美容アイテム?  
 
「あー気持ち良かったあ」一風呂浴び終わり、タンクトップにショートパンツという  
ラフなスタイルで寝室に戻ったリナ。  
 健康的な肢体が、熱でほのかに染まっている。  
「あ、リナさん、その格好色っぽいですねえ」  
 ピタッ、と少女の足が止まる。  
「わ、わわ、待った!」魔力を集中させ、呪文を唱えだす彼女に、慌てるゼロス。  
「まったく……」溜息をつくリナ。  
 一度身体を重ねてからか、ゼロスに遠慮というものがなくなった。こうして一人で  
ホテルの部屋にいる時、ちょくちょくやってきては、その度自分を抱いていく。  
 恋人同士、というには甘さが足りない。でも、こんな何を考えてるかわからないヤツに、  
多分恋愛感情なんて理解できないであろう魔族に惹かれてる自分がいる。  
 もう一度溜息をつくと、ゼロスの向かい側に座る。「で?アタシには、お茶出してくれないの?」  
「あ、はいはいはい」マイセンの繊細なカップに、丁寧に紅茶を淹れるゼロス。  
『獣神官にお茶を淹れさせてる、って知ったら、こいつの上司、怒るかしら』  
優雅な手つきでお茶をサーブする相手を眺めながら、ぼんやり考える。  
「はい、どうぞ」  
「何よ、お茶菓子もないわけ?」  
「あ、はいはい、これをどうぞ。この町の名物だそうですよ」小さなタルトレットを皿に並べる。  
「おいしい!」うれしそうにがっつくリナを、ゼロスは紅茶を飲みながら  
やはり楽しそうに見詰めている。  
「僕との夜のために精力、つけて下さってうれしいです」  
 
 ぶっ。  
 思いっきり噴出してしまった。「な、なな、な……」  
「紅茶のお代わり、いかがですか?」  
「こ、こ、このバカ魔族っ!デリカシーのかけらもないわね!っていうか、精力って、アタシゃ男か!」  
「そんな、リナさんのパワーにそんじょそこらの男は叶いませんってば」  
 プルプルプル、と怒りに震えるリナ。「……失せろ」  
「は?」  
「トットと帰れ、このへっぽこ魔族!乙女のデリケートな心をもうちょっと学んでから出直してこいっ!」  
「乙女のデリケートな心はわかりませんが、リナさんの身体なら隅から隅まで知ってますよ」  
「出てけーっ!」ボスッ、とゼロスの顔面に枕がぶつかる。  
「もう、リナさん……うわわわっ!」飛んでくるものがどんどん大きな物になってきて、  
ゼロスは慌てて後ずさる。  
「わ、わかりました、帰ります……すみませんでした、リナさん」しょんぼりして謝って見せる獣神官。  
『この姿も、まったく信用できないのよね……』  
「これを、お詫びに……」差し出した小さな、肌色のボール二つに、リナは攻撃の手を止める。  
「何よこれ?」  
 手に取ってみると、わずかな魔力が感じられる。「マジックアイテム?」  
「はい。魔界で、女性に大流行した、美容アイテムです」  
「え、何!?」目を途端にキラキラさせるリナ。  
 苦笑するゼロス。「効き目は保障しますよ。これに、少しばかり魔法を注入すると」  
「何よ、どんな効果なの!?」  
「胸を大きくしてくれます」  
 
 一瞬の間の後、リナの手に魔力が集まってくる。  
「わ、わわっ!?」  
「ペチャパイで悪かったわねっ!」  
「わ、わあ、何で怒るんですか!?ぼ、僕は、リナさんに喜んでもらおうと」  
「今度こそ吹っ飛ばす!」  
「わあああっ!」悲鳴を残し、ゼロスは一瞬で消えた。  
「まったくもう……」完全に気配が消えたのに、リナは溜息をつく。  
 そのまま、ベッドにひっくり返った。  
「バカ魔族……」今夜も期待していた自分に、彼を見ただけで熱くなってしまった身体を  
もてあますように、ゴロゴロ寝返りを打ちながら、もらったボール二つを眺める。  
「胸を大きく、かあ。魔界で大流行したってことは、確実に効果があるってことよね」  
 胸のサイズはコンプレックス。今までも怪しげなものは全部試してみたが、大して効き目がなかった。  
「ちょっと魔力を注入、っと」指先にわずかな魔力を集めて、ボールに両手で触れる。  
 と。「え、えええっ!?」あっという間に魔力が、貪欲に吸収されていく。  
「や、やあっ!」  
 慌てて離れるものの、今ので相当食われた。今の状態では、間違ってもドラグスレイブなど撃てない。  
『甘かった……少しばかり、って言ってもあくまで魔族にとっての量なのよね』冷や汗を拭う。  
しかし、これだけ魔力が消費されるなら、効果もさぞかし?という期待にない胸が膨らむ。  
 案の定、今までまったく動かなかったボールは、プルプル震え出す。  
「お、お、いい感じ?」期待に目を輝かせるリナの前で、それは更に震え。  
 ポン!  
「うひゃっ!?」ボールから飛び出た五本の指のようなものに、リナは悲鳴を上げる。  
 目がないのに、まるでリナを注視しているかのように、その手のようなものは  
彼女の方を向いて固まっている。  
「えと……な、何よこれ?どうなってるの?」  
 ピョン  
「ひゃあっ!?」いきなりそれは胸に飛びつき、ムニュッ。  
「な、何すんのよっ!」慌てて引き剥がそうとするが、それは離れないどころか、胸を揉み出した。  
「うひゃっ!?む、胸を大きくするって、こういう事!?」もみもみ、それは丹念に揉んでいく。  
妙に緩急をつけたそれに、リナは思わず震え、指の背をかみ締めた。  
「な、何、これ……何かイヤらしいよ、こいつの動き……」  
 
 確実にその手は、リナの感じるように胸をマッサージしている。  
「あれ、いつの間に……」喘ぎそうになるのを堪えていた少女は、タンクトップがまくり上げられ、  
その下でもぞもぞ、とそれは続けている。  
「ひあっ!」硬くなった乳首を指が掠めるように撫でていく。  
「ちょ、ちょっと、これ、あのバカ魔族のやり方……あああんっ」くりくり、と転がされ、切羽詰った声が上がる。  
ただでさえゼロスを想って身体が熱くなっていたのに、見る間にあそこから蜜が溢れ、パンティを塗らしていく。  
「ひ、あ、あああん、こ、こんなアイテムなんかにっ」感じたくない、そう思うのに、  
喘ぎ声が止まらない。引き剥がそうとしても、ゴムのようにぴっちり肌にくっついてる上、手に力が入らない。  
 むしろ下半身の方が、物足りなさに疼いて、たまらない。  
「ふ、あん、やだあ……こんなのなんかに、感じさせらたくないのに……」  
 言葉と裏腹に、リナの手は、パンティの中に潜り込んでいた。  
ぐっしょり濡れたそこをなで上げると、たまらないほどゾクゾクとする。  
 でも、全然足りない。  
「ふあ……ぜ、ゼロスぅ……」自分を抱く男の顔が、貫く熱いペニスが頭に浮かぶ。  
「ちょっと……どっかから、見てんでしょ、ゼロス……で、出てきなさいよっ」  
 ふわり、と空間を渡って現れる、意地悪な魔族。  
「出てけ、って言ったり、出て来い、って言ったり、忙しい人ですね、リナさんは」  
「う、うるさいっ!あ、ああんっ」  
「おや、ちょうど使用中でしたか。お邪魔しました」  
「ば、バカ、行かないでよっ!」思わず悲鳴を上げる。  
 わざとゆっくり振り返るゼロス。「何でしょう?」  
 意地悪、バカ、ヘンタイ、エロ魔族っ!  
 怒鳴りつけたいことは多々ある。けど。  
「も、もう駄目……お願い、ちょうだい……ゼロスの、ちょうだい、行かせてっ」  
 瞼が微かに開かれ、紫の目が満足そうにまたたく。「はい、喜んで」  
 いつの間にか裸になっているゼロスは、少女に覆い被さると、唇を重ねた。  
「ん、んんんっ」飢えているかのように、リナは彼の首にしがみつき、自分の方から  
積極的に舌を絡めていく。  
「ふ……あ……」唇を離すと、いつの間にか例のアイテムはナイトボードに置いてあり、  
代わりにゼロスの手が胸を愛撫している。  
「な、何であれ、アンタの手そっくりな動き、するのよ……」喘ぎながらも、尋ねる。  
「それは……ヒミツ、です」  
「ばっ、バカあっ」殴りたいのに、もう力が入らない。我慢できないように、少女は自分から脚を開いていく。  
「リナさん」  
 感情のない魔族とは思えない、熱く優しい声に、びくんと身体が跳ねる。  
 ぎゅっと、背中にしがみつく。「ゼロス……もう……」  
 彼女の腰を持ち上げ、自身を少女の胎内にゆっくり納めていく。  
「あ、ああっ」満足そうな声を上げる少女に、魔族もまた満ち足りたような吐息を漏らす。  
「リナさんの中、いつもより熱くなってますよ……このアイテムで、そんなに感じてしまったんですか?」  
「ば、バカ、黙れヘンタイ魔族!」  
「ヘンタイって、ひどいですね、リナさんは……僕で、こんなに感じてしまってるくせに」  
ぐいっと突き上げられ、「ひああっ!」と軽くイッてしまうリナ。  
「おや、そんなに待ちきれなかったですか」はあはあ喘ぐ少女の汗ばんだ頬を、優しく撫でる。  
「バカ……」優しくしないでよ、とつぶやく彼女を、しかしゼロスは強引に抱き上げ、  
繋がったまま膝の上に抱える。  
 
「ひ、ああっ!」自重で深く男のものをくわえ込む形となって、リナは悲鳴を上げる。  
「駄目ですよ、リナさん。一人だけで感じていないで、僕も、ちゃんと満足させてくれなきゃ」  
 そのまま、抱き上げられ、腰を突き上げられて、「あ、ああっ、やあっ、すごい!」  
と再び官能の波に浚われる。  
「ああ、すごく気持ちいいですよ、リナさん……」男の声が遠くで聞こえる。  
立て続けに達せられて、意識が朦朧とする。  
「あ、アタシもっ!」男が達したのを心地良く感じながら、  
何度目の絶頂かわからないのを迎えて、リナは意識を手放した。  
 
 
 
「……あ?」気が付くと、一人、ベッドの中。  
「あのエロ魔族……」いつも朝はこうしていなくなっている。怒りをぶつけたくても、どうしようもない。  
 と、テーブルにあのボールと、手紙があるのが目に入った。  
『ちゃんと毎日続けてれば、胸は本当に大きくなりますよ。  
 ゼラス様も、Gカップまで大きくなったそうです』  
「え、何、Gカップ!?」目をキラキラさせて続きを読むリナ。  
『二百年かかったそうです』  
 
 ベリベリベリッ「あのインチキ魔族がっ!!人間がそんなに生きれるかっ!」  
 ボールを取ると、投げようとしたが。  
「う、うわ!?」魔力を吸収されるのを感じて、慌てて手放す。  
「……しょうがない、ここに置いていこう」シャワーを浴びようと部屋を出ようとすると、  
コロコロ、それはついてくる。  
「え、何!?……まさか、アタシが所有者って、インプリントされちゃったわけ!?」  
 
 
 
「なあ、リナ。何でこれ、オレが持たなきゃいけないんだ?」ボールを入れた袋を振り回す  
ガウリイの質問に、リナは不機嫌そうに睨む。「いいから持っててよ!」  
 魔力ゼロのこの男なら、害はあるまい。  
 今度会った時は、ドラグスレイヴと共にあの魔族に叩き返してやる!  
 ゴオオオ、と怒りに燃える彼女に気付かず、「それより、次の町、何かうまいもんないかなあ」  
と呑気につぶやくクラゲが一匹。  
 今日も、多分平和な一日。  
 
 

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