そもそも、相手は強敵だ。
深層の令嬢といったらまだかわいいものだ、なにせ令嬢度合いの格が違う。
巨大王政国家、白魔術都市の正当なる王位継承者の血統を持ち、
加えて神により添う巫女様と来た。
それを迎えうつ自分ときたらどうだ。
人外の冷たい体に封じられた、忌々しい過去。
人から悪事と呼ばれるうしろぐらい事ばかり手がけてきた、汚れた手。
かたや、穢れなど知らぬ、知るはずもない、尊き巫女姫。
かたや、裏街道を歩んできた、人ですらない、悪党。
これを分がいいという奴はいないだろう。
…戦う前から分かりきったことだ。
負けがきまってるものを、わざわざ挑むバカもそうそういまい。
生憎、先を読む賢さには不自由していない。
背中を向け、見なかったことにすればいいことだ。
ポーカーフェイスには、自信がある。
「ゼルガディスさんってば、そんなに弱虫でしたっけ?」
そう、こんな腸が煮えくり返るような一撃だって、
蚊ほども利いていない顔をしてのけられる。
…実際のところ、相当なダメージをくらっているのだが…。
「…言っている意味がよくわからん」
「そのまんまコトバの通りですってば。なんでそんなに及び腰なんですか?」
分が悪い上に、相手は好戦的かつ挑発的で、逃げる背中を捉えて離してくれそうもない。
薄暗い宿の部屋、訪れてきたままの場所に立つ彼女を、ベッドに半身起こした状態で睨みつけた。
「…お前、今俺が言ったことを、聞いていたか?」
「ええっと…私はセイルーンの王女で、ゼルガディスさんは怪しい魔剣士さんってくだりですか?」
「…どうも引っかかる言い草だが…まあいい。聞いていたなら、わかるだろう。俺はお前を相手にするつもりはこれっぽちもない。わかったらさっさと寝ろ」
無情に吐き出された拒絶の言葉に、大きく見開かれる蒼の瞳。…彼女がどんな思いで、夜更けに自分の部屋を訪れたのか…。
分からなくはないからこそ、受け入れるわけにはいかなかった。ここでゼルガディスが引かなければ、後戻りはできなくなる。
そうなってからでは遅すぎる。
無くすものなどなにもない自分だが、彼女は失うものが多すぎるのだ。
大事に思えばこそ、そうやすやすと手は出せなかった。
「…ってオイ!!!お前なにしてるんだ!!」
しんみりと思いにふけっていたゼルガディスを尻目に、黒髪の巫女姫様は、
さっさと彼のベットにもぐりこんできていた。
「なにって…寝ろって言ったのゼルガディスさんじゃないですか〜」
呑気な声にこめかみがひきつる。
「俺は自分の部屋に戻って寝ろと言ったんだ!!」
彼女が引き寄せようとする上掛けを、力ずくで引き剥がすと、
見透かすような青い目がゼルガディスをとらえた。
「こそこそ逃げるゼルガディスさんなんて、初めて見ました」
─そもそも、相手は強敵だ。
ここで背を向け、戦いを避けるは簡単だが、舐められるのはしゃくにさわる…というか我慢ならない。
いろいろな意味で。
しっかり雌雄を決しておかねばなるまい。
あらゆる意味で。
「逃げるゼルガディスさんなんて、初めて見ました」
そもそも相手は強敵だ。年頃の乙女が自ら深夜のベットに入り込んできても、強情に突っぱねる。
ならば、これくらいの挑発も、言い過ぎということはないだろう。
「…そこまで言っておいて、後でほえずらかいても知らんからな」
低い声音が耳を打ち、アメリアの視界いっぱいに冷たい目をした岩肌の顔が映った。
これから愛の営みを行なおうという人のセリフにしてはちょっと殺伐とし過ぎです、ゼルガディスさん…。
心中で苦笑しながら、彼のくちづけをうける。
冷たいだろうと思っていたその唇は、意外にも熱く、アメリアの体をとろけさせるのにそう時間はかからなかった。
舌先を絡まされた時は、こんなことをするの!?と内心慌てふためいたが、衣服ごしに何度も体を愛撫されているうちに、
なにがなにやらわからなくなってきて、恍惚となる。
「は…ふ…はぅ…」
吐息のような鼻にかかった声が自然と漏れ出てしまい、ゼルガディスの口元に小さな笑みが刻まれた。
「気持ちいいか?」
「はい…き…きもちいい…です…ふぅ」
素直に答えると、彼は満足気に頷き、ならもっと気持ちよくしてやろうな、とローブの裾から手を差し入れて素肌を直に撫で摩ってきた。
時折指を腹の上で滑らせたり、ふくよかな胸をやわやわと揉みしだいたりする度に、アメリアの口から、
先ほどよりも色のついた嬌声が漏れ始める。
「あ…んっ…は、はぁっんっ…」
「…いい声だ」
お前、そんなやらしい声も出せたんだな。
揶揄する言葉に羞恥を煽られるのと同時に、彼を興奮させ喜ばせているということを感じて、嬉しくもあった。
「…あっ!ひっ」
固く尖った胸の突起をこねくりまわされ、だらしなく開いた口からこぼれる唾液を舐めとられ、
アメリアの腰から下がじんじんとしびれ、熱くなっていく。
あらぬ部分が、熱を持ち、わけのわからない疼きと共に湿り気を帯びているのすら感じ取れる。
どうなっちゃてるんだろう…わたしのアソコ…。
アメリアはどこかぼんやりと他人事のように、いまだやむことのない愛撫を体全身で受けながら、
ゼルガディスの胸にすがっていた手をそっと自分の下穿きの中に差し入れてみた。
アメリアの突飛な行動に驚いたように手を止めるゼルガディスの気配を意識しつつも、頭に靄がかかったようで手は止められない。
くちゅ…
「あ…」
甘い疼きと共に、かすかな水音が漏れ、アメリアの潤んだ瞳が切なく瞬いた。
「濡れてるだろう…感じてるんだ、お前のココは…」
「ひゃ…いやぁっ」
興奮した低い息を吐きながら、ゼルガディスの指がアメリアの手の上から彼女の蜜口を掻き回してくる。
「自分で触るなんて、お姫様はずいぶんはしたないんだな。いやらしい奴だ」
言葉で嬲り、卑猥な音を聞かせるように、強く指を蠢かしてやると、感極まったような雫が、青い双眸からぽろぽろと流れ落ち、
ゼルガディスの征服欲をさらに煽り立てた。
「…ひっ…そんなこと…」
「ないとでも言うつもりか?こんなびちょびちょにして、自分から指突っ込んでおいてよく言うもんだ」
「や、やぁっ!ん…ふぁ…っ」
汗ばんだ額に黒い一房が張り付いたアメリアの顔が、強い羞恥と快楽に歪む。
舌足らずなあえぎ声は、ゼルガディスを追い詰め、誘い込むように淫らに響き、
ねちゃねちゃといやらしく塗れそぼる蜜壷に今すぐにでも張り詰めた己をねじ込みたくさせたが、目を瞑り、息を整え、なんとかこらえた。
まだまだお楽しみはこれからなのだ。
「さて、これからどうして欲しい?やらしいお姫様?」
アメリアの陰部から手をどけて、横たわったままの彼女を見下ろしたら、口をへの字に曲げ、顔を赤く染めていた。
とまどっている巫女姫の腹や太ももを、きわどい動きの指先で促してやると、拍子抜けするくらいにあっさりと陥落する。
「…もっと、…もっと気持ちよくしてほしいですぅ…」
「お前ホントにセイルーンの王女なのか?」
淫乱女、とあざ笑うと、耐え切れなかったのだろう、さらに大粒の涙を落としながら顔を華奢な腕で覆ってしまった。
「気持ちよくなりたいのなら、それなりの対価を払うんだな」
涙を見ても胸が痛むどころか、さらなる興奮の呼び水となる時もある。今がそうだ。
桃色に染まった顔を覆う腕を無理に引き剥がすと、背中からベットに倒れこみ彼女の体も自分の上へと引きずり上げた。
「次はお前の番だ、アメリア」
「……えぇっ!?な、なにがですか!?」
「なにがですか、じゃない。今度はお前が俺を気持ちよくしてくれ」
「えええぇぇっっ!?」
先ほどまでの痴態はどこへやら、完全にギャグ顔であわてまくるアメリア。
あたふたとわけのわからない動きを繰り返すのを、軽く起き上がり頬杖をついて眺めるゼルガディスは、
面白そうに、つぶやいた。
「なんだ…ずいぶんと及び腰なんだな」
ぴきーん。
聞こえよがしなつぶやきに、わかりやすすぎる程の反応を返す淫乱王女…。
「こそこそ逃げるアメリアなんて、初めて見た」
「なっ!」
ぐっと拳を握るアメリアに、とどめの一撃がさわやかな笑顔と共にお見舞いされた─。
「正義じゃないな」
にっこり。(はぁと)
ぷっちーん。
「正義の名の下に、アメリア、参ります!!!」
「おお、こい」
…かくして、正義の名の下に、夜の戦い第二ラウンドのゴングが高らかに鳴ったのであった…。
赤コーナー、聖王都の淫乱巫女姫アメリアー!!
「正義の名の下に、アメリア、参ります!!!」
青コーナー、据え膳、棚ぼた魔剣士ゼルガディスー!!
「おお、こい」
ファイト!!!カンカンカンー♪
第二ラウンドは、ゼルガディスの挑発に乗ったアメリアの先制攻撃で幕を開いた。
「ちょっと腰浮かせてください!」
ゼルガディスの下衣に手をかけながら、鼻息も荒く息巻く少女に少々慌てる魔剣士である。
「おま…段取りってもんがあるだろうが」
「?だから、まずは服脱ぐところからです」
「や…そうじゃなくてだなぁ…」
…クールっぶっていても、その実、ゼルガディスはロマンチスト─というか、ノリや雰囲気を重要視する男でもあったりする。
かと言って、自分から誘ってきたとはいえ、いかんせん、ベットの上のあれこれに関する経験値など0に等しいアメリアに、
彼の言うところである「段取り」とやらを期待するほうが無理な話しであろう。
「よいしょ」
「おわっ…」
ズリズリと下穿きごと下衣を引き抜かれ、思わず情けない声を上げるゼルガディス…残酷な魔剣士も形無しというところか。
とにかく彼の猛った分身は、花も恥らう乙女の前に、なんの前ぶりもなく曝け出されてしまったわけだ。
なんとなく気恥ずかしさを感じてそっぽを向きながらも、アメリアの反応が気になった。
男の証をこんな風に見ることなんてなかったのだろうから、驚きや羞恥心、もしかしたら嫌悪感も示されるかもしれない…。
「わぁ〜どうも、始めまして!」
「挨拶はいい!!」
…第一印象はよかったようである。
果たして未知の物体Xとの初対面を果たしたアメリアの心中は、まさに「生命の不思議を観察する少女」であった。
彼女が思っていたよりも、ずっと生生しい姿をしたソレは“俺の生き様を見ろ!!”と言わんばかりに雄雄しく天を仰いでいる。
そっと指先で触れると、ゼルガディスの腰がかすかにわななく。
「い、痛かったですか!?」
驚いて手を離すアメリアを、どこか焦点の合わないような目で眺めていたゼルだったが、
「…いや…もっと触れてくれ…」
アメリアの小さな手を掴み、己自身に擦り付けるようにして導いてくる。
かすれたような低い声音に、アメリアの背中にざわざわと電気が走り抜けた。ゼルガディスさんが、感じてる。
…そう思い至ったとたん、彼女の下腹部がきゅう、と震え、とろりとした何かが漏れでてきた。
「…もう少し強く握っても、大丈夫だ…そう、上手だな」
お互いが向かい合うように座りながら、アメリアの両手は添えられたゼルガディスの片手に教えられるままに、ゆるやかな動きで彼を追い上げていく。
そして、彼女もまた。
「んっ…あ…っ」
ゼルガディスの空いている方の手で、彼と同じ場所にある、まったく逆の作りをした部分を撫でられ、かき回されて、少しずつ上り詰めていった。
慣れない手技を導くゼルガディスにとっては、彼女の愛撫は正直言ってものたりなくもあったが、
一国の王女でもある可憐な少女の小さな手を借りていることを考えると、そのシチュエーション自体が興奮させてくれるのだった。
─ずいぶんマニアックな嗜好をお持ちのことで─どこぞの秘密主義な魔族の突っ込みが聞こえてきそうなところではあるが…。
だんだん、アメリアの方も上り詰めてきたのだろう、ふいに憑かれたように唇をよせてきたので情熱的なものを返してやった。
「ふ…」
唇を離す度漏れる、鼻がかった吐息にたまらなくなって、何度もアメリアの名を呼びながらやわらかい彼女の頭を抱き摩りながら固定する…
もう、我慢の限界だった。
「…アメリア…っ」
「うわゎっ!?」
どぴゅっ…と、濁った音を立てながら、ゼルガディスの放った白い液体がアメリアの顔に撒き散らされた。
「ええええええええぇぇぇええーーーーーーっっっ!!?」
アメリアの素っ頓狂な声が耳に響く…やりすぎた、と反省しつつも、粘つく精液を顎から滴らせる姿は、なかなかそそる。
「じっとしてろ、今拭いてやるから」
「あうぅぅう〜〜変なにおいがしますぅうぅ〜〜っ…」
「…悪かったな…」
サイドテーブルから手ぬぐいを取り、アメリアの渋い顔を無造作に拭き取ってやり、汚れた手ぬぐいをベット脇に投げ捨てながら
またもや彼女を押し倒し圧し掛かった。
まだ臭いが気になるのだろう、顔をしかめて頬を拭う彼女をゆるく抱きしめながら、白い足の間に割り込むと、
「痛かったら言えよ、な?」
と、できるだけ優しく声をかけ、吐き出したばかりで勢いを失った己をゆっくりとアメリアの体の中に埋めていった。
ゼルガディスさん…。
自分の中に押し入ってくる、硬く冷たい感触に、アメリアはたじろいでいた。
言葉を発することすらできず、唇の動きだけですがるように彼の名を紡ぐ。
男と女が睦み会う時、最終的にどういった部分でどんな行為を行なうかは、お姫様育ちのアメリアとて知らないわけではなかったが、
考えていたよりも痛みを伴わないことに驚きと戸惑いを感じていたのだ。
ゼルガディスの局部は、彼が忌み嫌う合成獣の体と同じく岩肌で、萎えた状態でもそこそこの硬度を持つので挿入が可能な為、
対した痛みがなかったに過ぎないのだが、そんなことは露ほども知らないアメリアは自分が処女だというにも関わらず、
こんなにすんなりと受け入れてしまうことを恥ずかしく感じる。
『淫乱女』
彼にあざ笑われた言葉が耳によみがえり、頬に血が昇る。ゆるゆると律動を始めたゼルガディスの動きに体ごとゆさぶられ、アメリアの
思考に幕がかかっていく。
「わ…わたし…」
溺れる者のようなしぐさで、アメリアは彼に縋り付く。体も熱いが、胎内の方がもっとずっと熱かった。
「うん…?」
普段のゼルガディスからは考えられないような優しい声で促され、なぜか目元が熱くにじんで止める間もなく零れ落ちる。
「わた…し…って…んっ…い、いんらん…ですか…?」
恥ずかしい質問を必死に口にしたというのに、頭の上で笑いを堪えている気配が伝わってきていささかむっとした。
しかし抗議してやろうと開いた口からは、あられもないあえぎ声がもれるばかりだ。
「そうだな…こんなにいやらしい奴は初めて見た。初めてのクセに…こんなに喜んで…」
「やっ…いや…」
繋がった部分がアメリアの視界によく入るように、身体を起こしたゼルガディスがぐっと彼女の下半身を折り畳むかのように扱う。
彼の分身はとうに力を取り戻していたが、熱く熟れきって麻痺したアメリアには痛みどころか快感を伝えるばかりだ。
ぐちゃぐちゃと淫らな音がひっきりなしに響き、突かれ、抉られ、かき回され、こどものように泣き喚く自分の声をどこか遠くに聞いた。
いやだ、とか、もうだめ、とかそんなことを漏らしていたような気もするが、定かではない。
なにが『もうだめ』なのかは、彼が教えてくれた。
「…イクぞ…」
「ああ、あぁっ!?いやぁっ!!」
頭の中がすうすうする感覚と共に、膣壁が収縮し、浮遊感を伴う絶頂を知った─。
─わたしって淫乱ですか?─
…煽っているとしか思えない、場違いな質問に笑いが漏れるのは仕方ないことだろう。
よりいっそう彼女をいとおしく思うのも、いじめたくなるのも。
「そうだな…こんなにいやらしい奴は初めて見た。初めてのクセに…こんなに喜んで…」
「やっ…いや…」
なにがいやなもんか。それじゃコレはなんなんだ。こんなにヨダレをたらして、俺を銜え込んで離さないクセに。
いやだ、とか、もうだめ、とか、そんな言葉で男が止まるとでも本気で思ってるのか?
涙も拒否する唇も、上気した頬と汗ばんだ肢体にかかれば形無しだ。
「…イクぞ…」
「ああ、あぁっ!?いやぁっ!!」
限界はあっさりとやってきた。彼女の内部を汚してはならないと思いもしたが、今更止まりようもない。
小刻みに震える熱い身体を強く抱きしめながら、白い巫女姫を汚した背徳感に酔いしれる。
ぜるがでぃすさん。
呼ばれた気がして彼女の顔を覗き込むと、のぼせた瞳がかすかに笑んで、唇だけが動いていた。
だいすきです。
…そもそも相手は強敵だ。
翻弄して、打ち負かしたつもりになって満足していたところに、この殺し文句。
油断しきっていた反面、モロに食らえばたまらない。
背中を向けることなど、男の矜持が許さない。
「…アメリア…」
「にゃ…んっ…や〜っっ」
そしてまた。
ゴングの音が高らかに響いたが、それはまた別のお話。
END