「ねぇねぇガウリイ、今日って何の日か知ってる?」
安宿の簡素なベッドに腰掛けて、剣の手入れをしていた俺、ガウリイ=ガブリエフに向かって
無邪気にはしゃぐ彼女はリナ=インバース。
目下の所旅の友兼俺の恋人という、目に入れても(…多少は痛いが)痛くない大事な存在。
「今日って……2月14日か?何の日だ?」
思い当たる節がないので素直に問う。とゆーか、俺に聞いたって無駄だって解ってる癖にな。
それでもリナは可愛い頬をぷぅっと膨らませ、怒った顔を作る。
「んっもーーぉ、どうしてあんたってそうなのかしら?2月14日っていったら、恋人達にとっては大事なイベントの日でしょ!」
恋人にとって大事なイベント?はて、何の事だろう。俺はリナがいれば毎日がイベント並の忙しさだが…。
「はいっ、バレンタインプレゼントのチョコレート!」
にっこり笑って差し出したその手の上には、やや大きめの箱が綺麗な包装をされて乗っていた。
「チョコレート?俺に?……リナが??」
思わず一つ一つ指差しで確認する。
リナがこんな風に、俺にプレゼントをするなんて事は、今までに何度かあっただろうか?否、無い。
「えっへへー、バレンタインって言うのは、女の子が好きな人にチョコレートをあげる日でね。
その事を宿屋の娘さんと話してたら作り方教えてくれるって言うから、一緒に作ってきたのよ」
誇らしげに満面の笑みを浮かべたリナの口から、更に信じられない言葉が飛び出る。
手作り。
…………この世の終わりが来る日も近いかもしれない……。
「なによー、その顔!失礼しちゃうわ。あたしだってたまにはその…日頃のお礼というか、そういうの、しようかなって思うわよ」
俺があまりに間抜け面をしていたからだろう、さっきよりももっと顔を膨らませて文句を言うが、顔が赤らんでいる。
「……照れてる?赤くなってる、可愛い」
箱ごと手を掴んで、自分の方へ引き寄せる。
「きゃっ!……んっもぅ、なに…」
「有り難う。嬉しいよ、凄く。……勿論、食べさせてくれるんだろう?」
ぎゅうっと抱き締め、目を見つめながら聞く。
「なっ…………!!!ばっ!!!???」
「ん?それとも、リナごと食べても良いのかな?」
「!!!!!!??????」
それから俺は、益々真っ赤になって口をパクパクさせて居るリナを素早くベッドに押さえつけ、チョコレートと一緒に大変美味しく頂かせてもらった。
「こんなつもりじゃなかったのにーーーーーーーーーーー!!」
照れたリナがあんまり可愛かったのだから、仕方ない。うむ。
おしまい。