あたしは独り、部屋のベットの中でうずくまってにいた。  
 今は夜中、いつもなら盗賊いぢめに言っているころだろう。  
この辺は結構盗賊がいる。食堂では色んな盗賊の話が聞けた。  
 なぜ今日は行っていないかと言うと、今魔法が使えない……いや、使わないのだ。  
あの日が来たわけでもないし、もちろん封印されたわけでもない。  
ただ──したくなるのだ。……アレが。  
それはあいつの所為なのだ。あいつの──  
 
「ねぇ、リナさん。あなたの悩み……コンプレックスを解消してあげましょうか?」  
 
──この一声が原因だったのだ。  
 それまでガウリイと楽しい楽しいお食事(戦争)をしたのに、いきなり現れ、あたしの手を押さえ言ってきたのだ。  
その所為であたしの、あたしの……だ〜いじなローストチキンさんはガウリイに取られ……しょうがなく返事をしたのだ。  
 
「ゼロス……またなんか企んでるの?」  
 
 もちろん、あたしでなくともそう思うだろう。  
こいつは赤眼の魔王シャブラニグドゥの腹心、獣王ゼラスの唯一の部下、獣神官なのだから。  
今までもこいつにさんざん利用され、手の上で踊らされてきた。  
そんなやつが、ただ親切であたしの悩みを解消してくれるはずがない。  
 
「いえいえ、僕だって今までのお礼がしたいだけなんですよ。それに今回は僕のプライベートなことですからね。  
それにもう……魔法をかけちゃいましたからv」  
 
 そう言うゼロスは面白いおもちゃでも見つけた子供のように満面の笑みをしていた。  
 しかし……あたしには何も変化はないし、悩みが解消されたわけでもない。  
でも、魔族は嘘をつけないから本当に魔法をかけられてしまったのだ……。  
 
「僕はもう帰りますね。なにか……用があったら呼んで下さい。リナさんのお部屋へとんで行きますから」  
 
 呼んだら来る──これは、言い換えるとゼロスを呼ぶようなことがある、と言うことだろう。  
やはり、ゼロスにまた、利用されようとしている。  
 ……もちろん、そんなことがおこるかも知れない中、黙って踊らされるようなあたしではない。  
まだ消えていなかったゼロスの腕をガシッっと掴み、ドスの聞かせた声で、  
 
「今すぐその魔法を解とかないと神滅斬をお見舞いするわよ」  
 
 神滅斬、悪夢を統べる王の力を借りた、今のあたしに制御できる最強魔法である。  
あの、魔竜王ガーヴでさえ片腕を切り離すことが出来たのだ。  
もちろん、これを受けたらいくらゼロスとは言え軽傷ではすまないだろう。  
滅びる……可能性もあるのだ。それなのに……  
 
「どうぞ、僕は動きませんから。御自由に」  
 
 ──おかしい。  
なにかが物凄くおかしい。なんか違和感が凄くあるのだ。  
 ──あたしが神滅斬をうたないと確信している──ような。  
 
「ここでは迷惑だから表に出なさい」  
 
 ……あいつが勝手にそう思ってんならそれを利用しない手はない。  
そう考えたあたしはゼロスを倒す覚悟で挑むことにした。  
たとえ勝てる確率が一パーセントほどだとしても、そーいう姿勢で、戦えばその一パーセントもゼロになる  
───これは以前あたしが言った言葉だ。  
これ以上魔族なんかにつきまとわれたくない、というのもあるが。  
 
「いえ、それには及びません。それに、ガウリイさんも邪魔ですしね」  
 
 そうゼロスが言ったとたんに周りの空気がかわった。  
 これが……瞬間移動?  
 そう思った時にはもう別の処にいた。  
辺り一面には草が生い茂っている広い平地。風が流れる度に草も音をたて流れていく  
ここは、どこかの草原……?  
 
「ここでなら邪魔は入りませんよ。好きなだけ魔法を使って下さい。  
──発動できるものならね」  
 
 もしかして──魔法を封印された!?  
ゼロスよりも格下であろうあのマゼンダでさえ出来たのだ。こいつにできないはずはない……!  
 
「悪夢の王の一片よ 世界のいましめ解き放たれし  
凍れる黒き虚無の刃よ 我が力我が身となりて  
共に滅びの道を歩まん 神々の魂すらも打ち砕き  
……神滅斬!!」  
 
 呪文、いや魔法は発動していた。確実に。  
 黒き虚ろな刃があたしの手に収束し、刃の形になろうとした瞬間──あたしの中で何かが弾けた。  
「ひゃぁあっんんぅっ!! やっ! あっ、駄……目ぇ――!!!」  
 あたしはその場で魔法を解き自分の股の部分を押さえるようにへたれこんだ。  
……脚に全く力が入らなかったのだ。  
 呪文を唱えている時から少し、刺激を感じていたのだが……発動したあとは今までに感じたことのない程の刺激が、  
あたしの首筋に、胸に、腰に、脇腹に、太ももに、アソコに──いずれも、あたしがお楽しみの際に  
ポイントとしているところに集中したのだった。  
 
「はっ、ぁあ……んっ! はぁ・・っ、やっ……あぁっ・・ん! ま・・た来るぅっ!」  
 
「魔法を使うとその能力分、自分に気持ち良い刺激となって戻るのです。  
人間は女性ホルモンの分泌によって胸が大きくなるらしいですから、これで大きな胸にもなれますよ。  
 ……でも、よりによってあの方の魔法を使うとは……刺激も強かったでしょう?  
何もせずに二回もイッてしまうとは……と、まだイキ足りないようですね……」  
 
「も……壊れ、ちゃうぅっ!!! やっ・・やぁんっ! はぁぁぁあぁんっっ!」  
 
 次から次へと押し寄せてくる快感の波に逆らう術はあたしにはなかった。  
それを受け止めて、刺激にたえ続けることしか。  
 あたしはそれから何十回も達してしまった。ゼロスの目の前で。  
その間中ずっとゼロスはあたしを見ていた。  
 
――ヤダ……見ナイデ……  
 
 そう言いたかったけどまったく声が出なかった。  
出てくるのは自分のとは思えないほどの甘ったるい吐息。  
 
「リナさんも、随分堕ちたものですねぇ……。自分からオナニーを始めちゃうなんて」  
 
そう。あたしは自分自身気づかない内に自分の手をアソコに持ってきて始めてしまっていたのだ。  
でも……それでも足りない……。  
 
「……んあっ! …はぁっ……おね……がぃ…ぜ……ロスぅ……」  
 
 ついには自分からおねだりをしてしまう。  
そんな自分を恥ずかしく思う……。  
 
「嫌ですね」  
 
 ゼロスのきっぱりとした拒絶。  
それを聞いた時、私はすごい喪失感を覚えた。――何も手に入っていないのに。  
 
「僕はそのリナさんの負の感情を食べているのですよ。  
僕がリナさんを満足させちゃったらご馳走が食べられなくなってしまうじゃないですか」  
 

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