パタン。と音を立てて部屋のドアが閉まるのを聞いて、あたしは少し緊張していた。
この宿に泊まるのは、もう3度目になる。
一度目は今日から一日前、ある依頼を受けてこの村にやってきたその日だ。
二度目は……それも昨夜のこと。ただし、あたしにとっては。だが。
昨日、あたしと旅の連れガウリイは、依頼を果たす為にこの村の外れにある森へ向かい、
そこでデーモンの群れやそれを呼び出した魔道士、そして2体の魔族とも戦うことになった。
そして、その戦闘の終わる頃、ガウリイは瀕死の重傷を負い、
あたしは、その彼を救えないまま、過去の世界へと飛ばされてしまったのだ。
結果的に、それは彼の命を救うことになったのだが、
その過去の世界で過ごした夜、あたしはあることをしてしまったのだ。
チラリ。と傍らで防具などを片付けている、旅の連れに目をやるあたし。
その姿と昨夜の出来事が微妙なズレを持って重なって、あたしは自分の鼓動が早まるのを感じた。
「どうしたんだ?」
「べ、別にどうもしないわよ」
急に声を掛けられて内心焦りつつ、あたしは自分も旅の装備を外し、掛け始めた。
あたしにとっては昨夜にあたる一夜、過去の世界であたしはある男に抱かれた。
その名はガウリイ=ガブリエフ。
しかしそれは、今隣にいる彼ではなく、あたしと出会う前の彼であったらしい。
もちろん出会う前の彼はあたしのことなど知らなく、
最初はガウリイの名や光の剣の事を知るあたしに警戒の色さえみせていた。
あたしは過去へ飛ばされる直後の記憶を失い、得体の知れない恐怖に苛まれ、
この日あったばかりの彼の部屋をパジャマ姿で夜遅く訪れて、
そのまま……半ばなりゆきのような形で身体を重ねてしまったのだった。
また思い出してしまった恥ずかしすぎる記憶を、あたしは慌ててぱたぱたと扇ぎ消す。
「顔真っ赤だぞ、リナ」
「ななな、何でもないわよっ。あーあのそう、あたし先にお風呂行って来るわね。
あのーほら、遺跡でかなり埃っぽくなっちゃったし」
聞かれてもいない事までまくし立て、あたしは逃げるようにその場を後にする。
とにかくちょっと落ち着こう……。あたしは風呂場のドアを後ろ手に閉め、ひとつため息をついた。
「な……なによこれ……」
とりあえず一人になって落ち着こうとしたはずだったあたしは、こう呟いていた。
あたしの肌の上には、全身にわたり、無数の口付けの跡が赤い華となって残っていた。
今朝、といっても遠い過去のことだが、宿を出る前に軽く湯を浴びた時には、
どこか意識がぼんやりしていたこともあり、気付かなかったのだ。
その色に、昨夜の濃密な行為が思い出され、あたしは身体の火照りを感じてしまう。
そして湯船の中、蘇ってくるのはこの赤い印を付けた男の肌や唇、指の感触……。
のぼせる前に急いで風呂から上がったあたしは、余計に落ち着かない気持ちになっていた。
あたしと入れ替わりにガウリイが風呂場へと消えていき、
一人残された部屋で、あたしはベッドに腰掛けていた。
身に纏っているのは昨夜着ていたものと同じデザインのパジャマ。
昨夜は一晩中抱かれていたせいで、ほとんど眠っていない。
その後遺跡を探索までしたというのに、なぜか眠気は全く無かった。
もう見慣れてしまった感のある部屋をぐるりと見回す。
今までと違うことといったら、ベッドの大きさくらいね……。
そう考えてしまってあたしはまた赤面する。
ガウリイが戻ってきたら、一緒にここで寝るのよね……。
二人用のこの部屋の中にはベッドはこのひとつだけだった。
今夜一部屋と決めたのはガウリイ。
「時々やけに強引なのよね……。いつもはとことんくらげなくせに。」
「誰が強引だって?」
「うひゃあっ!!ガウリイっ?な、なんでもないわよっ、こっちのこと」
至近距離で囁かれて飛び上がるあたし。
「ふ〜ん」
いつの間にか風呂から戻ってきたらしい。まったくこの男は。油断も隙も無い。
ばくばくと煩い鼓動を静めようと努めながら、
あたしは隣に座って髪を拭いているガウリイを眺めていた。
……きれいな髪よねー。男のくせして。
「ねえ、なんでいきなり同じ部屋なんかにしたの?」
ぼーっと眺めていたあたしは、疑問を思わず口にしていた。言ってしまってから恥ずかしくなる。
「いきなりなんかじゃないぞ。同じ部屋を取ったのは、リナを抱きたかったからだ。」
「だっ……」
「リナにはつい昨日の出来事でも、俺にはもう何年も我慢してきたことなんだ。
俺は今日リナを抱きたい。だから同じ部屋を取った」
あまりの直球な発言に、あたしはただ口をぱくぱくするだけだった。
「ということで」
「うわきゃあ!ちょっと『ということで』じゃないわよ、何押し倒してんのよ!」
あたしはそれこそいきなりの事に抗議しながら、
ぎしりと軋むベッドの上、のしかかっているガウリイを見上げていた。
「リナは嫌か?俺とするの」
真面目な顔して何聞いてくるかなこひつは……。聞いてるこっちが恥ずかしくなりつつ、
あたしはこう答えた
「す、するのって大体ねぇ、順番が違うんじゃない?順番が。
ふつー好きだの愛してるだのがあって、その……そーいうことに至るわけでしょ?
あたしはそーいう商売してるわけじゃないんだからっ」
「……前はそんなの無くてもしたじゃないか」
「う゛っ……そ、それはそーかもしんないけど。」
「俺はリナの事が好きだぞ。ずっと前から。だから好きな女を抱きたい。おかしくないだろ?」
どさくさまぎれのような告白にあたしはふいを突かれて固まってしまう。
「リナはどうなんだ?俺のこと嫌いか?」
「き、嫌いじゃないわよ……」
「じゃあ、好きか?俺とこういうことしたくないのか?」
耳元で囁かれてそのまま耳のふちを舌でなぞられる。
「はぁっ……やぁん」
「嫌なのか?」
再び耳元で囁かれながら、わき腹をガウリイの指が撫でていって、あたしは身を震わせてしまう。
昨夜、さんざん貪られた身体が敏感に反応してしまうのが自分でもわかった。
ガウリイにとっては大分前の事なのに、全て覚えているのだろうか。
あたしが弱い場所を確実に責めてくる気がした。
嫌なんかじゃない。これはむしろ以前から望んでいたことで、
昨夜の事だって、今目の前にいるガウリイへの想いが無かったら、あんなことにはならなかっただろう。
あたしは言葉で答える代わりに、ガウリイの首に腕を回し、自らガウリイの唇に口付けた。
数分後、お互い一糸纏わぬ姿になったあたし達は、シーツの上で絡み合っていた。
あたしの肌の上には、無数の赤い印。
「何年も前の自分のキスマークっていうのも、妙な感じだな」
そう言ってガウリイは、それを更に深く刻み付けるように、口付け、新たな印も増やしていく。
あたしの体中をガウリイの指が舌が唇が触れていく。触れていないところなどないくらいに。
「あっ……はぁん……ああ……」
そして、あたしは今日も彼のモノを体内へと受け入れていく……。
既にとろけてしまっているそこからもう痛みは生まれず、ただ快感が湧き出してきた。
押し込まれるそれを全て呑み込み、あたしの内側の襞が彼に絡み付いている。
繋がったそこからは、二つの脈動が感じられた。
「リナの中はやっぱり最高だな」
あたしを愛おしそうに抱きしめ動かないままでガウリイが言う。
そっか。ガウリイにとっては数年ぶりなのよね。
「……その……やっぱりつらかった?」
「ん?」
「その……あたしと……できなくて。」
言ってしまってから恥ずかしくなる。
「ああ。最近は特にな。目の前に一度その味を知った女がいて、
しかも、どんどんきれいになっていくんだ。つらいなんてもんじゃないぞ」
「味って……」
「リナの味は一度味わったら忘れられないからな」
「人をどっかの名産品みたいに。ちょっ……あぁん……急に、ん……動か、ないでっ……」
「久し、ぶり、だから、な。たっぷり、味あわせて、もらうぞ」
「待っ……あたし……昨日……さんざんっ……んむっ……ん、ん……ん……」」
口付けによって唇も塞がれ、喘ぎはくぐもったものになってしまう。
次第に深くなっていく口付けと下からの突き上げを受けながら、
あたしは両方から犯されているような感覚に陥っていった。
やがて唇が開放されると同時に、一層激しくなっていく律動に
あたしの唇からは恥ずかしげもない声がこぼれるのだった。
そしてまた、眩い光の波があたしを襲う。
でも、今度は忘れてしまった記憶が蘇ることなどなかった。
あるのは何も考えられない程の快感だけ。あたしはそれに身を委ねてやがて沈むに任せる。
そして新たな波を待ち受ける……。
しばらくすると、さっきまで室内を満たしていた、いくつかの淫猥な音が消え、
二人の乱れた吐息だけが耳に届いていた。
しかし、あたしの身体の内部では、彼の吐き出すものが激しく内壁を叩き響かせている。
昨夜、もう一人のガウリイに自ら望むようにしてそれと同じものを受け入れたことを、
あたしは思い出していた。
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あれも浮気っていうのかな……。別にそれまで、あたし達どうかなってたわけじゃないけど。
次の朝、ガウリイの腕の中で目覚めたあたしは一人考えていた。
「誰のこと考えてるんだ?」
いつの間に起きていたのか、あたしの傍らに横たわり、あたしの髪を撫でながらガウリイが言う。
「あの日……なぜあたしを抱いたの?」
ガウリイの問いには答えずに、あたしは自らも問いかけた。
「……それは、その……怒るなよ。」
髪を撫でる手を止め、ガウリイが言う。
「努力するわ」
「据え膳食わぬは男の……いてっ!お前さんスリッパなんていつの間に?」
「うっさいわね、乙女の企業秘密よ。ったく男って。
……まあ、そうよね。あの日出会ったばっかりだったんだし。」
「最初は正直、可愛くて心細そうなお前さんに付け入っちまったってとこはあったかもしれないな。
今更だがすまん」
「べ、別に謝ることはないわよ。あたしだってその……無理矢理されたわけじゃないんだし。
でもまさかよくあんな事してたわけじゃないでしょうね?」
スリッパを手にしながらジト目で言うあたし。
「人聞き悪いなあ。誰でもってわけじゃないぞ。リナは可愛かったしな。
それに女の子にあんな時間にあんな格好で訪問されることなんて、そうあることでもないしな」
「う……それは。でもあたしにとってはあなたは全く知らない人って認識じゃなかったし……。」
「でも、あれは男からしたらかなり誘ってるようなもんだぞ。」
「…………」
言われてみればそーかもしんない……とあたしは赤くなって沈黙するのみ。
「リナは後悔してるのか?あの時の事。」
「えっ?」
問われて初めて考える。後悔は……していない。それは確かだと思えた。
「……後悔はしてないわ。でもよくわからないの。」
正直にあたしは答えていた。
「わからないって何がだ?」
「最初はただ不安で、言われるまま忘れてしまいたくて……。
あなたがあたしのこと知らないっていうのはわかってたけど、
ああやっぱり同じあなたなんだって思えて安心したのも確かよ。
途中からは失った記憶を取り戻したくて、最後はただ気持ちよくて……」
余計な言ってしまってから気付いてあたしは赤面する。あたしってば何て事を……。
「気持ちよさそうだったもんな」
案の定、意地悪そうな笑みを浮かべてガウリイがこっちを見ている。
う……恥ずかしすぎる。あたしはガウリイの腕の中でくるりと反転し、ガウリイに背を向けた。
「あの時のリナは、ずっと誰かの事を考えているみたいだったな。
だから、惚れちまっても帰るお前さんを止められなかった。」
背後から、一転真面目なガウリイの声が聞こえてあたしははっとする。
「あ……。」
罪悪感があたしの胸を掠めた。確かにあたしはあの時、別のガウリイに抱かれながら、
今目の前にいるガウリイの事も考えていて……。
「じゃあどっちの俺がいいか確かめてみるか?」
起き上がり、あたしの上に覆いかぶさった体勢のガウリイが悪戯っぽい口調で言う。
「確かめる?……ってどこ触ってんのよっ。」
「どこってリナのおしり」
「おしりじゃなくって。ちょっと朝から何を……あ……ん。やぁ……ぅん」
あたしのおしりをさわさわと撫でていた手が、あたしを抱きすくめるように身体の下を通り、
横向きに寝ているあたしの前の方へまわって、脚の間へと潜り込んできたのだ。
左手は胸を掴み、やわやわと揉んできて、無防備にガウリイの前に晒されたあたしの左の耳には、
熱い吐息と共に舌がその表面を這っていた。
「っはぁ……がう、りぃ……やめ……あ……」
3箇所を執拗に攻められ、朝だというのにあたしは鼻にかかった吐息を漏らしてしまい、
あたしのアソコからは、早くもくちゅくちゅといやらしい音がしてきていた。
そしてあたしの太もものあたりには、何か硬いものが押し当てられている感触。
あ、やだ、これってガウリイの……。
気付いて赤面してる所へ体内へと指を埋め込まれて、あたしは首を仰け反らせ高い声をあげてしまった。
ふと目を開け、上を見るとあたしの表情をいかにも楽しそうに見ているガウリイと目が合う。
恥ずかしさと悔しさで血が上るが、更に指の数を増やされて、
あたしは気持ちよさに溺れてしまっていた。
こんな明るい中でこんなことをされて、それを見られている。
それを意識したあたしの身体は一層感じやすくなり、
体内を蠢く指に応えるようにそれを締め上げるのだった。
「んあっ……はう……」
あたしの吐息を伴ってずるりと指が引き抜かれたかと思うと、次の瞬間うつ伏せにされていた。
「ガウリイ?えっ……や……っは、くぅ……ん」
その状態のまま太もものあたりを持ち上げられ、ずぶずぶと後ろから彼が入ってきて、
あたしはうち震えながらそれを受け入れていく。
「はっあ……あ……ガウリイ……」
シーツに肘をつき、最後まで受け入れてあたしは彼の名前を呼んでいた。
彼はそれに応える代わりにいきなり激しく腰を打ち付けてくる。
悲鳴にも似たあたしの嬌声が肌の打ち付けあう音にあわせて部屋を満たしていく。
彼は片手であたしの腰を抱え、空いた手で揺れる乳房を更に揺さぶっていた。
その手は時折胸を離れ、あたしと彼の結合部近くの小さな芽を押し潰すように振動を与える。
絶頂はすぐにやってきて、あたしは抗う間もなくそれに呑み込まれていった。
いきなり激しくされてぐったりしたあたしを休ませることなく、
ガウリイは仰向けにすると、脚を開かせ今度はゆっくりと入ってきた。
「あ……ぅん……は……あ……」
あたしのほうも、ぼんやりした状態のまま、
うっとりとした表情でその感触を味わっていた。
そして全部呑み込まされた後、身体を繋がったまま抱き起こされて、
向かい合った形で彼の上に座らされる。
既に奥まで受け入れていたものが、自分の体重によって一層突き入れられて、
あたしはイッたばかりなのにもう切ない声をあげてしまっていた。
彼の胸にもたれかかり、快感に耐えるあたしの腕を、
ガウリイは自分の首へと回させると、自分はあたしの腰を掴んで揺さぶり始めた。
あたしはまた切なく啼き声をあげ、彼の胸に額を摺り寄せる。
朝の明るい日差しの中、やや俯き加減になったあたしの視界には、
ちょうどあたしたちが繋がっている所があって、
ぬちゅぬちゅといやらしい音に併せて、あたしの中から彼自身が出し入れされているのが見えた。
あ……やだ……。
あたしは恥ずかしさから目を逸らそうと思ったが、なぜか出来なかった。
前後左右、上下にと動かされ、繋がっているそこからは、
あたしの生み出す液体がどんどん溢れてきて、彼の動きによって泡だったようになっている。
ああ、もうだめ……。あたし、また……。
あたしがやっとそのいやらしい光景から目を逸らせたのは、
ガウリイの前に喉を晒し、高みへと昇りつめた時だった。
「やっぱりリナってやらしいのな」
なんとか通常の呼吸が戻ってきた頃、笑いを含んだ声でガウリイが言う。
「なっ……」
見ているところを見られていたらしい。
しかし、真実なだけにあたしは何も言い返せず、そっぽを向いて顔を赤らめるしかなかった。
「ほんとかわいいな、リナは。」
そう言ってガウリイはあたしの腰を持ち上げ始める。
「あぁ……んふ……ぅ。は。あ……」
太いものが抜かれていき、内側をこそがれる感触にあたしは吐息をもらす。
あたしの中からはそれが入っていたとは信じられないほどの大きさのものが、
愛液を掻き出しながら姿を現してくる。
……これがあたしの中に?
目の端でそれを見てしまったあたしは、半ば信じられない思いでそれを見つめていた。
全て体内より引き抜かれ、しかし腰を浮かされた状態でガウリイがこう言う。
「リナ自分で入れてみて」
「え……?」
「ほら、俺両手が使えないから。リナが俺のを自分の所にさ」
「だって、そんな……」
「簡単だって。ただ誘導するだけでいいんだ。後は俺がやるから。」
そう言ってあたしの胸へと口付け、その先に吸い付いてくるガウリイ。
何度も両方の胸の先をかわるがわる吸い付いては舌で転がされるうちに、
あたしは股の内側を新たな蜜が伝っていくのを感じていた。
「あ……はあ……ガウリイ……あたし……」
ついに耐え切れなくなったあたしは、潤んだ目でガウリイに訴えかける。
それを見たガウリイは、一度あたしを自分の膝へと下ろし、
あたしの手を取って、自分自身の裏側に手を沿わせるように誘う。
愛液によってぬるぬるになってしまっているそれは、
手を這わせるとびくびくと脈動が感じられた。
「いくぞ」
あたしの腰を持ち上げ、ガウリイが言う。
「……あ、うん。」
あたしは根元から先端へと手を滑らせ、下ろされてくる自分の大事な部分にあてがっていく。
「ぅん……ここ……」
あてがっただけでそれは、既にその先端をあたしの内部へ沈めようとしていた。
そしてもうそれだけであたしはふるりと微かに身を震わせてしまう。
「そのまま添えてて」
そう言うとガウリイはゆっくりとあたしの身体を下ろしていく。
あたしは手のひらと膣と視覚とで、彼の侵入を感じていた。
手のひらを、ぬめり脈打つ自分ではないものが滑っていき、
あたしの体内へと呑み込まれていく。
その光景はいやらしくもあり、不思議でもあった。
こんなのが入っちゃうなんて……しかもこんなに気持ちいい……。
自分の内側で自分ではない鼓動を感じながら、あたしは考えていた。
「リナも気持ちいいみたいだな」
ゆっくりと円を描くようにあたしの腰を揺さぶりながらガウリイが言う。
「うん……きもち……いい……」
「急に素直になったな」
「ん……しら……ない……は……あ……」
いつしか熱に浮かされたように、あたしは自分で腰を振っていた。
代わりにガウリイはあたしの胸を、背を唇を愛撫していく。
「あっ、あっ、あっ……がうりぃっっっ……」
ガウリイに首筋を吸われ、胸の先を摘まれ、背中の弱い所をなぞられて、
あたしは彼の名を呼び、自ら昇りつめた。
背を反らせ、自分の中のものをぎちぎちと締め付ける。
同時に身体の奥で熱いものが弾けるのをあたしは感じて、一層背筋を粟立たせるのだった。
「まさかリナから動いてくれるなんてな。すごく色っぽかったぞ」
あたしを抱きしめ、髪をやさしく撫でながらガウリイが囁く。
今更ながら、恥ずかしくて堪らなくなったあたしは、何も答えられなかった。
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「ねえ、あの日、あたしを抱かなかったら、自称保護者のままだった?」
宿を後にし、次の目的地へと街道を進みながら、あたしは隣を歩くガウリイに尋ねた。
「それはないな」
「そう……なの?」
あっさり答えが返ってきて少し面食らうあたし。
「逆にあれがなかったら、もっと早く自称保護者から卒業してたかもな。」
「そうなんだ……」
あたしはどこかほっとしたような、今までの数年を考えるとくすぐったいような気持ちになっていて、
「元々自称保護者っていうのも、そういうことだったしな」
いつの間にか少し先を歩いていたガウリイが、
ぽつりと呟いた言葉があたしの耳に届くことはなかった。
おわり