「わー!すごい、ゼルガディスさん見てください!いろんなものがありますよぉ」  
「………」  
「これ、何に使うんでしょうね!?こっちは…変な形のイス…?」  
「………」  
「すっごーい!ムチまであります!痛そーう!」  
「…ちょっと黙れお前は」  
興奮してはしゃぎ回るアメリアを横目に、ゼルガディスはため息を抑えられなかった。  
 
 
「リナさんが言うにはですね、道具というものが色々あるらしいんです!」  
旅の連れの一人、アメリアがそんなことを言い出したのは、初めてゼルガディスが彼女を抱いた夜から幾月か経ってからのことだった。  
好奇心に目を輝かせていうアメリアに、しかしゼルガディスは何故かあまり乗り気でない様子だ。  
「…お前ら、一体普段どんな話をしてるんだ…?」  
「べ、別にいっつもそんな話ばっかりしてるわけじゃないですよ!ただちょっと、まあ…他の人はどうなのかな?って思うじゃないですか」  
「そうか…?俺は別に…」  
「ゼルガディスさんは経験豊富ですもんね」  
「………」  
「あーっ!否定しない!!ひどーいですー!浮気者―!!」  
「…おい、勝手に決め付けて憤慨するな」  
シーツをグルグルに巻いてタックルをかましてくるアメリアをやり過ごしながら、ゼルガディスは不味い流れになったと感じていた。アメリアは彼の言葉に一旦大人しくなり、真顔で聞いてきた。  
「じゃ、実際どうなんですか?」  
「…それで、リナはなんて言ってた?」  
今ここで自分の場数について語る気などない。ゼルガディスはあまり気は進まなかったが、先ほどの話題に会話を戻すことにした。  
そんなゼルガディスを、アメリアはちょっと不満そうに睨んでいたが、あきらめて彼の問いに答えることにした。  
「うーん、それが、あんまり教えてくれませんでした。リナさんてば恥かしがっちゃって。あとはゼルガディスさんに聞けばーっ、て」  
 
「あの女…」  
恥かしいんならそんな話するなよな…。  
思ったが、恥かしがったというのはなるほど彼女らしいかも知れないとも思う。  
きっと率先してそういう話題に持ち込んだのはアメリアなのだろう。知識がなければ、それに対する恥じらいも存在しない。遠慮なく好奇心をむき出しに出来る。しかもアメリアは元々好奇心旺盛なのだ。  
答えにくいことを追求されてリナはさぞ迷惑だったろう…。  
そう考えると少し同情するが・・・、それで自分に矛先を向けられてはたまらない。  
「…俺だってそうそう詳しくない」  
「えーっ!?ホントですかぁ?ゼルガディスさんなら絶対知ってると思ったのにー…」  
「…お前、俺をどういう目で見てる」  
何故か残念そうなアメリアをジトッと見つめる。  
「だって、ゼルガディスさんって博識だし。知らない事なんてないと思ってました」  
「そんなことにまで精通してられるか」  
「えー…」  
眉を寄せるアメリアの顔をみて、ふと不安になる。  
「アメリア、お前…」  
「え?」  
「もしかして不満なのか?」  
「はい?えーーと、え、ええぇっ!!?」  
ゼルガディスとしては思い付きを言っただけで、実際そこまで疑っていたわけではない。  
しかしその言葉の意味を理解すると、アメリアの方が慌てだした。  
「そんなっ!不満だなんてこと、全然、全くありません!」  
「…そうか?なら良いんだが」  
「ほ、本当です!今日だってすっごく、すーっごく気持ちよかったです!ゼルガディスさん、とってもお上手です!」  
「…あ、そう…」  
動転しているのか恥かしいことを力説するアメリアにゼルガディスの方が赤くなった。  
「不満なんて全っ然ないです…けど、道具とか、ちょっと興味があるっていうか…、面白そうじゃないですか!」  
「面白そう……」  
まあ、その程度の好奇心だとは思っていた、が…。  
「そうは言ってもな…そういう道具があるわけでもないし」  
「やっぱりどこかで売ってるんですかね?けど、そういうの見たことありません」  
「それはまあ、お前がそういう店に行ったことがないだけで」  
「ゼルガディスさん、知ってるんですか?」  
「うっ…」  
ぱっと顔を輝かせるアメリアを見て、すぐにでも店に連れて行かされそうな気配を察知する。  
「いや、落ち着けアメリア、そんなもん買って旅に持ち歩けると思うか?」  
「あ、そっか…荷物になりますもんね。捨てちゃうのは勿体無いし」  
あっさり納得して引き下がるアメリア。しかし依然として別の方法を考え込んでいる様子である。ゼルガディスはため息を付きたくなるのをやっと堪えた。  
「仕方が無いな…」  
 
というわけで、今に至るわけであるが。  
「来るんじゃなかった……」  
うきうきとムチを振り回すアメリアを見て、心底そう思う。  
旅をしている身で、そういう道具を使った行為を楽しみたいならば、一番手っ取り早いのはそういう宿を取ることだろう。  
口で説明するのは彼にはどうもやり難い。実物を見せてやるのが一番わかりやすいし簡単だ。  
とは思ったものの…、実際来てみれば、この気まずい空間で一体何をしろと…。  
しかも気まずいと感じているのはゼルガディスだけだったりしてこれがまた痛い。  
「で、ゼルガディスさん、どうしますか?」  
アメリアの問いに我に返ったゼルガディスは、失っていた目のやり場を取り戻した。  
最も、以前気まずさに変わりは無かったが。  
「どうって…何が」  
「私、使い方とかわかんないんですけど…、ゼルガディスさんは少しはわかるんですか?」  
「まあ…、お前よりはある。確実に」  
嬉々としてムチを振り回すアメリアを見て心底そう思う。  
性格の違いもあるかもしれないが、どう考えてもアメリアは知識が無さ過ぎだ。  
「じゃあ教えてください。私としては、このムチに興味が…」  
「よりによって最も攻撃的なものを選ぶんじゃないっ!!」  
「えー、…じゃあ、このイスは何に…」  
「それも初心者向けじゃないから止めとけ」  
「むぅ。じゃーゼルガディスさんはどれが良いんですか?」  
言われて、ゼルガディスはしばらく悩み、  
「それは…まあ、一番わかりやすいのはコレか…?」  
「縄が初心者向けなんですか?」  
「いや、そう言われると俺にもよく…」  
初心者向け、というより彼にもかろうじて許容できる範囲、という認識だった。  
しかしあくまで自分の趣向であって、アメリアに勧めていいものかどうか自信が無い。  
言葉を詰まらすゼルガディスを、アメリアは面白そうに見つめていた。  
所在無げに目のやり場を探していたり、自信無さげに声を落としたりしているゼルガディスはあんまり見たことが無かったからだ。  
「じゃあ、コレにしましょう。どうやって使うんですか?」  
 
「どうやってって…そりゃ…縛るんだろ」  
「何を?」  
「お前を」  
「えっ…?し、縛ってどうするんです?」  
…いい加減面倒くさくなってきた。  
わかりきったことまでいちいち聞いてくるアメリアを見ていると、何をいっても間が抜けているだけのような気がする。  
「実際にやってみればわかる。アメリア、お前ちょっと後ろを向いてみろ」  
どうやら行動に移すらしい。  
ゼルガディスの雰囲気を読み取り、アメリアは少し怖気づいたように表情をこわばらせたが、すぐに納得して後ろを向いた。  
「手をこっちに出せ」  
「あ…、縛るって、手のことですか」  
「まだ色々あるけどな…、それと、こういうものもある」  
「あっ!?」  
いきなり視界を遮られた。布をかぶせられたらしい。  
「ど、どうして、目隠しするんですか?」  
「お前に見られてると俺が落ち着かないからだ」  
「な、なるほど…って、それじゃあ私はどうなるんですか!?」  
「大丈夫だ。最初だから俺が全部やってやる」  
「やややるって、何を?」  
「…お前、俺たちがここに何のためにきたかわかってるか…?」  
「そ、それはわかってますけど…、なんだか、こんなのって、正義じゃないような…」  
ゼルガディスは不安げなその言葉を聞いて、あきれたような笑いを顔に浮かべた。  
正義なんてあるわけがないだろ。こんな行為に。  
アメリアには決して見えないところで、彼の表情はそう語っていた。  
 
 
 
めくり上げられた服の下で、覗いた素肌がひやりとした空気に当たっているのがわかる。緊張して体の温度が上がっているためか、その冷たさが妙にはっきりと感じられる。  
「ひゃっ…!」  
思わず、小さく声を上げた。後ろから伸びて彼女の膨らみに触れる手は、空気よりももっと冷たい。  
「…冷たいか?」  
「い、いえ、ちょっと、びっくり、しただけで……んんっ…」  
 
先端をなぶる指に、言葉が途切れる。思わず体を曲げようとするのだが、それを押し留めるのまた、背後から密着したゼルガディスの指だった。  
「ぜ、ゼルガディスさん…これって、なんだか…あ、…あ……ぁ…」  
「どうした?」  
「なんだか…、…私、どうしたらいいのか……ッ……」  
両手は動かず、視覚は奪われ、その姿勢までも自由にはならず。  
ただ自分の体に加えられる一方的な刺激を受け入れるしかない。  
こういう状況にアメリアはまず戸惑い、そして同時に今までに無い快感を覚えていることに気付いて、顔が赤らむのを止められなかった。  
「黙って感じとけ」  
「あっ、ちょ、待ってく……んん…!」  
アメリアの言葉とは裏腹に、ゼルガディスが指を延ばした先はもう待つ必要の無いくらい溢れていた。  
ここまでしっかり反応してくれるとやりがいがある。ゼルガディスは片方の手で膨らみを弄び、もう片方で、溢れている表面をゆっくりとなぞった。  
小さな突起を探し当て、軽く摘むと、穏やかだったアメリアの喘ぎが跳ね上がった。  
「はぁっ…、や、あぁ…ふぁッ…」  
体の自由が利かない。下半身までが、自分の意思に関係なく疼き、溢れ出す。  
どうしようもなくなって、苦しそうに体を痙攣させて喘ぐアメリアを後ろから抱きしめながら、ゼルガディスは少しずつ状況を楽しめるようになってきた。  
アメリアとは違って知識は元々あったわけだから、吹っ切れれば行為自体に戸惑いはない。  
その上、ここまで完全にリードする側に回るというのも珍しいことだった。  
いつもは必要以上に元気なアメリアのペースに流されがちなことを考えると、彼にとって今の状況は決して悪くない。  
「悪くないな、こういうのも」  
「ふ、え、ええぇ…、なんか私は、思ってたのと違いますぅ…ふッ、あ…!」  
「…一体どういうのを期待していた、お前は」  
「うぅ、だって、これじゃぁ…ぁあッ…、ダメです、それ以上奥は、…ぁんッ」  
ゼルガディスが構わず指を奥まで指しいれ、かき回すと、アメリアはまた状態を反らして前のめりになろうとした。左手でそれを押し留め、右手の動きをさらに激しくする。  
「…あ、あ、やあっ…!ふ、ひあッ…」  
唐突に、腕の中で小さく仰け反ったかと思うと、そのままくたりと腕の中に沈み込んだ。  
 
ゼルガディスは指が締め付けられる感触に少し驚いてアメリアを見た。  
「…なんだ、もうイったのか?」  
「…ふう、ふえん……」  
力が出ないのか、なみだ目で睨まれた、ような気がする。目隠しをしたままではどこを見ているのか当人すらわからないだろう。押さえていた腕を放すと、アメリアは前のめりに倒れて顔をシーツに押し付けた。ゼルガディスは方を優しく撫でながら声を掛ける。  
「どうだった?って、聞くまでもないか…」  
「うー、なんだか良くわからないですけど…、なんでこんなことするんでしょうか」  
「…俺の意見だが、集中するためじゃないか」  
「え?」  
「動作や他の五感を封じて肌だけがまともに知覚するようにしたわけだ。当然敏感になるだろうさ。お前もやってみてわかっただろ?」  
「うっ…、う、それは、確かにそうかもしれません…」  
男の方からしたらもっと別の意味合いがあるだろうが、これはこれでゼルガディスらしい上手い言い方だったかもしれない。  
アメリアにしても、最中に感じたあの羞恥心のような感情が妙に気になったが、言わないことにした。それについて話すことがまた恥かしかったからだ。  
「あの…せめて、この目隠しだけでも外しませんか?目が見えないと不安で…」  
「その内慣れるさ。せっかくだから付けておけ」  
ゼルガディスはそっけなく答えて、アメリアを正面から押し倒した。  
「…不安か?」  
頬に手を添え、赤らむ肌に問いかける。  
「…いいえ、でも、なんでかわからないんですけど、なんだか、恥かしいというか…良くわからなくて…」  
ゼルガディスはニッと笑った。  
「それは多分…、期待で体が疼いてるんだろうな」  
「えっ?期待って、そっ、そんなッ…んッ…」  
「ほら、お前の体が証明してる」  
先ほど達したばかりだというのに、もう新しいものでぐっしょり濡れていた。  
アメリアは真っ赤になって顔を背ける、ゼルガディスの気配が無くなり、足を開かされたことで彼が何をする気なのか気付き、慌てて留めた。  
「まっ、待ってください!そ、それは止めて下さい!」  
「察しが良いな。初めてのことでもないだろ」  
「だって…、私、なんかおかしくて…、今そんなことされたら、我慢できなく…」  
「最中にうだうだ話す女は好きじゃない」  
「ぜ、ゼルガディスさん…!」  
突然突き放したようになるゼルガディスの声の調子に、アメリアは愕然とした。  
「少しは大人しく俺のいうとおりにしてみろ。悪いようにはしないから」  
「…ゼルガディスさん、私がしゃべるの、嫌、なんですか」  
言葉少なく答えるアメリアの声が沈んでいるのを見て、少し心が痛んだが、ゼルガディスはさらに付け加えた。自分でも驚くほど冷たい声音だ。  
「好きじゃないな。あとついでに言わせて貰うなら、あんまり喘ぎすぎるのも」  
アメリアは顔を真っ赤にして俯いた。しばらくしてポツリと呟く。  
「…ひどいです」  
布の隙間から流れ落ちるしずくを無言で舐め取り、ゼルガディスは少しずつ状態をずらしていった。  
 
「ふっ…う……んん」  
上からくぐもった声が降りてくる。  
すくうように上の突起を舐めると、汗ばんだ体が身もだえする。  
アメリアは声を出さないように必死に堪えていた。  
しかしゼルガディスは一向に動きを緩めず、むしろ早足気味だった。そのまま奥まで舐るように舌を這わせていく。  
「んッ、ンンッ!!」  
びくびくっと体が跳ね上がる。そのまま脱力し、それでも休まずに舌かあるいは指で攻め立ててくるゼルガディスの動作に体を反応させられる。  
そんなやり取りを何度繰り返しただろうか。その間、アメリアはずっと声を出すのを堪えて、ひたすら刺激を受け入れていた。  
ゼルガディスは何度目かの痙攣を起こすアメリアの体からそっと身を起こし、目隠しを外した。  
 
「………?」  
涙と汗でぐっしょりと濡れたそれを外したアメリアの顔を見るのは本当に久しぶりな気がする。  
目を赤くした彼女は訝しがっているようだったが、疲れきっているのか、それとも先程の言葉を気にしているのか、何も言わずゼルガディスを見ている。  
「…拗ねたか」  
そう言うと、アメリアは顔を曇らせて目を反らした。  
「ゼルガディスさん、私の顔が見えないほうが良いんじゃなかったんですか」  
明らかに拗ねたような口調に笑いかけたが、少し調子に乗りすぎたような気もしたので、それは堪えた。  
「それはそうだったんだが…、長く見えないと、欲しくなるもんだ。声もな」  
「そんなの、勝手です…、ンッ…」  
あごを引き寄せ、そっと唇を重ねる。その日、初めてのキスだった。  
唇を離し、驚いたような表情の後に何故か泣きはじめたアメリアの肌を撫でる。  
「今日のゼルガディスさんは、ひど過ぎます…」  
「俺もそう思う。だが元々お前が言い出したことだってのを忘れるなよ」  
「うっ…、それを言われるとぉ…」  
「さて、そろそろだな。アメリア、腕を出せ」  
足をくぐらせ、手を前側に移動させると、そのまま四つん這いにした。といっても手が繋がれたままなので体勢だけだったが。  
「あのぉ…、腕は解かないんですか?」  
「ほどいて欲しいのか?…まだ、濡れてるな」  
「ッ…、そりゃ、あれだけされれば…はうっ…」  
「やっぱり黙らせた方が良いか?」  
ぶつぶつ呟きかけるアメリアの言葉は、ゼルガディスの愛撫によって封じられた。  
 
「ふっ…あ、……ん…」  
ゆっくりと、最奥まで侵入してくるそれを、アメリアの何度も達した体は呑み込むように受け入れ、そして締め付けた。  
その感覚を味わいながら、ゼルガディスはさらに動き出す。  
「あッ…ゼルガディス、さ…あんまり、激し、のは、辛いで……あ、あ゛ッ……」  
アメリアの声は徐々に激しくなってゆくゼルガディスの動きに途切れた。  
自分の手で何度もイかせた体のことを考えると、これ以上無理をさせるのは少々気が引けたが――、彼もいい加減、限界だったのだ。  
せめて、焦らさないで楽に昇り詰めるように誘導してやるくらいのことしか出来そうに無い。  
「ふぁあッ……ゼルガディス、さん…」  
「…どうした?」  
「キス、したい……」  
必死に振り向いて訴えてくる両眼が、無意識とは思えないくらい、煽動的だった。  
やはり目隠しがあった方が良かったかも知れない。ゼルガディスは思った。  
この瞳に、彼はいつも惑わされるのだから。  
体勢を変え、前かがみになって唇を重ねた。ためらい無く差し出される舌を、遠慮なくむさぼる。欲したアメリアの方が苦しそうにするまで離してやらなかった。  
「…ッ、はあっ……」  
そのまま足をぐっと開かせ、肩に乗せる。  
ベッドがうるさいくらいに軋んでいる。どんどん早まるゼルガディスの突き上げが、結合部で卑猥な音を立てながらアメリアを追い立てる。すでに疲弊した彼女の体はとても付いていけず、ガクガクと揺らされながらひたすら彼を締め付けていく。  
「…っく…はぁッ…」  
「ふ、あっ、あッ、ッあぁあッ!!」  
そのときを迎えると同時に、体の中に熱いものが注ぎ込まれた。すでに自身のものが溢れだしていた膣内をさらにぎゅっと収縮させながら、ドクドクと流れ込む液体を呑み込む。  
「あ…ふああ………」  
やっと収縮が緩んできたのを感じて、ゼルガディスは残りの精をアメリアの中にゆるゆると吐き出した後、ゆっくりと引き抜いた。  
 
アメリアが気が付いたときには、彼女の両腕を拘束していた縄は無くなっていた。  
手首が少し赤くなっている。  
「痕がついたか。悪かったな」  
「…平気です。それより、ゼルガディスさん…」  
「なんだ?」  
「あの、…してるとき、私が声を出すの、い、嫌だったんですか…?」  
ゼルガディスは少し考えて、ああ、と呟いた。  
「いや…どっちかというと喘いでくれた方が良いな」  
「じゃ、じゃあなんであんなこと言ったんですか!?」  
「あれは、まあ…、その場のノリってヤツだ」  
 
我慢するアメリアが見てみたかったから。  
 
とは言えず、ゼルガディスはそう言っておいた。  
ノリというのも間違ってはいない。動きを封じられて喘ぐアメリアを見ていて、つい嗜虐心をくすぐられてしまったのだ。  
「ノリって…なんか道具使うのって、私が損してばっかりな気が……あ」  
「まあ、コレに懲りたんなら、もう道具なんて使うのは…」  
 
がちゃ。  
 
音とともに、岩肌の手首に冷たい感触を覚える。  
ゼルガディスが振り仰ぐと、そこには、自分の両手首に掛けられた…手錠。  
「…何のつもりだ」  
「これはこういう使い方で良いんですよね。私にもすぐわかりました」  
「だから、何のつもりだと聞いてるんだ」  
「だって、不公平じゃないですか。私ばっかり縛られたりして。ゼルガディスさんも同じようにするべきです!」  
「…お前…、ぜんぜん懲りてないな…」  
「はいv大丈夫ですよ、ゼルガディスさん、今度は私が気持ちよくしてあげますからね」  
 
まだ、夜は続くらしい…。  
にっこりと笑うアメリアに妙な寒気を覚えつつ、ゼルガディスは思うのだった。  
 

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