ぴったりと閉じられた岩戸の前で、ガウリイは大きくため息を付いた。  
「リナァ〜」  
岩戸の隙間から、中に閉じこもっている少女に声をかけるが、  
返事が返ってくる様子も無ければ、無論のこと岩戸が開く気配も無い。  
「ほーっほっほっほっほ! こんな所で何をしているのかしら?」  
頭を抜きぬけるような笑い声に、  
ガウリイは返事を返すことなく、ただぴったりと閉じられた岩戸を指差した。  
「あら…」  
すぐに状況を理解したのか、可笑しそうな表情を浮かべてナーガはその岩戸を見つめた。  
「リナったら、あたしに恐れをなしてこんな所に逃げ込んだのねっ。ほーっほっほっほっほ」  
「……」  
「じゃぁ、このあたしの見事な踊りで……」  
 
『火炎球』  
 
無意味に胸を揺らしながらナーガが踊りだした瞬間、  
どこからとも無く現れた炎が、ナーガを一瞬にして包んだ。  
「おっ、おい」  
その場に倒れ、ひくひくと身体を痙攣させているナーガを、  
ガウリイはその辺にあった棒で突っつく。  
「……ふっ、この程度で白蛇のナーガが倒れるものですか!」  
がばっと起き上がって踏ん反り返るナーガに冷たい視線を送るガウリイ。  
「あら?」  
その視線がナーガと重なった。  
「ふーん」  
妖しげな光を宿したナーガの瞳が、じっとガウリイを見つめる。  
 
「確かあなたは……。ふーん、そう」  
独り言のように呟き、ナーガはすっと差し出した両腕をガウリイの首に巻きつけた。  
「こうすれば……、リナは出てくるかもしれないわよ」  
そのままぐっと腕に力を入れて、ガウリイの顔を自分の顔へ近づけた。  
「まあ、そうね。結構見れる顔じゃない。  
……リナにしてはいいせんいってるわね。あたしには負けるけど」  
悪戯を思いついた子供のような微笑が浮かぶ。  
その手を振り切ろうとしたガウリイより先に、一瞬早くナーガが動いた。  
「んっ!!!!」  
重なったのは唇。  
強引にナーガの舌がガウリイの口の中に侵入していく。  
 
『……っ! 炎の矢』  
 
「氷の矢」  
 
大き目の爆発音と共に、ナーガとガウリイの頭上で2つの魔法が交差した。  
「ほーっほっほっほ! 甘いわねっ、リナ」  
片手をガウリイの首に絡ませたまま、びしっと指先を岩戸に向ける。  
「その程度の呪文で、このあたしが止められるとでも思ってるのかしら?」  
そう言い放つと、再びあっけに取られているガウリイに絡みつく。  
 
「リナみたいな子供相手より、ずっと楽しいはずよ」  
にやりと笑うと、ガウリイの手を握り、  
自分の胸に運ばせ、ゆっくりと……動かす。  
「……」  
「どう?」  
「……」  
少しずつガウリイの表情が変わっていく。  
男の、それに…  
「リナ、いいのかしら? このまま進んでも」  
勝ち誇ったような口調で告げるナーガ。  
 
『爆裂陣っ!』  
 
「ふっ、所詮この程度」  
 
『風魔咆裂弾』  
 
爆発の後立ち上がったナーガを、つかさず別の呪文が襲い、  
見事にナーガの身体は空の上へ飛んでいった。  
残されたのは……微妙にこげてすすけたガウリイ。  
ぺたりっと地面に腰を落としたガウリイの視線の先には、  
ほんの少し隙間の開いた岩戸。  
「リナッ!」  
地べたを這いずるようにその隙間に手を入れると、  
指先にぬくもりが……  
 
だが、ソレもつかの間 すぐに奥へと消えて行き岩戸が再び閉まり始める  
あわててオレは両手を無理やり岩戸へ差込み押し開いて体を中へ滑り込ませた。  
岩戸の中は弱めの『明かり』が灯されていてうすぼんやりとリナの体を照らしていてる。  
「リナ……」  
後ろ手に岩戸を閉め、名を呼びながらリナのほうへ近寄っていく。  
弱めの『明かり』に照らされたリナの顔が強張る。  
ジリジリと壁際に追い詰められ逃げ場をなくしたリナをガウリイは両手で包み込んだ。  
「はなして!」  
「嫌だといったら? 今の状況分かってるのかリナ」  
ガウリイの顔には少し意地の悪そうな笑みが浮かんでいる。  
普段の保護者の顔ではない、男の顔。 その声には  
居心地の悪さを感じているのか身じろぎしながらもリナの視線はオレに注がれる  
「ココでの声は外に洩れず、外からは誰も入ることができない。 そうだよな?リナ」  
「えぇ、そうよ。それがど……えぇ!? な、なにを考えてるの!」  
「ん〜、ナニかな?」  
笑いながらそっとリナの手をオレのものへと押し当てる。ソレはすでに固くなっていた。  
「こんのセクハラ親父!!!!」  
真っ赤になりながら殴ってこようとしているのを押さえつけ、リナの唇を自分の唇で塞ぐ。  
 
「んっ!!!」  
見開かれた瞳は、少しだけ充血をしていた。  
 泣いてたのか……?  
お金以外に余り執着を見せないリナに、  
嫉妬、というモノが生まれたのかもしれないと思うと、  
純粋に嬉しかった。  
閉じようと力を入れる口に舌をねじ込ませ、  
口の中を執拗に嘗め回す。  
「痛っ!」  
その行為に夢中になりかけた瞬間、  
唇を襲った痛み。そして口の中に広がる鉄の味。  
「エロ親父っ!」  
じろっと睨み付けた力のこもった瞳から、  
透明の滴がリナの頬をつたった。  
「リナ……」  
「……くせに」  
「は?」  
「……ナーガとも……スした、くせに」  
リナの身体が小刻みに震えていた。  
「どうせ、あたしは……、色気なんて……」  
また、涙が頬をつたう。  
 
「そんな事ないぞ?」  
言った瞬間、リナの瞳が『うそつき』と告げる。  
「俺は知ってるぞ? リナが十分色っぽい事」  
頬をつたう涙をそっと撫でる。  
「たとえば……」  
ニヤリっと笑い、すばやくリナの耳を軽く舐める。  
「ひゃっ」  
突然の行動に予測が出来なかったのか、リナは可愛らしい声を上げ、  
身体をぴくんと震えさせた。  
「なっ?」  
真っ赤になっているリナに、そう告げるがどうもまだ信用していないらしい。  
「……仕方が無いなぁ」  
そう呆れた口調で言いながらも、心底嬉しそうな笑みを浮かべてガウリイはリナの顔を覗きこんだ。  
「教えてやるから、間違えても竜破斬なんかぶっ放したりするなよ?」  
リナの返事など待たずに、ガウリイは再び自分のモノをリナに握らせた。  
「まずは……いつものように、シテくれ」  
「うっ……」  
一瞬怯んだリナに、ガウリイは余裕の男の笑顔を向けた。  
 
 

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