指は、あたしの口の中の温度と違っていて、異物感があった。  
指に纏わり付く液体はガウリイの唾液で、差し込まれた時、間接キスだと思ったのも束の間、彼の唾液をあたしが吸っている事に気付き、ぞくりとした。想像したことのなかった味は、口の奥で甘く感じられた。  
 
あたしが自分の指を堪能している間に、あたしの体はベッドに浅く腰掛けた状態にされて、そのまま、下着もパジャマのズボンも取り払われ、恥部を曝すため足も大きく広げられる。  
「こら、吸うんじゃなくて、濡らすんだ。」  
再び取り上げられた指に、ガウリイが舌を這わす。息が掛かるほど、間近で行われる湿気をおびた淫猥さに、あたしは思わず、自分の舌も差し出した。  
 
二人で一本の指を舐める。触れる舌先や、混ざった唾液の味がたまらなく甘美だった。指が何処かへ持ち攫われても、その動作を続けた。ガウリイは舌を長く差し出し、あたしのしたいようにさせている。その舌を舐め、しゃぶり、自分の舌先で感じた。  
 
「どっちがいい?」  
気が付くとあたしの攫われた指は、ガウリイに捕まれたままあたしのアソコに当てられ、ガウリイの反対側の手が、アソコを大きく開いていた。  
それが単なる意地悪なのは、すぐに解った。ガウリイに教わったその名称を、いかに卑猥な言い方でねだれば善いのか、それもガウリイに教わった事だ。でも今あたしはそれどころじゃなかった。初めて知った舌先という性感帯、ガウリイの舌の味を、もっと味わっていたかった。  
 
強く舌を吸う返事。  
「こっちか・・」  
と呟きながら、後ろへ、ベッドへと柔らかくあたしの体を押さえつけ、ガウリイがあたしの舌を吸い出す。  
完全に仰向けになった時、初めて唇が重なった。  
 
その生暖かさや柔らかさは、なんだか意外に思える。吸われてガウリイの口の中に入った舌は、そこでどこもかしこも嘗め回され、返される。今度はガウリイの舌が入ってきた。  
上になっているその口から唾液が流れ込んでくる。入ってきたそれに吸い付き、それが窄めた唇から出て行く感触も、貪っていた。  
「目ぇ、閉じて」  
言われるままの閉じると、再び唇が重なる。そして入ってきた舌にまた吸い付こうとすると、顎を強く捉まれた。  
口を大きく開けた状態で流し込まれる唾液は、口の端から零れていく。入ってきた舌は、口内を上から順に舐めていく。舌の裏に辿り着く頃には、あたしは自分で口を大きく開けていて、ガウリイの手は顎から離れていた。  
 
舌先が性感帯だと思ったのは間違いで、口全体がそうなのだと、口の中で動き回る舌で知る。性器を触られる快感とはまた違う快感が、あたしの脳を侵していく。  
瞳を閉じた状態で、口の中を好きにするガウリイの行動は、好いように支配されている気すらする。でも間違いなく、それも快感だった。  
 
顎から外された手は、首を撫で下ろし、乳房のラインを辿りながら腰へと降りていく。あたしの股間を割るのは膝で、その割られた中心では、奪われたままの指が、アソコを擦っていた。  
降りていった手が入口を大きく開き、そこに湿った指が押されるままに入っていく。だがそれで得るより、口内に与えられるものの方が遥かに大きい。  
口を離されるのがイヤで、唯一自由にできる片腕を、彼の背中に回す。中途半端に腰を浮かせた体勢の彼の背中は、思ったより遠くて、満足に回りきらない。掴むところも無くずり落ちた手は、辛うじて肩を掴んだ。  
 
入れられた指が、微かに水音を立てる。入っているのはあたしの指だというのに、動きはガウリイに支配されている。指の腹が中を撫で始め、昼間に感じた快感が甦り始める。中が熱くなり何かがどろりと出て行く感触すら、快感に思える。  
感度の比重がソコにいくと、捉まれていた手が離され、あたしは自分で中を撫でる。さっき自分でしたのとは段違いの、快感が一気に背中を駆け上がり、熱に浮かされた脳を更に犯す。  
それに追い討ちを掛けるように、ガウリイの太い指が何本も入口付近を撫で回す。零れ出した汁を掬い、そこら中になすり付け、すっかり起ち上がっている粒にも同じようになすり付ける。  
自分の足が頼みもしないのに勝手にびくびくしはじめる。入っているあたしの指を辿りながら、ガウリイの指が入ってきた。  
 
引き伸ばされる入口が痛くて声が出そうになるけど、その声を出す場所はもうあたしのものではなく、喉で音が鳴るだけだった。その音を吸い出そうとしてか、口内全体が強く吸われ、あたしの舌はガウリイの口の中に移動する。  
導き終えたガウリイの舌はまた、あたしの口の中に入ってきた。  
大きく開けて繋がれた口は、境界線があいまいで、その上舌を交換したような動きは、もうどちらのものでもなく、それぞれの動きが刺激で甘美だった。入ってきた指は、あたしの指の背を撫で、指の腹を撫でる。  
あたしの中で行われる指への責めは、その都度曲がる関節が壁を刺激するのと同量の、えも言われぬ快楽を与える。  
「そんなぁ・・」  
思わず口を離して声をあげる。一度出してしまった大声は止めようが無くて、意地悪く同じ動きを中で繰り返される度に、身もふたも無く喘いでしまう。  
「宿中に聞こえてるぞ、きっと。」  
 
意地悪く繰り返される動きのまま、意地悪く言うガウリイの顔を見た。  
その嬉しそうな顔は、とても今の動きを止めてくれたり、口を塞いだりはしてくれなさそうで、もう力が入らなくて彼の肩から落ちた手で、必死で自分の口を押さえる。中で玩ばれる指は、動かされる毎に自分で自分を責めながら、責められて。  
 
ガウリイが体を起こしベッドの下へ降りる。その間少し弱まった刺激に、彼の行動を見る余裕が出来る。  
どうする気なのかと思うと、ベッドの下に落ちていたあたしの膝下をべとついた手で、片足づつゆっくりと開きながらベッドの縁に上げていき、顔を股間に近づける。釣られるように身を起こしかけると、弱まっていた刺激が急に送り込まれる。  
漏れた大声にベッドに付いた手を慌てて口に戻し、再びベッドに沈み込む。そのまま背中を反らし、その刺激に耐える。彼の嬉しそうな気配を感じる。  
息を吹きかけられ、中で続く動きだけでなく敏感に尖った粒まで刺激が与えられ始めると、唾液でべとべとになった顔に涙まで溢れてくる。押さえた口が開いて、間断なく声があがる。  
立てた膝が信じられないぐらい大きくびくつき、腰だけでなく下半身全体ががくがくになる。あたしの指に絡められた指が抜き差しされ、もうこれ以上刺激を与えたくないのに、びくつく指が強く曲がってしまい、あわてて戻し、また曲がる自虐的な動きをしている。  
その動きにお構いなしに抜き差しは、リズミカルに繰り返され、それと違う速度や角度で粒が舐められ吸われ、咥えられ嬲られている。もう脳は完全に融けていた。  
もっとスゴイコトもしてやれるぞと、しばらく前に言われた声がその腐った脳に、響き渡る。  
 
ヘンになる、そう思った瞬間本当に視界が真っ白になって、何かが空中に浮いた。  
 
指が抜かれる感触を、どこか遠くで感じていた。シーツを掛けられ瞼を薄く開けると、ぼやけた視界にガウリイが入ってくる。頭を撫でられ瞼が下りると、意識が眠り向かう。  
まどろみの中で彼が部屋から出て行くのを感じ、どこへ何しに行くのか訊きたかったけれど、その体力は残っていなかった。  
彼が感じてくれればいい、感じてしまってそれを処理しに行くんならいいのに。あの嬉しそうな気配だけで、しょうもなく満足している自分を情けなく感じながら、幸せな眠りに就いた。  
 
 
結局昨日は何も確かめられないまま気が付けば朝で、無論道中で昨夜あの後どうしたのかなんて聞ける筈も無くって、今に至る。  
あたしはベッドに突っ伏して、ウンウン唸るばかりだった。  
いい案なんて浮かびやしない。  
この感情が、純粋に恋とか言うには生々しすぎる気がするし、かと言って性欲だけなんて思えない。  
確かにここのトコロのあたしの性欲は、自分で面食らうぐらい酷いものだが、通りすがりの兄ちゃんなんかには反応しない訳だし。  
明らかにガウリイだけに向いている、感情。  
別にトキめいたりしてないし、相手の顔を見て緊張したりなんかもしない。胸きゅんなんてのもナイ。  
と言うか、そーいうモノを、あのくらげ相手に持てと言われても無理がある。  
べたべた触るのも好きだし、頭を撫でられるのも好きだし、猫可愛がりされるのも大好きだ。  
それだけなら、兄や父に対する感情ですむわけで、彼が保護者を名乗っているのだから、何ら問題はない。  
だけど、はっきりきっぱり、あたしは彼とオトナな関係になりたいと、思ってしまっている。  
普通のレンアイ感情の方が、まだ本人に告白できるような気がする。  
 
これぐらいうんうん考えて、仕舞いには腹が立ってきて、枕を壁に投げつけたあと、風呂に向かった。  
それがまた、混んでいたりなんかするものだから、ますます落ち込む。そういや今日は部屋離れてたから、混んでいるかもとは思ったけどさ。  
あたしと幾らも年が違わないのに、子供を連れて入っている人や、年下だろうにナイスバディな女の子と並んで体を洗う。結構卑屈な気持ちになりながら、さっさと済ませた。  
 
部屋に戻る途中、ガウリイの部屋の前を通る。風呂に行く時は、腹が立っていて気にもしなかったが、凹み出したことも相俟って、昨夜本当に何もせずに寝たのか酷く気に掛かった。  
少しも何も感じなかったのか、やっぱりあたしじゃダメなのか。さっきお風呂で見た女の人たちぐらいじゃないと、無理なんだろうな。  
「リナ」  
凹みまくっていたあたしの後ろの方で、その原因が声を掛けてくる。彼もお風呂だったようで、ぐしゃぐしゃ髪を拭きながら、至って笑顔で近付いてくる。  
「中に入って待ってればいいのに。」  
彼はあたしがまた、シて貰いに来たと思っているようだった。  
ちょっと情けない顔になったかも知れないが、とりあえず笑っておいた。  
 
誘われるまま部屋に入ると、いきなりベッドに座らせて、彼はあたしの髪を丁寧に拭き始めた。  
「長いコト待ってたのか?冷たくなってるぞ。」  
体に比べ髪が冷えやすいとは言っても、そんなに長い間パジャマでぼーっと突っ立っていたのか、あたし。  
寒がりなのに、そんなコトにも気付かないなんて、自分で思っているより落ち込んでいるのかも知れない。  
 
ガウリイは何を思ったのか、自分の荷物をまさぐって耳掻きを取り出した。  
「ほら」  
ぽんぽんと自分の膝をたたいて、そこに頭を置くように指示される。  
今日はまたえらく甘やかすなぁ、そんなにはっきり落ち込んでるように見えるかなぁ、そんなコトをつらつら思いながら、大人しくベッドに寝転び、膝を陣取った。  
「なんかあった?」  
繊細な手つきで耳を掃除しながら、低い声で尋ねられる。  
「・・・お風呂混んでて、胸バァーンな人がいっぱい居た。」  
嘘は吐いていない。何故胸に目が行ったのかを、説明していないケド。  
顔は向けていないけど、ガウリイが微かに笑ったのは、確かだった。  
どうせオコサマですよと開き直りたかったけれど、その前に泣きそうな気分になってしまう。  
そんな状態を当然のように察して、優しいけれどもこの酷い男は、頭を撫でてオコサマ気分に拍車をかける。  
「なんで、そんなに大きい胸がいいんだ?」  
そしたら、ガウリイがちょっとは女の人扱いしてくれるだろうから。  
そんなこと言える筈もなくって、ただ黙ってしまう。  
「ガウリイも、胸大きい人の方がいいんでしょ?」  
 
かろうじて口から出せた言葉は、嫌味な言い方になってしまう。自分でイヤになる。  
だけどそんな嫌味な言い方も、オトナな彼には所詮コドモの愚痴でしかないらしい。  
「まあ、それは男のロマンってヤツだな。」  
朗らかな言い方で欠片の嫌味もない、率直な言葉。  
やっぱりなあとしか、思うことは無くって、もう黙ってこの居心地の良い膝で大人しくしておこうと思った。  
「でもなリナ、リナの胸も男のロマンなんだぞ。」  
妙な慰め方だと思う。  
「感度の良い胸ってのも、男のロマンなんだよ。」  
 
何て得体の知れない慰め方というか、褒め方というか。  
伸びてきた手が、服の上から胸を弄り、乳首を撫でる。あっさりと起った乳首を指ではじきながら、  
「ほらな」  
と言う。確かにそれだけの刺激でかなり気持ち良かった。  
 
頭をガウリイの膝に預けたまま、体を仰向けにされる。その間もずっと胸は揉まれたままで、時たまぴくりと反応が顔に出てしまう。  
それをガウリイは嬉しそうに覗き込んでて、かなり恥ずかしいのに、合った視線が逸らせない。  
パジャマの前が全部外されていくのが解っても、指先で直接乳首が転がされるのが解っても。声が漏れ出してようやく、口を押さえるために顔を両腕で覆ったが、ガウリイは両手でそれをやんわりと外す。  
「顔見えないと、どこが気持ち良いのか解らんだろ?」  
でも感じている顔をじっと見られるのは、かなり恥ずかしい。  
「いつも見たいに、顔隠せる方がいい?」  
その方が感じることに集中できる。うんうんと何回も頷いて、自分から彼の首に抱きついて顔を埋めた。  
「代わりにちゃんと言うんだぞ。」  
 
体をずらし、胡坐をかいた彼の足を跨いで膝立ちになる。大きく足を開く形になってしまうが、それで首に抱きつき易い高さになる。前を全開にしたパジャマの脇から回された掌が、背中と肩を撫でていく。くすぐったくて気持ちよくて身を捩ると  
「どう?」  
と尋ねてくるから、気持ちいいと言った。  
「どこが?」  
 
ゆっくりと撫で回される、探るような動き。あたしの気持ち良いトコを探してどうするんだろう。探し出された後のコトを考えると、それだけでのぼせそうになる。  
「背中、背中が気持ちいい。」  
欲に駆られて、口は正直にその場所を伝える。でもそれだけではなかった。  
「じゃあ、これは?」  
5本の指先が、背中を撫上げる。ついで掌全体が。  
体が仰け反って、はっきりと解っているだろうに、  
「どっち?」  
と確認してくる。同じトコロなのに感じ方が全く違う。これではガウリイが調べようとするのは無理ないように思えた。  
繰り返し指と掌が交互に撫上げてくる。じれったくて堪らない。より感じるほうだけにして欲しくて指と、うわ言のように何度も呟いた。  
 
そうやって体中が調べられていく。とても感じるとは思えなかったお臍や、くすぐったいだけだと思っていた腋の下も、感じる部位なのだと認識を改める。  
指を舐められても感じてしまう自分が、すごくイヤらしい体をしているように思えた。  
 
股間にガウリイの手が回った頃には、すっかり高まっていて、あたしは必死で首にしがみ付いていた。唇に触れる。  
昨日彼を感じさせようと這わしていたものが、今日は触れるのさえ気持ち良い。胸も自分から彼に押し付けている。  
「こら、ちょっと緩めてくれよ。」  
触りにくいのか苦しいのか、下に降りかけていた手が両腕を掴む。放す気なんかなかった。緩める気もない。気持ちいいコトを、気持ちいいと言えばしてくれるんでしょ。  
 
唇が首に当たって気持ち良い、胸が擦れて気持ちいい。  
「胸のどこ?」  
腕を掴んだまま今にも引き離しそうにしながら、ガウリイが尋ねてくる。先端だけだと思っているのかも知れない。そうじゃない。  
「おっぱい、おっぱい全部、擦れて気持ちいいの」  
自分で声に出して驚いた。何てイヤらしいこと言っているのか。でも他に何って言えばいいのか解らない。でもガウリイはそれで、引き離すのを止めてくれた。  
 
ガウリイの手がお尻の下から股間を弄る。上体をあたしの好きにさせて、大きく開きすぎた足はズボンも下着も下ろせずに、彼の両手はその中の狭い空間で、もそもそと少し動き辛そうだった。  
 
「どう?」  
訊かれて、彼が色々探っているのだと思い出した。  
もう全部が全部、気持ち良いとしか言い様がない。中に指が入ってくる。それだけでなくて、その辺り中指が弧を描くように弄っている。  
中を指先で突付かれたり壁をとんとん叩かれたり、次々と責め方を変えられ、もう返事はおろか息をすることさえ、苦しくなっていた。昨日と同じく脳が腐っていくのが解る。  
バカみたいに胸を擦りつけて、首をしゃぶる。胸を擦りつける動きが、ガウリイの入れられた指を中への抜き差しも行ってしまう。  
どこが、どうと、最初と同じく尋ねられる。  
「中・・が・・気持ちいい、中が・・こす・・れて、気持ちいいのぉ・・」  
もっとして欲しくて、必死で訴える。訴えたのに、いきなり後ろの穴に指を入れられた。  
前の穴と後ろの穴と、両方に入った指が中でこすれ合う。気持ちいいのと気持ち悪いのとが、ごっちゃになって頭の中を駆け巡る。涎でべとべとになったガウリイのパジャマをかみ締めて耐える。呻くしかできない。  
両方の穴の中の指がぴたりと止まり、ようやく息が継げた。  
「中だろ?」  
今日の意地悪はコレなのかと、そんな事にまで慣れてしまっている自分がいる。  
前の穴だけにして欲しい。  
「マンコ、だろ?」  
以前に教わって、何だか恥ずかしくて余り口にしないその単語を繰り返すと、ようやく後ろの穴から指が抜かれる。気持ち悪さが消えると、途端に熱がぶり返してくる。  
「どこを、どうして欲しい?どこが気持ちイイ?」  
焦らされるそのゆっくりとした中での指の動きに、追い詰められて大声で叫んでしまう。ガウリイは慌ててべとべとに濡れた手を下着の中から出して、あたしの口を塞ぐ。  
「マンコがいいの!マンコ触って!おマンコの中、入れて!」  
口を押さえられたのを良い事に、その掌の中にあたしは思いっきり欲を吐き出す。  
 
下着の中に残っていたほうの手が、一挙に責めを開始する。手加減なしにひっきりなしに出入りする指が、ひっきりなしに壁を擦る。  
「気持ちイイ、おマンコこすれて気持ちイイのっ」  
気でも違ったように訴え続けて、ぼろぼろ涙を流しながら、あたしはまた真っ白い空間の中に突き出された。  
 
あっさり意識を手放して、次に気が付いたときにはやっぱり一人で、ベッドに寝かされていた。その一人きりの感じに、余りにあっさりイかされたことに、シーツを被って少し泣いてしまった。  
 
 
次の夜も、その次の夜も、同じような行為は行われた。  
でも少しずつ少しずつ、エスカレートしている気がする。  
今まで、ガウリイの方からあたしに触りたがることは、殆どなかった。  
 
魔法士協会へ行き、宿屋に戻ってガウリイに声を掛け、夕食を摂る。廊下で別れてそれぞれの部屋に入る。  
いつもの通りの筈が、今日はどういう訳かあたしに付いて、あたしの部屋に入って来た。  
別段警戒などするはずもなく、喋りながらマントを外した時、いきなり背後から抱き上げられてしまった。  
余りにも意味不明な行動にじたばたするあたしの動揺をよそに、慣れた手はあっさり下着の中にまで到達する。  
こんな何の前触れもなくソコを弄られるのは珍しい事だったが、それよりもソコを広げられて当てられた得体の知れない感触に仰天する。  
「な、なにっ?」  
「ん〜、まっ、おもちゃだな。」  
何かをそこにセットされ服がもどされると、異物感だけが気になり落ち着かない。  
「ゴーレムと同じ仕組みだって聞いたけど。」  
目の前に持ってこられた小さな箱。ダイアルのようなところをガウリイが、ゆっくり回し始めた。  
ゆっくりとした振動が、当てられたものから伝わってきた。  
 
「どうだ?」  
「ヘンな感じとしか・・」  
気持ち良いとかには、全然思えない。これは所謂オトナのおもちゃなんだろうけど、何がどう良いのか解らないと言ったカンジだった。  
「これは?」  
言いながらその振動を変えて試していく。振動の速度が変わっていくに連れて、何かヘンな感覚が這い上がって来る。かなり早い振動になった時、いきなり膝の力が抜けた。慌ててガウリイがあたしの体を支える。  
「そんなにすごいのか?」  
「そ、そういう訳じゃ・・」  
いつもの快感とは、かなり違う。体が反応しているのは解るけど、でもそれだけだった。  
「なん・・か、ヤダ・・・。とっ、とって・・よ・・」  
体ががくがくして、しがみ付いて立っているのがやっとな状態でも、気持ちいいとは思えなかった。  
スイッチが切られて、ようやく体の自由が戻る。  
 
「そんなにイヤか?」  
疲れてベッドに座り込んだあたしを、気遣いながらガウリイが尋ねてくる。  
「いつもの方がいいか?」  
これをまたされるのが嫌なこともあり、素直に頷く。ガウリイは人の頭を撫でながら、何でか唸っている。  
念を押すためにも、はっきり言う。  
「ガウリイの方がいい。」  
言ってから、ちょっとだけ期待した。何か伝わっていればいいと思ったのだけど、やっぱり優しく笑って頭を撫でることしか、して貰えなかった。  
 
もうなんで、こんなにくらげなのかと思う。  
頭を撫でた後は、ほっぺにちゅうときた。昨日も一昨日ももっとすごいキスだってしたし、体中触られて散々声あげていたというのに、まだこんなに子供扱いのままだ。  
可愛がられていると言えば聞こえは良い。甘やかされるのは好きだけど、子供扱いされたいんじゃナイ。  
だからゆっくりと抱きしめられた時、文句を言った。アーマーが痛い。服が埃っぽくってイヤ。  
やれやれと言ったふうに、彼は上半身をあたしの目の前に曝した。  
「これでよろしいですか?お嬢様。」  
あたしは抱っこをせがむ子供のように、両手を差し出しガウリイの首に腕を回した。  
 
ゆっくりと背中が撫で回される。それだけで充分気持ち良かったけれど、裸のガウリイに抱きつくのは初めてで、その体温や皮膚の感触はあたしを一気に高まらせていく。そして前に回された手が上着の前を肌蹴け、胸を弄る動きに感じ入った。  
「やっぱり気持ち良かったんじゃないか。」  
勃起した乳首を両方一度にぐりぐりされて耳元で囁かれると、そうではない事を説明することが出来なくなる。説明することが出来たとしても、何故今こんなに興奮しているのか、その理由がガウリイの裸なんて、とてもじゃないが言えやしない。  
 
ガウリイの唇がゆっくり、髪の生え際を辿り鎖骨に至る。そこを強く吸われる、軽く噛まれる。その後あたしの頭を抱えて、あたしの口がガウリイの同じような所に当てられる。  
同じ事をしかえした。  
こんな事が気持ちいいんだろうか?でも、それは初めてガウリイから要求された直接的な行動で、要求された事が嬉しくて何回か繰り返した。  
「もっと強く噛んでも大丈夫だから」  
痛いのが好きなのかという邪推が浮かばなくも無かったが、そんなこと気にはならなかった。  
「大声出したくなったら、噛んでろよ。」  
 
その言葉と共にアソコに当てられていたモノが、早い振動を送り込んできた。  
そういう意味で噛めというのか。彼の胸にしがみ付きながら、今一瞬味わった喜びの倍ほどの失望を感じた。  
にも係わらず、振動はアソコだけを責めてきて、さっきより分泌量の増えていた分滑らかに動く。  
いやだと主張しても止めてくれる気配はなくて、逃れようとしてもあたしの背中に回っていた手が、よく知る弱いところを責めてきて、もう一度首にしがみ付くしかできなかった。  
首筋に顔を埋めながら首をふり、いやという言葉を繰り返しても、彼の肌に口が当たるばかりで、喘ぎに変わりつつある言葉は、どんどんいやらしさを増して行くのが、自分で解る。  
全開にされた服から曝された胸は、彼の素肌に直に押し当てられ、唯一快感らしい快感を生み出している。そこに逃げ込むしかなかった。  
起った乳首を乳房ごと押し当て、上下に擦っていると敏感になった先っぽに何かが当たる。それが刺激を増すから、何度も同じように繰り返し、それがガウリイの乳首であると悟ったのは、しばらく擦り付けてからだった。  
 
振動の速度が徐々に上げられ、快感だけがせりあがってくる。先程と同じように体中の力が抜けていき、首に回した腕からも力が抜けてしまって、ずり下がってしまう。  
甘美だった胸の刺激も失われかけ、唇だけが彼の肌を這う。  
肩を抱かれることだけが支えの体では、腰が中途半端に浮いてしまい、強制的に与えられる刺激から逃れられずにいた。  
ただ鎖骨からずり落ちた今、目の前に彼の乳首があって、それが喘ぐ度唇に当たるのが妙に嬉しくて、さっき教わった動作を、吸って噛んで、をしてみた。  
瞬間、肩を抱く彼の手に力が入ったのを感じた。  
噛みすぎて痛いのか、何かを感じたのか、区別はつかないけれども、こういうコトをしている最中に彼から、何らかのリアクションが返ってくることは初めてな気がして、そのままそこにむしゃぶりつく。  
やり方なんて知らない。ただ覚えたばかりの舌の動かし方を、舌と舌を絡めたときのやり方をしてみた。吸って口の中に入れて舌先でチロチロと、乳首を相手の舌先に見立てて、転がしてあま噛みした。  
添えた掌の下で、彼の動悸が激しいのを知る。  
興奮した?興奮してる?  
 
突如、アソコの刺激が大きいものになる。そのショックで折角口内での愉悦を離してしまい、再度すがりつこうとするが、もう体は全然力が入らなくて、ただ支えられるだけになる。  
開いた口からだらしなく唾液が流れても、見開いた目から泪が出てきても、拭うことも隠すことも出来ず、ただ覗き込んできたガウリイの視線を受けているだけだった。  
いつもと何処か違うその嬉しそうな笑みに、ゾクリとした。  
 
刺激の発信場所が緩やかに円を描いている。急に刺激が強まったのは、彼が手で押さえて動かしているのだった。  
びらびらしたものを左右に開きながらも、開かれた入口も、其のびらびらも全てを刺激しながら、くねくね動く。無機質だった刺激が有機的な、しかも弱いトコロをのみを刺激されるのは、耐えられるものではなかった。  
 
ガウリイを手放すのがイヤで、必死にしがみ付く。一人にしないで欲しくて、一人でイかさないで欲しくて、襲い来る波に耐えようとした。  
ダメ、イヤと声を絞り出すことで快感をどこかへやろうとしたけれど、あたし自身が彼の胸の中へ追いやられてしまう。失われていた甘い体温が、追いやった快感をかき集めてあたしの周りを囲う。  
振動とは別に、服の上から突き出て敏感になった突起をノックされる。  
そのフイの刺激に息は詰まり、口を最大に開けてしまうと、舌にガウリイの乳首が当たった。  
しがみ付けない分強くそれを吸うと、ノックされていた部分が同じぐらい強く押し上げられて、それに吊られてびらびらや入口が縦に長く伸びる。  
それはそのあたりの皮膚や皮膚でないところ全体を振動に巻き込み、あたしの我慢の限界を軽く突破した。  
 
気を失うように崩れ落ちる体を感じながら、満足げな、普段の笑顔と違う笑みを見た。  
 
 
ここ数日、リナの性欲はかなりピークに達しているようだった。  
自分がアレぐらいの時はどうだったかと思い出して、既に傭兵になっていて、めちゃくちゃだった事を思い出す。金さえあれば1週間ぐらい女郎宿に入り浸っていたっけ。メシも食わずにひたすらやっていた。  
リナの状態はそれに比べれば、まだまだ足りないだろう。  
ホントはそのテの宿に何日か連泊して、解消してやりたいのだが、それは彼女にはまだ早いような気がして、言い出せずにいる。  
 
前を行くリナの歩みに、リズムのずれを感じ注意していると、森の中から睦事の声がしてきた。  
驚いたか、釣られて欲情したか定かではないが、顔を覗き込むとやっぱり赤くなっていた。無理をして何でもないというその恥じらいに、今更だと思ってしまうが、彼女が営みそのものを見たことがないであろう事に気付く。  
声を聞くのも始めてかも知れない。発情しかけを発情状態に持っていく誘惑もあり、立ちすくむ彼女を無理やり声の方へ、連れて行った。  
 
森の中でお楽しみ中の二人の側に忍び寄る。たいして気配は消しちゃあいない。小さいリナは茂みの中にすっぽり隠れるがオレの方は、どうやっても目立つ。迂闊に気配を消せば返って怪しまれる。  
案の定、男の方はすぐにオレ達に気付くが、止める気配はない。食い入るように見るリナと、彼女を隠すようにしているオレを見て、大体を悟ったようで、顎で場所を差される。  
リナの移動に合わせて、角度をかえより見やすい体位に換えて、彼女の視線もオカズにして、激しい動きを続けた。  
その動きの激しさに女が間もなく昇天し、男もそれに合わせて射精をする。リナは完全に飲み込まれて声まで上げる始末だ。  
 
あわててその場を離れ、きっと欲情したであろう彼女を、悪戯すべく森の奥へ引っ張っていく。もうぐしょぐしょだろうと思って見た顔は、今にも泣きそうな方のぐしょぐしょだった。  
しまった。まだ早すぎたのだと、後悔した。  
大人しく胸の中に納まる彼女の頭を、できるだけ優しく撫でながら、くだらない自分の悪戯心を悔やんだ。  
 
だのに、腕の中の体温は明確に上昇をはじめる。胸に当たる顔は見ずとも解るほど火照っていて、髪の隙間から見え隠れするうなじは、朱になっていた。  
どれほど動揺していてもその興奮は収まらないらしい。追いやった悪戯心をそのまま遠ざけて、ただリナを満足させるために手をベルトに掛けた。  
 
嫌がる仕草一つせずにオレに身を任せ、甘い息を吐く。警戒もされずに信用される辛さは、いつになれば解ってもらえるんだろう。だけど覚悟はできていた。  
 
服の中で指で煽るだけは足りないらしく、全身を擦り付けてくる。だがこの場で体を露出させるのは、イヤだった。マントを敷いたところで所詮は地面は硬く、まだあの二人は近くにいる。  
軽くイかせて早く宿に入ってから、ゆっくり味合わせてやりたい。そう思い、性急に入口も突起も、下着の中に入れた5本の指で責めていく。  
だが興奮しきった彼女が喘ぐ度に振られる首は、オレの肌に彼女の唇を擦りつけ、空気を求めて動く口はその都度、オレを舐る。大きく開けられた口からはみ出た舌が、動脈を舐める。  
偶然とはいえ、脳天まで駆け上がる快感だった。  
立ち上がりかけた自身のを、悟られないためにも早くイかさねばならなかった。  
だのにリナは、首に唇を這わせたまま、  
「イレテ」  
と言ってきた。  
 
本気にしてしまう。こんな状態では、本気にしてしまう。  
入れたかった。  
さっきの男のように、入れて、かき回して、突いて突いて、引いて突いて、しなる体を抱きしめその中に出したかった。  
 
恐る恐る指を沈める。入れるにために、慣らさなければ。彼女は初めてなのだ。だがびちょびちょに濡れた指ですら、ようやくといった程度にしか入らない。  
中の熱がその熟れ具合を伝えて来ても、一本で締め付けるその狭さは、まだ早いとさっきの泣きそうな顔を思い出させる。  
堪えなければ。  
ただ痛いだけの挿入では、彼女は逃げてしまうかもしれない。警戒すらしてもらえないオレは、彼女にとって気持ちいいだけの道具に過ぎないのかも知れないのだから。  
覚悟は、彼女を手に入れるための覚悟は、したのだ、オレは。  
 
指を、関節2つ入れたところで、様子を見る。初めての異物。初めての違和感。  
願わくはこの感覚に彼女が溺れてくれるように、オレの指に溺れてくれるように。ゆっくり、ほんの少しずつ動かしていく。  
痛そうな顔はしていない。体はかすかに震えている。  
膣の中を少し引っ張ると、眉が寄せられる。もう2〜3度繰り返しても、その度に強く目を閉じる。  
「痛いか?」  
自分でも驚くほどの心配そうな声に、彼女は目を閉じたまま、首を横に振る。  
ゆっくり、本当にゆっくりその動きを繰り返し、中での快感を伝える。  
そう遠くない先に、本当の挿入をしようとした時に、彼女が恐怖を抱かないように、ただ快感だけを。  
 
そして無事に彼女は、達した。  
 
荒い息を整える彼女を抱きしめたまま、抜いた自分の指を舐る。リナの味。初めてリナの中に入ったもの。  
入れる瞬間をこの目で見られなかったのは、残念だったが、満足したリナの体を抱きしめるのは、心地よかった。  
なあ、また『イレテ』と言ってくれるか?  
今日言った『イレテ』は、オレの聞き間違いじゃないよな?  
今日の指を、お前さんは後悔しているのか?  
 
チラリとこちらに投げかけられた視線に、言いたい事も訊きたいことも後回しにして、オレの覚悟の程を伝える。  
「何回かやって慣れてきたら、もっと太いのでも入るようになるから。」  
伝わったのか、伝わらなかったのか、  
「くらげ」  
と言われて、オレ達はその森を後にした。  
 
 
 
 
 
夕食後のリナの行動は、とても解り易いものだった。  
いつもの長風呂は何なのか、さっさと済ませて早速部屋に閉じこもる。余りの解りやすさに、思わず腹を抱えて笑い出しそうになる。  
今からするんだろうなと思い、壁の近くでその音を待つ。聞こえてきた声を愉しみながら、オレは爪の手入れを始めた。  
彼女が自分でして、まともに満足した試しはない。  
感じやすいとはいえ、彼女は間違いなく未経験者で、そのクセ快感だけはオレに与えられ続けたのだから、自身で達したりできる訳はないのだ。  
 
そして間もなくこの部屋にくるであろう彼女のために、彼女の中を傷つけたりしないように、丁寧に丁寧に爪を手入れした。  
 
押し殺す様子も無い声は、たいして盛り上がりもせずに、早々に終わる。  
最後の方にオレの名を呼んでいたが、それは喘ぎといった様子ではなく、只単に今から行くと、宣言しているように聞こえた。  
色気のないようなあるような呼び声は、とてもリナらしく感じられた。  
 
終えるとパタパタとすぐに部屋の前まで、気配が来る。扉の前で躊躇しているらしい。  
部屋からココまでの足音を消すのも忘れて大急ぎで来ているくせに、そこで戸惑ったりしても意味はなんじゃないか?  
本当に腹を抱えて大笑いしてしまいそうなのを必死で我慢して、声を掛けた。  
 
 
 
どう言ってくるか様子を見るが、残念ながらリナからの意思表示はなかった。  
どうしても溢れる笑みを殺しながら、諦めて言い出しやすいように声を掛けると、何も言わず、背後から抱きついてきた。  
前に回された手から、ほのかに香るリナの匂い。中途半端に自分を高め、手も洗わずに来るのなら、最初からくればいいものを。  
爪先に残る白いものを舐め取った。その指の細さは、アソコにモノを入れるのに慣らす為には丁度言い様に見えたし、何より先程リナが自分だけでしたらしい、自分の指を入れるところを見てみたかった。  
 
今日見たものは余程刺激が強かったのか、急にリナがオレの舌を舐め出した。  
予告して想像させるために指を、彼女の顔に近付けて舐めていたら、指を舐めるようにしてオレの舌を舐めだす。はっきりとオレの舌を狙って彼女の舌は動いていた。  
教えたことの無い舌の動きは拙いものだったが、そっと指をどけてなお執拗に続けられる動きは、どれ程覗いたものに犯されているか物語っていた。  
 
二人分の唾液を受けて充分に湿った指を、大きく開いた膣口にあてて刺激しても舌への集中は損なわれない。  
どちらかと問うても、知らん顔でオレの舌を我が物顔で強く吸う。そういえば口付けらしいことは、今まで教えたことはない。舌の絡め方も。  
ゆっくりリナをベッドに仰向けにして、そのクネクネ動く舌を自分の口の中へ捕らえた。  
リナにしたいコト、教え込みたいコト、それらは山ほどあるが、キスをここまで最初から教えることになるとは思っていなかった。  
今日みたヤツ等は、かなり深いキスや舌交をしていて、それが一足飛びであることを恐らくリナは気付いてない。  
 
キスするときは目を閉じる。そんなことから教えていく。ただ唇を触れさせるだけのキスは、今はもう彼女の頭から消えているようだった。  
舌を相手の口に差し込んで口内を舐めたり、唾液をこうかんしたり、それらをうっとりとしたような顔で受けるリナは、性技の幼さとは別に女の顔をしていた。  
 
淫乱の気があるのかもしれない。漠然とした不安が鎌首を擡げる。  
 
今この時はオレの下でよがっていても、誰の手でもイかされるんじゃないかと思うほど、彼女は感じやすく貪欲だった。オレじゃなくても誰でも。  
もっと腐らせて、四六時中オレにへばりついて離れなくなるぐらい、快楽漬けにしなければ。それ以外、オレ以外、頭から無くなるように。  
 
未通の入口を無意味に這わせていた彼女の指をその中に沈めて、例え彼女の体を使ったところでオレがする方が、数段気持ちいいのだと、体に教え込む。  
わざとらしく指を離してみる。指はかまわずにリズム良く動く。オレの手は関係ないと言わんばかりの動きに悔しくて、空いた指を全て使い更に責め立てる。  
無理かと思ったが悔しさに負けて、既に彼女の指が入っているにも係わらず、オレの指も入れてみた。  
彼女の喉が鳴る。  
 
痛みはあるのだろう。だがそれすら気持ちよさそうに見える。腰が逃げているものの、昼に味わってしまった膣内での快感は、確かに体が覚えているようだった。  
舌の動きか御座なりになって、口の中に直接激しい喘ぎが入ってくる。入っている指に沿わせて、指を曲げると背中を大きく逸らし、大声でよがり始めた。  
快楽に狂い出したその姿は、普段のリナからは想像できない淫乱な女そのものだった。  
興奮して張り出した乳房も、真っ赤になった体も、とても男を知らないようには見えない。  
体をずらして覗き込んだ陰部は、薄い恥毛が隠し切れないほど陰核を真っ赤に腫上らせ、溢れかえった愛液がその恥毛をべとつかせていた。  
そんなものに彩られてオレとリナの指が絡み合い、出入りする。  
卑猥で卑猥で、ゾクゾクした。それだけで射精しそうなぐらい、淫猥だった。  
勃起した陰核は、息を吹きかけるだけで全身に快感を送り込み、反らした胸は触れとばかりに起った乳首を突き出す。  
 
陰核に舌を当てただけで、彼女は泣き声を上げ始めた。  
もっともっと、よがり狂えばいい。  
指の速度を上げると、膣壁が腫れだしてくる。体のあちこちがびくつき始め、リナの指までびくついている。  
陰核も腫上り過ぎているのを、外側から舌や唇を使い、揉み解していく。  
先端を吸いながら舌先で転がしたとき、膣内が大きく波打った。  
 
イったか?  
そう思った瞬間、それまで力の限り反らされていた体が、糸が切れたようにベッドに沈み込んだ。  
指は、彼女の膣の動きが静まるまで入れておいた。  
まだ意識を戻さない彼女の陰部と、その感触・温度をエサに、オレはその場で服に中に射精した。  
べとべとになった気持ち悪い感触を持て余しながら、彼女の陰部も腿も舐めとって、きれいにする。  
未練たらしく入れていた指を抜くと、ようやく彼女が意識を取り戻した。  
微かに開いた瞳の中に、幸せそうなものを見つけ安堵する。  
 
もう少し、もう少しだからと、多分二人に言い募りながら、眠りについた彼女を残し、着替えを持って部屋を後にした。  
 

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