なんでこうなったのか、あたしにはさっぱり解らなかった。  
だってあたしはほんの数刻前までガウリイと一緒に居たはずだったから。  
二人で並んで街道を歩き、適当な宿場町へと向かっている途中だった。  
それは、以前の冒険からほんの僅か心が落ち着く程度に時が経って  
あたし達は【恋人】へと関係を変化させていて。  
初めは恥じらいもあって違う部屋に泊まったりしてたけど  
次第に一緒の部屋を取るのが当たり前になってきていた頃。  
 
唐突にソレは壊された。  
この、ゼロスという魔族によって。  
 
不意に訪れた異空間の気配に、あたし達二人は咄嗟に背中を合わせて身構え、辺りを注意深く伺っていた。  
体に突き刺さる得体の知れない凍りつく視線の持ち主を、神経を研ぎ澄まし探していると  
何もない空間に、本当に唐突に。  
ゼロスが現れた。  
いつもは穏やかに微笑んでいる(ように見せている)瞳は、あくまでも笑みの形のまま。  
でも、そこに浮かぶ色は紛れもない殺意。  
ゾクリ、と背筋を冷や汗が伝い落ちる。  
殺意を向けられる理由なんてない。訳が解らない。  
けど、こいつが本気なんて出したら、あたし達なんて瞬殺と言っても過言じゃない。  
それを解ってか、ガウリイはあたしをその背に庇うように前に進み出た。  
そうして睨み合いが続くピリピリとした空気の中、ゼロスが沈黙を破り口を開いた。  
「少し見ない間に、随分お二人は仲良くなられたようですね?」  
一瞬何を言われたのか、理解出来なかった。  
こんな険悪なムードの中で発した第一声があまりにも場違いに感じられて。  
きっとあたしは間抜けな顔をしたんだろう、クスリ、とゼロスが笑っていない瞳で微笑む。  
「どうしたんです?リナさん。そんな可愛らしい顔をして」  
「何の用だ。この異空間は何の真似だ?ゼロス」  
ゼロスの言葉を遮り、ガウリイが口を開く。  
と、ガウリイに向けたゼロスの視線が、まるでその視線そのものに殺傷能力があるかのような熱を帯びた。  
「ねぇ、ガウリイさん。人のものを横取りしちゃあいけませんよ、って習った事、ありませんか?」  
あくまでも穏やかに。  
普段どおりの口調で、でもそれが余計に底知れぬ不気味さをかもし出す。  
「人のもの?……何の事だ」  
あまりの殺気に気圧され身動き一つ出来ないあたしを守るように  
ガウリイは自身の神経を戦闘態勢へ張り巡らせたまま、鋭く問いかける。  
「あぁ……、比喩は貴方に無意味でしたね」  
にこり、と微笑んで。  
次の瞬間ゼロスの顔から【笑み】が消え失せた。  
「リナさんは【僕の】ご馳走なんですよ。貴方ごときが味わって良いご馳走じゃない。  
彼女の情熱、欲情、畏怖、歓喜、それら全ては僕のために存在するものなんです。  
だから、ね――――――……?」  
その言葉の意味を理解するより早く、ゼロスの指がぱちん、と鳴った。  
「うっ……!?」  
ゼロスに釘付けになっていたあたしの目線が、咄嗟に声のした方を仰ぐ。  
「ガウリイ!!!」  
何処から現れたのか、夥しい程の数の蔦がガウリイの体を絡め取り、動きを拘束する。  
その蔦はまるで生きているかのような動きで両の腕、足、首、胴全てに絡みつき、ギシギシと厭な音を立て始める。  
「ガウリイ、ガウリイ!!!!」  
息が出来ないのであろうガウリイの顔は、見る間に青ざめ苦しげな表情を浮かべ、あたしに悲鳴のような声を上げさせた。  
傍に駆け寄りその蔦を切ってやろうと体を動かそうとすると、耳元でゼロスが囁いた。  
「リーナさん」  
いつの間に背後に移動したのか、楽しげに、語尾に音符マークでも付きそうな軽やかな声で。  
しかしその手はあたしの体をいとも容易くその場に押し止める。  
 
「離して!!離して、ガウリイが!!!!」  
懸命に振り解こうとしても到底抗える力ではなく、あたしの声は虚しくその場に響くだけ。  
「駄目じゃないですか、僕の前で他の男に目を奪われちゃ。そんなに無防備だと……危ないですよ?」  
クスクス、とその言葉と状況に相応しくない笑い声が発せられる。  
 こいつ、今もあたしの感情を食べてる―――――――!!!  
「闇よりもなお昏き存在……夜よりもなお深き存在……」  
条件反射で、無駄だと解っていてもあたしの唇は呪文詠唱を紡ぎ出す。  
「おやおや…敵いっこないと解っているくせに、リナさんらしくない行動ですね?しかもそれは…」  
「混沌の海よ…たゆたいし存在……金色なりし闇の王……」  
「リ……ナっ…や、め……」  
あたしの発動しようとしている呪文がなんなのかを悟ったガウリイが、苦しげな声であたしを止めようとする。  
 でも……あんたを助けるためにはこれぐらいしか、思い付かないの………!  
後ろでニヤニヤと微笑うゼロスの気配を感じながら、あたしは気力を振り絞り続ける。  
「我、ここに汝に願う!我、ここに汝に誓う!」  
 全てがなくなっても良い!あんたさえ、助かるなら……!  
願いを、切実な願いを込め、残りのスペルを紡ぎ出す。  
「我らが前に立ち塞がりし、全ての愚かなる存在に  
我と汝が力以て、等しく滅びを与えん事を……!」  
瞬間。  
あたしの術は、発動したのかと、そう思った。  
急速に集まった黒い、何よりも黒い闇に包まれた後、一瞬で辺りは真っ白に染まり、何も見えなくなって。  
首を絞められながら苦しそうな顔をしたガウリイも  
あたしの背後で微笑っていたゼロスも  
そして、あたし、自分自身すらも、何も見えなくなった。  
 
『ガウリイ……何処……!?』  
声にならない声を張り上げ、彼を探す。  
まだ何も見えない。  
指の感覚も、足の感覚も。  
五体全ての感覚が麻痺し、自分が立っているのかさえ解らない其処で  
あたしはただ、ガウリイを探していた。  
 
ふわり、と。  
次に、ずしっと体の感覚が蘇り、あたしはその場に崩れ落ちた。  
「っは…………っ!!!」  
肌に伝わる地面の感触。生い茂る草の冷たさ。見覚えの無い場所。  
何が起こったのか状況を整理する余裕もなく、突如戻ったそれを受け入れるため呼吸を整える。  
「はぁっ、はぁっ、は……ぁ……は…」  
両手、両膝を地面に付き頭を垂れながらも、戻ってきたあたしの頭の冷静な部分が  
現状を把握しようと動き出したその時。  
「おやおや……大丈夫ですか?」  
頭の上に響くその声……ゼロス。  
さらり、と地面に流れ落ちたあたしの髪をかき上げるその顔を睨み付け  
「あんた……っ、ガウリイを、あたし達を何処へやったの!!」  
そういうと、酷く憤慨したような表情を浮かべた。  
「やだなぁ、僕は何処かへやったりなんてしてませんよ。ただね……?」  
打って変わってにこり、と笑んで。  
「リナさんの魔力を感知したら発動するような、ちょっとした細工をしておいただけですよ。あの空間にね。  
だから貴女の術は発動していませんよ、残念ながら」  
ギク、と背筋が凍る。  
「あんた……、あたしを、嵌めたのね……」  
「人聞きの悪い。それに、あんな大きな術を……まさか金色のお方の禁呪を使うだなんて  
僕は思ってもみなかったんですよ?だから、嵌めたなんて言われるのは心外ですねぇ。  
術にかかる魔力が大きければ大きいほど、結構な移動をする事になってしまった訳で。探すのに苦労しました」  
全くそう思っていない素振りで、寧ろ嬉しそうにゼロスは言った。  
「細工ってなんなの!?ガウリイは何処へ言ったのよ、答えなさい!」  
まさかこんな一言が状況を変えるなんて、あたしは全く解っていなかった。  
ゼロスはそれまでの楽しげな表情から一変し、何故か、とても悲しそうな色を浮かべる。  
「折角二人きりになったというのに、貴女はガウリイさんの事ばかり……。  
少しは、僕の事を見てくれても良いんじゃないか、と思うんですけどね?」  
 
場違いも甚だしい言葉。  
突如恋人を奪われ、見ず知らずの場所へ飛ばされたあたしへ向けるような類の言葉では、先ず無い。  
それはまるで、恋焦がれた相手へ向ける、切なさを含んだ、恋を詠うような甘い言葉。  
 魔族なのに……、まさか、そんなはず。何を言ってるの、こいつは…。  
頭に浮かんだその考えを必死で否定する。  
ゼロスは人間を【食料】としか考えていない魔族なのだ。  
そう、あの時も言っていた。  
『リナさんは僕のご馳走なんですよ』  
と……。  
「勿論貴女はこの上なく素晴らしい、至高のご馳走である事は変わりませんよ」  
あたしの考えを見透かしたようにゼロスは言った。  
でも、その瞳はそれまでとは全く違って、まるで、その……片恋でもしている少年のような。  
認めるのは腑に落ちない。でも、とても艶っぽい熱を帯びていたのだ。  
「でもねぇ、リナさん」  
じり、っと。一歩、立ち上がっていたあたしへと歩を進める。  
当然、あたしは一歩身を引く。  
「【食べる】って言葉は、男女のソレだと意味合いが違ってくる事……解りませんか?」  
また一歩。  
さっきまで感じていたのとは違う危機感があたしを包み、頭の奥で警報を鳴らす。  
「ガウリイさんが、リナさんにしていたような…事、ですよ……?」  
熱い、焦がれるほどの視線。  
 アブナイ。ニゲナケレバ、アブナイ。  
そう解っているのに、【ガウリイ】という単語に体がその場に縫い付けられたように動けなくなる。  
「逃げないんですね?……ガウリイさんが気になっているから?」  
こいつには読心術なんていうものまで備わっているのか、と言いたくなる。  
「…解ってるんなら、言いなさいよ……っ」  
殺意への恐怖とは違う怯えから、震える唇をわなめかせ、あたしは言う。懸命に虚勢を張って。  
「全く、本当に素晴らしい方だ……貴女って人は…」  
うっとりするような口調で脈絡もなくそんな事を言い出す目の前の魔族を、あたしは睨み付けたまま。  
「力の差は歴然。いつでも容易く僕に殺されても仕方ない、ほんの小さな存在にも関わらず  
貴女は何時でも、その強さを、熱を失わない。  
真っ直ぐで、透明で、でも燃え上がるような緋色のその貴女の感情が  
どれだけ僕を魅了して已まないか、貴女は解っているんでしょうか?」  
それはまるで愛の言葉。  
 魔族が、人間に……あたしに、恋!?  
考えなくてはいけないのはガウリイの安否。  
それなのに、在り得る筈の無い出来事に直面させられ、あたしの思考は混乱する。  
「……」  
何かに気付いたような仕草を見せ、ゼロスは柔らかく。それまで一度も見た事もないくらいの優しい微笑みを浮かべて  
「ガウリイさんなら、ご無事ですよ。ただちょっと……遠くへ、移動させて頂いただけです」  
そして、あたしの体はゼロスに抱き締められていた。  
 
「なっ……!は、離しなさいよっ!」  
ガウリイが無事、その言葉を鵜呑みにするのも危険だけれど。  
このゼロスという男は、隠し事はしても嘘は付かない、そういう性格だったのを承知している。  
「今頃ね、きっと呆然としてるはずです。いきなり与えられた解放からね」  
身を捻って逃れようとするあたしを腕に抱いたままで、あたしの考えを肯定するようにゼロスは言う。  
「だってリナさん、教えないといつまで経っても僕を見てくれないじゃありませんか。  
だから、教えて差し上げたんですよ?」  
――――僕に集中させるためにね。  
声に出さず、あたしの瞳を捕らて唇だけでそう呟く。  
その言葉の意味を理解する前に、あたしの唇はゼロスのそれで塞がれていた。  
「っ……!」  
 
離れようと足掻いても、この細腕の何処にそんな力があるのか。  
流石は魔族、と思わずにはいられない力で抱き締め押さえ付けられ、あたしの口の中はゼロスに蹂躙されていく。  
歯列を舐め、歯茎を弄り、あたしのソレと自らのソレを絡み合わせ唾液を注ぎ込まれる。  
くちゅくちゅと水分を含んだ音が脳裏に響き、その出来事が現実に起こっている事だと思い知らされる。  
手の平はあたしの髪に潜り込み優しく梳きながら、指先でひとふさ摘んで弄ぶ。  
相手が魔族だという事を忘れさせられそうなほど、人間の男が愛しい相手にする行為に酷似していて。  
もう片方の手はあたしの頬の輪郭を辿り、耳元、首筋を優しく撫でている。  
ゼロスが両手を自由にしていてもあたしは動けない。この辺りは…なにか、術でも使っているんだろう。  
「抵抗しても無駄だ、って…解りましたか?」  
唇を離し、端から零れる滴を拭おうともせず微笑む。  
無駄、と言われても納得いかないのがあたし、リナ=インバースなのだ。  
「ふざけるんじゃ、ないわよっ、人に断りもなくこんな事して……、あんた、それでも男なの!?」  
「いえ、魔族です」  
にっこりと至極当然に切り返される。  
でも、ガウリイが無事だと聞かされればこんなところに1秒だって居る必要は無い。  
「魔族だったら尚更、あたしみたいなのにこんな事する必要はないでしょうが!離しなさいよ、卑怯者っ!!」  
あたしを抱き締めた形のまま、ふぅ、とため息を一つ。  
「まぁ、こうなるだろう事は解っていましたけどね」  
そう言うが早いか。あたしの体はくるり、と反転させられ、ゼロスに後ろから抱きすくめられる形になった。  
「なっ……!」  
「もっとね、僕を求めて已まない熱ぅい感情が、欲しいんですよ……他の誰でもないリナさんの、ね」  
耳元に唇を寄せられ、ゾクリ、と身が震える。ぴちゃ、と耳の穴に温いものが触れる感触。  
「んぁっ」  
思わず声が漏れる。  
「ここが弱いんですね」  
問いかけでもない、確信の言葉。  
そのまま耳朶や裏側を執拗に舐められ、ぴちゃぴちゃと耳の奥にいやらしい音が木霊する。  
「ふぅ……っん、やっ…、はぁっ!」  
カリッと耳朶を齧られ、一際高い声があたしの口から漏れた。  
 ガウリイじゃないのに、あたしなんでこんな……っ  
自らの体が全く別の生き物のように感じられ、あたしの意思とは全く反して、舌先が耳元を擽る度に背中が撓り、嬌声が上がった。  
 
「ぁああっ!ちょっ…んっ」  
そして、ゼロスの手があたしの胸元へと回り込み、いつの間に脱がせたのか  
あられもなく露出し紅潮し始めたあたしの肌を撫で回す。  
指の腹で擦るように胸の先端を愛撫して。  
小振りながらも、ガウリイとの重なる行為で敏感になったあたしの胸は次第に赤みと艶を持ち始め、感じている事を示していた。  
「やぁ……っめ、てっ……ゼロ…ス!」  
自由なはずなのに自由の利かない両の手に力を込め、残った自制心が拒否の言葉を口に出す。  
「止めて欲しいんですか?リナさん。…こんなに感じているのに?」  
耳朶を舐め上げながら、酷く意地悪に響く声色でゼロスが問う。  
相手はガウリイじゃない、魔族だと解っているのに、それだけで頭の奥が麻痺してくる。  
ガウリイは居ないのに、自然に目が泳いで彼を探す。  
「リナさん、今此処に居るのは僕なんですよ?……他の人のコトなんて、考えさせてあげません」  
あたしの求めるものをぶち壊すかのように、それまで胸を弄っていたゼロスの手が下半身へと伸びた。  
「ぃ…やだぁあっ!」  
動けないもどかしさと良いように弄ばれる悔しさから、涙が零れる。  
ゼロスの手があたしの脚を抱え、もう片方の手が太ももを撫でながら中心へと伸びていく。  
そして、窪みに指が触れた途端、其処に指先を埋めて膣内を掻き回す。  
「ひぁっ…!」  
「ほぉら……もうこんなに潤ってる。欲しいんじゃないんですか?」  
あたしの中で動く指の動きに、まるで頭の奥まで混ぜられたような錯覚に陥って。  
ゼロスの指の動きが、甘い囁きが、自分が上げるその声が、あたしの脳裏を溶かしていく。  
「あ……あぁ、はっ…ぁあん、あぁっ、あ…ああ」  
ちゅくちゅく、と響くそのいやらしい音がやけに大きく聞こえ、奥へと進み入ってくるゼロスの暖かい指の動きに意識が集中する。  
「リナさんはね、僕のご馳走なんですよ。他の誰でもない……僕だけの、ね。  
ガウリイさんになんか、渡してあげませんよぉ?」  
その言葉の意味は既に理解出来なくなっていたけれど。  
最早、この腕から、この魔族から、もうあたしは逃げられない事を悟っていた。  
 
「あぁ…凄いですねぇ…こんなにも奥から奥から溢れてきて……。  
リナさん、気持ち良いんですか……?ねぇ、僕の指、気持ち良いんですか?」  
耳元で聞かれて、快感に赤くなっていたあたしの顔はより一層赤みを増す。  
「ちが…もんっ!ん、はぁ、あ、あはぁっ、ぁん…」  
犯されているのに。しかも魔族から、なのに。  
感じているなんて、認めたくなくてあたしは頭を振った。  
「嘘吐きですねぇ……こんなにいやらしく涎を垂らして、僕の事をおねだりしてるのに。  
……でも、そんな強情なところも……」  
好きですよ。  
「え……っはぁあんっ!!!」  
聞き間違いだろうと思ったその言葉の真意を聞き返す前に、背後からいきなり固いものがあたしの中に入ってきて、あたしの考えは一瞬  
 
で消し飛んでしまった。  
「あぁあっ、凄っ……ひぁっんん、あ、太ぉ……いっ!」  
「っくぅ……っ、リナさんの膣内、ヤバイくらい気持ちイイです、よ…っ」  
ずぷぷっ……と音を立て、ゼロスのモノがあたしをゆっくり、でもしっかり奥深くまで貫く。  
想像もしなかったほどにソレは熱く、太く、そして硬く膨張していて、狭いあたしの入り口を押し開いていた。  
充分すぎるほど潤っていたあたしのアソコは、ややキツイものはあっても容易くソレを飲み込み、しっかり咥え込んで離さない。  
異物の侵入で溢れた滴が太腿を伝い落ちてゆく。  
「ほら…全部入りましたよ……。解りますか?僕のが…」  
苦しそうなゼロスの声も、あたしの欲情をそそる引き金になってしまう。  
ゼロスのソレと肉壁が擦れる快感に溶け始めた頭の中は、正常な思考が働かなくなってきて。  
「はぁ……あ、あぁん…!動かな、いで……ぇ」  
このままじゃいけない、と思ったあたしはそう口に出していた。  
「ふふっ……。リナさんったら、解ってて仰ってます?」  
「ふ……?」  
「逆効果じゃないですか、そんな声でセリフ…。【動いて】ってお願いしてくれてるんでしょう?」  
そう言ったゼロスは一気に腰を抜ける寸前まで引いた。  
「ひゃぁんっ!」  
そして腰を引いたままの姿勢で背中にぴったりとくっつき、唇を耳元に寄せて囁く。  
「動いて、欲しいんでしょう……?」  
腰を支えていた両手が胸へと回り、再び乳房を弄び始めた。  
「ゃあぁっ、ふぁ……んんっ、ああ、はぁっ」  
押し潰すような強い愛撫と、先端を掠るような弱い愛撫を交互に繰り返され  
下半身に集中していた意識が胸へと分散されて、懸命に繋ぎ止めていた何かが揺らぎ始める。  
「もぉ……リナさん、そんな切なそうな可愛い声で啼かれたら…それだけで僕、イっちゃいそうですよ。  
ねぇ、リナさんはどうなんです?もっともっ…と、気持ち良くなりたくはありませんか?」  
繰り返される首筋や耳元への熱い口付け。  
その唇から紡がれる官能的な囁き。  
舌先で舐め上げられる度に声が零れる。  
入り口を広げるだけで留まる、ゼロスの塊……。  
 駄目……!なんで、こんなに気持ち良いのっ……?  
駄目だと解っているのに、与えられる快感に神経が集中してしまう。  
先刻向けられた殺意なんて微塵も感じられない、優しく、甘く、愛しむようなその刺激。  
何故ゼロスがこんな事をするのか、さっぱり解らない。  
何よりも、誰よりも自分が愛されてるような錯覚まで覚えてしまう。  
あたしの頭は、ガウリイの事を考える余裕すら失っていた。  
「な……でっ…こ……な事……ぁっ」  
与えられる快感が、囁かれる言葉があたしを蕩けさせる。  
「愚問ですよ。なんで、なんて……決まっているでしょう?」  
胸を弄びながら片方の手が下へと降りる。  
秘所を覆う薄い茂みをすぅっと撫で、触れられてもいないのに既に赤く、硬くなっていた小さな突起に指が触れた。  
 
「あぁあん!」  
ただ軽く触れられただけなのにびくっと背中が反り、首が仰け反る。  
もっと、もっとソコに触れられたいのに、指は触れるか触れないかの些細な刺激だけしか与えてくれない。  
「貴女が、リナさんの全てが欲しいからですよ。余すところなく、全てを僕のものにしたいんです。  
その顔も、瞳も、唇も、僕を惹き付けて已まない強い意思を持つ、貴女の心も体も……」  
独占欲、というものが、魔族にもあるのだろうか。  
知らないけれど。でも、ゼロスの言葉はあたし達人間で言う、独占欲そのものだ。  
とても、とても熱く強く。そして、深い……。  
「だからね?他の人になんか、触れさせたくないんですよ。  
それなのにリナさん、貴女って人は…僕がちょっと目を離した隙に、あんな事になっちゃってて。  
……駄目じゃないですか、余所見なんてしちゃ」  
優しく耳元で囁かれ続けるその言葉は、まるで愛の告白。  
「ね…リナさん?僕が、欲しいですか…?此処にもっと触って欲しいですか?」  
「ぁ…………」  
首筋に、耳に、胸に、アソコに、小さく小さく与えられ続ける刺激。  
ゼロスの指が、唇が、声が、大きく硬くなったソレが、そしてゼロス自身の体温すらも愛しくて欲しくて堪らない。  
「ちゃぁんと言ってくれたら、ご褒美。……あげますよ?」  
あたしの頭の中は、もうドロドロに溶けてしまっていて。  
その一言で、繋ぎ止めようとしていた何かが吹き飛んでしまった。  
「おね……がぃ…っ!もっとぉ…もっと、あたしに触って……深く!」  
「良く出来ました」  
「はぁああぁあんっ!!」  
ずぷずぷずぷっ!っと再び淫らな音を立てて、ゼロスがあたしの膣内へ入ってくる。  
同時に、股間の間で掠るような動きをしていた指が、求めていた刺激を与え始める。  
「ひあぁっ!あっ、あぁあっ、ふっ…ぅんんんっ」  
アソコから溢れ出た滴を指に取って、突起に擦り付ける。  
押し潰すように円を描き、時には上下に動かされ、あたしはそれまでの欲求が爆発して一気に絶頂へと登りつめた。  
「っぁ――――――――――!!!!!」  
「っ!……締まる…っ!!」  
真っ白になった世界で、どくどくどくっと体の奥で響く音が聞こえた。  
「もおイっちゃったんですか?凄い締め付けて来るものですから、僕まで出しちゃいましたよ。  
……リナさんのいちばぁん奥で、ね」  
くらくらと眩暈がするほどの快感の中で言われた言葉。  
それがどんな意味か、解っているはずなのにもう何も考えられない。  
「は…ゼロスぅ…」  
いつの間にか自由が利くようになった腕を、体を振り向かせゼロスの首へ巻きつかせる。  
「リナさん…可愛いですよ、とぉっても…」  
ちゅぅっと音を立てて唇を吸われる。  
あたしは自分から舌を差し込み、ゼロスのそれと絡み合わせ、もっと、もっと、と求めた。  
口付けたまま背中に腕を回され、そっと地面に横たえられた。  
下から見上げるゼロスの瞳は艶っぽい熱を含み、大切なものを見るような眼差しであたしを見詰める。  
それだけでもまたあたしの体の奥が疼いて、そのあたしを溶かす熱を欲してしまう。  
「リナさんの膣内は本当にとても熱くて、ぬるぬるとしていて、柔らかくて…。  
イった後だからですか?入れてるだけなのに、締めつけるように動いていますよ」  
「や……そんな事、言わ…ないで…」  
あたしは顔が羞恥で紅く染まり、片腕で顔を隠した。  
「ねぇ?入ってるの、解りますよねぇ?」  
コクン、と小さく頷く。  
ゼロスは腰をあたしに押し付けたまま、円を描くように動かし始めた。  
「あ……ぁあん…」  
そうされると、恥丘の突起にゼロスの肌が擦れ、絶妙な快感を与えられる。  
 
「これ、好きですか?」  
ニヤリ、と微笑み、あたしを見下ろして意地悪な質問をする。  
あたしはまだそういう事を言った事がなくて、恥ずかしさで一杯になりただ頷くしか出来なかった。  
「口で言ってくれないと、止めちゃいますよ」  
そう言ってぴたりと動きを止める。  
「あ……っ」  
まだ動いて欲しいのに、もっと気持ち良くなりたいのに。  
その思いから、あたしは思わず切ない声を上げていた。  
「もう一度、聞きますよ?…好きですか?」  
「好…き……」  
再び再開される動き。  
今度は円を描くだけじゃなく、角度を変え突き入れるような動作まで加えられてあたしは益々翻弄される。  
「ふぁんっ、や……ぁ、イイっ…!」  
「気持ちイイでしょう?……リナさん…僕が、もっと欲しいですか?……好き、ですか?」  
正常な意識があたしにまだ残っていたら、そのゼロスの瞳の中に怪しい光が灯っていた事に気が付いただろう。  
でも、あたしは既にその動きに、声に魅了されてしまい、手遅れだった。  
「欲しいよぉ……ゼロスが欲しいの、好き……!」  
ぎゅうっ、と首に回していた腕に力を込めて口付ける。  
息が苦しくなるまで唇を貪り、ねだるようにゼロスの腰に脚を巻きつけて結合部分を擦り付けた。  
「良く解りました。じゃぁ、もっとご褒美をあげないといけませんね…」  
にっこりと微笑んで、優しく深い口付けを繰り返すゼロスは、あたしには見えない位置で指を動かして何かを動かした。  
勿論、あたしはゼロスの愛撫に夢中で気付かない。  
 
動かしたものは辺りの風景で。  
ぐにゃり、と歪んだ空間から現れたのは蔦に両腕、両脚を拘束され、口を塞がれたままのガウリイ。  
「さようなら」  
聞こえるか聞こえないかの小さい声でその言葉を残し、ゼロスはあたしと繋がったまま、元から何も無かったように姿を消した。  
 
 
其処は、あたしとガウリイがゼロスの異空間に閉じ込められた街道。  
ゼロスは一つ、嘘を付いていた。  
ガウリイを遠くへ運んだのではなく、あたしに幻術がかかる細工を施していたのだ。  
あたかも、全く別の場所へと飛ばされたように感じる幻術を。  
あたし達が消えたのが合図のように、ガウリイの戒めまでが綺麗に消え去り  
そして、一人取り残されたガウリイは呆然とした表情で、膝から崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。  
 
『人のものを横取りしちゃ、いけないって言ったでしょう?僕の勝ちですね、ガウリイさん。  
良く解ったでしょ。それじゃあ、本当にさようなら』  
 
 
あたしは結局、その後二度とガウリイに会える事は無かった。  
 
 
***END***  
 
 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル