「ガウリイ」  
 あたしは、ガウリイの広い背中を見ながら、声を発した。  
「……ん?」  
 
――まだ、怒ってる…。  
 
ここは、山間にある小さな町の宿の一室。  
事の起こりは、昨夜。宿の一階にある食堂での夕飯時だった。  
いつも通りのてんこ盛りの食事を目の前に、二人でわいわい言いながらご飯を食べてた。  
ハムステーキがどうの、ビーフシチューがこうの、ジャンボハンバーグはあたしのだ、だのと言い合ってる時、不意に耳へと流れ込んでくる会話達。  
 
『ヘルゼン山の麓の盗賊が活動を…』  
『今度は2つ隣のジェス街が襲われたらしい…』  
『護衛隊がやっと賞金をかけてくれたようだ…』  
 
あたしの耳は自慢じゃないが地獄耳なのである。  
こと、盗賊に関しては通常ダンボの3倍くらいの耳になる。  
 
 ヘルゼン山って言ったら、確かここから南西に下ったところにある山よね。あんまり遠くなかったはず……  
 
と、盗賊いぢりの算段を頭の中でしていると  
「リナ」  
目の前にあるマグロの姿焼きにかぶりついていたガウリイが口を開いた。  
「なに?」  
「…許さんぞ」  
 ぎくっ  
「何を?」  
「おまえさんの事だから、どうせ行くつもりなんだろ」  
 はい、しっかりばれてまーす!  
「い、いやぁねぇ、行くわけないじゃなーい!あは、あははっ」  
「やっぱり聞いてたんだな、盗賊の話。ダメだぞ、絶対」  
こ、このくらげ…飄々とした顔して、カマかけたわねっ!!  
あたしとした事が…不覚……うぅ。  
 
前から盗賊いぢりに良い顔をしてなかったガウリイだけど、二人がソウイウ仲になってからというもの、益々監視の目が厳しくなって、ここのところとんとご無沙汰になってしまっていたのだ。  
心配してくれてるんだろうっていうのは解ってる。  
あたしの事を思って止めさせようとしてくれてるのも、解ってる。  
だけど、だけどぉおおっ!!  
この湧き上がる情熱を誰か解ってっ!!  
盗賊いぢりはいわばあたしのお楽しみなのよっ!!  
そりゃ、ガウリイは違うお楽しみも教えてくれたけど……ごにょごにょごにょ。  
 
しょぼーんとしたあたしを見て、綺麗に魚の骨だけを皿の上に乗せたガウリイがにっこりと笑った。  
「よし、良い子だ。後で一緒に風呂入ろうな」  
「……………ウン」  
顔を真っ赤にして俯くあたしを見て、さらににっこりと満足そうな笑みを浮かべる。  
 
もーーーーーーーーーーーー悔しいっ!この顔には勝てないのよ!!  
 
 
「あ、ちょっ、そこダメっ…ん…!」  
石鹸を泡立てて、ガウリイの手があたしをゆっくりとなぞる。  
つま先、踝、ふくらはぎ、と、優しく、優しく、丹念に、中までとろけそうな程緩やかな動きであたしを洗う。  
指が太腿まで上がって来た時、小指が内腿を微かにくすぐり始めた。  
この手は、あたしがどこに反応するかを良く知っている。  
あたしを湯船の縁に座らせて跪いているガウリイは、濡れた金髪を全て後ろに流して、熱を帯びた青い瞳でじっと見詰めている。あたしの反応を一つ一つ確かめるように。  
そんな瞳をしてあたしを見るから、あたしは益々敏感になっていく。  
まるで、瞳で犯されているみたいに…。  
力の抜けた脚を少し開かせて、薄い恥毛にも泡を塗る。  
「は……ん」  
でも、決して一番触って欲しいところには触らない。  
そうして下半身を洗った後は、腕。  
一度手を流して新しい泡を泡立てたら、指の1本から丁寧に、あたしの汚れを泡で包み込んでいく。  
手のひらをくすぐる泡の感触がくすぐったくて気持ち良い。  
こうして、ガウリイがあたしを洗ってくれる時間がとても好き。  
全てを安心して任せられるから。ガウリイがあたしを愛しんでくれるのが実感出来るから。  
 
両方の腕を洗い終わったガウリイの手が、あたしのお腹に触れた。  
すうっと下から上へ撫で上げ、それだけでゾクっとしてしまう。  
「ふぁ………っ」  
右手はお腹に、左手は背中に回り、また丁寧に撫で回す。  
「あ、あぁ、んっ…はぁん…ガウ、リ……」  
もうそれだけで息が上がってしまって、あたしは体から力がどんどん抜けていくのを感じていた。  
「ガウリ……キス、して………っ」  
ガウリイの腕に片手を乗せ、自分からキスをねだる。  
「だーめ。まだ、洗ってる途中だから、もう少し我慢しろ」  
そう言って、ほっぺに軽くちゅっとだけしてくれた。まぁ、それだけでも嬉しかったから良し。  
あたしのコンプレックスである胸はいつも最後。  
他の場所の倍くらい時間をかけて、マッサージ(照)しながら洗ってくれるのだ。  
下から掬い上げる様に手のひらで包み込んでゆっくり回し、時々強く揉み上げる。  
泡のぬるぬるした感触と、つるつると滑るように動く手の感触。  
今までの工程でだいぶ火照ったあたしは、それだけでもかなり反応してしまい、艶を帯びた声を上げてしまう。  
「ぁん…あ、ん、あぁ…あ、は…あ……っ」  
両腕がガウリイの肩に自然と伸び、しがみ付く様な体制になってしまう。  
ガウリイは優しく頭にキスをしながら、それでも手の動きは止めない。  
「んん、あっ、あぁ…っあ、ひぁんっ」  
きゅうっと先端を抓まれ、更に反応するあたしを見ているのに、そこでガウリイはふっと手を外した。  
「あ……?」  
無意識のうちに、顔がガウリイを求めてしまう。  
「今度は、俺の番」  
軽く唇にキスをくれた後、あたしを抱え上げ自分の体に密着させて座らせる。  
 
今度はあたしがガウリイの背中に腕を回し、全身を使ってガウリイを綺麗にするのだ。  
泡だらけになった手のひらで大きな背中を弄り、胸やお腹を擦り付ける。  
お尻に当たっているのは、きっとガウリイのアレだろう。  
あたしを洗う時は真剣なので大きくなってないけど、こうしてあたしが洗う番になると少しずつ大きくなってく。  
だから、それも綺麗にしてあげるの。  
最初はお尻をくるくると円を描くように動かして泡をたっぷり擦り付け、次に前後に動かしてあげる。  
「ん……巧くなったな、リナ。気持ち良いよ」  
にっこりと微笑んであたしを見詰めるガウリイが好き。  
だから、もっと気持ち良くなって欲しいの。  
腰を浮かせてガウリイのアレをお腹の方へとずらし、今度は裏側を綺麗にする。  
下腹部にぴったりくっつけて、腰を上下に動かしてやると、ガウリイがどんどん硬くなっていくのが解るから嬉しい。  
「っ…リ……ナっ……それ、ヤバい…っ」  
「ガウリ…、気持ち良い?気持ち良く…なって、くれてる?」  
下からガウリイを見上げると、ぎゅうっと目を瞑って我慢してる顔が見えた。  
あたしの視線に気付いたのか、ふっと目を開けてキス。  
今度は、深い、深いキス。  
舌を絡ませて、あたしの咥内にガウリイの味が広がっていく。  
「ん…ふぁっ…ふ…ぅうんっ」  
一際強く吸い付き、舌と舌の間に唾液を垂らしながら唇が離れた。  
「気持ち良いよ、凄く。……おかげで、もう我慢出来そうにないな」  
泡を流すためにきゅっとシャワーのカランを捻って、上からお湯を浴びなせがら、あたしを脇の下から抱え上げてゆっくりガウリイの上に下ろしていく。  
十分過ぎるほど潤ったあたしの膣は、容易くガウリイを飲み込んで。  
「あぁ、ああっあ、はぁ、あああんっ」  
ゆっくりと侵入ってくるガウリイに膣壁を擦られると、あたしの唇は自分の声じゃないみたいな「女」の声を上げてしまう。  
欲しくて欲しくて堪らなかったガウリイが、あたしの中を全部満たしてくれる。  
「あはぁ…っ」  
奥まで入ってしまうと、そこで一旦動きを止めて、また深いキス。  
頭の中でくちゅくちゅといやらしい音が響いて、それがさらに興奮を誘う。  
ガウリイの手はあたしのお尻を包み込んで、円を描くような愛撫をしながら少しずつ上下に動かしていく。  
あたしは自分からも腰を動かして、恥豆をガウリイの下腹部へ擦りつけて自分を昂ぶらせる。  
こうすると締りがもっと良くなって、ガウリイがいっぱい気持ち良くなってくれるから。  
「くっ……リナっ…の、膣……絡み付いてくるぞ」  
 
もっと、もっと。  
あたしにガウリイを感じらせて。  
あたしをガウリイに感じて欲しい。  
 
「ガウリイ、好き…っ、大好きぃっ…」  
ぎゅっと胸板に抱き付いて、更に腰を激しく動かす。  
下から突き上げてくるガウリイと、擦れて硬くなった恥豆とで、気持ち良過ぎて何も考えられなくなってしまう。  
「リナ……俺もだよ、愛してるよ…」  
「あっ、ああああっ、ふ、だ…め、あ、も…っあぁ、あたし、ダメぇっ…」  
「ん…良いぞ、俺ももう……ヤバいっ」  
あたしの限界を感じ取ったガウリイが、更に激しく突き上げてくる。  
「ひぁっあっ、んっ…あ―――――――――っ!!」  
何度も何度も深くあたしを突き上げるガウリイの硬さを感じながら、頭の中が真っ白になってあたしは意識を失った。  
 
 
 柔らかい感触を肌に感じて目を開けると、そこは宿のベッドの上だった。  
この感触は、多分ガウリイの肌だろうと、顔を動かすとやっぱり目の前にガウリイの寝顔。  
あたしはガウリイの腕の中に居た。  
一応部屋は二つとってあるけど、お風呂で気を失ったあたしをベッドに運んで、そのまま一緒に寝てしまったのだろう。  
ちゅーかパジャマくらい着せて寝かせてくれても良いだろうに、全裸って…をい。  
いつも上半身むき出しで寝てるあんたと違って、あたしは繊細なんだからさー。  
髪は乾かしてくれてるみたいだけど、湯ざめしてお腹壊したらどうすんのよ、と思いつつ起こさないように注意してガウリイの腕の中からするっと抜け、パジャマを身に着けようと床に降り立った。  
そしてバッグから服を取り出そうとした時、あたしの心に欲求のひそひそ声が耳打ちしてきた。  
「…………」  
チラリ、とガウリイを見やる。  
「すー……………すー………………」  
深い睡眠の寝息が、静かな室内に響き渡る。  
「……………………ガウ、リイ?」  
「………………すー……」  
小声で呼んで、反応を確かめてみると、やはり深く眠ってるようで。  
ガウリイの事はもちろん大好きだし、出来る限り言う事は聞きたい。  
でも、でもっ!  
これだけは別腹なのよぉおおっ!!!  
ごめん、ガウリイ!!  
「……スリーピング」  
ぼそっと呪文を唱え、万全を期す。戻ってくるまでに起きたりしないように。  
そしてあたしは、普段着を身に纏い  
「翔封界」  
部屋の窓から夜の闇へと飛び出した。  
 
―――背後の気配に、気付かないままで……。  
 
「ちぇー、しょぼいお宝しか持ってないんでやんのっ」  
ありきたりな銀貨や安物のダガー、追い剥ぎでもしたのかしらないけど錆のついたチェーンメイル。  
散々火炎球や爆煙舞(ストレス解消には持って来い)を撒き散らしたあと、そこら中で黒焦げになりながらぐったり横たわってる盗賊共を尻目にお宝の物色を始めたあたし。  
泣き喚く盗賊共を蹴散らすのは楽しいが、このお宝物色が何よりも一番楽しいのだ。  
が。  
お宝の内容があまりにもしょぼいと、楽しかった気分もたちまち萎んでしまうのだ。  
あぁ、あたしって現金よね…。解ってるけど。  
「むむっ!?こ、こりは……!」  
次の袋を開くと、そこから出てきたのは大地母神を模した美しい神像だった。  
穏やかな表情と、うっすらと笑みの形を浮かべた唇、柔らかな曲線を描いて胸の前に合わされた手。  
サイズは小さめだがこれだけの出来ならば、さぞ高名な神像職人の手によるものだろう。値段も相当張る筈である。  
調べてみるとどうやら保護の呪いまでかかってるらしい。  
…なんでこんなヤバイもんにまで手を出してるんだこいつらわ。  
どう見てもそちらの信仰厚い民家、もしくは神殿を襲ってきたとしか思えないぞ。うぅむ…。  
これはいくらあたしでも売り捌けないな。役所にでも届けるか…惜しいけど。  
そう思い、お宝入れとは別の場所へ収まっておいて貰う事にした。  
あらかた物色を済ませた後、手持ちのロープで盗賊共をまとめて縛り付け、後始末は護衛隊に任せる事にして夜が明ける前に宿へと急いで戻る。  
結局あたしの鑑定眼で見たところ、二日分の食費程度しかならないだろうけど、それでも旅費の足しにはなるので良しとする。  
盗賊のアジトから再び翔封界で夜空に飛び出し幾分か進んだ時、視界の端に嫌な予感を覚えさせるものが横切った。  
「………!?」  
まさか…そんなはずは。  
空中で動きを止めたあたしを、それはゆっくりと見上げる動作をした。  
「ガウリ……イ………」  
木の幹に背を預けた姿勢で腕組みをして、金色の髪を夜の闇に映えさせているのは、スリーピングで眠りにつかせていたはずのガウリイ、その人だった。  
 
離れていても解る、本気で怒っている雰囲気が辺りに漂っている。  
背筋が凍る思いで、それでも吸い寄せられるようにあたしは翔封界を制御する力を弱めてガウリイの近くへと降り立った。  
「………………」  
「……………………」  
やばい。空気で解ってたけど、これは相当怒ってる……。  
「リナ」  
「はっ、はいっ!」  
「なんで、俺がここに居るのかって顔してるな」  
はい…眠ってるはずの人がこんな所に居るなんて、思いもしませんでした、とは言えないので黙りこむ。  
「俺は」  
一歩あたしに近づく。  
「お前さんが俺の傍から離れれば、どんな状況でだって気付くんだよ。  
たとえ術で眠らされていようと、お前さんが傍に居ない、それだけは解るんだよ。俺には」  
「………」  
「俺の傍に居ない間にお前さんに何かがあったら、俺は自分がどうしても許せなくなる。  
それと同時にもしお前さんに何かあったら、俺はどうすれば良いのか解らなくなるんだよ」  
「………ごめん、なさい…」  
どれだけガウリイがあたしを思ってくれてるのか。  
大切にしてくれてるのか。  
必要としてくれてるのか。  
あたしはそれを解ってる筈なのに、自分に負けてしまったのだ。  
大切な人を傷付けてまで追求して良い欲なんて無いのに…。  
あたしは、まだまだ子供なんだ。  
もっと成長しなくちゃいけないんだ。  
反省して、傷付けて不安にさせた事に落ち込んで俯いたままで居るあたしの肩に手を置き、先へ進むように促す。  
「取り敢えず宿に戻ろう。話しはそれからだ」  
 
町までの道程は、あたしを更に凹ませるには十分過ぎるほどの距離と時間だった。  
恐る恐る見上げてみても、ガウリイの視線は厳しいままで真っ直ぐ前を見据えている。  
一度もあたしを見下ろさない。声も発さない。  
怒っているから当たり前だけど、これが一番堪えるのだ。  
ガウリイは、あたしを反省させる事に掛けても長けている。  
嫌われたかもしれない、厭きれて顔も見たくないと思われてるのかもしれない。  
そんな不安が心に渦巻いて、どうしようもない恐怖に駆られて、もうガウリイの顔を見上げる事さえ出来なくなっていた。  
 
宿へ着くと、まず体についた埃を落とすようにとお風呂に入らされた。  
今度は、一人で。  
ほんの何時間前かは一緒に入ったお風呂が、余計に一人を実感させて今度はあたしを悲しみの色に染める。  
さっきまでは隣に居たから、居てくれたから我慢できた涙が一気に零れだす。  
「ふっ……う、ひっく……」  
声が外に漏れないようシャワーを流しながら、あたしは床に座り込んで久し振りに思い切り泣いた。  
ガウリイに嫌われちゃったかもしれない。  
もう、あたしを見て微笑んでくれないかもしれない。  
あたしに優しく触れてくれなくなるかもしれない。  
あたしが馬鹿な事したから、あたしを許してくれないかもしれない。  
そんな不安が益々あたしの涙を増長する。  
「やだ……やだよぅ………居なくなっちゃ、やだぁ………がうりい…」  
聴こえる筈がない言葉を言い、駄々っ子のように泣いて、泣いて、泣きすぎて頭が痛くなるほど泣いて。  
一体どれくらいそうしてたか解らなくなった時、脱衣所の扉が開く音があたしの耳に入った。  
「リナ、寝てないだろうな?」  
「おっ、起きてるっ…、もう上がる!」  
慌てて泣き声を引っ込めて返事をした。  
「そうか。……いや、あんまり遅いんでな。じゃあ、気を付けて上がって来いよ」  
再び、扉の閉まる音。  
浴室に入って来なかった事に安堵しつつ、やはりまだ怒っているであろう事を実感してまた気持ちが沈む。  
それでも、これ以上お風呂に居るわけにはいかないので、身支度を整えて部屋へと向かった。  
ガチャ……と恐る恐るドアを開けると、ガウリイは窓に向かってベッドに座っていた。  
 
「ガウリイ」  
 あたしは、ガウリイの広い背中を見ながら、声を発した。  
「……ん?」  
 
――まだ、怒ってる…。  
 
短いその一言でも、ガウリイの感情は伝わってくる。  
さっきのあたしの不安は現実なんじゃないだろうか。  
そう思った途端、納まりかけていた涙がまた頬を伝った。  
「ごめっ……っく、なさ………」  
小さな小さな声でそう呟くと、ガウリイは吃驚したように振り向いた。  
「リナ?」  
「ごめん、なさ…い、あたしの事……嫌いに、ならないで……」  
見っとも無く涙を流しながら、やっとの事でそれだけ伝える。  
でも、見っとも無くても、どんなに人から見たら滑稽でも、この人を失いたくないと思った。  
その気持ちをどうしても解って欲しかった。  
だってあたしがこんな風に思えるのは、こんなあたしを見せられるのは、この世でただ一人、ガウリイだけなんだから。  
目を開けていられないくらい涙が溢れてきて、立ったまま下を向いて泣いていると、頭の上からガウリイの声が聞こえてきた。  
「……もう、勝手に一人でどこかへ行ったりしない?」  
「しないっ…!」  
「俺に心配をかけないと約束出来るか?」  
「出来る、するもん!」  
「もう、俺の傍から離れない?」  
「絶対離れないっ、離れたくない!  
……だから、あたしの事嫌いにならないでいてください」  
顔を上げるのが怖くて、ガウリイを見るのが怖くて、下を向いたままそう告げると、ガウリイの手があたしの顎に伸びてきて上を向かせる。  
「もう一度。俺を見ながら言って」  
「…あたしの、事…嫌いにならないでいて……ください」  
「他の誰にも渡さないと誓えるほど愛してるよ。リナ」  
ゆっくり優しく抱き寄せ、あたしの涙に濡れた顔を胸に押し付けてくれる。  
ガウリイの温もり、ガウリイの匂い。  
「あたしも、ガウリイの事大好き。いっぱい、いっぱい愛してる」  
腕を腰に回して思いっ切り抱き付くと、ガウリイがあたしを抱き上げ、優しく甘いキスをしてくれた。  
「いっぱい心配させてごめん。子供でごめんね」  
キスを受けたり返したりしながら、囁く。  
「約束してくれたから、今度からしなけりゃもう良いよ」  
「でも、それじゃあたしの気が治まらないの。……だから、ガウリイが嬉しくなる事いっぱいしてあげたい」  
あたしの言葉を聞いて、一瞬驚いたような顔になったガウリイだけど、すぐに言葉の意味を理解してくれたのだろう。  
あたしを抱きかかえたままベッドへと移動して腰掛け、膝の上に乗せた格好で手を離した。  
「リナがそこまで言うんなら、やってみな?」  
 
いつもガウリイがしてくれるから今までした事なくて恥ずかしいけど、まずガウリイの服を脱がし始めた。  
ボタンを一つずつ外し、肌蹴た胸元にちゅっ、ちゅっと啄ばむ様なキスをする。  
手のひらで肌の感触を確かめながら、ガウリイがしてくれる事を思い出して胸の先端を指先で軽く擦ると、ぴくっとガウリイの体が動いた。  
ここはガウリイも気持ち良いのかな?  
指じゃなく唇をあてがい、舌先でペロペロと舐めてみると、微かに溜め息が零れたのが解った。  
次は口の中に含んで、舌で軽く転がしながら吸ってみると、どんどん硬くなってくる。  
「ん……」  
良かった、気持ち良いみたい。  
両手が空いたので、唇を胸に当てたまま胸板や背中をゆっくりと撫で回してあげる。  
腕を動かしてもらって、邪魔な布を剥ぎ取り上半身を裸にした。  
あたしの唾液で濡れた乳首から唇を離し、胸板に頬ずりしたりキスしたりを繰り返しながら少しずつ下へと移動していく。  
ズボンの前を寛げ、手を押してベッドに横にならせゆっくりと下ろしていくと、すでに大きくなったガウリイ自身が現れた。  
「もう、こんなになってるの?」  
「…仕方ないだろう。リナがあんまりにも可愛い事を言って可愛い事をするもんだから、こうなるんだ」  
「えへへー、嬉しいっ」  
言うが早いか、あたしの口にはやや大きすぎるそれにしゃぶり付いた。  
「っ……!」  
最初はゆっくりと舌を絡ませ、全体を十分に唾液で濡らす。  
それから、先っぽを口に含んで、割れ目のところに舌を差し込んで何度か動かしてると、少しずつしょっぱいお汁が溢れて来たので全部掬い取って飲み込む。  
サオの部分までは口に入りきらないから、両手で握り締めて上下に刺激してあげると、口の中にどんどんお汁が広がってきて、あたしの唾液と絡み合いガウリイを益々濡らしてしまう。  
口の中で舌を広げて裏側にべったりくっつけて、動かせる範囲でこすると硬さが一層増して、ガウリイが気持ち良くなっていってるのが解った。  
「くぅ……は………ぁ、リ……ナ、待っ…!」  
どくどくどくんっ!と喉に音が響いて、ガウリイの味が口の中をいっぱいにした。  
手の中でびくん、びくんと脈打つそれからはまだ口を離さない。  
全部綺麗に舌で掬い取って、ごくんっと飲み下した。  
「俺、こんなにいつもは早くねーのに……はぁ…頼んでしてもらうのも良いが、気持ち良過ぎ」  
言い訳みたいに言うガウリイが愛しくて、あたしは凄く嬉しくなってしまう。  
「まだ、とっても元気だよ?」  
そう言ってガウリイの上に跨り、あたしの中へゆっくり埋めていった。  
「はぁ……あん、おっきい…」  
「っくぁ……あ、すげ…締まってくるっ」  
いつもより大きい気がするのは、気のせいじゃないかもしれない。  
きっと、あたしが普段しないような事ばかりしてるからだと思う。  
全部挿入ってしまった時、ガウリイが口を開いた。  
「なぁ、リナ……」  
「ふぁ?」  
「いつもより濡れてねーか?なんか、どんどんぬるぬるになって行ってるのが解るんだが」  
「なぁっ!!!???」  
なんで膣内の事まで感じるんだこの男わっ!!  
「お前さん、さてはご奉仕しながらの方が濡れるみたいだな?」  
下から見上げつつにやにやと言われて、真っ赤になりながら否定する。  
「ちっがうもん!ガウリイが気持ち良さそうにしてるのが解るから、こうなっちゃったんでしょ!  
……そんな意地悪言うと、こうだぞっ!」  
 
「んっ!」  
腰をくいっと前後に動かし、ガウリイを更に締め付ける。  
しかし自分も激しく感じるので諸刃の剣。  
「はぁ…あぁん、もう……がうりいの、おっきすぎて、あたしン中いっぱいになってるよぅ…ばか」  
「もーーーダメ、俺限界」  
そう言うなり、上体を起こしあたしをベッドに押し倒したかと思うと、ガウリイがずぷっと音を立てて深く突き込んできた。  
「ひゃっ!?あ、あぁああぁっ!!!や…深ぁ…いっ!」  
「リナが可愛すぎるから、俺がこうやって理性失うんだ」  
急に激しく貫かれたせいでくたっとなったあたしに屈み込んで舌で要求する。  
同じように舌を差し出すと、ガウリイのがそれに絡み付いてきて、くちゅ、くちゅっと唾液の音を漏らしながら、いやらしい大人のキスを繰り返す。  
たちまちあたしの開いた口からは涎が流れ落ち、ガウリイのとも自分のともつかない唾液まみれになってしまった。  
「はぁ、ふぁん、あぁ、んふっ……はぅ…。ん、もぉ……まだ、あたしがしてるのにぃ…」  
「もう十分過ぎるほどしてもらったって。だから、今度は俺の番」  
唇をくっ付けたまま、目の前でそんな事言われるとダメなんて言える訳ないじゃない、ばかガウ。  
あたしの両足を自分の肩に乗せ、一番深く侵入る体勢を取ったガウリイは  
「我慢なんて出来ないから激しく行くぞ」  
そう言って、あたしのお尻とガウリイの下腹部がパン!パン!と音を立てるくらいの強さで動きを繰り返した。  
「ぁあっ、ああ、ん、はぁあっ!あ、あんっ、あ、っ…あああっ!」  
打ち付けられる度にあたしの口からは嬌声が上がり、それを聞いたガウリイは益々激しさを増していく。  
「ガ…ウ、リイ…あっ、ガウリイっ、ふぁあんっ、あはぁ、あ、ガウリイっ!!」  
「ん……?」  
「好き……っ好きぃ、ガウリイ、大好き…っ、ガウリイ、だいすきぃっ!」  
あたしの中を満たしてくれるガウリイの熱と、あたしの心を満たしてくれるガウリイの熱で胸がいっぱいになって、自然と涙が溢れてきて。  
その気持ちを、嬉しさを愛しさを本当は全部伝えたいのに、好きだと言うのが精一杯なのがもどかしい。  
だからせめて、たくさん言いたくて。  
あたしの気持ちはあなたに伝わってる?  
あたしがどれだけあなたを想ってるか、ちゃんと伝えられてる?  
本当に、本当にあなたが大切なんだって、解って貰えてる?  
あたしの言葉にならない想いがガウリイには解るのか、とろけそうな熱い瞳であたしを見詰め  
「俺もリナが大好きだよ。だから、安心しろ」  
キスをしながらそう言ってくれた。  
「ガウリイ…っ」  
力の入らない腕を必死で伸ばしてガウリイの肩に手を置くと、片手で体を支えてその手を包み込んで優しく口付ける。  
ただそれだけであたしの奥が反応して、熱を増したのが解った。きっと、それはガウリイにも伝わってる。  
にっこりと微笑んで、更に激しく腰を動かしあたしを絶頂へと導いていく。  
「っ!ぁ、あっん、や、ぁっ…、イっちゃ……イっちゃう、ガウリイっ」  
「俺も……イクぞっ…リナ…っ」  
一際激しくガウリイがあたしを貫いた時、目の前がスパークしたような感覚があたしを襲った。  
「は、ん―――――――――――――――!」  
「っ、出るっ……!!」  
体の奥深くでどくん、どくんと何かが弾けている事だけが、その時のあたしに理解出来る精一杯だった。  
 
 
どさっとあたしの横に崩れこんだガウリイに擦り寄りぴったりと体をくっつけて、荒く息を吐いてるガウリイをじっと見詰める。  
まだ火照ったあたしの体に、しっとりと汗ばんでいるガウリイの肌が心地良い。  
「……ん?」  
「…………凄く、気持ち良かった。………世界で一番、愛してる」  
「俺も全く同じ事を言いたかったよ。愛してる、リナ」  
にこっと笑ったガウリイがおでこにキスするのを感じながら、闇へと引っ張られるようにあたしは眠りに落ちていった。  
 
これからも、ずっとずっとこうして傍で眠らせてね、ガウリイ。  
 
 
 ―――――fin...―――――  
 
 

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