何もかも、壊してしまえばいい。  
 誰かに―――奪われるくらいなら。  
 
 
 無防備にスヤスヤと眠る横顔を、ガウリイはただじっと見つめていた。  
 信頼しきっているのか、馬鹿にされているのか、  
それとも……男としてすら見られていないのか。  
 年頃の少女が、無防備に身体を投げ出し、男と同じ部屋で、同じベッドで寝る。  
 たとえ偶然的に1人部屋しか空きがなく、  
仕方がなくという状況であったとしても、その無防備さが……気に障る。  
「はぁ」  
 知らずにため息が漏れた。  
 保護者、と言ったのは自分の方からだった。  
 子供だと思ってた。  
たとえどんなにすごい魔法を使えても、見事な剣捌きをしても、  
まだ子供だと、そう思っていた。  
 確かに、胸はやや小ぶり。どんぐり目で背も高くない。  
 子供扱いされる事を嫌いながらも、見た目は中身を裏切らずに、  
すぐ怒るわ、我が儘だわ……  
 十二分に子供っぽかった。  
だから惹かれていることにすら気が付かずに、時間だけが過ぎていった。  
 信頼が絆を生み、絆がより強固な信頼を生み出していく。そして―――  
気が付いた時には、目が離せなくなっていた。  
「……リナ」  
 そっとその髪に触れる。  
 
 規則正しい寝息が耳に届き、触れられた事に無意識に反応を示したのか、  
小さく身体を揺らした。  
「リナ」  
 もう一度耳元でその名を囁く。  
「……んんっ」  
 寝返りを打つように身体がゆっくりと動き、ちょうどガウリイの目の前に顔が来た。  
 ドクンッと心臓が高鳴った。  
 安心しきった表情が、逆に苛立ちの原因となる。  
 
 壊してしまえばいい  
 自分以外の誰かを―――見つめるくらいなら  
 
 ゆっくりとガウリイは顔を近づけ、その唇に自らの唇を重ねた。  
 柔らかく、甘い香……  
 少しだけ開いていた唇の隙間から舌を入れ、リナの舌と絡ます。  
「んっん……」  
 この関係が壊れてしまう事の恐怖より、  
奪われることの恐怖のほうが遥かに大きかったのかもしれない。  
 そんな想いが執拗に口の中を撫で回す。  
 起きるかも知れない……。否、起きるだろう。  
 それでも一度動き出してしまった感情は止められなかった。  
 服の隙間から手を入れ、そっと肌を指先でなぞる。  
 
 壊れてるのは自分かもしれない。  
 
 まだ目を覚まそうとしない少女を見つめ、ガウリイはふとそう思った。  
 壊れているから、壊したいのかもしれない。  
 
 目の前の、まだ無垢な少女を。  
 欲望の鎖で絡み取られ、動きを取れなくなってしまった自分。  
 同じ処まで落としてしまえば、  
少女は自分と同じように壊れてくれるかもしれない。  
そう思うと、自然と笑みがこぼれていた。  
   
 
 堕としてしまえば、いい  
 離れられなくなるまで  
 
 
 そっと服の中から手を出し、側にあった細い紐状のものを手に取る。  
 リナの右手を掴みその紐を絡ませ、そのままベッドの端にくくりつける。  
「リナ……」  
 耳元で優しく囁くと、微かに息遣いが変わった。  
 夢の中から確実に現実への扉を開きかけている。  
「ガウ、リイ?」  
 とろんとした瞳が少しだけ開かれ、不思議そうな声のトーンで名を呼ばれた。  
「リナ」  
「……どう、した、の?」  
 とても優しく微笑んで自分のを見つめるガウリイが、  
よほど不思議だったのか、軽く首をかしげてリナは問いかけた。  
「……リナ」  
 微笑を崩さないまま、降りてくる唇。  
 何が起きたのか、起きているのか分からずにリナはその口付けを受け入れていた。  
「……っ!」  
 
 口を割って入り込んできたガウリイの舌の感触に、  
一瞬びっくりしたリナが反射的にガウリイを押しのけようとした。  
「……?」  
 力を込めて動かした腕が、思い通りにガウリイの身体に触れない。  
 それどころか、まるで引っ張られるかのように自分の手首に痛みが走った。  
「リナ」  
「ガウリイ?」  
 微かに声が震えていた。  
 優しい微笑で自分を見つめてくれている『保護者』の瞳の中に、  
明らかに狂気の光を見つけてしまったから。  
「なっ、にして……」  
 いつものようにスリッパで叩いて、何を寝ぼけているのかと、  
そんな風に誤魔化したかった。  
微かに震えている身体に気が付かないふりをしたかった。  
「震えてる……」  
 そっとガウリイの指先が頬に触れた。  
 その冷たさに、背筋がぞっとした。  
「怖い、か?」  
 微笑んでいつもの調子で言ってくるガウリイ。  
 
けれど瞳の輝きだけがそれを裏切っている。  
「ガウ、リイ……」  
 明らかに怯えているリナが愛しく感じた。  
 微かに震え、それでも何かの間違いではないだろうかと、  
力を込めたまま、自分を真っ直ぐに見つめている瞳。  
 濁りのない思い。  
 
 ―――壊したい             滅茶苦茶に  
 
 どす黒い想いだけが膨らみ、破裂したのは次の瞬間だった。  
「ガウっ……やだっ、ちょっ……ガゥリイ!」  
 びりびりっと音を立ててリナの服を一気に引きちぎる。  
 悲鳴を上げかけたリナの頬すれすれに、  
側に置いてあったリナの護身用のショートソードをつきたてた。  
「……っ!」  
 一瞬信じられないような表情をしてから、  
リナは上げかけていた悲鳴を喉の奥にしまいこんだ。  
「リナ」  
 響きだけはいつものように優しかった。  
 それが余計にリナの恐怖を煽る。  
「ガウリイ」  
 怖いことはしないで。  
 言葉にならずに、唇の動きだけがそれを伝えてくる。  
 それに答えることなく、ガウリイは破いた服の隙間から見える、  
ほんのりピンク色の胸に顔を埋めた。  
「ひっ……」  
 それが行われることは理解していたはずだろうリナの喉から、小さな悲鳴が上がった。  
 
「ここを触れられるのは……俺が初めてか?」  
 そんなことわかっていた。  
けれどリナの口から聞きたかった。  
『貴方が初めて』 と……  
 ぼろっと大粒の涙がリナの瞳から落ちた。  
「……」  
「……初めてか?」  
 ショートソードに手をかけて、念を押すように再度尋ねる。  
「……初めて、よ」  
 涙で頬を濡らしながら、拗ねるような口調でリナは答えた。  
 満足げにガウリイは頷き、再びリナの胸へ顔を埋める。  
 ほんのりと甘い香り。  
「ゃっ」  
 胸の膨らみを口に含むと、小さくリナの体が揺れた。  
 開いている片方の胸に手を這わせ、執拗に乳首だけを刺激する。  
「……ぁっ」  
 漏れそうになる甘い声を、リナは必死に押しとどめていた。  
「たってる」  
 煽り立てるようにそう告げると、涙を溜め込んだ瞳がガウリイを見つめた。  
「……」  
 真っ直ぐな瞳が、じっと自分を見つめていた。  
 子供だと、そう言い聞かせていた自分が……子供だった、そう気が付かせるように。  
「リナ」  
 真っ直ぐな瞳が痛かった。  
 痛くて、痛くて……  
「……俺は、お前が……欲しい」  
 告げれたのは素直な気持ち。  
 純粋な想い。  
「俺じゃ、イヤか?」  
 欲望のあまり、突っ走って泣かせた少女の頬をそっと撫でると、  
まだ涙が乾いていないのか、少しだけそこは濡れていた。  
「……ば、か」  
 恨めしそうな表情でリナは呟いた。  
「あたし、は……ひっく……あんたが、思ってる……ほど、子供じゃ……な、い、んだ、から」  
「リナ」  
「ばか、ガ、ウリ、イ」  
「……すまん」  
 
 自然と笑みが毀れていた。  
 相変わらず、腕の中にいる少女は涙目で自分を睨んでいるが……  
「リナ……」  
 ゆっくりと唇を重ねると、リナは静かに瞳を閉じた。  
 全てを受け入れるように。  
 舌を隙間から入れると、少しだけリナの身体はぴくんと動いたが、  
ガウリイのそれにあわせる様に、自らの舌を絡ませてきた。  
 長いようで短いキス。  
「これ、外してよ」  
 縛り付けられている腕を見つめ、リナは少し笑って言った。  
「……やだ」  
 言った瞬間、リナのこめかみ辺りがぴくっと動いたが、  
ガウリイはあえてそれに気が付かない振りをする。  
「このほうが……俺、燃えそうだもん」  
「……すけべ」  
「もちろん」  
 リナに限ってだけどな。  
 付け加えられた言葉に、リナは困ったように微笑んだ。  
「……いい、か?」  
 いまさら言えた台詞ではなかった。  
「イヤって言ったら、やめてくれる?」  
「……さあ、な」  
 意地悪な笑みを浮かべ、ガウリイはリナの首筋をぺろっと舐めあげた。  
「ひゃっ!」  
 冷たさとぬめっとした感触に思わず悲鳴を上げるリナを無視して、  
そこからゆっくりと下へ降りていく。  
 透き通るほど白い肌の所々に、小さな紅い印をつけては、また別の場所へ移動する。  
 時折聞こえる、リナの甘い声がガウリイの余裕を奪っていく。  
 
「んぁ……」  
 胸の頭をそっと口に含んで、舌で転がすと、甘い吐息と共にリナの声がそこから漏れる。  
「やぁっ、んん」  
 軽く甘噛すると、リナの腰が少し反れるように浮いた。  
「リナだって、十分にすけべだよ」  
 唾液で濡れた乳首を指で転がしながらそう告げると、  
真っ赤になってリナは何かを言い返そうと口をパクパクさせていたが、  
言葉が出てこないのか、そのまま視線をそらしてしまった。  
「くっくっ……」  
 笑いを噛み締めて、ガウリイはそっと下の部分に手を伸ばす。  
「だっ」  
 慌ててその手を押しとどめようとしたが、片方はベッドに縛り付けられたまま。  
両手だって敵わないガウリイに、片手で対抗できるはずもない。  
「やだっ……」  
 少し涙声になりつつあるリナの頭を開いている手で撫でながら、  
それでもその手の動きを止めないガウリイ。  
 服の上からなぞると、指先に触れる湿った感触。  
 それに気が付かれた事がよほど恥ずかしいのか、  
リナは顔を真っ赤に染め上げ、瞳を泳がせていた。  
 
   
 俺だけを―――見てくれ  
 
 
 唇からこぼれそうになった言葉を、ガウリイはぐっと飲み込んだ。  
 口にしてしまえば、とても軽い言葉になってしまうようなきがして……  
 そんなに簡単な想いではないから。  
 壊れるくらいまで自分を押しとどめて、結局暴発してしまい、  
挙句に少女によって救われる。  
そんな事をして、それでも少女を求めて止まない。  
 悔しいくらい、子供じみた想い。けれど、真剣な想い。  
 伝える相手は、伝えたい相手は……まだ子供過ぎるから。  
 
 隙間からソコへ指を忍ばせると、確かにそこは濡れていた。  
「やっ……」  
 小さく身体を捻らせる姿は、逆に男を誘うだけだということに気が付かないリナは、熱っぽい瞳でガウリイを見つめていた。  
 ヤバイ、かも。  
 視線だけで自分のモノがいきり立って、リナの中に押し込みたい衝動を駆り立てていく。  
 ソコを指先でいじると、くちゅっと音がなる。  
「なん、か……へ、ん」  
 ゆっくりと撫でるように刺激をすると、少しずつ息をあげてリナが小さく呟いた。  
 俺はとっくに変になってるよ。  
 苦笑して、ガウリイはリナの側につき立ててあったショートソードを抜き取った。  
「動くなよ」  
 低い声で制止を促し、ガウリイはそれをリナの秘部を隠している布へ当てる。  
「がっ、ガウリイ」  
 ビリッという音と共に、冷たい空気がソコに触れた。  
「やっ、やだぁ」  
 じたばたとベッド上で暴れるリナの身体を、ガウリイは簡単に押さえ込んでしまう。  
 
 
 全部―――俺のモノだ  
 
 
リナ自身ですら見たことのないだろうソコへ、顔を近づけていくガウリイ。  
 
 
濡れているソコは、女の香を放ち男を誘う。  
 舌先でちろちろとソコの突起をいじると、リナの身体がびくんっと震えた。  
「なっ、なっ……」  
 何してる、と言いたいのだろうか。  
 真っ赤な顔で、必死に身体を動かそうとするリナが、愉しくてもっと意地悪をしたくなる。  
「何って……舐めてる」  
 わざわざ言ってから、またソコに舌をはわす。  
「ひゃぁっ」  
 どっから声出してるんだ?  
などと茶化すガウリイの声は、どうやらリナの耳には届いていないらしい。  
 小さく肩を揺らして、今にも泣き出しそうな表情でリナはガウリイを見つめていた。  
 そんなまだ子供っぽい表情に少しだけ罪悪感がもたげてくる。  
「いや、か?」  
 保護者だった時期が長すぎたのか、ついついこんな時までその保護者の顔がちらほらと見え隠れする。  
「……」  
 リナは顔を真っ赤にしながらも、小さく首を横に振った。  
 続けて、と付け加えながら。  
   
 ぴちゃっと音を立てて舐めあげると、リナの小さな声と同時に身体がピクンピクンと震える。  
あわせる様に、ソコがひくっとなり蜜がトロリッとあふれ出した。  
「やぁっ……んっ、はぁん……ひゃん……」  
「誘ってるのか?」  
「ちっ、ちが……ふぁ……んん」  
「誘ってる」  
 そんな声で違うなどといっても、説得力の欠片もない。  
   
 
とろんとした瞳。  
 あふれ出す蜜。  
 高揚した頬。  
 何もかも自分だけのもの……  
 
 
 執拗に舌先でリナのぷっくりと膨らんだ真珠をいじる。  
 
 
「だっ、……やっ、へん……だめっ。ガウ…リィ。やだぁ、……おかしく……なっちゃ」  
 ぎゅっとシーツを握り締め、リナはびくんっと大きく痙攣すると、  
そのままくたっと全身の力を抜いた。  
「……イッちゃった?」  
「……たぶ、ん」  
 リナらしい答えに思わず噴出しそうになった。  
 もっとリナを味わっていたかったが、既に限界ぎりぎり状態の自分のモノ。  
「リナ……ちょっと、痛いかも」  
 苦笑しながら己の逸物をリナのソコへ宛がう。  
 痛い、という言葉に微かにリナの表情が曇った。  
 ああ、そういえばリナ、痛みに弱かったっけ。  
 ぼんやりとそんな事を考えていたが、後には引けない。  
 ゆっくりと、先っぽだけソコに埋めようとした時、案の定、リナが悲鳴を上げた。  
「いっ、た、い」  
「まだ、ぜんぜんなんだけど……」  
「やっ、む、無理ぃ」  
 それでも歯を食いしばるようにそれを耐えているリナが、とてもとても愛しかった。  
 
 ゆっくりと時間をかけて緊張してしまったソコを解していく。  
 身体を指でなぞり、リナの感じる場所だけを執拗に攻めていくと、  
再び甘い声が漏れ出した。  
 リナの呼吸に合わせて、少しずつ自分のモノをリナの中へ侵入させていく。  
 うっ……マジで、ヤバイ。  
 半分くらい入ったところで、たらりとガウリイの背中に冷や汗が流れた。  
 気持ち……よすぎ。  
 我を一瞬忘れて、リナの中に無理にでも入れたくなるような、そんな感覚。  
「ガゥ…リ?」  
 苦しそうとも感じているとも取れるような声が名を呼ぶ。  
 視線だけを絡ませて、どうしたと尋ねる。  
「……っ、大、丈夫だ、から……続けて、……いい、わよ」  
「……………」  
 一瞬で理性が何処かへ飛んでいった。  
 リナの押し殺した悲鳴も、苦しそうな表情も、全てそそる要素にしかならなかった。  
 己の欲望だけが走り出し、リナの中へ押し込む。  
 自分だけが高みに昇っていき、リナの中ではてるまでにそう時間はかからなかった。  
 
「……はぁ」  
 深い自己嫌悪に陥りながら、ガウリイは腕の中で震えている  
少女のおでこに口付けを落とした。  
「リナ」  
 大丈夫かとは聞けなかった。  
 決して大丈夫などではなさそうだから。  
「……平気」  
 少しだけ笑みを浮かべて返事が返ってきた事に、ガウリイはほっとした。  
「ねぇ、ガウリイ」  
「何だ?」  
「あたし……ガウリイが、思ってるほど……子供じゃない、から」  
「……悪かった」  
「わかれば、いいのよ」  
 にっこりと笑みを浮かべて、そっとリナのほうから唇を重ねる。  
 甘い、甘い口付け。  
 壊れかけていた何かを、一瞬で直してくれる、まさに魔法。  
   
 誰にも渡したくない。  
 自分だけを見ていて欲しい。  
 それは決して消えることのない欲望。  
 どす黒い想いにひきずられ、深い闇を彷徨う。  
 
 壊れるほど愛しい  
 壊されるほど―――愛されたい  
 
 
 
<おわり>  
 

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