「はぁぁぁぁぁ」  
 嬉しそうに鼻歌交じりでお風呂へ行くガウリイの背中を見送りながら、  
あたしは派手なため息を1つ付いた。  
「どうしてこうなっちゃったんだろう……」  
 呟いた言葉に、またため息が出そうになった。  
 いや、あたしも悪いんだけどね……  
「リナァ、早くこいよぉ〜」  
 語尾にハートマークでも飛んでいそうな程甘い声が  
バスルームから聞こえてきた。  
 全く嬉しがるんじゃないっ!  
「今行くわよっ!」  
 半ばやけくそであたしはその声に返事を返した。  
 
 ドアノブに手を掛け、大きく深呼吸。  
ぐっとノブに力を入れた瞬間、扉はあたしの力とは関係なく開いた。  
「何やってんだよ」  
 すでに準備万端?のガウリイが、タオル一枚腰に巻いて目の前に立っていた。  
「……」  
 一瞬にして頭に血が上って行くのが自分でもわかる。  
 いつもなら『乙女の前でっ』とスリッパを出すところなんだが……  
 
「ほらっ」  
 ぐっと腕を捕まれ、そのまま引きずられるように、あたしは中へ入っていった。  
 バタンと閉まった扉の音が、やらた大きく聞こえたのは何故だろう。  
「どうした? リナ」  
 いつもと同じ表情でそこにいるガウリイがやたら恨めしく、  
どんどん余裕が無くなっていく自分が情けなかった。  
「ほら、早く脱げよ」  
 ガウリイの手があたしの肩に触れると、瞬間的に身体が硬直し、  
びくっと反応を示した。  
「リナ」  
 優しい声が上から降ってくる。  
 見上げたあたしの顔は、たぶんこれ以上赤くなれないくらいまで  
真っ赤になっていたことだろう。  
「んっ……」  
 突然塞がれた唇から漏れる声が、いやにはっきりと耳に聞こえた。  
 口の中で蠢くガウリイの舌に、ぎこちない動きで合わせると、  
頭の芯がぼーっとしてきて……気持ちよかった。  
 どのくらいの時間そうしていただろう。  
もしかしたら一瞬だったのかもしてないけれど。  
そっと離れた唇から、もっと、と漏れそうになった言葉をあたしはぐっと飲み込んだ。   
 
嬉しそうなガウリイの顔。  
 あたしだって別に嬉しくないわけじゃない。  
 ガウリイとのその……エッチは。  
「可愛いなぁ、リナは」  
 羞恥心を煽るようなガウリイの言葉に、やっぱりあたしは放浪されるだけ。  
「ほら、ばんざーい」  
 子供の服を脱がすようにガウリイはあたしの服を脱がしに掛かる。  
「じっ、自分で脱げる、わよっ」  
「だめっ。俺が脱がすの。ほら、手上げろよ」  
 促されてあたしは仕方がなく両腕を上げた。  
「やぁっ」  
 ちょうどすっぽりとあたしの頭が服にかぶさったところで、  
胸の先端に感じだぬるっとした感触に、あたしは思わず声を上げた。  
 
「ちょっ、ガウリイ」  
 突然ゆっくりと脱がされる服と、胸で動く感触。  
「ぁんっ」  
 舐めてるっ!  
 慌ててあたしはもごもごと動き、途中で止まりかけていた服を脱ぎ捨てた。  
「がっ、ガウリイ!」  
 あたしのコンプレックスの象徴でもある胸に、  
ひっつく形でガウリイは予想通りあたしの胸を……舐めていた。  
「やぁ……」  
 身体の力が抜けるような感覚にあたしは自然と甘い声を上げていた。  
 ガウリイの身体を押しのけようにも力が入らず、  
ただガウリイの身体に触れているだけのような形をなってしまっていた。  
 
「んっ……はぁ…ん」  
 だんだん熱くなっていく身体と、息遣い。  
「……さてと、お風呂入ろうな」  
「もっ……」  
 突然快楽から現実へ戻されたあたしは、もっと、と言う言葉を思わず漏らしかけた。  
「ん?」  
 たぶん何を言いかけたか分かっているだろうガウリイの、  
にんまりと意地の悪い笑顔があたしを覗き込んだ。  
「どうした?」  
「なっ、なんでもないわよっ」  
 素直に求めたい……  
 小さなため息すらも気付かれそうで、あたしは心の中だけで嘆息した。  
 
「うわぁ、ひろっ」   
2人で入っても十分すぎるほど広いお風呂の感想。  
「へぇ……。2人で入っても十分分泳げそう」  
 余りの広さに一瞬そこにガウリイがいることを忘れてしまった。  
 我ながらゲンキンだな、ほんとに。  
「そうだろ? だから、こんな事してもぜんぜん……」  
 後ろから抱きしめられ、肌が直に触れ合う。  
 
「……っ!」  
 跳ね上がるように心臓が高鳴り、身体がピキンッと硬直した。  
「ほんと可愛いな、リナは」  
 また、子ども扱い……  
 こんな時にまで保護者でいるガウリイを見返してやりたくて、  
あたしは顔だけをガウリイへ向けた。  
「ん?」  
 余裕の笑顔があたしを追い詰めていく。  
「ガウリイ……」  
 少しだけ背伸びをして、あたしからのキス。  
 いつもみたく恥ずかしげに触れるだけのキスではなく、  
深く、深く求めるような口付け。  
 自分から舌をガウリイの口の中へ割り込ませると、  
少しだけガウリイが動揺したのが気配でわかった。  
けれどそれも一瞬の事。  
すぐにあたしの動きに合わせて、ガウリイの舌が絡み付いてきた。  
「んあっ……」  
 あったかい……  
 そっとガウリイの手が背筋から腰へとなぞる様に動いた。  
「んっ」  
 一瞬離れそうになった唇を、ガウリイがまた引き戻す。  
 
 慣れた動きでガウリイの指先は、背中や腰をゆっくりと、  
けれど確実にあたしを感じさせながら蠢いていた。  
「やぁっ……」  
 気持ちよすぎる……  
 その手つきのよさで、どれだけいままで女を経験してきたか分かってしまい、  
見ず知らずのそんな女達に嫉妬してしまう自分がいる。  
 また、いつかそんな人のもとへ行ってしまうかも……  
 ガウリイの動きに快楽を感じながらも、そんな事が頭をよぎった。  
「リナ……」  
 耳元で囁かれた声。  
「何考えてる?」  
 少しだけトーンの低い声。  
「……いつになったら、リナは俺を―――信じてくれるんだ?」  
 決して怒っている声ではなかった。けれど……  
 
 そっと上目遣いで見上げると、ガウリイの瞳の奥に、微かな怒りをあたしは見つけた。  
「ガウリイ……」  
「ほんとに、お前って奴は」  
 ほら、また子ども扱い。  
 必死で抑えている感情がこみ上げてきそうで、嫌だった。  
 お風呂は暖かいはずなのに、指先が冷たく感じ身体が小さく震える。  
「……リナ」  
 ぞくっとするほど感情が感じられないような声だった。  
「ガウ、リイ?」  
「信じさせてやる」  
「えっ? ……んっ」  
 唇を貪る様なキス。  
 閉じていた唇をこじ開け、生き物のようにガウリイの舌が動く。  
 先ほどの動きとは違う。まるで、口の中を犯すような、そんな動き。  
「ぁんっ……、ガゥリ」  
 全てを曝け出すのが怖い。  
けれど、全てを委ねなければ、ガウリイが何処かへ行ってしまうような、そんな気がして。  
 あたしはそっと腕をガウリイの首へと回した。  
「リナ、俺はお前だけが―――欲しい」  
 首筋から胸へとガウリイの唇が降りてきて、あたしの胸にしゃぶりつく。  
「んんっ……ふぁ」  
 背筋を流れる快感。  
 ゆっくりとガウリイの指先があたしのソコへと降りていく。  
「ぁっ」  
 触れられた瞬間、びくんっと身体が跳ねた。  
「気持ちいいか?」  
 ガウリイの質問に、こくりとあたしは頷いた。  
「もっと、……気持ちよくさせてやる」  
「ひゃっ」  
 ぐちゅっと音と共に、ガウリイのごつごつした指が、あたしの中へ押し込まれた。  
 
「んっ、はっぁ」  
 ゆっくりとけれどいやらしくあたしの中でその指は動く。  
 指が動くたび、あたしの中からどろっとしたものが溢れ出て、  
足をつたって降りていくのが、気持ち悪くて―――気持ちよかった。  
「ぃゃっ、……だっ、……め」  
 足ががくがくと震えだし、あたしはガウリイに寄りかかるように支えを求めた。  
「もっと、だ」  
 耳元で囁かれた瞬間、ソコを圧迫する感じが増した。  
「はぅっ……ひゃっ、だっ、だめぇぇぇっ」  
 びくびくっと身体が痙攣のように震え、あたしはガウリイの指で簡単にイッてしました。  
「んっ、はぁ」  
 肩で息をしてガウリイにしがみ付いていなければ、そのまま崩れそうになりそうだった。  
「いっちゃった?」  
 意地悪な質問と笑み。  
「……」  
「リナ」  
 そっと抱きしめられて、優しくガウリイがあたしの身体をその場に横たわらせてくれる。  
 んー、やっぱり無意味に広いな、このお風呂。  
 あたしとガウリイが転がっても狭く感じないここ。  
「リナ。まだ余裕があるようだな」  
 耳元で囁かれ、再びソコへごつごつした異物が入り込む。  
「はひゃ」  
 おかしな発音の声があたしから漏れ、ガウリイの指の動きはいっきに激しくなる。  
「やっ、んんっ。……ひゃ、だっ、だぁ……だめっ。イッ、……また、イッちゃ」  
 ぬるぬるしたものが激しく動き回り、苦しいのか快感なのか分からずに、  
あたしはソコからガウリイの腕を押しのけようとした。  
「駄目だ」  
 その一言でガウリイは簡単にあたしのその手の動きを妨げてしまった。  
「やっ、だめっ。おかしく……、あぁっん」  
 ガウリイの指で、またしても簡単にあたしはイッてしまった。  
 こうも簡単にイかされてしまうと、何かこう……  
「ガ……ガウリイ」  
声、震えて、ないよね?  
 ドキドキしながらあたしはガウリイの名を呼んだ。  
 
「ん?」  
「あ、あたし……」  
 たぶん、顔が真っ赤だろうな。  
 あたしは声が震えないように、ゆっくりと思いを告げる。  
 今、あたしが、したい事を。  
 たぶん、ガウリイとこういう関係になって、初めての……自分からの行動。  
「何だ?」  
「ガウリイにも……し、たい」  
 語尾は震えていたかもしれない。  
 たったその一言を言うだけで、何か喉がカラカラになった。  
 一瞬何を言われたか分からずに呆けているガウリイをよそに、  
あたしはそのまま行動を起こす。  
イッたばかりの身体には、動くのはちょっと辛かったけど。  
 熱くそそり立ったソレを、あたしはそっと掌で包み込み、  
ゆっくりと唇を近づけていく。  
「ちょっ、リ、リナっ」  
 慌てたガウリイの声が、ちょっと嬉しかった。  
 あたしは怖じ気ないうちに、一気にソレを口の中にほおばった。  
 正確には、半分くらいしか入らなかったんだけどね。  
「うっ」  
 じゅるっとソレを舐めあげると、ガウリイから小さなうめき声が聞こえた。  
 それが嬉しくて嬉しくて、あたしは何度も口を上下させて、ソレに刺激を与えた。  
「馬鹿っ、それ以、上……」  
 ガウリイの声と同時に、無理やりあたしの口からガウリイのソレが引き離される。  
「……」  
 デカイ。  
 口から飛び出たソレは、あたしの目の前で大きくそそり立っていた。  
 コレ、入ってるの? ……いつも  
 今までだってガウリイのを見たことはあったけど、  
さすがに目の前でまじまじと見たのはこれが初めてだった。  
 だから……ちょっと怖気づいてしまった。  
 その瞬間、身体がふわっと浮いたかと思うと、あっという間にあたしの身体は床の上。  
ガウリイの身体はあたしの上。  
そして  
 
「あぁぁっ」  
 一気にその大きかったモノがあたしを貫いていた。  
「あっ、ん……ひゃっ、ぅん」  
 腰を激しく打たれるたび、空気と一緒にあたしの声が漏れる。  
「だっ、だめ……おかしく、……なっ、ちゃ」  
 激しすぎる動きと、押し寄せてくる快感が、確実にあたしの中で何かを壊しかけていた。  
「ガゥ……リイ……、や、だ……イッちゃ」  
 何とか逃げようと、ずるずと身体を動かしてみるが、たぶん動いてなんかいなかっただろう。  
 激しい動き。 息を吸っているのか、はいているのかそれすらも分からないくらい。  
「やっ、ぁ、……ひっ……」  
 聞こえるのはあたしの水音と、打ち付ける音、そしてガウリイの息遣いだけ。  
 今までこんな抱かれ方はなかった。  
 ガウリイはいつも、大切にあたしを気遣って。  
「んっ、ガウリ……ィ、はぁ、はぁん」  
 壊れる……  
 そう思った。  
 バランスを取っていた、否取ろうとしていた何かが、  
ガウリイの動きと共に少しずつそのバランスを崩し、ゆっくりと壊れていく。  
そんな感じがした。  
 そして事実、あたしはガウリイを求め始めていた。  
「んっ、はぁん……もっ、と……ガウ、リィ……」  
 淫らに自分からガウリイの動きに合わせて腰を振る。  
 
 ガウリイから離れないように抱きつき、キスをせがむ。  
「リナ」  
 満足そうなガウリイの表情があたしの瞳に写った。  
少しずつ狂いだしていくあたしを、さも愉しそうに、満足そうに、嬉しそうに……  
「もっと……、ああっ……もっとして、ガウリィ!」  
   
 ガウリイが欲しい  
 ガウリイで満たされたい  
 
 膨れ上がっていく思いが、唇からこぼれるまでに時間はかからなかった。  
「がう、りい……」  
「ど、した?」  
 目は開いているのに、ガウリイがよく見えない感じがした。  
「……ほし、い」  
「……何が?」  
「ガウリイ……が、もっ、と……欲しい」  
 よく見えないのに、ガウリイが至極満足そうに頷いた気がした。  
「んんっ……あっぁぁ……イッ……ぁぁぁぁ!」  
 そして―――あたしの意識は真っ白に包まれた。  
 
 
「リナ?」  
 耳元で優しい声が聞こえる。  
 ゆっくりと瞳を開けると、ちょっと苦笑したガウリイの笑顔。  
「風邪、引くぞ」  
 大丈夫か、と聞かれない事がちょっと嬉しかった。  
 少しだけ大人になれた気がして。  
「お風呂、入らなきゃ」  
 立ち上がろうとした瞬間、腰ががくがくっと震えてあたしは思わずびっくりした。  
「……」  
 そんなあたしを何も言わずに抱きかかえて、一緒に湯船へと入れてくれるガウリイ。  
 あたしは少し照れながら、その首に自分の腕を回していた。  
 随分素直になったもんだ。  
「リナ」  
「何?」  
「……お前だけが俺の女だ」  
 重ねられた唇からこぼれた言葉に、あたしは小さく頷いた。  
「あたしは」  
 
 ―――あなただけをアイシテル  
 
 
 
<おわり>  
 

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