そこは暗く冷たく広がる廃墟だった。  
 
遥か昔に滅びた国の神殿跡地。深い森の奥深くにあるそこは、立ち入る者がないためか手入れも撤去  
もされず朽ち果てていくだけだ。  
石造りの大きな建物は崩れかけ、昔は美しく研かれていただろうタイルを押し退けて、名も知らない  
木々が枝葉を伸ばしている。  
神殿中央の祭壇らしき場所は崩れ、その下にある隠し階段が朝の光に照らされていた。  
隠し階段を下に降りれば、強く水の匂いがする。暗く閉ざされた地下は半分ほどが崩れていた。  
「扉がある」  
持続時間を長くするために、弱く光る明かりの魔法。それを岩壁に向けると、この廃墟には似合わな  
い扉がひとつ。  
「オリハルコン…?」  
「…のようだな」  
高く可愛らしい少女の声に答えたのは、低く甘い声音の男。  
「いかにもって感じですね」  
「どれだけ怪しくても、これ以外に扉はないんだ。開けてみるしかあるまい」  
「それもそうですね」  
本来であれば強固な扉なのだろう。それでもヒビの入った岩にはめこまれているため、扉はすんなり  
と奥に開いた。  
天井から木々の根が垂れているものの、あまり荒れた様子はない。どうやらこの場所は研究結果や資  
料を集めた書庫らしかった。  
 
天井まである本棚の中の書籍類は、長く放置されたためだろう。ほとんどが湿気で歪み、カビなどで  
やられ見れるようなものはない。  
アメリアとゼルガディスは注意深く辺りを見回しながら奥へと進む。  
歩くたびにタイル張りの床が、ブーツの底に当たって硬質な音をたてた。  
 
アメリアが、この神殿の地図を手にいれたのは偶然だった。セイルーンの神殿にある、定められた者  
のみが許された書庫の奥。忘れ去られたように埃を被った一冊の本。  
昔から本を読み、知識を得ることは好きだったものの、アメリアはそれほど多くの分野の深い本を読  
むことはなかった。  
それがある旅以降、どんなに小さな知識や情報も貪欲に求め始めたのだ。  
セイルーンで手に取った本には、この神殿への大まかな地図と、そこで行われていたらしい研究の内  
容が書かれていた。  
それだけなら珍しいものでもなかったが、アメリアの目を奪ったのは『その姿を本質へと戻す』と書  
かれたマジックアイテムだった。  
持ち出し厳禁の本をこっそりと持ち帰り、ゼルガディスに宛てたメッセージを出したのがその日のう  
ち。  
一月ほど経った頃、ゼルガディス本人がセイルーンへと現れた。  
 
はじめは一人で向かうと言ったゼルガディスだったが、アメリアの押しに負けて二人で向かうことに  
なったのだった。  
 
「ゼルガディスさん!」  
本棚を物色していたゼルガディスに、アメリアが声をかけた。  
「なんだ?何か見付かったのか」  
「はい。たぶん、これのことだと思うんですけど…」  
心なしか不安げに答えるアメリアに、小さく微笑って  
「ああ、どんなに小さなことでも見付けてくれるのはありがたい」  
アメリアが指差した場所は、本棚の奥。以前は大量に本が並んでいたと思われる場所だ。壁の奥に、  
細かい文字の書かれた掌ほどの大きさの扉があった。  
「これは………」  
「呪文みたいですね」  
細かい文字は、よく見れば紋様のように配置されている。  
「汝、望み願うもの……か」  
小さく、ゼルガディスは呪文の一節を呟いた。  
「黒魔術系統ではないみたいですけど」  
「あまり見慣れない文字が混ざっているな。アメリア、読めるか?」  
「リナさんあたりなら解るかもしれませんけど…すみません。わたしはあまり、こういうのは……。」  
古代文字の一種だろうことは解るのだが、書かれた意味を解読出きるほどではないのだ。  
 
いくつか読める文字もあるものの、ここに書かれた文字はアメリアにとって難解すぎた。  
(ううっ。もうちょっと勉強してくれば良かったかも)  
「オレも一部くらいしか読めん。もしかしたら、この神殿独特のものかもしれんな」  
「そんなのもあるんですか?」  
「まあ、ないわけじゃない程度だがな」  
(神殿独特の…ってことは開けることは出来ない?)  
せっかくここまで来たのに…!  
自分の手に余ることなんだろうと、やりきれなさが募る。  
「乙女の祈り」  
「え?」  
「この中央の文字は読めるか?」  
中央に配置された文字を、ゼルガディスが指でなぞった。  
その表情に落胆はなく、わずかに微笑んでいるようだ。  
「はい。えーっと………『汝、望み願うもの、乙女の祈りで道は拓く』?」  
「どうやら回りに配置された古代文字は、簡単に扉が開かれないようにした鍵みたいなもんだろう」  
「鍵、ですか?」  
「ああ。鍵を閉めた状態を維持するためだけの仕掛けだと思う」  
言って、ゼルガディスが笑う。  
「おまえが居て良かったよ、アメリア」  
 
 
扉は開いた。それもアッサリと。  
 
取っ手すらない扉が、アメリアが触れた途端に自動的に開かれたのだった。  
その奥には木箱が入っていた。  
 
木箱の中には厳重に保管された手帳が一冊と瑠璃色の石。部屋に散乱していた本と違い、痛んだあと  
もなく、中の文字がはっきりと読みとれた。一緒に入っていた石こそが目当てのマジックアイテムの  
ようだ。  
その場で手帳を開き、ザッと目を通したところによると石の効果は永久的なものではないとのことだっ  
た。  
効果は、人為的に合成したものの分離。製作されたのは、神殿のあった滅びた国の背景があったらし  
い。  
その国は高位魔族の力を借りる黒魔術を良しとせず、近隣国魔道士によって造られたキメラに対抗す  
る手段がなかった。そのために造り出されたのが、あの石ということだろうと手帳を読んだゼルガデ  
ィスが言った。  
人為的に合成されたキメラは攻撃力も高く、黒魔術なしでの抵抗には限界がある。その為に、少しで  
も戦闘能力を下げることが必要だった。  
キメラは元々の特徴を合成させることで、戦闘能力をあげたものだ。  
一時的にでも合成させた者同士を分離させれば、その分戦闘能力は下がる。このマジックアイテムは  
一時的に主人格のみを表面に残し、その他のものは内側に封じ込まれる仕組みのようだ。  
手帳の最後には期限が書かれていた。  
 
 
『満月の夜から新月の夜明けまで』  
 
 
アメリアは高鳴る胸を押さえて、床にへたりこんだ。  
廃墟となった神殿を後にして、森に近い宿へと戻ってきたのは夕方。簡単に夕食を摂り、ゼルガディ  
スは早々に部屋へと篭ってしまった。  
あの時言われた言葉と、笑顔が忘れられない。  
あの小さな扉を開く前に言われた台詞。  
(わたしは、あの人の役にたてたんだろうか)  
あれからアメリアの鼓動は高鳴りを押さえられないままだ。  
(満月の夜から新月の夜明けまで…)  
短期間であれ、彼が人間の姿へと戻れる。  
たとえ一時的なものであっても、完全に人間へと戻る手掛りになるとゼルガディスは笑っていた。  
「おまえのおかげだ。ありがとう、アメリア」  
部屋へ戻る前に、ゼルガディスはアメリアの頭をポンと叩いて照れくさそうに笑んだ。  
「反則ですよ」  
頬が熱く火照っている。  
呟いて、熱くなった頬へ手を当てた。どうしても唇の端が上がってしまう。  
(反則だわ)  
心の中で、もう一度繰り返した。  
あの笑顔は、彼に想いを寄せる自分には強烈すぎる。そして普段は見られない、その笑顔が今日一日  
でどれだけ見れたのだろう。  
 
会えない日々の支払いにしても、お釣りが来るんじゃないかと思う。  
「…………ゼルガディスさん」  
彼はどうするのだろう。  
アメリアは部屋の壁に視線を向けた。この壁の向こうに彼が居る。  
 
満月の夜は、今夜なのだ。  
 
 
 
コンコン。  
「ゼルガディスさん」  
彼がどうするのか気になったアメリアは、隣にあるゼルガディスの部屋のドアをノックした。  
思い立ったら即行動。  
アメリアは元々、深く考え込み悩むようには出来ていない。  
「アメリアか?」  
「はい」  
ガチャリとドアが開き、少し驚いた顔のゼルガディスが顔を見せた。  
「どうしたんだ、こんな時間に」  
彼が驚くのも無理はないだろう。夕食を終え、各自部屋へ戻った後にそれぞれの部屋を、何の約束も  
なしに訪れることは今までなかったのだ。  
「今夜が『満月の夜』だから。ゼルガディスさんがどうするのか気になって」  
「ああ、そのことか」  
部屋へ入ると、ベッドサイドのテーブルにあの木箱が置いてある。  
一つしかない備え付けの椅子にゼルガディスが座ったため、アメリアはベッドの端に腰を下ろした。  
「どうするんですか?」  
 
一刻も早く人間に戻ることを望んでいる彼。だけど、今日手にいれたマジックアイテムは一時的なも  
のだ。仮染めの姿をゼルガディスは望むのだろうか。  
「それなんだが…今は迷っている」  
「迷う、ですか」  
「ああ」  
「何か気になることでも?」  
「今すぐにでも元の姿に戻ってやりたいことがある」  
「?なら、迷う必要は…」  
「それが出来れば、な」  
「出来ないんですか?」  
アメリアの言葉に、ゼルガディスが視線を向ける。  
今までにないほど、じっと見つめられてアメリアの心臓が悲鳴をあげた。  
「ゼル…ガディス…さ、ん?」  
思わず声が震える。  
熱い視線がアメリアの体を縛り上げて、身じろぎすら許されないようだ。  
ふいに絡み付いて視線が外された。小さく溜め息をついて  
「それが出来れば迷いはしないさ」  
と苦々しく呟いた。  
「ゼルガディスさんが迷うことっていうのは何なんですか」  
視線が外れてもなお、アメリアは動けない。辛うじて声に動揺が消えたものの、極度の緊張に心臓が  
悲鳴をあげている。  
(もしかしたら、わたしは聞いてはいけないことを聞いたのかもしれない)  
そうは思っても、彼が迷い躊躇う理由が知りたいと思った。  
 
(ちがうわ。わたしはゼルガディスさんのことを、ただ知りたいんだ)  
「アメリアには感謝している。だけど、理由は言えん」  
「何故、ですか…?」  
「オレは…オレはきっとおまえを傷付けるだけだ」  
ゼルガディスは眉を寄せ、血の塊を吐くように低い声で言った。  
「わたしはあなたのことが好きです」  
本来ならば伝えるつもりもなかった言葉。その言葉は以外にもすん  
なりと出てきた。  
なぜ言おうと思ったのか、アメリア自身にもよく分からない。それは一種の勘のようなものだった。  
「アメリア」  
強く、叱るようにゼルガディスがアメリアの名を呼んだ。  
「ゼルガディスさんのことが好きなんです。それは知っているでしょう?」  
「……アメリア」  
「わたしにはあなたの気持も、何を迷っているのかも分かりません。でも…迷う原因がわたしにある  
のなら言って下さい」  
「アメリア…………オレは…」  
「もしも…もしも、言えない理由がわたしを傷つけるからだというなら、馬鹿にしないで下さい」  
「ア、アメリア?」  
目を見開くゼルガディスに向かって、ニッコリと微笑む。  
「わたしはそんな簡単に傷付くほどヤワじゃありませんから」  
 
アメリアの鮮やかな笑顔に息を飲む。いつからこの少女はこれほどまでに綺麗になったのだろう。  
詰めていた息を吐き出して、ゼルガディスはいつの間にか強張っていた体の力を抜いた。  
いつも真っ直ぐに向けられる好意に、自分もいつの間にか落とされていた。  
「後悔はしないか?」  
何を、とは言えなかった。  
脅えているのは自分自身で、拒絶されることの恐怖と傷付くことに恐れていたのも自分なのだ。  
「もちろんです」  
答えたアメリアに、ゼルガディスは石を使うことを決めた。  
木箱に収まった瑠璃色の石。それをアメリアに渡す。  
「アメリア、この石に口付けてからオレに渡してくれ」  
「それが発動の解呪なんですか?」  
「ああ」  
「わかりました」  
 
アメリアが石に唇を寄せると、淡い光が石から溢れ始めた。  
それをゼルガディスに渡す。ゼルガディスは石を受け取ると、石に口付けた。  
まるで誓いの儀式のようだとアメリアは思う。  
淡い光がゼルガディスを包み込む。柔らかな青色を纏った光が、銀色に輝く彼の髪に反射して綺麗だ。  
ひときわ強く発光したあとに、少しずつ光が消えていく。その中から現れたのは、ゼルガディスだ。  
 
「…どうやら髪の色までは戻らんらしいな」  
「…………………」  
「アメリア?」  
 
 
「うわっ!」  
急にアメリアが抱きつき、ゼルガディスが驚きの声をあげた。  
「アメリア?」  
アメリアは、ぎゅうっと強く抱きつき、ゼルガディスの胸に顔を埋めた。  
「あったかい…」  
「アメリア………頼む、離れてくれないか」  
彼の胸の中でゼルガディスを見上げると、視線をそらしている。顔は耳まで真っ赤になっていた。  
その顔、皮膚は人間のそれで、岩も張り付いていない。針金のようだった髪は、色はそのままにサラ  
サラと流れていた。  
抱きついていた手をゼルガディスの頬に当てた。触れた肌は暖かく、男の人特有の硬さはあるものの  
押せば弾力がある。アメリアは愛しげに何度も頬を撫ぜた。  
「アメリア…」  
「ゼルガディスさんのやりたいことってなんだったんですか?」  
「それは………」  
頬を撫ぜながら問うアメリアを、ゼルガディスが見下ろす。真っ直ぐで曇りのない少女の瞳に、元の  
姿に戻った自分の姿が映っている。  
赤く小さな唇が自分の名を呼ぶのに、夢見心地のまま手を伸ばす。  
両の腕は、小柄で柔らかな少女の背と腰に回して強く抱き締めた。  
 
「ゼルガディスさん?」  
アメリアの首元に自らの顔を埋めた。  
甘く優しい香りに頭の芯が焼けてしまいそうだと思う。  
「すまん…。こうやって……ずっと、こうやって触れてみたかったんだ」  
「ゼルガディスさん…?」  
「おまえに」  
言って、半ば強引にアメリアの唇を奪う。アメリアは驚愕と息苦しさに、僅かにもがいたものの、腕  
を首に回してすがりついた。  
「ん…っ」  
息をつく合間に、甘い声が喉から漏れる。深く、舌を絡ませて唾液を送り込むと、白く細い少女の喉  
はコクリと小さく音を立てて、送り込まれ混ぜあった唾液を飲み干した。  
「…………あ」  
トサリと軽い音をたて、一人寝用の硬い寝台に横たえられる。アメリアは呆っとした意識を辛うじて  
繋ぎ止めて、これから起こるであろう時間を思った。  
ぎゅっと抱きつく腕の力を強めたアメリアの髪をなだめるように撫で、ゼルガディスは体を離す。  
「………え?」  
「すまん」  
戸惑うアメリアに、ゼルガディスは苦笑して  
「急にすることじゃないな。………それに、おまえは一国の王女だ。本来ならここで殺されてもモン  
クは言えん」  
そのまま、さらに体を離そうとした。  
 
「!?」  
気がつけば体制は逆転して、ベッドに押し倒される格好になっていた。  
「忘れたんですか?ゼルガディスさん。わたしは一国の王女の前に、あなたが好きな女なんです」  
ゼルガディスの顔の横に手を付き、のしかかる。  
「わたしの性格は知っているでしょう。わたしが好きなものは『正義』と『真実の愛』です」  
「アメリア……」  
「それに父さんは、わたしの好きにすればいいって言ってくれましたから」  
だから大丈夫ですと告げて、小さな音をたてて愛しい男の唇を吸った。  
「……………止まらんぞ」  
「はい」  
「…どうなっても知らないからな」  
「はい!」  
 
熱く柔らかい唇が、頬の輪郭を辿りおりる。首筋に口付け、耳たぶを甘噛みすれば、少女の体がピク  
リと小さく跳ねた。  
唾液で濡らした舌で、耳を舐めあげる。掌は弱く、柔らかな乳房を撫でている。  
アメリアの服をたくしあげて、直に掌を這わせると、くすぐったいのか身をよじらせた。  
「ひゃ………っ」  
白く丸い頬は赤く熟れ、林檎のようで、その幼さにゼルガディスの劣情と背徳感を刺激する。  
大きな瞳は潤んで細められてはいるものの、まっすぐにゼルガディスを見つめていた。  
幼い顔とは正反対でアンバランスにも感じる大きな乳房は、柔らかく熱くゼルガディスを楽しませた。  
「あ………ゃ…っ」  
熱い吐息に、戸惑いのような声が漏れる。その中には、確かに悦楽がにじんでいる。  
「ゼル…ガディスさ………ん」  
「アメリア…声、気を付けろよ」  
「え?」  
「隣に聞こえる」  
「ひゃうッ!!」  
(そんなこと言うなら手加減してください!)  
ちゅうっと音をたててアメリアの胸の蕾に吸い付いたゼルガディスに、心の中で文句を言った。  
抗議をしようとしても、かわりに唇から溢れるのは甘ったるいあえぎ声にしかならないのだ。  
 
押し上げるように乳房を揉みしだきながら、その尖端を愛撫する。軽く歯で挟み、舌先で擽るように  
撫でる。反対側の胸は指先で蕾を押し、こねまわす。  
「ゃ…あ、あつい……体がジンジンして……あつい………ん、ぁや…あぁ」  
ピクピクと小さく跳ねる少女の体を、胸先をいじっていた指を移動させて撫でまわした。  
臍をくすぐり、腰に指を這わせる。そのまま下へおろして、下着の上から丸い尻を撫でる。  
少しずつ撫でる指に力を加え、柔く弾力のある双丘を揉みこんだ。  
「んーっ、んぁ………ひゃうっ」  
下着の薄い布越しに、後ろから指を回したゼルガディスは尻を辿ってアメリアの秘部へ触れた。  
触れた場所は水分を含んで、しっとりと濡れていた。  
「アメリア、濡れてる」  
「うぅっ。しょうがないじゃないですかっ!」  
顔を真っ赤にしたアメリアに、ふっと笑いからかうようにゼルガディスは問う。  
「しょうがないって、なにがだ?」  
「そ…それは……。ゼルガディスのイジワル」  
「なんでそうなる」  
「だって、好きな人に触られてるだけで、勝手に……体が熱くなっちゃうんですもん。しょうがない  
じゃないですか」  
目を伏せ、すねるたような声音で可愛らしく詰るアメリア。  
 
その表情、仕草に愛しさが募る。  
「きゃうッ!」  
ゼルガディスは、一度アメリアの秘所から指を離すと、緊張に強張った内腿を撫であげた。  
ピクリと跳ねて力が緩んだ隙に、閉じていた脚を掴んで広げた。  
「え?」  
何が起きたか分からないとばかりに、目を見開くアメリアにゼルガディスは安心させるように微笑ん  
で秘部に顔を寄せた。  
 
「なな、なななな、な、なななにやって………ぅやあっ」  
頬がこれでもかというほど熱くなっている。ぷしゅう〜っと音を立てて頭の中が蒸発してしまいそう  
なほど恥ずかしい。  
(うゃ〜っ!口がっ顔がっっ!!)  
アメリアにも知識がないわけではない。経験は皆無だとしても、それなりの知識は教育として知って  
いたし、各地を巡る旅の中で多少は見聞きしている。  
(駄目よ。やっぱり目を開けてらんない〜っ!)  
アメリアはぎゅうっと目を閉じた。  
(うきゃあぁぁぁーっ!!)  
その場所でゼルガディスが笑った気配がした。どうやら、こちらの反応を楽しんでいるらしい。  
恥ずかしさに脚を閉じてしまいたいけれど、恥ずかしすぎて体に力が入り、閉じることも出来ないで  
いた。  
 
布越しに尖らせた舌が、敏感な肉芽をつつく。布越しのもどかしい感触に、アメリアの腰は痺れた。  
「んーっ」  
「アメリア、我慢するなよ」  
意地悪く告げるゼルガディスに、アメリアは首を何度か左右に振ることしか出来ない。  
「!」  
ゼルガディスの顔がそこから離れた。そして感じる違和感…。  
濡れたその場所が外気に触れてスースーする。驚きに目を見開けば、難無く最後に残った下着を抜き  
とられたところだった。  
「〜〜〜〜ッッ!!!」  
ボフッと音がなりそうなほど、アメリアが朱色に染った。  
「オオゲサなヤツだな」  
くつくつと楽し気に笑うゼルガディス。  
赤く染まりきったアメリアの頬にキスをした。  
何度か顔中にキスの雨を降らせれば、徐々にアメリアから力が抜けていく。  
上気した肌も、多少は落ち着いてきたようだった。  
 
熱くなった肌からは、少女特有の甘い香りが立ち上っている。それはゼルガディスにとって、極上の  
媚薬でしかない。  
一生触れることは叶わないと思っていた。  
異形の姿だとか身分の違いだとか、胸の内にはいくつかのわだかまりはある。  
それを理由に、少女の好意から目を背けていたけれど…  
 
(本当は、真っ直ぐすぎるアメリアに答える自信がなかっただけなのかもしれないな)  
ただ愛しいのだと。  
触れて、身も心も愛したいのだと。  
今ならハッキリと分かる。  
まだ言葉で伝えることは、臆病すぎる自分には出来ないけれど。  
今はこの好意を受け止め、自分の全てで愛したいと切に思った。  
 
ゼルガディスが唇にキスを落とすと、嬉しそうに腕を首に回された。  
愛しさと切なさに胸が痛い。  
愛し、愛されているのだと飢えた心の奥底から喜びがこみあげてくる。  
 
くちゅりと音をたて、濡れたアメリアの体内へ指を潜りこませた。  
「…っ」  
違和感に眉をしかめたアメリアは、ゼルガディスの首に回した腕に力をこめることで衝撃をやりすごす。  
奥まで指を挿入させて、異物が馴染むように動きを止めた。  
回された腕の力が緩むまで待ち、強張りがとけたのを確認して、ゆっくりと指を動かし始めた。  
くちゅくちゅと淫らな音が、二人の意識を侵食していく。  
擦られる痛みと違和感に、アメリアは息を詰めた。  
「……くぅ…ん」  
指を二本に増やせば、喉を鳴らして背を反らせる。  
目の前に晒されたアメリアの白い喉に、ゼルガディスが口付ければ小さく柔らかな体がビクリと震えた。  
 
 
「アメリア……いくぞ」  
「…………はい」  
小さく言って、ゼルガディスは小さく狭いその場所に己を突き刺した。  
「あ、ああああああ…っ!」  
「………っ」  
初めて押し入ったそこは、熱く狭くゼルガディスの劣情を追いたてる。  
「……っ。力を抜け、アメリア…」  
「は…はい…………んぁ、ああっ。や………」  
(あ…気持良い…………)  
下半身はズクズクと鈍い痛みと強烈な違和感を訴えているけれど。  
ぴったり触れ合う肌と肌の熱さが、アメリアの緊張をほぐしていく。  
優しく撫でる掌と、柔らかな唇になだめられて何度も深呼吸をした。痛みよりも触れる肌の愛しさと  
熱が気持良い。想いが触れた肌と繋がった場所から交ざりあうようで、幸福なことなのだと思った。  
切なく熱いゼルガディスの瞳に、微笑む自分の姿が映っているようだ。  
「ゼルガディスさん、好きです」  
笑んで触れるだけの口付けをした。いつか年老いて笑いあい、寄り添う人がこの人であればいいと願って  
首に回した腕を背に回す。抱き締めた彼の素肌は汗ばみ、熱くなっている。  
いつも冷静なゼルガディスが、自分に欲情しているのだと思うと、胸が締め付けられるほど嬉しかった。  
 
「アメリア…」  
低くかすれた声で名前を呼ばれると、切なさがこみあげる。  
無意識に自分の内部が、きゅうっと彼を締め付けた。  
「あ…きゃう…………っ」  
アメリアの内部に締め付けられ、堪らなくなったゼルガディスは、やや強引に動き始めた。  
「ひっ、あああ、あ、あ………ぅん」  
動きに合わせて漏れる甘い声に、身体中が痺れた。  
まだ痛みがあるのだろう。眉を寄せ、上げる声は苦痛の色が大きい。  
それでもアメリアの『受け入れる』という気持ちからなのか、苦痛の合間に色を帯た声が交ざり始め  
た。  
「あああっ、あ…ゼルガディスさ…ぁん」  
苦痛をまぎらわせるように、胸先に口付けるとアメリアの背が反りかえった。  
ゼルガディスの頭を抱えるように腕を回し、嫌々をするように首を左右に振るアメリア。切り揃えた  
艶やかな黒髪が敷布に当たってパサパサと軽い音をたてる。  
ぷくりと勃ち上がった桃色に色付いた乳首の感触を舌で楽しむと、アメリアの中がきゅうきゅうと絞  
めつけて応える。  
「……ぁ、ふ…………」  
結合部から溢れた蜜を指先で掬って、敏感な肉芽に擦りつけると、アメリアが泣きそうな顔で目を閉  
じた。  
「アメリア………っ」  
「あああっ」  
 
緩やかな動きを繰り返し、膣壁をかきまわせる。その甘い動きに、無意識にアメリアの腰が動き始め  
たのを知ると、ゼルガディスは意地悪をするかのように早い動きに切り替えた。  
「やぁ………ッ!」  
高い悲鳴を上げて、アメリアが喉元を晒す。ピクピクと痙攣するように脚が震えていた。  
(…そろそろ限界、か)  
アメリアの限界が近いようだ。  
(それまでオレが、もつか…だな)  
苦笑して、強く腰を打ち付けた。  
アメリアの中は熱くうるみ、優しく甘くゼルガディスを包み込んでいる。  
極上の心地良さに、下手をすればすぐにでも達してしまいそうだった。  
「ん…ん、ああ、あ、あっ」  
結合部の拘束が強くなり、内部が小さく震え始めた。  
「ああ………………ッ!!」  
 
「…………っ」  
絶頂を迎えたアメリアに、まるで離さないと言うようにゼルガディスの雄は締め付けられた。  
(ヤバい。持っていかれそうだ)  
今だ体を小さく痙攣させるアメリアの腕を外そうとしても、ゼルガディスにしがみついたまま離れよ  
うとはしない。  
「アメリア、頼む。離してくれ」  
「は………ぁ…、いや…です」  
荒く息を吐きながらアメリアは笑う。  
「お願いします。さいごまで…全部、わたしの中に………ください」  
達したばかりでキツいだろうに、アメリアは、細い両脚をゼルガディスの腰に強く絡めた。  
「アメリアっ!」  
このままでは本当に、アメリアの中にぶちまけてしまう。焦ったゼルガディスは、無理にでも引き離  
そうと力を入れる。上から覆い被さる形のため、体制が不安定だ。  
「!?」  
アメリアはゼルガディスを、ぐいっと力任せに引き寄せて唇を重ねた。  
男の唇を舐め、口腔内に舌を差し入れる。強引な口付けと、絡められた脚の拘束に逃げらないのだと  
知った。  
「…………っ」  
 
ぎゅっと締め付けるアメリアの内部に、堪えていた精を吐き出す。  
打ち付けられる白濁に、アメリアは満足そうに吐息を漏らして微笑んだ。  
 
 
 
それから二人はタイムリミットの新月の夜明けまで、昼はこのマジックアイテムの研究、夜は体を重  
ねて過ごした。  
最後の夜、アメリアはゼルガディスに口付けて言った。  
「わたしは、あなたがどんな姿だろうとかまわないんです」  
「オレは…………」  
「でも、ゼルガディスさんが困るだろうと思ってたんです」  
「アメリア」  
「でもね、ゼルガディスさん。わたし、我慢するのはヤメにしようと思うんです」  
不思議そうな表情で、アメリアを見つめるゼルガディスに笑みを深くして  
「ねぇ、ゼルガディスさん。既成事実って知ってますか?」  
 
 
 
【終】  
 
 
 

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