「さあ、観念するんですゼルガディスさん!」
私、アメリアはビシイッとゼルガディスさんを指差し、正義のポーズを決めて高々と宣告した。
よーし、成功!
パジャマ姿でなかったらもっとかっこよく決まったんだけど…。
お風呂上りだから仕方ない。
けど、こっちを見返すゼルガディスさんは…、無反応。むしろ呆れたような視線を私に向けている。
「…一体何を観念するんだ?俺は」
「そんなこと決まってるじゃないですか!昨夜のことです!」
「昨夜の…、ああ、リナと旦那のことか」
「そーです!暗闇に乗じて男女の営みを、あまつさえ乙女の裸を覗き見るなんて、れっきとした悪です!」
「悪ねえ…」
ゼルガディスさんはあくまでも冷めた表情で私を見つめてる。
なんだかいつもよりさらにテンションが低い気がして、ちょっと怖いけど…、いいえ!こんなことでくじけちゃダメよ!私の力でゼルガディスさんを悪の道から戻してあげなくちゃ!
私はゼルガディスさんを鋭く睨んだ。
「反省の色がありません!…よしっ!こうなったら、今日は一晩、じっくり私が正義の道をゼルガディスさんに教えてあげます!」
そーよ!それしかないわ!名案とばかりに手を打って、私はゼルガディスさんの傍を通り抜けて部屋に入ろうとした。
がしっと、横から腕を掴まれる。
「ゼルガディスさん…!この期に及んでなんですか!?」
「別に文句は無い…。今夜一晩、じっくりってとこまではな。問題はその後だ。お前にモノを教わるつもりは無い」
「私以外に誰がゼルガディスさんに正義の道を教えるって言うんですか?」
「教えるのは俺だ。勿論正義の道じゃないがな」
「そんな!じゃあ一体何…んっ、んむう…!?」
言い終わるより先に、ゼルガディスさんは私の腕を引き寄せ、唇を塞いだ。
な、なんななななんてことを!!?
驚いて身を離そうとするけれど、ゼルガディスさんは私を体ごと両腕で拘束し、さらに深く唇を合わせてきた。
「ふむ…!んん…!ん、ん、んああ……」
舌が、無理やり私の唇を押し開けて入ってくる。当然抵抗しようとするけど、でも…。
う、あぁ…、なんか、変…、力が…入らない、です…。
だらん、と、挙げていた手を下ろす。しばらくしてやっとゼルガディスさんの唇が離れた。
「あ、あふ……」
ああ、ダメ、動けない…。
私は崩れそうになるけれどゼルガディスさんが支えた。そのままゼルガディスさんの腕の中でぼーっとしていると、いきなりやわらかいスプリングに投げ出された。
「ひゃっ!?」
はっと我に返る。ゼルガディスさんのベッドの上だった。
「さて、準備は良いか?…といっても、待つ気はないけどな」
言って、ゼルガディスさんは私の上に覆いかぶさってきた。
そのまま両腕をおパジャマのボタンを外される。
ちょちょちょちょちょっと待ってくださいいぃ!!!
「ぜ、ゼルガディスさん!??何するんですかぁ!?」
「言っただろ?教えてやる」
「教えるって!何を!」
「お前が知りたがってることだ」
「なっ……!」
「とぼけるなよ。興味津々って顔してるぜ。リナと旦那のことを知って好奇心が刺激されたんじゃないのか?」
笑いを含んだ言葉に、私は真っ赤になった。
そんな、わわ私は、そんなつもりじゃ…。そりゃ、リナとガウリイさんのしてることを知ったときには、びっくりはしたけど、でもでも!そんな風に思ってなんか!!
慌てふためく私を見下ろして、ゼルガディスさんはにっと笑った。
「しょうのないお子様だな」
「こ、子ども扱いしないでくださ…あっ、やっ!」
パジャマのボタンを全て外され、下着の上から片方の胸をぐいっと掴まれる。
「俺の方も、最近はああいうことにはずっとご無沙汰でな。お前が来たのはちょうど良かった」
「あッ…!い、いや、嫌ですっ!」
叫んで身をよじるけれど、ゼルガディスさんは全く動じた様子が無い。その上シーツに寝かされた状態では勝ち目は無かった。それでも、ゼルガディスさんの両手は私の体を押さえるだけで手一杯になる。
「っと…、暴れるな…」
ゼルガディスさんは周りをちらっと見回して、ベッドのすぐ傍に立てかけてあった剣に手を伸ばし、柄を固定する紐を取り出した。
「なっ、なにす…!」
抗議する隙も与えず、私の手を押さえ、頭の上で縛り上げてしまう。そのままベッドに固定されて私の手はほとんど自由を失った。
し、信じられない…!ゼルガディスさんが、こんな乱暴なことするなんて…!
手早いだけで無くどこか機械的なゼルガディスさんの動きに恐怖を覚え、思わずゼルガディスさんの顔を見上げると、彼はにやりと笑ってこちらを見ている。
「まあ、慌てるな。ゆっくり教えてやるよ」
言葉を返すこともできなくて、私は黙り込んだ。
……いやだ…。こんなのいつものゼルガディスさんじゃ…ない。
「……!?あっ…!やっ…!」
放心していたらしい。気付いたときには、もうパジャマはとっくに肌蹴られ、ゼルガディスさんの手のひらは下着を押し上げ、直に私の肌に触っていた。
あらわになった乳房を、今度は両手で掴まれ、先端を指先で摘まれた。
「う、ううっ…!」
こんなの、普段見られることも無いようなとこを、こんな風に、触られるなんて…!
いつのまにか滲んでいる涙をぐっとこらえる。
「止めてください、ゼルガディスさん…!こんなの、ヒドイ…!ひゃう!」
指でもてあそんでいた部分を口に含まれ、思わず叫ぶ。そのまま先端をやわらかいものが這う。初めて知る感触に、体中が熱くなってきた。
そんな私の反応にはお構いなしで、ゼルガディスさんは休まずに動かしていた口を一瞬放した。
「酷い…?どっちがだ?」
「そんな、私は…あ、あううっ…!」
固い感触。先端を軽く立った、ゼルガディスさんの歯の感触だった。
「少なくとも、夜中に一人で男の部屋に入ろうとするようなヤツに男を責める資格はないと思うがな」
「そ、そんなこ…ひああ…!」
私がしゃべろうとする度に、ゼルガディスさんの舌が私をなぶってくる。
これじゃ、会話にならないですぅ…!
思うけれど、言葉にならない。
んん、それどころか……、なんだか、おかしい…。
「あ、んあ…、はあんっ……」
声の調子が変わっていることに気付く。
こ、これ、私の声…なの?なんで、こんな、声ってぇ…あああんっ!
「どうした…?感じてきたか」
ゼルガディスさんが、顔を上げて言った。
やだ、声が変わってること、気付かれて、る…!
それだけじゃない、さっきから身体を動かそうとしてるけど…、なんか、思うように力が…入らな…い…!
「ということは…そろそろ良いか?」
ゼルガディスさんが言うと同時に、下腹部に、さらにもっと下に冷たい感触が走った。
「あっ…!?」
今まで手付かずだったズボンを引き下ろされる。間を空けずに、ゼルガディスさんは片手を乳房の上に置いたまま、もう片方の手を、ショーツの下、に…!!
「い、いやです!止めて…!!ひっ…」
ゼルガディスさんの指が触れたソコは、しっとりと濡れていた。さらに指で表面をなぞられる。
「う…ひゃあん…や、めてぇ……」
涙を浮かべて哀願するけれど、ゼルガディスさんは指を動かすのを止めてはくれなかった。それどころかさらに撫で回す動きが激しくなる。少しずつ混ざってくる水音が羞恥心を掻き立てた。
「わかるか?これは感じてるって証拠だ」
その言葉に、私は真っ赤になった頬を隠すことも出来ずに喘いだ。
恥かしい。でも…、本当に濡れている。
触られて初めて気付いたけど、ソコは私の声が変わる前からずっと疼いていた。
それは、つまり…私が、さっきからずっと感じてるってこと…。
「どうした。もう抵抗はお終いか…?気持ち良くってそんな気も起きないか」
真っ赤になってゼルガディスさんを睨んだ。いつの間にか、私の目からは涙が零れている。
「ひどい、です…!なんで、こんな…!」
「なんで?」
「そうです…!こんなことする人じゃ、なかったのに、ぃ…!」
「……何を勘違いしてるのか知らないが…」
ゼルガディスさんの顔が下に移動していく。
「少なくとも俺は、目の前に転がってきたご馳走をみすみす逃す性質じゃないぜ?」
足が曲げられ、ゼルガディスさんの顔が私の足の間に埋まっていく…って!ちょっと、ま…
「やッ!見ないで…や、はあ、あ!!」
あ…ゼルガディスさんの…舌…がぁ…ぁあ…!
もう、何がなんだかわからない…。
見られるだけでも恥かしくて死んでしまいそうなところを、舌で…、舌でなぶられている。
昨日見たモノを思い出す。…ガウリイさんも、リナに…こんなことしてたんだ。
けどまさか自分が…まさか、ゼルガディスさんにそうされるなんて…。
「ひう…ふあっ、あ、ぁん…ひっ…」
泣き声は漏らせても、そこにあえぎ声が混ざるのを止められない。水音が激しくなればなるほど羞恥心が増していく。
しばらくして、ゼルガディスさんの顔がソコから離れた。
「そろそろ良いか…」
言葉とともに、ゼルガディスさんの体が近づいてきた。ぬるぬるになったソコにあてがわれたものが何かを知る。ぐっと、私の両足を押さえるゼルガディスさんの腕に力が入った。
「最初はさすがに痛いだろうが…、我慢しろよ…?」
「あ…や、待って…ひぁ!!あ、あああ!」
肉が裂かれる感触とともに激痛が走る。
さっきまでの快感が嘘みたいに飛んでいって、痛みと圧迫感に息が止まりそうになる。
やだ……、苦しい…!痛い!痛いよぉ…!!!
思わず暴れだしそうになる。両手を繋がれたベッドがギシギシと音を立てた。両足は、ゼルガディスさんにしっかりと押さえられている。
なすすべも無いことが無性に悔しくて、私の目からはさらにボロボロと涙が零れた。
「ひう…うっ、ひっく…」
泣き声が室内に響いた。少しして、機械的だったゼルガディスさんの動きが止まった。ぽつり、と呟く声。
「そんなに、嫌…、か?」
「うぅ……、ぅ?」
「岩肌のキメラに汚されるのは堪えられない?」
「そっ、んなこと……」
思わぬ台詞に、痛みも忘れて顔を上げる。見ると、ゼルガディスさんが私を見てた。すごく、すごく辛そうな顔をして、私を見ている。
……いやだ。そんな顔、しないで下さい。
「…ゼルガディスさん…、酷い…、」
「………」
そんな風に言われたら…嫌じゃないって、認めるしかなくなっちゃう。
無理やり、乱暴にされたのが嫌だった、怖かっただけだって…、認めるしか…
私はゼルガディスさんから目を落とした。
「…ほどいてください。暴れたり、しませんから」
「………」
ゼルガディスさんは黙って手を伸ばし、紐を解いた。
私はやっと自由になって手を下ろすことができるようになる。それからまだジンジン傷む両手を、ゼルガディスさんの肩に回した。少し、驚いたように見返してきた。
「アメリア……」
「どうぞ、好きにしてください。…あ、あんまり痛いのは嫌ですけど」
「良いのか?本当に」
「ここまでしておいて、そういう台詞を言うんですか?」
「…いや、すまん」
気まずそうに言う様子が可笑しくて、こんな状況にも関わらず笑ってしまった。
…気のせいかな。ゼルガディスさんの顔も少し緩んだ気がする…。
ゼルガディスさんの手が私の腰に回った。
少しの間弱まっていた圧迫感が蘇り、私は再び身を硬くする。
「力を抜け。その方が入りやすい」
「へっ!?だ、だって、もう入って……」
「…まだまだだ」
「うえぇ……」
「だから力を抜けって」
「そんなこと言われても、難しいですよぅ…」
と言いつつ、ゼルガディスさんに胸とか色んなところにキスされているうちに、ちょっと楽になった気がする。
…なんでかなぁ、さっきされたキスより、気持ちいい…。
いくぞ、と一言だけ言われ、思わずすうっと深呼吸する。
次の瞬間、一気にゼルガディスさんが私の腰を引いて前かがみになった。
「!!あぅ…!」
一気に奥まで引き裂かれるような衝撃に、さっきまでのが全然足りていなかったことを思い知らされる。
思わず、ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めた。
うう、やっぱり、すごく痛い…!
「うぅ……」
「大丈夫か…?」
「……はい…」
なんとか返事をしたけど、本当に大丈夫だとは思ってくれてないみたい。
確かに痛みは変わらない。でも、腕が自由だからか、ゼルガディスさんが優しくなったからか、わからないけど、さっきとは全然違うのは本当だった。
ゼルガディスさんは、私の呼吸が落ち着くまでしばらく待ってから、言った。
「……動くぞ」
「はい……あ、あぅっ」
ゼルガディスさんが動くたびに、ひりつくような痛みで体がこわばった。
濡れている部分から、体が合わさる度に、かき回されるような水音がする。それでも、最初は羞恥心よりも痛みの方が強かった。
でも、動きながらゼルガディスさんにキスされたり、乳房を味わうように吸われたりすると、その内痛みばかりじゃなくなってきて。出たり入ったりを繰り返すゼルガディスさんの動きにあわせて、痛覚と一緒に、確実に快感の波が襲ってきている。
押さえきれずに出る声もなんだか調子が変わってきていて…、なんだか…。
「ふぁ…あ、ふあぁっ…、…き…」
気持ち良い……。
思わず言ってしまいそうになって、慌てて言葉を飲み込んだ。
でも、ゼルガディスさんはわかったらしい。彼は意地悪く笑って、耳元で囁いた。
「どうした…?なんか言ったか?」
「な、なんでも…ふああッ!?」
「あ、ふあッ、ひあぁん…!!」
いきなり動きが激しくなって、ガクガクと腰を浮かされる。唇の端から唾液が溢れてきて止まらない。
ひいあ…ダメ、もう、これ以上はぁ…。
「ああんッ!はあっ、いや、やだぁ…!」
「や?嫌、じゃないよな…?」
「あ、あ、あぁ……」
嫌じゃない。おかしいくらいに。自分の体じゃないみたいに。
ジュプジュプと水音が立つ度に、すごくすごく…
「嫌なのか?言ってみろ、アメリア」
「や、はぁ…っ、き、気持ちいぃ、ですぅ…っ!っはぁん!!」
首を振り絶叫すると、ゼルガディスさんは満足したように私の頬にキスをした。
そのまま前のめりになって、どんどん動きを早められる。
私は、もう、ただそれに合わせて感じているだけだった。
「っく、ぅ……!」
やがて、ゼルガディスさんが苦しげな声を漏らして、私の腰に回した手をさらにしっかりと掴んだ。
「あ、ふアぁん…!ゼルガディスさ、ん…!!はぁあんっ!」
びくびくっと、体が反り上がって震え、次の瞬間、ゼルガディスさんが腰を引いて私の中からソレを引き抜いたのがわかった。
同時に、暖かいものがお腹の辺りに散ってくる。
ふあ……な、に……?
びっくりしたけど、脱力していて体をよじる事もできない。そのまま目を閉じると、ゼルガディスさんに抱きしめられているのを感じた。そのま、意識が途切れがちになる。
……ゼルガディスさん…。私、すごくすごく、幸せです……。
「ゼルガディスさん…一つ聞いてもいいですか…?」
「…なんだ?」
その後、ゼルガディスさんの腕の中で、私はおずおずと切り出した。
「例えば、私じゃない人が、真夜中に部屋に行ったとしても、ゼルガディスさん、あんなことしたんですか…?」
「…お前以外にそういうあつかましい真似をするヤツはいない」
「そういうことじゃなくて!…だ、誰でも良かったんですかって、聞いてるんです!」
「………」
だって…、ゼルガディスさん、一度も言ってくれなかった。私のこと、好きだって。
あんな風に尋ねていったのが私じゃかったら。それでもゼルガディスさんは、同じことをしたの…?
そう思うと悲しくなって、泣きそうになる。
「……お前以外とはしない」
「……え……」
いきなり降ってきた声に、思わず顔を上げると、ゼルガディスさんはそっぽを向いていた。
「ゼルガディスさん、それってつまり…」
「お前こそ、わかっただろうな?」
「え?」
「夜中に男の部屋に押しかけるような馬鹿なマネをするとどうなるか、だ」
「……はい、とっても、すっごく、身を持ってわかりました」
「………」
ゼルガディスさんは押し黙った。
そりゃあ、あそこまでされてわからないわけはない。…でも…。
「でも…」
「でも、なんだ?」
「ゼルガディスさんのとこだけは、これからも押しかけても良いですよね?」
最後の問いに、ゼルガディスさんはまたそっぽを向いて、しばらくしてから「ああ」と短く呟いた。
嬉しくなって、ゼルガディスさんの腕にぎゅっとしがみつく。
えへへ、…本当に、幸せ……v
「あ、あともう一つ」
「…何」
そうそう、これもずっと気になってたんだわ。
めんどくさそうに答えるゼルガディスさんを見つめて、私は問いかけた。
「さっき、気を失う前に何か飛び散ってきたんですけど、何ですかアレ?」
「……気にするな。拭いといたから」
その日は、ゼルガディスさんはどうしてもそれ以上は教えてくれませんでした。
翌日、ガウリイさんに部屋割りの変更について持ちかけられたとき、その意味するところを勘違いして、私はゆでだこのように真っ赤になってしまったのだった。
おわり