「どああああぁぁぁぁっ!!」
「おいリナ、静かにしろ」
立ち上がり、大声で叫びだすリナに、ゼルガディスが紅茶をすすりながら見向きもせずに言った。
「うっさい!これが叫ばずにいられますかっての!!あた、あた・・・あたしのっ」
だんっとテーブルをこぶしで叩き、ぷるぷると震えながらリナが続ける。
「あたしのぉぉぉ!!最後の1個だったのに!!!」
「あたしのって・・・リナさん、別にリナさんひとりのものってわけじゃなかったじゃないですか・・・」
「そうだぞーリナ。みんなで大皿からつついてたんだから、別に誰が食べたっていいじゃないか」
そう言うアメリアとガウリイをきっと睨み、リナはガウリイの胸倉をぐいっと掴んだ。
ゼルガディスはため息をはきながら、カップをテーブルの上の皿に戻す。
「ガウリイっ!今すぐ返せ!あれはあたしのよっ!!誰がなんと言おうとあれはあたしのなのよぉーーっ!!」
ぶんぶんとガウリイを揺らしながら、リナはなおも叫び続けた。
「返せったって・・・もう食っちまったもんはどうしようもないだろ・・・」
「おいガウリイ、お前、責任とってリナを黙らせろ」
「そうですよガウリイさん!このままじゃ1日中この調子ですよ、リナさんは」
二人から責任を押し付けられ、ガウリイは頭をぽりぽりとかきながら、なおもリナに胸倉を掴まれガクガクと揺れている。
「とりあえず・・・黙らせればいいんだな?」
言うとガウリイは、リナの口を文字通りふさいだ・・・・・・自分自身のそれで。
「!!!???!?!」
「んなっ!」
「が、ガウリイさんっ!」
さすがにこれはリナも目をまんまるに開いて驚いていた。
ゼルガディスもアメリアも、あまりに予想外の行動に空いた口がふさがらない。
「ん・・・・・・ぅ・・・・・・」
舌を滑り込ませ、執拗に彼女のそれを絡めとる。
こすりつけるように舌を動かしていくと、リナの身体の力が抜けていくのがわかった。
「・・・っは!」
「これで味がわかったか?」
少し離れたすきに、大きく息を吸い込むリナに、ガウリイはまじめにそう言った。
「あ、味って・・・あんたねぇ・・・っんぅ!」
顔を真っ赤にして大きく肩を上下させていたリナを、さらにガウリイは責める。
さっきよりも、もっと深く、強くキスを繰り返していく。
「が、ガウリイさんとリナさんて・・・そういう関係だったんですか?」
「いや・・・そういうわけではなかったと思う・・・んだが・・・」
二人ともただただ、それを見守っていた。
アメリアの方は驚いた表情から一転し、興味津々でどことなくうれしそうだ。
自分の唾液を彼女に送り込み、さらに深さを増す二人のキスを、周りの客たちがからかうようにひやかし始めたが、
リナはあまりにいっぱいいっぱいで、周囲の声すら聞こえなくなっていた。
ただ水音だけが響く。
全身の力が抜け、そのままもたれこむようにガウリイに抱きとめられた。
「・・・まだ足りないのか?」
リナとは正反対に落ち着いたガウリイが、うつむいた彼女の顔を覗き込む。
荒く呼吸を乱し、口の周りはどちらのものかわからない水で光り、強く吸われた唇が赤くはれていた。
「・・・・・・と・・・」
「え?」
「・・・も・・・っとして・・・」
それを聞くとガウリイはにやっと笑みを浮かべた。
「というわけで、責任とって黙らせたから、これから別の責任を取りに行ってくるな。」
力の抜け切ったリナを軽く抱き上げると、ガウリイは嬉しそうにそう言って2階へと向かっていく。
その様子をただ呆然と見ていたゼルガディスとアメリアは、どうすることも出来ずに、とりあえず二人で紅茶をすすっていた。