───できるなら、どこかに閉じこめてしまいたい
「なぁ、リナ、いいだろ?」
「やだっ!縛るなんてぜぇぇぇったにいやっ!」
先ほどから何度も繰り返されている言葉の応酬。
「えー、絶対いいからさー」
あまりのしつこさにリナはキレかけていた。今日はただでさえイライラしているのに、
むりやりされるなんて冗談じゃない───少しお灸をすえてやろうかしら。
凶悪な意志を胸にかくして、リナは大きくため息をついてみせた。諦めたようなそぶりで。
「───わかったわ、縛ればいいんでしょ!縛れば!」
「おー、リナ、話がわか・・・」
「シャドウスナップ!」
ランプでできたガウリイの薄い影でリナはナイフをつきたてた。
「リ、リナ・・・?」
まさかリナに魔法をかけられるなんて、露ほどにも思っていなかったガウリイはあっさりと影を縛られ固まった。
「ふふっ・・・油断大敵ね♪ガウリイ」
油断もするだろう、愛しい恋人に、しかも、ベットの上で裸で抱き合ってる状態で、だ。
「リナ・・・お前まさか・・・」
「そのまさかよー。だって縛られたかったんでしょー?」
嬉々としてリナは、ガウリイの用意してたロープとタオルを手に取る。
「さっ!しばってあげるわよ!」
どこまでも嬉しそうな声で言う彼女に、止めるのはムダだと察したガウリイは抵抗を諦め、
「わかった・・・好きにしろよ・・・」
吐息混じりで呟くのだった。その様子にリナは少々拍子抜け───どうやら、もっとゴネると思ってたらしい
───口を尖らせた。ここで引くわけにもいかず、彼女は後ろ手にガウリイを縛り、目隠しをした。
ガウリイは目の前でふるふると揺れる小ぶりの乳房に悪戯したい衝動にかられ、縛られたコトを
早々と後悔したのだが、せっかくリナが色々してくれるのだからと、気を持ち直し、
「さぁ、キモチヨクしてくれよ♪リナ」
と嬉しそうな口調で言う。その口調にリナはもしかしてお灸にならないんじゃないから───
一蹴、そんな事が頭をよぎるのだが、後の祭りで。
さすがに、身動きできないのは酷かと思ったのか、リナがナイフを影から抜き取ると、大きな吐息が聞こえた。
細い指がガウリイの頬にかかる。
額に、頬に、唇に、リナは口づけを落としてゆく。
唇への口づけはだんだんと深くなっていった。見られてないせいだろうか、いつもならできないような
積極的すぎるキス。歯列を舌でなぞり、口腔内を深く深く貪るように、唾液を交換するように。
チュプリと唇同士が離れると、ツウッと銀の糸がガウリイの口の端を垂れた。
それを、小さな猫のような舌でチロリと彼女は舐めとる。
自分はキス一つでうっとりとさせられるのに、微動だにしないガウリイがリナは少し悔しかった。
あんなにしたのに───。
細い指と熱を帯びた唇は首筋へと滑り落ちてゆく、強く吸っても、柔らかなリナの肌と違って
そこには跡がつかなかった。どうしても、所有の証を刻みこみたいのか───リナは軽く歯を立てる。
赤く残った歯の跡。満足したのか微笑み、彼女は再び唇を滑り落とす。分厚い胸板へ。
「───っはっ」
ソコを赤い舌でつつくと、初めてガウリイが声をあげた。
───男の人も乳首って感じるのね───
感心したような、納得したような不思議な気持ち。
不思議ながらも、ガウリイが感じてくれるのが嬉しくて、リナはつたないながらも執拗に責め立てた。
深くひそめられる眉根に、汗ばんでくる体に、彼女も体を疼かせた。
とうとう唇がガウリイの肉茎に近付く。
ソコに感じる熱い吐息に、ガウリイは体を震わせる。
半勃ちのモノを手にとると、リナはしげしげと眺め躊躇した。
何度見ても慣れない───
「リナ・・・あんまり焦らすな・・・」
耐えきれず声をだすガウリイ。いつもは散々自分を焦らすくせに───ムッとしたリナは
鍛えぬかれた太股に唇をはわせ、口づける。首筋より柔らかな肉は吸われて跡がついた。
そして、おそるおそる花のような唇に勃ちかけのを含む。
ペチャペチャと先端を柔らかな舌でなめ回すと、小さな唇に不釣り合いなほどすぐさまソコは大きくなった。
その如実な反応にリナは胸をときめかせた。根本まで口に収め、頬をすぼめきつく吸う。
口のなかでまた大きくなったモノにえずきそうになる、舌に感じる苦みはいつまでたっても慣れない───
けど、けれども、切なげに息をつき感じてくれるガウリイをもっと見たくて、リナは一生懸命舌を動かした。
ガウリイのを口淫しながらリナは昼間の出来事を思い出していた。
昼間、ガウリイはそれはもう、親しげにこの宿屋の娘と話していたのだ。恋人とみまごうくらいに。
何故そんなふうに話していたのかもリナにはわからないし、ガウリイに限ってそんなことはないと思うのだが、
その様子は確実に彼女を傷つけた。一日中不機嫌になってしまうほど。
そしてなにより、彼女をイライラさせたのはそれを目撃した瞬間、体を駆けめぐった嫉妬心と独占欲。
───あたし以外と楽しげに話しをしないで、あたし以外と目をあわせないで───
自ら戸惑ってしまうくらいの燃えさかる炎のような熱い思い。
ガウリイを誰の目も触れないところに閉じこめてしまいたかった。自分以外も誰触れないところに
───それができないのなら、いっそ・・・!
「───いてっ!コラ!リナ!歯たてるな!」
「あ!ごめん・・・ガウリイ・・・」
思いの強さゆえか、リナは極限まで堅くなったガウリイのものに噛みついてしなっていた。
歯型がついている。首筋よのものよりも、赤く、鮮明に。痛々しいその跡に急いでリカバリィを唱えると、
所有の証がきえていく───寂しいのはきっと、リナの、気のせいじゃ、ない。
気まずさを押し殺すかのようにリナは自分の花弁を指で開き、唾液と欲望にまみれたガウリイのものに見を沈める。
リナの秘部はガウリイにしただけだというのに熱く潤んでいた。蜜が太股に伝うほどに。
何度もガウリのものに貫かれ慣らされた蜜壺は難なく熱い塊を飲み込む。
いつの間にかこんな体にされてしまった。
───責任とってよね、ガウリイ───胸のなかで呟かれる言葉は決して口に出されることはない。
「ああっ・・・ガウリイ・・・」
じゅぷっ、じゅぷぷ───
「───っく!リナ・・・」
下からガウリイが激しく突き上げる。
「はぁぁんっ・・・ガウリイ・・・やっ・・・うごかないでっ・・・ちゃんとっあたしっ・・・うごくからぁ・・・」
───なら、お言葉に甘えて───といわんばかりにガウリイは動きを止め、リナに身を任せた。
そして彼女はガウリイにギュッとしがみつき、いじらしいくらい懸命に腰を上下させる。
結合部から蜜があふれで、そのたびに淫らな音がした。
「───ああっ」
高まる快感にリナは背を仰け反らせ、自ら揺れる膨らみをもみしだいた。
とがりつつある薄紅色の先端を強く摘み、髪をふりみだし更に腰をふる。
「あっ・・・はっ・・やぁんっ・・・」
絶頂を求める本能のなか、ふとリナは確かめたくなった。
自分の乳房を揉んでいた手を、繋がってる部分にリナはソッと添えた。
なぞると、ソコはつよく脈打っていて、二人分のぬめりがあふれ指にまとわりつく。
───ココでちゃんと繋がってる・・・。
ホッとする間もなく、我慢できなくなり腰を使いだしたガウリイによって彼女は快楽の波にさらわれていった。
「やっ・・・うごかないでっ・・・て・・・んあぁっ」
欲望にまみれた細い指で夢中で花芯を擦りあげると、リナに限界がおとずれ───
「ああああっ!ガウリイ───!」
「っリナッ───!」
搾り取るようなリナの肉壁の動きにガウリイもたまらず達した。
逞しい背に手をまわし、弛緩した体を胸板に預けていると気だるげにガウリイが話し出した。
「やっぱ、俺、みえてたほうがいいかも・・・」
無言のままのリナにかまわず言葉を続けるガウリイ。
「リナ、すげーやらしいことしてたみたいだし───」
「そうよ、悪い?」
「・・・そこは開き直るトコじゃないだろ・・・」
ガクリと項垂れるガウリイに───いいじゃない、あたしらしくて───とリナは微笑み返した。
目隠しされたままのガウリイにはわからなかったが。
「それに───っと、ちょっと痛いからロープほどくぞ」
「・・・好きにすれば」
そう、ガウリイが本気をだせばロープは簡単にほどけてしまうような結び方をリナはしていた。
それはまるで、強く束縛できない彼女のようで。
───ガウリイがNOといえば、あたしきっと追いかけられない。
身じろぎし、ロープで縛られた手首に力をこめるガウリイ。
───お願い、ロープ、ほどけないで。
ブチリ、ブチリと音をたててロープがほどけてゆく。
───ああ、やっぱりムリなのかな・・・。
ふわっ
───え?
リナの背に自由になったガウリイの手が回されていた。
お互い抱き合うような───束縛しあうような形に。
「それに、こうでもしなきゃ、リナが逃げ出しそうで怖いんだよ・・・」
「ガウリイ・・・」
───同じだったんだね、あたしたち。
「ありがと・・・」
「───え?」
わけもわからずキョトンとするガウリイの目隠しをリナはとってやる。
そして今度はちゃんと、目を合わせて微笑み返した。
───できるなら、ずっと二人で、束縛しあっていたい