* * *  
 
ぱり、と糊が効いたシーツに、腰を痛めそうな程ふわふわのベッド。  
橙色のランプが揺らめく部屋で、小さく歌を口ずさみながらベッドに身体を沈ませる。  
 
「何だ、随分と上機嫌だな」  
旅の汗を流してきたのか、鋼の髪を濡らしたまま軽装に身を包んだゼルガディスの声に振り返る。  
石鹸の香りが鼻腔を抜け、栗色の髪がやわらかく双肩を滑り落ちる。  
「あったりまえじゃない!久しぶりのお風呂に美味しいご飯、お酒にそれからふかふかベッドなんだから!」  
子猫の様な動作で飛び起きると、リナはそう言って部屋を見渡す。  
至って簡素な室内には、ベッドが四つ。  
「…。まぁ、一部屋しか空いてなかったのは予想外だったケド」  
それでも野宿とは比べ物にならない居心地の良さを前には、そんな事で文句を言ってはいられない。  
どのみち、野宿の場合は見張りの交代を交えつつ仲良く雑魚寝をしている様なものだ。  
そこに屋根の付いた部屋と柔らかなベッドが加わったくらいで、大した問題は無いだろう、とリナは思う。  
 
しかし。  
薄桃色のベビードールからは、普段は日に晒されることの無い白い脚が惜しげも無く投げ出され。  
動く度洗いたての髪からは、清潔な石鹸の香りが漂ってくる。  
下の酒場で一杯引っ掛けてきたのだろうか、頬は僅かに上気していた。  
 
はぁ…。  
眉間に皴を寄せ溜め息を吐いたゼルガディスに、リナは怪訝な表情を見せる。  
「何よ?」  
「お前さん、少しは警戒するとか無いのか…」  
 
余りに無防備な姿をしている彼女はしかし、その事には全く気付いていない様で。  
「なんでっ?!まさかゼル、追っ手が来る様なヤバイ事、途中でしてきたの?!」  
折角のお宿なのにゆっくり眠る事も出来ないなんて!等と見当違いも甚だしい事を喚いている。  
「人聞きの悪い事を言うな。お前さんじゃああるまいし」  
半ば呆れた様にそう言って、それからリナの足元でくしゃくしゃになっていたシーツを手に取ると、子供にマントを着させる様にそれを身体に掛けてやる。  
「ん?あたし別に寒くないよ?」  
はぁ。  
どこまでも明後日な方向を示す彼女の言葉に、ゼルガディスは思わず二度目の溜め息を漏らす。  
「そうじゃなくて、だ。はしたない格好は止せ」  
滑らかな肌から目を逸らし、そう言うとくるりと背を向ける。  
 
その言葉で漸く合点が言ったのか。  
「ふぅん…?」  
溜め息の様にそう言って、面白そうに笑った。  
 
 
空いたベッドに腰を掛けると手元に明かりを灯し、小さな魔道書に手を伸ばしたゼルガディスの背に。  
やたらと甘い声で腕を絡ませしがみ付く。  
「ありがとぉ、ゼルガディスお兄ちゃん」  
「…おい…」  
酒が残っているのか火照る小さな身体は温かく、薄い布越しにやわらかな肌が触れる。  
「こら、邪魔するなよ。お前さんも大人しくさっさと寝ろ」  
首に回された両腕を剥がし、酔い潰れているのか完全に爆睡しているガウリイとアメリアを顎で指す。  
「えぇー。そんなのつまんなぁーい」  
そう言って器用に身体を丸めると、ゼルガディスの両腕の中に納まってしまう。  
ことり、と頭をその胸に預けると、悪戯に成功した子供の様に笑って見せた。  
 
「…この酔っ払いが…」  
何度目になるかも分からない溜め息を吐くと、手にした魔道書をぱたりと閉じる。  
部屋の明かりも消してしまうと、残るはベッドサイドの明かりのみ。  
「俺はもう寝るからな。早くベッドに戻れ」  
「やだ」  
腕の中に納まるリナを覗き込む様にそう言うと、即座に否定の言葉が返ってくる。  
「じゃあここで寝ることだな。俺は隣で、」  
「やだぁ。遊んでよぉ」  
隣で寝るから、そう続く筈のゼルガディスの言葉を遮って、小さく唇を尖らせる。  
見れば、大きな瞳は僅かに睫を濡らして潤んでいて。  
橙色の明かりの所為で、曲線を強調された白い肌が艶かしく―――とまではいかないが、それは無防備に晒されている。  
 
 
「どうなっても俺は知らんぞ…」  
諦めにも似た溜め息の様な声でそう言うと薄桃色のベビードールを捲り上げ、下腹部からそっと手を這わした。  
 
 
「っん、ぁ」  
手の平に調度収まる程の乳房をやわらかく愛撫して、つん、と尖った薄紅色の突起を指先で捏ねていく。  
指の腹で円を描く様に捏ね回し、いっそう張り詰めたその蕾を指の間で弄ぶ。  
溜め息の様な嬌声を洩らし、身体がぴくん、と小さく跳ね上がる。  
しっとりと吸い付くような肌触りが気に入ったのか執拗に愛撫を続けた後で、背を向けていたリナの身体を対面させる。  
「あ…、」  
流石に目が合うと羞恥心が芽生えたのか、それとも酔いが醒めただけなのか。  
どちらにしてもそんな事には構わずに、赤みを増す突起に舌を這わせる。  
舐め上げる様に突くと、目を閉じて身体を奮わせる。  
「随分と感じやすいみたいだな?」  
「うるさ…、あっ、ン」  
啄ばむ様に口に含んで、愛らしいその突起を舌の先で転がしてゆく。  
甘くその蕾を噛むと、じん、とした痺れが腰の辺りに広がって。  
ゼルガディスの挑発にも、悪態をつく余裕も既に無い。  
小さく刺激を与える度に嬌声を上げるリナの髪をそっと撫でると、既に熱く湿った秘所へ指を這わせる。  
「触ってもいないのにこのザマだ」  
じっとりと濡れたそこに、既に下着の意味など果たしてはいない薄布が纏わり付く。  
 
大きく足を開かせると、ぐちゅ、と淫猥な音を立て下着の上から秘所を弄る。  
「やぁ…、ゼルっ、」  
中までは侵入させる事はせず入り口で指先を僅かに押しては引いて、半ば透けている薄布を何度も指で擦り上げる。  
ぬるぬるとした蜜で溢れるそこは、容易く指を滑らせた。  
喉の奥で可笑しそうに笑うと、つぅ、と銀糸を引いた指先を濡れた唇にそっと当てる。  
むっとくる女の匂いにリナは思わず顔を顰めるが、ゼルガディスは子供をあやす様に、しぃ、と言って隣に視線を流す。  
「大きな声を出すなよ、お嬢ちゃん?」  
途端、全身にびくりと緊張が走る。  
「ン、っ…ん、ぁ」  
強張った身体を解してやる様に、漸くその秘所へ直に指を滑らせる。  
 
ちゅ、ぷ。  
抵抗も無く二本の指を沈ませると、きゅう、と熱い内壁が締め付ける。  
ぐちゅぐちゅと濡れた音を立て、溶ける様に解れたそこで無造作に指を遊ばせる。  
花弁に隠れた真珠を見付け指の腹で擦り上げると、息を呑む様に悲鳴を上げてゼルガディスの肩にしがみ付く。  
 
「ゼル、ぅ。も、早く…」  
ぷっくりと赤く腫れ上がった秘所は蜜に濡れ、指を引き抜くと外気に触れたそこはひくり、と誘う様に痙攣する。  
リナの懇願に口の端を僅かに上げると、いきり立つ自身に手を伸ばす。  
ぬるり、と蜜で滑るそこへ先端を充てがうと、花弁自身が意思を持った別の生き物であるかの様にゼルガディスを更に奥へと導こうとする。  
「あぁ、ン、」  
知らずリナの腰が円を描く様に揺れ、細い腰を掴んで引き寄せると、今度はその内部が抵抗するかの様に波打ちながら締め付ける。  
「、うっ…」  
きゅうきゅうと蠢く内壁は熱く、思わずゼルガディスも呻く様な声を洩らす。  
やがて規則的なリズムで腰を突いてやれば、濡れた音に混じり小さな悲鳴が絶えず洩れ出す。  
 
「あ、っア、もう、ゼル…っ、」  
歌う様な声でそう言って、くたりと力尽きるのとほぼ同時に。  
「っは、あ…!」  
ゼルガディスもその白濁した欲望を吐き出した。  
 
 
 
はぁっ、は…。  
乱れた吐息を整えながら、まだ硬度を残す自身を引き抜いた。つう、と欲望が糸を引きぼたりとシーツに染みを作ったが、こればかりは仕方が無い。  
 
「っは…、おい、リナ?」  
果てたと同時にすっかり大人しくなった少女を見れば、子猫の様にやわらかく身体を丸めてぴたりとその身を寄せている。  
上気したままの頬をぺちりと叩くが、隣に眠る二人同様起きる気配は微塵も無い。仕方が無しにベッドを代わろうとすれば、その手はしっかりとゼルガディスの服を掴んでいて。  
 
 
 
「はぁぁ…こ、の酔っ払いが…」  
 
恐らく本日で一番盛大な溜め息を吐いて。  
明日の朝はアメリアの絶叫で目が醒めるだろう事を予想しながら眠りについた。  
 
 

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