月明かりを弾いて銀光が煌き、あたしを捕らえていた戒めを断ち切っていく。
ある満月の夜、あたしは盗賊いぢめの帰りに謎の香りに誘われ、
数十年に一度咲くという、巨大な花の蔓に捕らえられてしまった。
食虫植物を人間サイズにしたような、その巨大な植物の目的は、
人間の身体、それも女性の持つ生殖器官を使って受粉することで、
あたしはまるで動物のように動く蔓に自由を奪われたまま、裸に剥かれ、
蒼く輝く花のおしべらしい突起物に性交渉をするかのように犯されたあげく、
体内に花粉の混じった蜜を注入されてしまった。
しかも、それだけではなく傍らに咲く雌花らしい赤い花でも同じように陵辱され、
そのまま気を失ってしまったのだった。
宿を抜け出したあたしを探しにきたガウリイに見つけられた時のあたしの姿は、ほぼ全裸。
その身体のあちこちには幾本もの蔓が絡みついていた。
両腕は頭の上で一つに束ねられ、胸には上下から挟みこむ形で縛り上げられていて、
その先にも細い蔓が絡み付いていた。
脚は左右に大きく広げられ、その間には花の根元から伸びる太いものが、
あたしの体内へと突き刺さっていた。
そして、その姿は全身に纏わり付いたどろっとした青白い液体のせいで、淡く光を放っていた。
戒めを解かれてもなお、身体の中心に花の一部を突き入れられたまま動けないあたしを
ガウリイが正面から抱きしめるような格好で助け出してくれた。
「あ……はうん……」
自らもガウリイの首に腕を回しながら、身体の内部を擦られる感触に、
ガウリイの耳元であたしは甘い声を漏らしていた。
身体のあちこちに残る蒼色の液体のせいか、いまだに体中が熱かった。
「リナ、大丈夫か?一体何があったんだ?」
花の外、柔らかい草の上にあたしを座らせ、横抱きにしながらガウリイが問いかけてくる。
「あの花に捕まって……大丈夫よ、たぶん」
確信はなかったが、心配そうなガウリイを安心させるためにもあたしはそう答えた。
ガウリイに抱えられ、宿へと戻ったあたしは体中に纏わり付いた液体や汚れを落とすため、お風呂に入っていた。
花の香りによって痺れたようになっていた頭や身体は、もうほぼ元に戻っていた。
蔓に無理矢理拘束され、乱暴されたせいで、身体がどこか重くあちこち痛かったりはしたが。
衣服を溶かし、花との行為の間ずっと纏わり付いていた蒼い液体は、
もうすっかり洗い流されたが、既にかなりの量が肌や粘膜を通して体内へ吸収されてしまったようだった。
二度も花に犯され達してしまった後だというのに、あたしの身体はまだひどく疼いていた。
湯船の中、そろそろと手が脚の付け根へと伸びていき、その奥へと指を進めてしまう。
くちゅ……。
そこは既にぬるっとした感触を生んでいて、更に指を呑み込もうとひくひくしている。
「ああ……ん……」
欲望の赴くままあたしは指を動かし、唇からは喘ぎが、
そしてあそこからはまだ体内に残っていたらしい花粉入りの金色の蜜が溢れ出していた。
「はあ、はあ、ああっ……ぅんっ…………」
湯船の中、軽く達してあたしは荒い息をつく。
だめ。こんなんじゃ足りない。あの時、花に焦らされた時のようにあたしは焦燥感を募らせていた。
「リナ大丈夫……か?」
そんな中急にがちゃりとバスルームのドアが開けられ、ガウリイが入ってきて、
あ、また固まってる。
「ちょっ、何勝手に入ってきてるのよっ!」
突然の訪問者に叫んだあたしだったが、この時のあたしの格好はといえば、
入り口側に脚を向け、軽く開いた状態で自ら指をその奥に潜り込ませていたのだ。
気まずいこと気まずいこと。
「……いや、あんまり遅いんで心配になって。鍵かかってなかったし。」
固まっていたガウリイがやっと言葉を発する。
「で?何やってたんだ?」
続けて余計なことまでにやりと笑って聞いてくる。
「そ……それは。」
そんな恥ずかしいこと言えるかーーーっ!しかも思いっきり目撃したくせにこの男は。
「とっとにかく出てけー!このすけべくらげ!!」
恥ずかしさに湯だったあたしは、そこらへんにあるものをガウリイに向かって投げつけ、追い払った。
お風呂からあがると、そこにはガウリイが待っていた。
ガウリイとは既に恋人関係にはあったものの、この日は別々の部屋を取っていた。
もちろん一番の理由は今夜の盗賊いぢめの為である。
その時はまさかあんな事になるとは思っていなかったけれど。
「一応魔法医に看てもらう……か?」
ガウリイの隣、ベッドに腰掛けたあたしに彼が気遣わしげな声で聞いてくる。
今夜あったことを説明しなければならないかもしれないと考えると、
それは恥ずかしくて出来そうに無かった。あたしは首を横に振って答える。
あまり確信は無いが、何か寄生されたとかそういうことはないだろう。
もちろん、後で独自に調べてみる必要はありそうだが。
今はそれよりも……。
こうして黙って座ってる今も、切ない感覚が膨れ上がるようになってきていた。
息があがり、耐え切れなくなったあたしはガウリイの腕へ縋り付いてしまう。
「リナ?」
「……さっきの蒼い液体、催淫剤みたいな効果があったみたいなの」
訝しげに見下ろすガウリイの目は見られずに、あたしは言う。
「だからさっきあんなことしてたのか。」
「う゛っ……」
恥ずかしいことを思い出してあたしは真っ赤になり、言葉を詰まらせる。
「まだツライのか?」
「ツライっていうか……っはぁ……どんどんひどくなってて」
熱のこもった息をつきながら、あたしは言った。ガウリイの腕を掴む手に力がこもる。
ふわっと身体が浮いたかと思うと、ガウリイの膝に横抱きにされていた。
風呂上りに着替えたパジャマのズボンの中、下着の内側へと、
乱暴とも思える動きでガウリイの手が滑り込んできて、あたしは悲鳴に似た声をあげた。
「本当だ。すごいな。どんどん溢れてきてる。」
蕩けたようになっているそこに指を這わせながらガウリイが言う。
「ぅ……ん。あ……」
より強い刺激を求め、あたしは自らも腰を押し付けていた。
しかし、ガウリイの指は外側を撫でるだけで、疼いて堪らない内側へは入ってきてくれなかった。
「やぁ……はぁ……がうりぃ……おねがい……」
あたしは強くなる焦燥感に目を潤ませながら、懇願していた。
「もう1人で黙って夜中に出かけたりしないか?」
ゆるゆると円を描くように動かしながらガウリイが言う。
「後を追ってみたら、森の中に装備が散らばってて……。どんなに心配したかわかるか?」
あの花と同じ色の蒼い瞳が、真剣な色を湛えてみつめていた。
一瞬あたしは身体を襲う乾きも忘れ、その瞳を見つめ返す。
「……ごめん。」
あたしは素直に謝っていた。
「しかも、見つけたらあんなことになってるしな。」
一転にやりとした笑みを浮かべて言われる。
「うっ……あれは……」
ガウリイと対面したときの状況をあたしは思い出し、恥ずかしさに居たたまれなくなった。
「あの時は驚いたが、今考えるとかなりいやらしい図だったよな。」
「い、言うなっ!!思い出さんでいいっ!!」
「助けた時、気持ちよさそうな声出してたよな。そんなによかったのか?」
ついに指を奥へと進ませながら、ガウリイが言う。
「ん……あ、あれはっ、あの変な液体のせいでっ」
「ふーん。じゃあ今もその変な液体のせいで俺としたいんだ?」
「ちがっ……そりゃあそのせいもあるけどっ……。ガウリイとじゃなきゃあたし……っあ!……」
一旦引き抜かれ、二本に増やされた指を勢いよく突き込まれて、あたしは一瞬息を詰まらせた。
そのまま掻き回すように激しく動かされて、あたしは一気に昇り詰めてしまった。
ぐったりとした身体を、ベッドに横たえられ、再び全て脱がされたあたしの中に、
覆いかぶさるようにしてガウリイが入ってくる。
今度は身体と心が一緒になって与えられる快感にうち震えていた。
「あ……ああっ!ガウリイっ……」
気持ちよくて堪らなくて、あたしは涙を零す。
感じやすくなっているせいだけではないだろう、ガウリイの動きはいつもに増して激しく思えた。
身体の奥に響くように強く突き上げられ、その度に空気を求めるようにあたしは喘ぐ。
「はあ、はあ、はあ……。」
ガウリイの下で弛緩して、あたしは息を乱していた。
まだ達してないはずのガウリイは、動きを緩やかなものに変え、抽送を続けている。
ぐちゅぐちゅといういやらしい音と共に中で動かれる度、
あたしは過ぎ去ったはずの疼きがまた強く蘇ってくるのを感じていた。
あ……うそ……また……。
「また欲しくなってきたみたいだな。」
まるで見透かしていたかのようにガウリイが言う。
「ひゃうんっ!」
ふいに繋がったまま抱き起こされ、一気に体内の重圧が増した感覚にあたしは悲鳴をあげた。
そのまま、仰向けに寝そべったガウリイの上に座らされるあたし。
ガウリイは腰から手を離し、あたしの胸を掴むようにして揉み始める。
まだ完全に息の整わないあたしは、ガウリイの体の両脇に手を付き、
やや前かがみの状態でその愛撫を受け入れていた。
「はあ、はあ、ん……く……ぅん」
あたしの内側が再び中のものを締め付け、すごく欲しがっていて、
恥ずかしいなどと思う前に、あたしは自ら腰を動かしていた。
そしてその動きは次第に貪るようなものになっていき、
あたしは鼻にかかる吐息を漏らしながら、夢中で腰を振り続けていた。
「んっ、んっ、んっ……あ……はぁ、んっ……」
今、あたしの胸を押しつぶし捏ね回しているのは、得体の知れない絡みつく蔓ではなく、
ガウリイの大きなあたたかい手と指で、
今あたしの内壁を擦り、ぐちゅぐちゅという淫猥な音を生み出しているのは
熱すぎるガウリイのもので。
「ああっ……ガウリイっ、ガウリイっ……!!!」
彼の名前を呼んだ後、あたしは彼のものをきつく締め付け、
背を反らせたあたしの中には彼が欲望を吐き出していった……。
彼の胸に倒れこみ、ぐったりしてしまったあたしだったが、
それから数分後、信じられないことに身体の奥に新たな疼きを感じていた。
そしてこちらも信じられないことに復活したガウリイによって
幸か不幸かあたしは組み伏せられ、
激しく動かされて歓喜の声をあげてしまうのだった。
「はぁ、はぁ、がうり……あたし……もう……ゆるし……」
それから数時間後、あたしは息も絶え絶えに訴えていた。
結局あたしはその後も、何度かわからないほど抱かれ、
開放されたのは空が白みかけた頃。気を失う事でやっと叶えられた。
しかし、悪夢に近いその症状はそれから数日続き、
あたしは昼夜を問わずしばらく同じ部屋で過ごす事になった。
ガウリイのほうも飽きることなくあたしの身体を貪り続け、
あたしも熱に浮かされたようにそれに応え、自らも繰り返し求めていった。
「これじゃあ、どっちが薬づけにされたのかわかんないわよね……」
もう何度目の朝なのだろう?やっと催淫効果が薄れてきたあたしは、ガウリイの腕の中呟いた。
体力バカのおかげで、助かったといえば助かったのだが……。助かったんだろうか?
複雑な気分だったが、とにかくこれでやっとまともに休めそうだ。
「なんだ?またして欲しいのか?」
ほっとしてガウリイの肌に身を寄せ、眠りにつこうとしたあたしに、声が掛けられる。
「ちょっ、ガウリイ寝てたんじゃなかったの?ってどこ触ってるのよっ!」
「俺ならまだまだ付き合えるぞ。」
「もう付き合わんでいいっ!この数日何回したと思ってんのよっ、やめっ……んあっ」
……あたしはまだ当分休ませてもらえないようだった。
おわり