「あ、ああ……」
空気を震わせる声で目覚めた。
まだ深夜といってもいい時間で周りはまだ暗く、薄墨を流したような闇が山小屋の中を満たしている。
籠とタオルで作られた簡易ベッドから、ポコタはゆっくりと身を起こした。
暗がりでも見える目で部屋を見渡すと、闇の中にぼんやりと白い体が浮かび上がる。
(……アメリア?)
「あ、ああっ、あう……」
なんだろうと目を凝らすと、ベッドの上で裸のアメリアが半身を起こし息を乱している。
弾むように体が上下して髪が広がり、むき出しの形のいい乳房が揺れる。
「あん、……さん、ゼルガディスさん。もう……」
切れ切れに喘ぐアメリアの下から、ゆっくりと蒼黒い体が起き上がる。
男の鋼の髪と肌に浮き出た石片が、かすかな月の光に反射して光っている。
闇に溶け込むような蒼い腕がアメリアを抱えこみ、抱き寄せて口付ける。
白い腕が男の首に回り、男もそれに応える。
水音が聞こえてくるんじゃないかと思うくらい激しく、蒼と白が絡み合う。
「アメリア……」
「あ…ん」
体の位置を変えて背中から抱きかかえられる体勢で、アメリアがゼルガディスの膝の上に座り、
背後から回された蒼黒い手が別の生き物のように、白い肌の上を這い回る。
「あ、あ、あああっ!」
突き上げられて揺さぶられ、その度にアメリアの背が反りかえる。
アメリアがあげる嬌声が細波のようにポコタの耳を打った。
小柄な少女と異形の男という、
どこか現実離れした退廃的にも見える組み合わせを、ポコタは覚めた目でじっと見つめていた。
胸の奥から苦いものがこみ上げてくる。
「……そういう関係かよ」
口の中で毒づき、ポコタは寝床に潜り込んだ。
2人が夜中に何をしていようが、アメリアが誰と寝てようが、自分には何の関係もない。
アメリアとは出会ったばかりだし、たまたま一緒に行動しているただの通りすがりみたいなものだ。
温かくて柔らかい胸も、気持ちのいい解毒魔法も、優しく語りかけてくる声も……。
見えない針に刺されたように、胸がちくりと痛む。
「なんだってんだよ、畜生!」
その痛みの正体がなんなのかわからないまま、ポコタは眠りに落ちていった。