「・・・えっ、どこココ?」  
 
 気がつけばそこは宿の一室だった。  
 部屋の広さ、備え付けの調度品からみるに、かなり上等な部類に入る部屋だろう。  
 ーそして、今まで自分が横たわっていたのは大きなダブルベッド・・。  
「何であたしこんなところに・・・ってゆーか何この服!?」  
 ピンクのひらひらのネグリジェ・・・あたしの趣味じゃない。  
「えーと・・・どうしたんだっけ、あたし」  
 部屋の中はランプの灯りがわずかに室内を照らす程度。窓の外には月が輝いていて、あたりは静まり返っている。深夜までとはいかないが、かなり遅い時間だろう。  
 宿を取って、ネグリジェを着て、ベッドで眠っていた。その間の記憶がまったくない。  
 
 ガチャ。  
「ただいまー。待たせたなリナ」  
 そう言って部屋に入ってきたのは自称保護者のガウリイ。  
 長い付き合いで気心知れた仲ではあるが、それでも乙女の部屋を尋ねてくるには非常識な時間である。  
「なっ!何であんたがあたしの部屋に入ってくんのよ!?」  
「? 何言ってんだリナ。あ、それ着てみたのか。  
確かアメリアとシルフィールからの贈り物だろ?か」  
 似合うじゃないか。と、ガウリイは溶けるような笑みをうかべ、そのままベッドの縁に座り肩を抱き寄せる。  
 
「ちょっ!ガ、ガウリイっ!?」  
 頬に、額に、唇を寄せ、そのまま耳もとで囁くように呟く。  
「今日、凄く綺麗だった」  
「なっなっなっ・・・・!!」  
 思いも寄らぬガウリイの行動に、声がうわずってしまう。  
 ど、どうしようどうしよう。と、とにかく冷静に冷静に。スーハ−スーハ−。  
「何よ、今日って?それに、この部屋もどうしたの?」  
 やっとの思いで疑問を口にする。  
 依然、肩は抱き寄せられたままだ。  
「何って・・・今日、結婚式挙げただろ?  
この部屋も・・・まぁその・・初夜ってことでアメリアが手配してくれたんじゃないか」  
 け、けけけ、結婚式ぃぃぃー!!??  
 あたしとガウリイが!?  
 いや、待て。それより初夜って・・・・・・?  
「どうしたんだ一体。リナ?」  
 心配そうに見つめるガウリイ。  
 えーと、じゃあつまり、今日はあたしとガウリイの結婚式だったわけで、この部屋は今夜のために用意されたも・・・の?  
「心配してるのか?大丈夫、優しくするから」  
 言って優しく口付ける。  
「むぐっ」  
 そーじゃなくて!!  
 

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