この学校の学生である、あたしリナ=インバースの上には今、
白衣を身に纏った金髪の男性が覆いかぶさっていた。
彼は、この学校の化学を担当する教師、ガウリイ=ガブリエフという。
あたしはその彼の椅子に腰掛け、脚を大きく開いていて、その間には彼の身体。
椅子の足元にはあたしが穿いているはずの下着が落ちていて、
制服のブラウスを肌蹴たあたしの胸元には、彼の手が潜り込み、あやしい動きを続けている。
あたしの膝上丈で紺系のチェック柄のスカートに隠れた奥には、
彼の下腹部が押し付けられていた。
この日、化学研究部の部長でもあるあたしは、今日も一人最後まで実験室に残っていた。
「なんだ、まだ帰ってなかったのか。いつも熱心だな」
この部の顧問でもあるガブリエフ先生が通りかかり声をかけてくる。
「……あ。ガブリエフ先生。ちょうど今終わった所です。」
あたしは彼の姿を見て動揺していた。きっと顔が赤いだろう。
実は先日、同じようにこの教室に残っていた時に、
彼に告白され、その……キスをされてしまったのだ。
あたしはその時、はっきりした言葉で彼の告白に答える事はしていなかった。
元々彼があたしのクラスの担任や部の顧問であったり、
あたしが委員長や部長という事もあり、加えて何かとボケな彼の世話をあたしが焼く事が多く、
ガウリイに対して好意は持っていた。
でも、まだこの時点では、それが恋愛感情なのかは、あたし自身よくわからなかったのだ。
カシャン……。
考え事をしていたせいか、ガラス器具のひとつが手を滑っていき、
床に落ちて小さい音を立てた。
「痛っ」
あたしは破片を拾おうとして伸ばした手を反射的に引っ込める。
見ると指先に小さいガラスの破片が刺さっていた。
「大丈夫か?」
心配そうに駆け寄ってきたガウリイが、あたしの手を包み込むように取り、破片を取り除いてくれる。
ガラス片の感触に眉根を寄せるあたしの傷口に破片が残っていない事を確認したガウリイは、
盛り上がるように血が沸いてくる指先を、自分の口に含んで吸い上げた。
あたしはいきなりの行為に驚いて、硬直したまま彼を見上げていた。
そんなあたしを面白そうに眺めながら、口内の指に舌を這わせながら抜き出していく。
「準備室に救急セットがあったはずだな。手当てしよう。」
急に脈拍が上がったあたしに、掴んだ手を離さないままガウリイが言った。
「よし、これで大丈夫だな。」
救急箱の蓋をパタンと閉じてガウリイが言った。
「……ありがとうございます。」
きれいに手当てされた指先を見つめながら、あたしは礼を言った。
「どうしたんだ?何か変だぞ・」
やや俯き加減のあたしの顔を覗き込むようにして、ガウリイが言う。
「だ、だって。この間、あんなこと……。」
先日の告白やキスを思い出し、あたしは言う。なんか気まずい。
「この間?」
「?!まさか忘れて?」
何のことだか見当もつかないという口ぶりに、
恥ずかしさに背けていた顔を勢いよく振り向かせて、あたしは信じられない気持ちで問いかけた。
しかし、そこにはニヤリと意地悪そうに笑うガウリイの顔があって。
「んんっ……」
そのままガウリイの顔が近づいてきて、あたしは唇を塞がれていた。
一瞬離れた唇がすぐにまた押し当てられ、息を吸おうとした隙間から、今度は舌が入ってくる。
「んん……ふ……む……。」
上顎を、そしてあたしの舌を絡めるように、入ってきたガウリイの舌が動いて、
あたしはくぐもった声を漏らした。
ガウリイはあたしの後頭部に手を添え、何度も角度を変えては貪るように口付けた。
あたしの喉をどちらのものかわからない唾液が、こくり。という小さい音を立てて降りていく。
最初は戸惑い逃げていたあたしの舌は、いつしか彼の動きに応えて動いていた。
飽きる事無く口内を貪りながら、ガウリイの手はあたしの胸元へと伸び、
白いブラウスの胸元、ボタンを外していた。
あたしがその行動に気付いたのは、ガウリイの手がその更に内側にある下着を上へと押し上げた時だった。
塞がれたままの口から、再びくぐもった声が慌てた響きをもって漏れ聞こえるものの、
それによってガウリイの動きは止まるどころか、
晒された胸を掴んだ手は円を描くようにゆっくりと動き始めるのだった。
「ん……ふ……。」
ガウリイの服を掴んでいたあたしの手は、押しのける動きではなく、
掴む手の力を強めただけだった。なぜそうしたのかは、あたしにもわからない。
そんなあたしの様子をいいことに、彼は更なる動きを開始する。
後頭部に添えられていた手をあたしの膝に這わせ、何度がねっとりとした動きで擦った後、
指先をその上へと滑らせていった……。
ガウリイのその手は、あたしの腰の後ろに回され、
あたしは浅く腰掛けるように促される。
そしてその手はあたしの前へと周り、
スカートの中、下着の上から大事な部分を上下に擦りだすのだった。
やがて、布が内側から染み出すもので水気を帯びてきた頃、
開放されたあたしの口からは、鼻にかかった吐息がこぼれ出ていた。
「感じてるみたいだな……。」
あたしの耳元で熱い息を吹きかけながら、ガウリイが囁いて、あたしの背筋がぞくりと震えた。
「っあんっ……。」
ついに布の内側へと入ってきた指の感触に、あたしは大きく目を見開いて声を漏らしていた。
直接触れられたそこは、もうぬるぬるになっていた。
「気持ち悪いだろ?」
ガウリイはそう言うと、あたしの腰を上げさせ、スカートの中の下着を脱がせてしまうと床に落とし、
今度は2、3度上下に滑らせた指を、ゆっくりともっと奥へと進ませた。
「あ……ぅん」
やだ、指、入ってる……。
入れられた自分のそこがとても熱く潤んでいるのを、あたしは自覚させられていた。
初めて味わう異物感にあたしは知らず眉をしかめた。
「痛いか?」
あたしの中で指を蠢かせながら、ガウリイが囁く。
股の奥で動かされる自分ではないものの感触に息を乱しながら、
あたしはその問いに首を横に振って答えていた。
ついこの間、ずっと好きだったと告白されたばかり。
その時一度キスをしただけで、まだはっきりした返事などしていないのに、
今はもうこんな事になっていて、あたしは不思議な気持ちだった。
嫌なら振り解けないまでも、抵抗してもよかったはずだ。
そうしたなら、彼も途中で止めてくれたかもしれない。
でも、なぜか自分でもよくわからないまま、あたしは彼に身を任せていた。
『彼とこうすることで、自分の気持ちを確かめたいのかも』
そんな考えがあたしの頭に浮かんで、戸惑い流されるままだった彼との行為を、
もっと積極的に受け入れてみようとあたしは思った。
自らガウリイに顔を寄せ、あたしは彼に口付けていた。
さっき彼にされたのを思い出しながら、同じように舌を使っていく。
今度はガウリイが驚きと戸惑いを見せたが、すぐにあたしの拙い動きに応え、舌を絡めてくる。
スカートの中では、指が抽送の動きを始めていた。
くちゅくちゅという水音があたし達の耳に届き、昂りを与えていく。
ガウリイは一度指を深く沈めると、あたしの隠されていた肉芽も探り出し、
ぐりぐりと円を描くように指を動かしていた。
「くぅっ……ん!」
な、にこれ……。
あたしの口から切ない声が溢れ、ガウリイの手に自ら腰を押し付けると、
目を瞑り、眉根を寄せてあたしは背筋をぞくぞくと奮わせて達した。
「っはぁ、はぁ、はぁ。」
ガウリイの肩に頭をもたせかけ、あたしは乱れた息を搾り出す。
そんなあたしのスカートの中では、二本に増やされた指が捻り込まれようとしていた。
ずちゅ……。
ゆっくりと入ってくるそれらはあたしの内側を更に押し広げ、
あたしは恍惚の表情でその感触を受け入れていた。
ブラウスの胸元は一層大きく肌蹴られていて、
膨らみの片方はガウリイの手や指で、もう片方はガウリイの舌や唇、
時には歯によって攻め立てられていた。
「リナ、一緒に気持ち良くなっていいか?」
何度目だったか、ガウリイの指をあたしの内部が締め付けて、
弛緩した身体をもたせかけていたあたしの耳元で、ガウリイの声が聞こえた。
一瞬の間を置いてその言葉の意味を理解し、あたしは頷く。
衣擦れとファスナーを下ろす音がして、
指で解された場所に硬いものが押し当てられるのを、あたしは感じていた。
『ああ……あたしこれからこの人としちゃうんだ。』
どこか実感が伴わないまま、あたしは思う。
彼の行為を受け入れる事で自分の気持ちを確かめようと考えてから、
あたしの中に後悔という思いは無かった。
ぬちゅ、くちゅ……。
ふとももの裏を抱えられ、太いものがぬめりの中を往復する度に、
そこからはいやらしい音が生み出された。あたしの身体は火照り、新しい切ない疼きが沸いてくる。
「いくぞ」
あたしの愛液を纏わせたそれを、中心に合わせてガウリイが短く言った。
熱く潤んでしまった瞳であたしは頷き、ガウリイは腰を沈めていった。
「ん……う……ふ、ぅ。」
椅子の背もたれに身を預け、あたしは襲い来る圧迫感を受け入れようとしていた。
恐れていた痛みは無く、身体はその大きいモノを呑み込んでいっている。
あ……すごい……。
今までとは比べ物にならないくらいの圧迫感に、あたしは息を乱していた。
うまく息が継げない中、ガウリイを受け入れよう、感じようとあたしは思いを巡らせていた。
瞑っていた目を開けると、目の前の彼と目が合ってしまった。
とてつもない恥ずかしさを感じたものの、目を逸らせなかった。
今まさにあたしの中に自分の一部を沈めようとしている彼の表情を見て、
彼もあたしで感じてくれているのだとわかった。
同時にあたしの心を安心感が満たし、新たな気持ちよさが身体の奥から沸いてくるのだった。
「先生……気持ちいいよ……。」
あたしは自分でも珍しく素直な言葉を発していた。
「ガウリイでいいよ。俺もすごく気持ちいい。リナ」
全てをあたしの中に沈め、ガウリイがあたしの耳元で囁いた。
ギシッ、ギシッ……。
椅子の軋む音が薄暗い室内に響いていた。
制服姿のまま着衣を乱れさせたあたしの上に、
白衣姿の金髪の教師が覆い被さり、腰を動かしている。
椅子の上浅く腰掛け、彼の前に大きく脚を開いたあたしは、
初めてにも関わらず、恍惚の表情と切ない吐息で彼との行為に応えていた。
「はぁ、はぁ、がう、り、あたし、また、ヘンに……。」
今日何度目かの限界をあたしは訴え、程なくして彼の下であたしは体内のモノを締め付ける。
彼の方はまだ限界には程遠いらしく、ぐったりしてしまったあたしの中で動きを続けていった。
窓の外がすっかり藍色に変わった頃、背筋を反らせたあたしの中で、彼はその欲望を吐き出した。
「ちゃんと付けてくれてたのね。」
服の乱れを整えながら、あたしは言った。
「そりゃあ一応な。万が一出来ちまったら、もちろん責任取るぞ。」
「責任って……。そもそもこんな事、誰かに知られたらあなた、タダじゃ済まないわよ。」
「ああ、そうだな。本当は卒業まで我慢するつもりだったんだが。」
「それが何で今日いきなりこんなことしたのよ?」
自分でも今更だと思いながら、あたしは問いかけていた。
「リナ、今日の昼休み同じクラスの奴から告られてただろ。」
「え……?ああ、そういえばそんな事も。ってひょっとしてヤキモチ?」
「まあ、そんなところかな。」
「あんたはそんな理由で……。」
脱力して内心頭を抱えるあたし。
「リナだって嫌がらなかったよな。もしかしたら拒否されるかとも思ったんだが。」
「それは……。」
「後悔、してるのか?」
言葉に詰まった様子のあたしに、ガウリイが問いかける。
あたしは首を横に振ってその問いに答えた。
「後悔はしてないわよ。でも初めあなたの事をその……そういう対象として好きなのかっていうのが、
自分の中でよくわからなくて。」
「じゃあ、何で。」
「あなたを受け入れてみることで確かめられる気がしたの。」
「それで、どうだった。」
「……嫌では、なかったわ。」
「そうか。じゃあまたいっぱいしような♪」
「いっぱいってあんたねえ……。ほんとに自分の立場わかってるんでしょーね?」
「わかってるわかってる。」
全然わかっていないような口調で言う彼に、あたしは一抹の不安を覚えたのだった。
この後、実はかなりの策略家だった彼に翻弄されるのはあたしの方だったりするのだが、
それはまた先で別の話。
<おわり>