大聖堂に響くのは教典を読み上げる声。
全ての人々が沈黙し、或いは小さくすすり泣く。
そんな中で、どうしてはしたない声でのたうち回れようか?
喪主を務める父の横で、アメリアは喪服に包んだ躰を細かく震わせ続けてい
た。
傍目で見れば、彼女が祖父の死について今にもくずおれそうなほどの悲しみ
を感じ、それに耐えているという風にも見えただろう。
しかし、漆黒の衣装の下、服に合わせた下着の更に奥では、男の指が確かに
今なお、彼女を辱めていた。
「………っ、く」
葬儀が始まってすぐに、それは現れた。
しかし彼女の前後左右、何処にもそんなふしだらな真似をするものは居ない
。いや、見えはしない。
なぜならば相手は精神世界(アストラル・サイド)から指先だけ、或いは舌
先だけを具現しているのだから。
こんな馬鹿な真似をする魔族なんて、一人しか思い当たらない。
(っの、すっとこ魔族……………!!)
乱れる呼吸も紅潮した頬も、感じすぎて潤んだ瞳も、全て悲しみの所為だと
いうポーズをとり続けている。
そんなアメリアの努力など綺麗さっぱり無視し、ゼロスの指は痛みを訴える
ほど充血した陰核を弄ぶ。
長い責め苦に晒されて蜜を垂れ流す秘唇にくちづけし、きつく閉じ続ける脚
を割り開かせては、達するほどではない性戯を繰り返す。
「……っ……う………」
指先は時折移動し、惨めなほどに疼く胸の先端を弾く。
ゆっくりゆっくり彼女の中へと指を潜り込ませて、ただ抜き差しするだけの
動き。その無造作な動きが、アメリアにとっては耐え難い苦痛。
せめて誰もいない場所だったなら、はしたなく大声で喘ぎ、いやらしく腰を
振ってしまえただろうに。
そうさせられる事の屈辱など、今行われている蹂躙に比べればなんでもない
のに。
陰核をこねくり回す指を察知して、周りの者に気付かれないよう、そっとそ
の上に手を伸ばす。
けれどゼロスの指は雪が溶けるようにその実体を隠し、アメリアを嘲笑する
ように、彼女の素肌を這いずった。
(こ………こんなの………魔族なんかにぃ…っ!)
正義を愛し、悪を討つことを信条としてきた彼女にとって、悪の権化である
魔族に躰を弄ばれるのは、死にも等しい屈辱だった。
せめて簡単には陥落すまいと耐え続けていたが、それはアメリアの強靱な精
神力があってこそ。
それでも、葬儀が中盤にさしかかった頃、とうとうアメリアにも限界が訪れ
たのである。
がくん、と膝から力が抜ける。
腰から下の感覚などはとうに抜け落ち、良くこれで立っていられたものだと
自分でも思うほど、膝から下はがくがくと震えていた。
(おやおや……もうギブアップですか?)
からかう声を耳許で聞いて、アメリアは堪らず敷石に爪を立てた。
喪服姿のまま寝室に滑り込み、柔らかいベッドに倒れ込む。
侍女も衛兵も、殆どがまだ葬儀を行っている大聖堂に行っているはず。
そしてもともと、王宮の中は防音能力の高い作りになっている。
「ゼロス! いるんでしょう、出てきなさい!」
「仰せのままに、お姫様」
神官用の喪服に身を包んだゼロスが、空間を裂いて現れた。
「まずはお悔やみ申し上げます」
「ふざけないで。大事な葬儀の最中にあんなふしだらな真似……何のつもり?!」
今すぐにでもスカートをたくし上げ、熱く疼くソコを慰めたいのだが、それ
よりもアメリアを突き動かすのは屈辱故の怒り。
「何のって……決まってるじゃないですか、あなたのその感情ですよ」
正義感が強く、悪党だの魔族だのを毛嫌いする彼女は、それこそ魔族に触れ
られることを極端に嫌がる。しかし、それは魔族を悦ばせるものに過ぎない。
最悪の連鎖だ。
「ほら、そんな威勢のいいことを仰っていても、ここはもうヒクヒクしてるん
でしょ?」
ゼロスは錫杖を持ち上げると、石突きでアメリアのスカート越しに、その部
分を小突いた。
「ひぁっ!」
的確に陰核を突かれ、アメリアの躰に快感が奔る。
電撃でも浴びたかのように背中を反らせ、そのまま白いベッドの上に倒れ込
んだ。
しかし、ゼロスの責めがその程度で収まるわけがない。
つついてくる錫杖から逃れようと躰を捩って、半分俯せになる。
だがその姿はまるで無防備で、今度は後ろの堅い蕾や、綻びきった蜜壺の入
り口を突かれてしまう。
「あ! あぁっ! ダメ、そこ、ダメぇっ!」
「ダメなんて仰ってる割に、お尻を高々と持ち上げてらっしゃるのはどうしてですか?」
「し、しらな……っあ……ンっ…!」
知らず知らずのうちに腰を持ち上げ、より感じる場所を石突きに当てようと
してしまう。
その動きに気付いたゼロスは、アメリアのスカートの中に錫杖を忍ばせ、そ
のままぐいと、錫杖でアメリアの躰を持ち上げた。
「やぁぁぁぁ………っ!!」
ショーツにあてがわれた錫杖の圧力で、ソコから溢れた蜜が錫杖を伝い落ち
る。
「ほらほらアメリアさん、ご自分で動いてください。イきたいんでしょう?」
脚は震えてろくに動かない、けれど自分で動き出さなければ、いつまで経って
もイくことはできないだろう。
躰の疼きに耐えかねて、アメリアは憎むべき敵の言いなりになる。
ぐっと渾身の力を込めて膝を立て、ゆっくりと、淫らに腰を蠢かせ始めた。
絹が触れ合うさらさらという音が清浄すぎて、自分のはしたない姿が汚く思え
る。
そう思えば思い詰めるほど、アメリアは被虐の悦びにうち震える。
「っあ……あン……うぁぁっ…」
秘裂を錫杖に擦り付けるたび、溢れ出した淫蜜がくちゅくちゅと鳴り響く。
自分の呼吸と濡れた蜜の音が、奇妙なほどに大きく聞こえた。
しどけなく開かれた唇から、飲み下せなかった唾液が零れてシーツに染み込ん
だ。
「はっ…あ…んん…ふ……ぅ…ん…ンっ…」
無様に錫杖で自分を慰める、アメリアの動きが早まっていく。
きつく眼を閉じ、その悦楽だけを鋭敏に感じ取っている。
ほんの少し、後ほんの少しで。
「っあ…………! ダメぇっ………」
それまでずっと、髪の毛ひとすじぶんさえ動かされなかった錫杖が引き抜かれ、
アメリアはイきそこねてしまった。
「ゼロス…お願い……続けさせて…イかせてよぉっ……」
アメリアの躰にはもう動く力がない。
ぐったりとした肢体をベッドの上に投げ出して、彼女は眼を閉じる。
「それって『焦らされすぎて我慢できないから、早く犯してv』って事ですよ
ね?」
アメリアの上にのしかかりながら囁くと、彼女は潤んだ眼の端でゼロスを睨
み付け「殺すわよ」とかすかに呟いた。
今にもどうにかなってしまいそうな、正気と狂喜の狭間にいるような彼女の
姿が余程気に入ったか。
ゼロスの笑みがますます深くなる。
「おお怖いv ま、今日は余り時間もありませんから…ねv」
急いたふうにアメリアの服に手を掛ける。
喪服の上からたわわな果実を揉み、襟越しに首筋にきつくくちづけた。
「時間がないって……ん…また……なにか……悪巧みしてるんじゃ………っ」
「それは秘密ですv」
「白状しなさい、ゼロ………っ!!」
言い終わらぬ内に、喪服の胸の辺りを引き裂かれる。
あっと言う間にまろびだされた乳房に、ゼロスは遠慮なく手を伸ばす。
「ふ、っうン………あ……や……あぁっ」
ぷっくりと立ち上がった先端は、もはや指先で擦られる程度では満足しない
。
葬儀の間に、いつ挿入られてもいい位に慣らされていたのだ。こんな前戯な
ど必要ない。
「ゼ、ロス……も、いいから………っ………はやく……しなさいっ……」
堪えきれずに自ら腰を揺らし、ゼロスの脚に秘所を押しつける。
グズグズに濡れた感触さえ、甘い快感として知覚されていた。
「えぇ〜? もうですかぁ?」
ゼロスはいかにも不満です、と言う表情で「もうちょっとくらい
胸を弄りたかったんですけどねー」とかなんとか駄々をこねる。
「わかったわよ、後で好きなだけ弄ればいいでしょ……っ……!
だ、から………早く………い、挿入てよぉっ…!」
アメリアは自らの手でスカートを一気にたくし上げ、その下に幾重にも重な
るパニエも捲り上げた。蒸された熱が解放され、下肢が一気に冷える。
恥ずかしさから顔中が真っ赤に染まるが、今は羞恥より、屈辱より、目の前
の男に抱かれることが優先だった。
相手がいけ好かない魔族でも――――……悪くはない。
「わかりました。それじゃ………」
細められていたゼロスの目が、うっすら開かれる。
アメジストを填め込んだような瞳が、アメリアを捕らえて離さない。
濡れて少し重くなったショーツを引きちぎられ、華奢な両脚を纏めて上に持
ち上げられる。丁度、赤ん坊のおむつを替えさせるような感じだ。
一番恥ずかしい場所が奥の奥まで見られているようで、恥ずかしい。
「アメリアさんのココは狭いから、こうした方が楽でしょう?」
「た、ただそーゆーのが見たいだけでしょう?!」
「違いますよ。たっぷり愉しみたいのと、恥ずかしがるアメリアさんの顔が見
たいだけです」
「同じじゃないの…………っく………あぁ…ン…!」
艶を帯びていた抗議の声は、突き立てられたそれの感触に、嬌声へと変化す
る。
待ち望んでいたその感触と、ソレを咥え込まされたことに依る快感。
「あ、ああっ………イイのぉっ……ソレ、いいのぉ……っ!」
仰け反った拍子に黒い襟から白い喉が覗く。
さらけ出された急所に獣が噛み付くように、ゼロスの唇がそこに噛み付いた。
ストイックな肌に、赤黒い刻印が刻みつけられる。
根本まで押し込められたソレの熱が、アメリアの中を灼く。
気が狂いそうなほどに快楽の炎で炙られていた彼女の躰は、溢れんばかりに
湛えた蜜と共にゼロスを締め付ける。
喉笛に寄せられたゼロスの唇から、甘い吐息が漏れ聞こえた。
「は…ぁ………何度抱いても、アメリアさんの中はイイですね……v」
「っ…それは…どうも……ン……っ……」
喉から耳朶へ、首筋をなぞるように舐め上げられる。
剥き出しの乳房も休むことなく揉みほぐされ、彼女の頭の中は常に送り込ま
れる快感で真っ白に染め上げられていた。
じりじりとゼロスのペースで紬送が開始されるが、その動きにさえ物足りな
さを感じて、アメリアは自分から動き出す。
ほっそりした脚をふわりとゼロスの手から抜き取り、片方を彼の腰に、もう
片方は首に引っかけて、一度彼女から距離を置いたゼロスを引き寄せた。
「……………もっとよ」
女王然とした口調で、激しさをねだる。
ほんの僅かに呆けていたゼロスも、その意味を瞬時に悟って、唇を綺麗な三
日月の形に吊り上げた。
「仰せのままに」
無惨に引きちぎられ、その形をようやくとどめる喪服。
引き裂かれた穴の至る所から覗くのは、ドレスに合わせた下着と白い素肌。
ドレスの下の真珠と謳われる貴婦人の脚が、今は惜しげもなく明かりの下で
くねらされていた。
「ひっ、あ、あぁっ! や…あ………もっとぉ」
ずたずたのドレスが、余計にゼロスの――魔族として、そして雄としての――
欲求を激しく煽り立てる。
「アメリアさん……綺麗ですよ……魔族(ぼく)に陵辱されているというのに…
あなたは……………」
陵辱され、貶められても、その本質は彼の望むものに染まらない。
だからこそ彼女は美しく、毅然とし、何度でも貶めたくなるのだ。
ベッドの縁に腰掛けて、対面座位で突き上げる。
突かれるたびに重量のある乳房が上下に激しく揺れ、おとがいを逸らして喘
ぎ続ける様は、とても淫靡だ。
ゼロスの首に腕を回し、しがみついてきたアメリアの肩越しにバルコニーを
見る。空はもう暮れていた。
不意にイタズラを思いつき、ゼロスはアメリアの丸い尻に手を差し入れると、
繋がった姿のままで立ち上がった。
奥までねじ込まれたソレが彼女の体重で一層奥へと食い込んで、ゼロスが一
歩踏み出すたびに、アメリアは狂ったように鳴いた。
「うあっ! あ! あんっ!」
バルコニーへ出ると、夜風が熱せられた肌を冷ましていく。
数え切れないほどイかされ続けたアメリアの躰を、繋がったままでぐるりと
反転させる。
「きゃうっ!」
手摺りに上体を凭れさせ、もはや裸に等しい、ぼろ布を纏うだけの肢体を激
しく突き上げる。
「ふ、あぁっ…………う……んっ……!!!」
何処かで衛兵や侍女が聴いているかも知れないと気づき、アメリアは咄嗟に
両手で口元を覆った。
そんな彼女に気付いてか、ゼロスは背後から、そっとアメリアに耳打ちする。
「………御祖父様が崩御されて、暫くは鳴り物が禁止なんですよね?
これだけ街が静かなんですから……良く響くでしょうね、アメリアさんの声
………v」
そうだ。街は水を打ったかのように静まりかえり、小さな音が酷く大きく聞
こえてしまう。
街までは届かないだろうけれど、どの範囲まで、どんな声で聞こえてしまう
か。アメリアは唯一綺麗に残ったままの、黒いレースの手袋をきつく噛み締め
た。
律動のペースが速められるに連れて、掻き出される蜜がバルコニーの床に水
溜まりを作る。ぱたぱたと水の落ちる音と、堪えきれずに漏らしてしまう嬌声。
強い快感に陥落して膝を突き、手摺りの下部に縋り付いた。
透かし彫りに乳首が擦れて気持ちいい。
「んっ、ん……っ…ぅンっ……ん……っ…!…」
がくがくと腰が振れる。頭の中がオーバーヒートしそうになる。
「アメリアさん、そろそろイきますよ…」
ゼロスの声も何処か遠い。その意味をどうにか理解できたアメリアは、どうに
か首を縦に振った。
(ダメ、声が……声が出ちゃうっ!)
指から血が出るほどに噛み続けていたが、それももう役に立たない。
理性を洗い流す悦楽の大波に合わせて、激しく腰を動かしていく。
「んっ、あ、あ……あああああああぁぁぁぁ!!」
一際強く叩き付けられたその一撃で、アメリアの子宮から頭頂へ、激しい快感
が迸る。止められずに喉から絶頂の声が飛び出していく、その刹那。
ゴーン……………ゴーン……………ゴーン…………
弔いの鐘が鳴り響く。
長い長い葬儀が、ようやく終わったのだ。
そして、彼女への陵辱の時間も。
絶頂の瞬間抜き取られ、行き場を無くした白濁がアメリアの上に降り注ぐ。
バルコニーに倒れ込んだ彼女の躰を、黒いドレスの残骸と、白い汚れが彩って
いた。
次にアメリアが意識を取り戻したとき、そこは自室のベッドの上だった。
傍らではゼロスが椅子に腰掛け、弱冷気の魔法でアメリアを介抱していた。
「………少し張り切りすぎましたかね?」
「…………少しなんてもんじゃなかったわよ」
虚ろな視線で何気なく、引きちぎられ、穢された喪服に目を落とす。
ゼロスの手によって引き裂かれ、白で斑に汚されていたドレスは、先程までの
陵辱が夢であったかのように元の姿に戻されていた。
「直しておきました。いつまでもあのままじゃ、さすがにお辛いでしょう?」
「お礼は言わないわ。お前の責任だし、その方が良いでしょ?」
「はい」
感謝の感情など、必要ない。
だから代わりに、侮蔑と嫌悪の感情を投げつけた。
そんなどす黒い感情を喰らいながら、ゼロスは手を伸べてアメリアの頬に触れ
た。
冷たい虚無の手。その冷ややかさが心地よくて、アメリアは静かに眼を閉じた。
微睡みながら微かに目を開けると、まだ、ゼロスはそこにいる。
「………………どうして…………?」
どうして、そんなに、悲しそうに微笑ってるの?
お前は、魔族なのに。
疲れと睡魔の誘惑に耐えきれず、アメリアは眠りの淵に堕ちていく。
彼女が眠ったことを確認して、ゼロスは椅子から立ち上がった。
そして柔らかなその唇に、一度だけキスを落として囁く。
「魔族だって、泣きたくなることくらいあるんですよ………
………例えば、欲しいものがどうしても手に入れられないと、分かっているの
に諦めきれない時なんて、ね………」