目が覚めると、リナは自分が古びた部屋の床に転がっていることに気がついた。  
部屋の隅の椅子にはこれがまた絵に描いたような盗賊が座ってて、  
ゆらゆら船をこいで居眠りをしている。  
(……ここ、どこ?)  
はっきりしない頭に徐々に記憶が蘇ってくる。  
確かアメリアやフィリアと一緒に買い物していて、店員が出したお茶をみんなで飲んで……。  
そこで記憶が途切れてる。  
どうやら一服盛られたらしい。  
おのれ。  
 
ゆっくりと起き上がると、居眠りしていた盗賊がさすがに気がついてリナを見る。  
「盗賊の分際で、この天才美少女魔道士リナ・インバースをはめるとはいい度胸じゃないの!」  
腰に手を当て、不敵な笑みを浮かべてリナは髪をかきあげた。  
「完膚なまでに叩きのめして後悔させてやるから、覚悟することね!  
でもまあ、お宝全部差し出して土下座して謝るなら、見逃してやってもいいんだけど」  
「へ?」  
見張りの盗賊の顔がきょとんとした顔になる。  
無理もない。  
盗賊キラーで知られたリナの名も、外の大陸ではまったくと言っていいほど知られていない。  
リナの言葉は「小娘のたわごと」としか取られなかった。  
無反応の盗賊に、少し傷つく天才魔術師。  
「逃げないってんなら、まあいいわ」  
気を取り直して手を構え、短い詠唱を唱える。  
「ファイアー・ボーーーール!!」  
 
しーん。  
「……え?」  
手の平から勢いよく飛び出してくるはずの火の球がなぜか出てこない。  
「な、なななんで?」  
予想外の出来事に固まるリナ。  
「フリーズ・アロー! ディム・ウィン! ええい、ラインティング!」  
かけらも発動しない。  
さすがにリナの顔が青ざめてくる。  
まっさきに乙女の事情を考えたが、日が外れすぎてる。それにしたって、ニンジンくらい出てもいいはずだ。  
「はあ? 何のまじないだ、そりゃ……っ!」  
呆れ顔の盗賊の顔面に、リナの靴底がヒットした。  
「あ、が……」  
顔面に靴跡をつけたまま、後ろ向きに倒れる盗賊A。  
しゅたっと着地し、そのまま身を翻しリナはドアを開けて部屋の外に駆け出た。  
「あ、逃げやがった!!」  
通路の向こうから走ってくる盗賊の団体に舌打ちして、逆方向に通路に走る。  
「アメリア! フィリア! いたら返事して!」  
走りながらリナは叫ぶが、返事は無い。  
魔法は使えないし、アメリアやフィリアの居場所もわからない。雑魚盗賊もどんどん集まってくる。  
さすがのリナにも焦りの色が見え始めた。  
その時、甲高い悲鳴が響いた。  
「アメリア!」  
リナの注意が逸れた瞬間、傍らのドアが勢いよく開き、出てきた男がリナの腹を思い切り蹴った。  
「ぐっ!」  
不意をつかれ、リナはその場に倒れうずくまる。  
即座に、数人の男たちがリナを押さえにかかり、リナは身動きできなくなった。  
「手間取らせやがって!」  
「離しなさいよ! 離せって言ってんでしょ!」  
男たちの手の中でもがき暴れまくるリナ。  
「うるせえ! じたばた暴れるんじゃねえ! くっそう、こいつに手出したらいけねえのかよ!  
2、3発やりゃあ、大人しくなるってのに!」  
「……いいんじゃね? あのパツ金美人が全員の相手するって話だけど、全然順番廻ってこねえし」  
ちらと1人の男が意味深に、さっき悲鳴のあがったドアを見る。  
「あっちもお楽しみみてえだしよ」  
 
盗賊どもの下でリナが目を見開いた。  
「パツ金美人ってフィリアのこと? ちょっと、順番って何の順番よっ!  
アメリアに何してるのよ!」  
「うるさい、ギャーギャーわめくなっ! めんどくせえ、やっちまえっ!」  
うつぶせで押さえつけられたリナのスパッツが下着ごと下ろされ、素肌の尻が露になると、  
さすがにリナの顔色が変わった。  
「なにすんのよ、馬鹿! 変態!」  
「おお、ガキだと思ったらいっちょまえの女じゃねえか! よしよし、いい気持ちにさせてやるからな」  
「だ、だれが……うっ!」  
厳つい男の指がリナの秘所をまさぐるように嬲りだした。  
「ぐっ……、うう……」  
まだ誰も触れたことの無いリナの部分に、男の指が無遠慮に出し入れされ中で暴れまくる。  
快感とは程遠いその行為は嫌悪感しかなく、全身に鳥肌が立つ。  
悪寒が背筋を伝って吐きそうになる。  
「なんだ、全然濡れてこねえぞ」  
「お前が下手なんじぇえか?」  
げらげら笑う盗賊たちに、リナはただ嫌悪と屈辱で歯を食いしばって耐えるしかなかった。  
(こんな……こんなやつらに! 魔法さえ使えたら!)  
少しして男はリナの中から指を引き抜き、ぺろっと舐めた。  
「濡れはイマイチだがまあこんなもんか、お仕置きだしな。  
ほうらお嬢ちゃん、今からこれをお嬢ちゃんに突っ込んでやるからな」  
怒張した男のものがリナの目の前に出され、さすがのリナも顔が引きつる。  
(な、何なの?)  
こんなグロテスクなものが、どこに入ると……?  
とたんに恐怖が背筋を走る。  
「い、いや……、いやぁーっ!」  
渾身の力で暴れまくり、男たちから逃れようとするが、びくともしない。  
「いやぁーっ! ガウリイー! ゼルー! アメリアー! 誰か助けてーっ!!」  
「こら暴れるな、可愛がってやるっつってんだろーがっ!」  
男の先端がリナの秘所にあてがわれると、リナの体が恐怖で硬直した。  
ギリギリとねじ込まれるように何かが入ってくる。  
 
「……ッ!!」  
声にならない悲鳴がリナの喉からあがる。  
「おおきっついな、こいつは処女だな。もうけたぜ」  
げらげらと野卑な声で男達が笑う。  
(い……いたい……うう……)  
引き裂かれるような痛みに、リナは声を出さずに首を振って耐えた。  
こんなやつらに弱みは見せたくない。  
「ほれ、口開けな」  
ぐいと髪をつかんで顔を上げさせられた。  
目の前には怒張した男の一物。  
初めて見る代物に一瞬目を剥くが、瞬時に目を背け口を固く結ぶ。  
「おいっ! いいかげんにしやがれ!」  
顎と鼻を摘まれ無理やり開かされたリナの口に、男の物がねじ込まれる。  
「!」  
口の中になにがあるのか、舌に何が当たっているのか。  
と同時に、リナが思い切り噛み付く。  
「ぐっ!!」  
股間を押さえてうずくまる男に、他の盗賊たちがげらげら笑う。  
「なにしやがるこのアマッ!」  
拳で思い切り頬を殴られ、リナの口の中が切れる。  
実際、リナが抵抗すればするほど男達の嗜虐心を煽ることになるのだ。  
そういう意味では、初めから受け入れたフィリアの方がまだましだった。  
情け容赦なく男の腰が叩きつけられて、リナの体に激痛が走る。  
「う……ううっ……ぐっ!」  
(ガウリイ……助けて、ガウリイ……)  
痛みで麻痺した頭に、アメリアのすすり泣く声が聞こえた気がした。  
(アメリアも……同じこと、されてる?)  
恐らくはフィリアも。  
(大丈夫よ、アメリア。ゼルはそんなこと気にしない。きっと)  
リナの頭に穏やかに笑う金髪の保護者の顔が浮かぶ。  
ガウリイは……気にするだろうか。  
 
冷たい水を感じて目が覚めた。  
眉をしかめて目を開くと、男がバケツを持って立っていた。  
全身ずぶ濡れで、どうやら気を失って水をかけられたらしい。  
体のあちこちが痛む。外側も、内側も。  
「休むんじゃねえ。まだまだ後に控えてるんだからな」  
ぐいと乱暴に腕を引っ張られ再び組み敷かれる。  
リナはわずかに顔をしかめたが、攻められ続けた体は力が入らない。  
もう押さえつけられなくとも抵抗しなくなったリナに、男が再び覆いかぶさる。  
「覚えてなさいよ……」  
体中を撫で付ける手に嫌悪を隠そうともせず、リナが低い声で呟く。  
「あんたら全員、ガウリイとゼルが殺すから……」  
「おう、殺されてみてえもんだな」  
リナの上の男がひゃっひゃと笑った。  
「ゼルってのは、あのちんまい黒髪の子の男か? ゼルガディスさんってずっと呼んでるぜ。  
可哀そうになあ」  
「!」  
リナの目が大きく見開く。  
「お前もあっちも処女だったし、どうせそいつら女に手も出せねえ腰抜けだろうが」  
とたんにリナが腕が跳ね上がって、男の顔を引っ掻く。  
「こ……の、アマッ!」  
「ガウリイを侮辱しないで! ゼルだって……何も知らないくせにっ!」  
しかし抵抗はそこまでだった。  
再び殴られて、人形のように動けなくなったリナを男が貫く。  
(ガウリイ……)  
陵辱が再び始まり、揺さぶられる頭に浮かぶのはガウリイの姿ばかりだった。  
 
日が差し込まない部屋の中で、わからないほどの時間がたったその時、  
ふいに遠くで騒ぎが起こったらしく、ドアの向こうでバタバタと走る音が聞こえた。  
「なんだ、なんのさわ……ぎ……っ!」  
ドアを開けて外を見た盗賊は、そのまま倒れた。  
盗賊の死体を踏み越えるように、剣を構えた青い服と金髪の剣士が現れた。  
「リナいるかっ! リ……」  
部屋の中の惨状を見て、ガウリイは絶句した。  
脱がすのがもどかしくて破いたらしいスパッツが、ふくらはぎの辺りに申し訳程度に残っている以外は  
素っ裸のリナを盗賊たちが取り囲んでいた。  
ガウリイの驚きが徐々に収まり、変わって怒りが体を満たす。  
「き……さまら……リナに何をしたっ!」  
床を蹴ってガウリイが突進してくる。  
慌てて盗賊たちも剣を構え応戦しようとするが、相手が悪い。  
「たああぁぁーーッ!」  
光の剣がうなり、盗賊たちが斬り倒されるまで数秒もかからなかった。  
盗賊の死体の中で、ガウリイが肩で息をしてリナを振り返る。  
「ガウリイ……」  
ひどい有様だった。  
体中擦り傷だらけで、内股には乾いた血がこびりついている。顔も体も精液まみれで、異様な匂いがした。  
傭兵時代によく見た光景である。  
何をされたのか一目でわかる。  
ガウリイの視線を受けて、リナはゆるゆると足を閉じようとしたが、力が入らずうまくいかない。  
 
「いたか、ガウリ……ッ!」  
続いて部屋に入ってきたゼルガディスも思わず息を呑む。  
「ゼル……アメリアが……」  
ゼルガディスを見ると、一言一言搾り出すように言葉を繋いだ。  
「アメリアが……、この近くにいるはずだから……探して……」  
「あ、ああ……」  
一瞬躊躇したゼルだが、ちらとガウリイを見て任せて大丈夫だと判断し、部屋の外に駆け出た。  
「ガウ……リイ」  
顔だけ向けてリナが掠れた声を出す。  
「リナ……」  
ガウリイの手から光の剣が離れ、光を失った柄がカランと乾いた音を立てて床を転がる。  
「リナ……リナッ!」  
思わず駆け寄り、リナの体を力強く抱きしめる。  
「……汚れるよ、ガウリイ」  
リナが呟くが、ガウリイはリナを抱きしめたまま嗚咽を漏らした。  
「リナ、すまない……。オレが、オレがついてればこんな目に……」  
「ガウリイのせいじゃないよ……あたしが……油断してて」  
あ、ガウリイ泣いてる……。  
こんなこと思っちゃ  
いけないけど、  
ちょっと、  
うれ…  
し…  
い  
…  
。  
 
ガウリイは部屋の片隅にうち捨てられた黒いマントに、気を失ったリナの体を包んだ。  
そっと抱き上げてドアを開けると、ゼルガディスが立っていた。  
腕の中には同じように白いマントに包まれたアメリアの、小さな体が納まっている。  
「アメリア!」  
アメリアもリナと同じように顔が薄汚れて、血が滲んでいた。  
ぼんやりと目を薄く開いて、泣き喚かないのがかえって痛々しい。  
「魔法が使えなかったんです……」  
弱々しくアメリアは呟いた。  
「この辺りは古い結界にすっぽり入っている。恐らくは竜族の……」  
怒気を隠そうともせず、ゼルガディスが苦々しく答える。  
「結界……?」  
「ここから少し離れた場所に遺跡らしいものの痕跡があった。  
破壊されて何百年たっても、ご丁寧に魔法を封じる効果だけは残っているらしい」  
そうでなければ、こんな連中にリナやアメリア達がやられるはずはない。  
アメリアが薄く笑った。  
「助けに来てくれてありがとう、ゼルガディスさん……」  
消えていく語尾と共に、目が閉じられて静かな呼吸音が聞こえた。  
安心して気を失ったらしい。  
しばしの沈黙の後、ゼルが通路の壁を拳を叩きつけるように殴った。  
怒りのぶつけどころが、そこにしか無いように。  
その時、通路の向こうで盗賊たちの悲鳴が聞こえた。  
さらに物の壊れる音と断末魔の叫び。  
「……ゼロスか?」  
「行こう。フィリアはあっちだ」  
少女2人を抱えたまま、ガウリイとゼルガディスは音のした方へと足を進めた。  
 

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