「俺はお前とセイルーンには行けない、アメリア」
ゼルガディスが告げた言葉を、アメリアは黙って聞いていた。
明日は船が出てこの大陸を離れる最後の夜、宿の一室で2人で向かい合い椅子に腰掛けている。
深夜ともいえる時間だが、リナとガウリイはどこかに出かけたまま帰って来ない。
この大陸での最後の食べ納めか、それとも2人に気を利かせたのか。
静寂の中、ランプの芯の焦げる音が耳に付く。
「そうですか……わかりました」
微笑んではいたがそれでも表情の影は隠せるはずもないアメリアが答えた。
「俺はこの大陸に残って体を元に戻す方法を探す。元々そのつもりだったからな」
「そうですね、ダークスターとの戦いでうやむやになってましたから」
わかりきってたことでしたけどね……。
アメリアの胸がちくりと痛む。
「あ、じゃあこれを持ってて下さい。聖王家の護符ですから、
ゼルガディスさんの助けになると思います」
青とピンクのアミュレットを手首から外し、ゼルガディスに差し出す。
ゼルガディスは一瞬躊躇したが、涙をこらえて無理に笑っているアメリアを見て、
断ることもできず受け取った。
手にある小さな青い玉を見つめ、目を伏せる。
「俺からやれるものは何もないが」
「あっ、いえ、そんなのはいいんです!」
慌ててアメリアが両手を振る。
笑うアメリア見ていると、体の奥深くが騒ぎ出す。
とにかくいつまでもこうして、2人きりで向かい合ってる訳にはいかない。
理性や自制心にも限度がある。
部屋に戻るよう言おうとした瞬間、アメリアの表情が急に神妙になった。
「あ、やっぱり、一つだけ……お願いがあります」
短い沈黙の後、真っ赤になったアメリアの口から出た言葉に、ゼルガディスは目を剥いて固まった。
「本気か?」
「本気です。冗談でこんなこと言いません」
頬を紅潮させ挑むような視線を受け止められず、ゼルガディスは俯いて目を手で覆う。
「……そんなこと軽々しく言うもんじゃない」
「何故ですか? 好きな人に、だ……抱かれたいって思うの、当たり前じゃないですか!」
口調は強いが声は震えて、半分涙声になっている。
アメリアにしてみればフィブリゾやダークスターに立ち向かうより、
リナを貧乳呼ばわりするより思い切った言葉だったのに。
明日になれば船に乗り、セイルーンに戻る。
簡単に行き来できる距離ではない。これが今生の別れになるかもしれない。
いわば最後のチャンスなのだ。
ゼルガディスが深くため息をついた。
「だいたい、俺はまともな体じゃないんだ。特にお前は初めてだろう」
「……処女は抱けないって言うんでしたら」
思いつめた暗い光を漂わせアメリアが呟く。
「これからガウリイさんを探しに行って、抱いてもらってからここに来ます!」
「なに? お、おい、ちょっと待てアメリア!」
売り言葉に買い言葉。今にも部屋の外に出ようとするアメリアを止めようと、
ゼルガディスがアメリアの腕を強く引いた。
その手を振り解こうとして足がもつれ、
倒れそうになったアメリアがとっさに掴んだのはゼルガディスの胸元。
「「わわっ!」」
アメリアに引かれてゼルガディスもバランスを崩し、声が綺麗にハモったまま2人はもんどり打って倒れた。
とっさに腕をついたのでアメリアを押しつぶしはしなかったものの、
床の上で折り重なる格好になっている。
すぐ目の前にゼルガディスの顔があることに、アメリアが息を呑んだのがわかった。
「ゼルガディスさん……」
小刻みに震えながらゼルガディスの背に手を回し、唇を重ねてきた。
押し付けるだけの稚拙な口付け。
アメリアの唇の柔らかさに、ゼルガディスの分身が馬鹿正直に反応する。
ふと、アメリアの右手がゼルガディスの背中から離れ、胸元に来ていた。
布の擦れる音がする。
左手はゼルガディスのうなじを押さえたまま、細い指がマントの紐を解いていた。
震える指。
赤い留め具が床に落ちた音が聞こえて、ゼルガディスの中で今まで守ってきた何かが崩れていった。
「この……馬鹿野郎が!」
吐き捨てるように言うと、我を忘れて抱きしめた。
驚いて半開きになったアメリアの唇に、むさぼるように口付ける。
「・・・…ん、んんっ」
入り込んできた舌を戸惑いながらも、自分のを絡めて迎え入れた。
混ざり合う唾液。互いの甘さにとろけそうになる。
口付けを続けながら、ゼルガディスはアメリアを抱き上げベッドに降ろす。
唇が離れてやっと開放されると、アメリアは空気を求めて激しく息をついた。
「アメリア」
片膝をついて近づくと、アメリアの潤んだ目で見返してくる。
抱き寄せて白い肩に唇を落とすと、アメリアの体がびくっと震えた。
そのまま舌と唇を首筋まで這わす。
「あ……ん……」
アメリアの息が荒くなり、手がすがるようにゼルガディスの肩を掴む。
アメリアの肩と首筋に赤い跡をつけながら、器用にアメリアのマントの留め金を外して、放り投げる。
ベルトを外し、邪魔な上衣を取り除くと白い豊かな胸が現れた。
岩肌の手を添えるように触れると、アメリアがぴくっと身じろぎする。
柔らかいそれを螺旋を描くように指先で這い登っていき、起き上がってきた中心を摘みあげる。
「ひぁっ!」
初めてアメリアが大きな声を上げた。
赤く色づいた先端を舌でつつき、口に含み、軽く歯を立てるとアメリアが堪え切れないように首を振る。
扇のように黒髪がシーツの上に広がった。
「あ……やぁ……ゼルガディス……さん」
熱い息と途切れ途切れで呼ばれる名前。
左手で掌からあふれる大きな胸を揉みほぐしながら、
右手の掌で腰の線を辿り、手探りでアメリアの下衣を下着ごと脱がせ、ベッドの下に蹴落とした。
「…………」
部屋の冷気に反射的に身を竦めるアメリア。
堅く閉ざした目を薄く開けると、自分の上でゼルガディスが服を脱いでいるのが見えた。
青い肌に浮いた岩が月の光を反射し、綺麗だなと思っていると、その肌が覆いかぶさってきた。
闇の中、ゼルガディスの瞳と金属の銀が浮かび上がるように光っている。
「……大好き、ゼルガディスさん……」
ゆっくりと伸びてくる手を岩肌の手で捕らえる。
「アメリア」
そっと頬に触れてみると、紅潮した熱が伝わってくる。
その暖かさにゼルガディスは目を細めた。
頬の手を肩に滑らせて腰の線を辿り、腹に回って柔らかい茂みに触れてみる。
「……っ」
アメリアが小さく息を呑む。
茂みの中心の最も敏感な部分に指を触れようとすると、
反射的にアメリアが身をよじって逃げようとする。
逃がしてたまるかとばかり、横を向いたアメリアの背中から抱きしめ、拘束する。
右手の掌で堅く閉じられた脚の合わせめと腿を撫でていき、白い肩を抱いていた手で柔らかな胸を覆う。
ゼルガディスの手が動くと、手の中の乳房が生き物のようにうごめき、
赤い頂きを人差し指と親指でつまむように擦る。
「あ……あぁ……」
アメリアがぴんと背を反らせる。
「あ、ん……」
背中の岩肌と体中を這い回る優しい手、首筋に落とされる唇の感触に、
アメリアの体から力が抜けていく。
緩んだ脚の隙間に手を滑らせて、しっとり濡れた中心に静かに触れる。
入り口を辿るように指で円を描き、指を沈めようとする。
アメリアの肩が大きくびくっと揺れた。
「すまん、痛かったか?」
「…………〜〜〜〜」
アメリアが何か言ったが、こごもった小声はゼルガディスの耳にも捕らえることができない。
「どうした?」
背を向けているので表情は見えない相手に、声をかける。
「…………ないで」
「え?」
「……やめ、ないで。続けて」
薄暗い髪からはみ出ている真っ赤になった耳が、闇の中にもくっきりと見える。
「…………」
アメリアの背中から離れ、肩を捕らえて仰向けに押さえつけた。
両腕の間にあるのは、真っ赤な顔に大きく見開かれた蒼い目、濡れて半開きになった唇。
アメリアは自分を見下ろしているゼルガディスが、笑っているのを見た。
今まで見たことのない、満面の微笑み。
「あ……」
唇が重なり、2人はもう何度目になるのかわからない口付けを交わした。
「……アメリア」
体中を手と舌で攻められて荒い息の中、アメリアは薄く目を開けた。
自分の中で動いていた指が引き抜かれる。
「行くぞ」
潤んだ目で頷く。そっと唇を重ねて、すっかり濡れた入り口にそっと先端をあてがう。
覚悟を決めたようにアメリアが目をぎゅっと閉じた。
ぐいと腰を押し進める。
「……ああっ! うっ、い、いた……!」
裂かれるような痛みに、アメリアが悲鳴をあげた。
十分ほぐしたつもりだがやっぱり痛いらしく、裂かれるような痛みにアメリアが悲鳴をあげる。
「アメリア、力抜け」
逃げようとする腰を抑えこんで、さらに奥へと進もうとすると、
岩の腕に取りすがっていたアメリアの手に力が入り、爪が立つ。
「……くっ、ん、んんッ!」
アメリアは初めて体験する衝撃と痛みに、歯を食いしばって耐えている。
その様子に胸が痛むが、今さら辞めることなどできない。
「アメリア」
名前を呼ぶと、アメリアがうっすらと目を開けた。
「痛いか?」
「だい……じょう……ぶ、です」
「深呼吸して力抜け。……ゆっくり行くから」
言われた通り息を大きく吸って吐くアメリア。
唇が重なり、奥まで入ったそれをゆっくりと引き抜いて、再び腰を進めていく。
できるだけゆっくりと。
「う……ああ……」
アメリアが呻き声をあげる。
が、さっきまでとは違って苦痛だけから出たものではなく、わずかに艶を帯びた声。
「は……ん、あぁ、ゼル……ガディス……ぁん」
息の合間、切れ切れに自分を呼ぶ声がゼルガディスを煽っていく。
限界が近づいてくる。
「……悪いアメリア、少しだけ我慢してくれ」
「え? あ……あああっ!」
繋がったまま抱きあげられて、向かい合って座る形を取らされた。
そのまま激しく下から突き上げられる。
さっきまでとは打って変わった激しい動きに、たまらずアメリアは声を上げた。
「ああ、っう……あああーーーーッ!」
体中が揺さぶられて、突き上げられる。
黒髪が生き物のように揺れて、玉の汗が散る。
「あ……ああーーーッ!」
たまらずアメリアはゼルガディスにすがる様にしがみついた。
岩肌に形のいい乳房が押しつぶされる。
「……くっ!」
低いうなり声をあげて、ゼルガディスは自身の精を放った。
その瞬間、頭の中で白い光が弾けた。
苦しい息の中、アメリアは目の前のゼルガディスが光に包まれるのを確かに見た。
「これは……どういうことだ?」
事の後、人肌に戻った自分の手を見て、次に体を見下ろし呆然と固まっていたゼルガディスの口から、
やっとそんな言葉が漏れた。
「金属の髪もいいけど黒髪も似合いますね、ゼルガディスさん」
「……この状況で言うことはそれだけか、アメリア!」
「どうして戻ったんでしょうか?」
「俺が知るかーーっ!」
やれやれ、せっかく元の体に戻れたんですから素直に喜べばいいのに、面倒な男ですね。
え? あれからずっとあなたの傍にいましたよ。
私を誰だと思ってるんですか。気配を消すくらいお手のものです。
嫌ですね、いくら私でもそんなことできませんよ。
あなたが元に戻れたのはあれじゃないですか?
呪いや魔法を解く究極の王道「お姫様の愛」というやつですよ。
……だから私も知らなかったんですってば。知っていたら夢にでも出て教えてますよ。
何を怒ってるんですか。ストーカー? 変質者? 失礼な。
キメラにしたことならともかく、守護霊していたことまで怒られる筋合いはありませんよ。
私がいなかったら、あなたザナッファーか魔竜王ガーヴあたりに殺されてましたよ。
ほら、あなたがあんまり怒るからお嬢さんが怯えてるじゃないですか。
あ、笑ってるんですか。
まあせっかく戻れたんですし、
こんなこと言えた義理じゃないですけど
幸せになりなさいね
ゼルガディス。