「まったく、貴女ときたら呆れるくらい頑固な人ですねぇ。ああー失礼しました。人じゃなくて竜でしたねぇー」  
……ゼロス?  
切りそろえた黒髪の頭を振り、ゼロスが大げさな仕草で肩を竦めている。  
「なあんですってえぇー! ゴキブリ! 害虫! 生ゴミ魔族のくせにいぃぃぃー!」  
私とゼロスが大きな岩の上で言い争っていて、  
足元にはリナさんたちがいて、うんざりした顔で私達を眺めているのが見える。  
――ああそうか、これは夢だ。  
神託を受けてリナさん達と火竜王の神殿に向かっていた、何も知らなくて愚かだった頃の夢だ。  
「だ、誰が生ゴミですか!! 誰が!」  
「生ゴミだから生ゴミって言ったんです!! 生ゴミ魔族ー!!」  
「言いましたね! 生ゴミって言った方が生ゴミなんです!!」  
言い争いはますます低レベルになり、高位魔族と黄金竜の巫女の会話とはとても思えない。  
滅びを求める魔族で、何千もの竜を殺した竜族の天敵で、ケンカばかりして。  
 
……ケンカばかりして。  
 
本が落ちる音で目が覚めた。  
久しぶりの休日に居間で本を読んでいて、うたたねをしてしたらしい。  
はっきりしない頭でフィリアはソファーから身を起こし、足元の本を拾おうと身を屈めたら、部屋の隅が目に入り……。  
「…………っ!」  
声が出ないくらい驚いた。  
 
「……ゼ、ゼゼゼッ!!」  
「やあ、フィリアさん」  
ぶん。  
「おっと」  
ひょいと首を傾げて、ゼロスはフィリアが投げた本を避ける。  
「ひどいですねえ、いきなり投げつけますか?」  
「い、いつから! いや、どこから入って来たんですか!」  
「空間なんか渡ってないですよ。ちゃんと玄関から入って来ましたから」  
ソファーから立ち上がり肩を怒らせているフィリアを見て、ゼロスは小さく肩をすくめた。  
「寝るんだったらきちんと戸締りした方がいいですよ。  
といっても、相手がばかでかい竜だと襲った相手が気の毒ですけどね」  
「あなただって正体は黒い錐でしょうがー!」  
怒鳴り散らして少し疲れたのか、フィリアはぽふっとソファーにへたり込んだ  
「……それで、何しに来たんですか」  
 
人間の町に骨董品店を構えてから、何故かゼロスはちょくちょくやってくる。  
理由はヴァルガーヴの卵の様子を見に来ることだったり、上司になにやら贈りたいとか色々。  
ゼロスの正体を知っているジラスやグラボスも、初めは怪訝な顔をしていたが慣れたのか何も言わなくなった。  
「今、暇なんです」  
「そうでしょうね」  
暇でなければ、わざわざこんな所に来るはずない。  
「正確に言うと、もうすぐ忙しくなるんですけどね」  
「だからなんなんですか!」  
はっきりしない物言いに、神経が苛立つ。  
「で、僕の暇つぶしにつきあってくれませんか?」  
「……は?」  
予想もしない言葉に、ぴきとフィリアは固まった。  
「私に何をつきあえと言うんですか!」  
「そうですねえ」  
 
にやりと、ゼロスが瞳を見せて笑う。  
ぞくりとして、フィリアはソファーの上で反射的に身を引いた。  
が、ゼロスは追うように身を乗りだし、フィリアの二の腕を掴んで背もたれに押し付ける。  
「まあ、人間の真似事なんかどうですか?」  
驚きにフィリアの目が大きく見開き、見る見る顔が青くなる。  
「や、やめて!」  
「おや、僕が何をするのかわかったんですか?」  
腕を掴む手に力がこもり、フィリアは痛みで顔をしかめた。  
「呪文を唱えても竜に戻ってもいいですよ。ヴァルガーヴを巻き込みますけどね」  
フィリアは唱えかけた詠唱をやめた。  
押しのけようと全力でゼロスの肩を押すが、びくともしない。どうすることもできず、フィリアの顔に絶望の色が浮かぶ。  
「そんなに怖がらないでくださいよ。僕うまいですよ。ゼラス様に仕込まれてますからね」  
くっくと笑いながらゼロスは片膝を付いて身を乗り出してきて、そのままフィリアの顎を捕らえ……。  
 
あっさり唇を奪われた。  
「!」  
驚いて逃れようと首を振ろうとするが、顎の手がそれを許さない。  
滑りこんできた舌がフィリアの舌を絡めとリ口内を蹂躙する。  
やっと開放されて荒い息をつくフィリアに、ゼロスはうっすらと笑った。  
「竜でも味は人間と同じですね」  
「な、何考えてるんですかー!」  
「何でしょう?」」  
かっとフィリアの頬に朱が浮かぶ。抗議の声を上げる前に襟元に手が滑り込み、むき出しの肩に顔を埋められる。  
 
「う……」  
首筋を湿ったものが這い、それが舌と解るとフィリアは硬直した。  
「や……め……」  
かろうじて喉の奥から掠れた声が出て、フィリアの体が小刻みに震える。  
と同時に、体の奥深くから何かが湧き上がってくる。  
ざわざわと。  
一体これはなんだろう。  
私は待っていたの?  
これを?  
 
 
 
 
 
「抵抗しないんですか?」  
力が抜けたフィリアの肩の線に唇を這わしながら、顔を上げずにゼロスは尋ねた。  
「……抵抗したらやめるんですか?」  
「もちろんやめませんよ」  
「貴方が欲しいのは私の体じゃなくて、私の負の感情でしょう?」  
動きが止まった。黒い頭が起き上がり、視線が合う。吸い込まれそうな紫の瞳がすっと細まる。  
「貴女にとってその方がいいなら、そういうことにしておきましょうか」  
再び唇が重なり、黒い体が再びフィリアの上にのしかかってきた。  
 
「ん……ふ」  
長くて深い口付けから開放されて、フィリアは息をついた。  
ついでとばかりに耳たぶを舐められて、顔が燃えるように熱くなる。  
服の合わせ目に手がかかり、1枚づつ剥ぎ取られてベッドの下に落とされていくのに、フィリアは体を強張らせた。  
現れた白くて丸い乳房に、意外と暖かい手が添えられる。  
感触を楽しむように下からすくいあげるように揉むと、柔らかさと重みでゼロスの指が沈んでいく。  
 
「でかい胸ですねぇ、リナさんが見たらひがみますよ」  
「な、なにを……うっ」  
頂点に軽く歯を立てられ、次にきつく吸われてフィリアは顔をしかめた。  
乳首をこねるように擦られて、背筋をぞくぞくと快感が駆け上る。  
「……っ!」  
体の芯が痺れたように熱くなる。  
初めての感覚にフィリアは出そうになった声を飲み込んだ。  
かみ締めた唇にゼロスの指がかかる。  
「なんで我慢するんです? 声出したらどうですか、フィリアさん」  
面白がるような声とともに唇がこじ開けられ、指が入り込んでくる。  
 
「んーーーっ!」  
頭を振って逃れようとするがかなわず、口内をかき回されフィリアの声が苦しげに漏れる。  
フィリアの目尻に涙が浮かび、ゼロスはようやくフィリアを開放した。  
「そうそう、強情張らずに素直にしてたら、優しくてあげますよ」  
「……っは」  
ずっと息を詰めていたことに気がつき、空気を求めて大きく息をつく。  
「もうやめて……ゼロス、お願い」  
涙で濡れた目のフィリアの頼みに、ゼロスは首を傾げた。  
「どうしてですか? 貴女のここは」  
「あうっ!」  
いきなり下着の上から秘所を擦られ、背をぴんと反らしフィリアは初めて高い声を上げた。  
先ほどからの愛撫ですっかり濡れた下着に、ゼロスはクスリと笑う。  
「なんだか凄いことになってるみたいですけど、どうしてですかね」  
「あ……ああ……」  
 
布越しに絶え間なく触られ、何かがフィリアの中からどんどん湧き出てくる。  
いつの間にか下着の中にゼロスの手が滑り込み、秘所に指が入り込んでくる。  
「だ、だめ! あ、あああ……!」  
フィリアの中でゼロスの指が動くたびに湿った水音が耳をつき、  
ゼロスに聞かれているのかと思うと、顔が熱くなる。  
もう片方の手は容赦なく体中を這い回り、舐られる舌の快感がフィリアを絶頂へと導いていく。  
「ん……はっ、はあぁぁ!!」  
一瞬、体が小刻みに震え、がくんとフィリアは崩れ落ちる。  
「イきましたか? フィリアさん」  
「……う」  
答えられるはずもなく、ただフィリアは肩を大きく上下して呼吸している。  
初めての衝撃に何が何だかわからず、はっきりしない頭でぼうっとしたフィリアが見上げると、  
自分にまたがったゼロスがマントを解いているのが見えた。  
 
 
「あ、あああ……あーーっ!」  
ソファーの上で腰を浮かせて反り返りながら、絶え間なくフィリアは嬌声を上げ続ける。  
白い肌には赤い痕が花びらのように散らばり、ゼロスの頭が動く度に柔らかい黒髪がフィリアの内股をくすぐる。  
「どんどんあふれて来ますよ。やらしい竜ですね、貴女は」  
ゼロスの息がすっかり開かれた秘所にかかり、あふれた愛液を舐め取られる。  
「あ、あああ、ゼロス……やめ……て」  
ソファーの背にしがみついて、フィリアは必死に衝撃に耐えている。  
しばらくフィリアの味を堪能していたゼロスの顔があがる。  
ちろと唇を舐めるその顔は、猫のようだとフィリアは思った。  
 
「じゃ、そろそろいきますね」  
指や舌とは違うものがフィリアの入り口にあてがわれ、それがなんなのかわかった瞬間、  
引き裂かれるような痛みがフィリアを襲った。  
「あっ、あああーーーーっ!!」  
思わず逃げようとする腰をしっかり抱え込まれ、ゼロスのものが容赦なく押し入ってくる。  
「いっ、痛い、抜いてゼロス……」  
「嫌です」  
そのまま動物的に腰を打ち付けられ、2人の重みに耐えかねてソファーが軋む。  
息もできない激痛に、すがるものを求めてフィリアはゼロスの肩をつかんだ。  
「っく、あ、ああーーっ!」  
こらえきれない衝撃に、フィリアは涙を浮かべて叫ぶことしかできない。  
「いい声ですねえ……。素敵ですよ、フィリアさん」  
「う……うう」  
容赦なく突き上げられ、揺さぶられて長い金髪が動きにあわせて跳ねあげる。  
それでも薄れてきた痛みに混じって、甘い痺れが体の奥から湧き出てきた。  
じわじわと。  
「あ……あん……」  
フィリアの声に甘い艶が混じる。  
「おや、初めてなのに感じてるんですか?」  
揶揄を含んだゼロスの声も耳に届かない。  
「う……あ、あああ!」  
ゼロスの動きがいっそう激しくなり、フィリアは思わずゼロスにしがみついた。背に爪を立てて嬌声を上げ続ける。  
「あ、はあぁぁーっ!! あああ、ゼ……ゼロス……っ!」  
体の中で何かが弾ける。  
一際高い声を上げて体を大きくしならせ、フィリアの意識は白い光に包まれた。  
 
目が覚めると頭が重く、どうやら気を失っていたらしい。  
うつぶせのままぼんやり顔を上げると、ゼロスは平然として服を調えていた。  
「おや、気がつきましたか。フィリアさん」  
底の知れない笑みに柔らかい物言い、いつもの彼だ。  
頭が朦朧としてはっきりしない。  
脱力した体を起こそうとするが、体中が痛むのであきらめた。喘ぎすぎたせいか、喉も痛い。  
「なかなか素敵でしたよ、フィリアさん。暇になったらまた来ますね」  
「……来なくていいです。生ゴミ魔族」  
せいいっぱい虚勢を張ってみるけど、多分見透かされてる。  
「……どうしてこんなことしたの、ゼロス」  
「それは」  
「秘密なんでしょう。どうせ」  
虚をつかれたらしく、ゼロスは笑みのまま固まり、その様子が面白くてフィリアは小さく笑った。  
「まったく嫌な竜ですよ……貴女は」  
ため息まじりにそれだけ言うと、ゼロスの姿が虹の光に包まれ掻き消えた。  
 
ゼロスが去ると、急に部屋が暗くなったような気がした。  
ずいぶん時間がたっていたらしく、あたりはすっかり暗くなっている。  
ようやく動けるようになった体を起こして、ゆっくりとテーブルのランプに火をともす。  
素肌に上着だけを羽織って窓辺に立つと、墨のような雲が薄れて流れ丸い月が現れた。  
ため息一つ。  
「火竜王さまにあなたの無事を祈るわけにはいきませんね」  
ケンカばかりしていたけど、本当は……。  
許されることではなく、気がついた時からありえないことだと否定し続けて心の奥深くに沈め、  
自分すらごまかしてきたけれど。  
 
夜空に輝く月を見て、何故か陽光が似合うかつての友たちの姿が浮かんだ。  
彼女たちは今どうしているのだろうか。  
食べ物の取り合いをしたり、遺跡を壊したり、高い所で正義を唄っているだろうか。  
金髪の剣士はまだ自分の名前を覚えているだろうか。  
神託を受けた時のように、心が騒ぐ。  
どこかで何かが起こっている。  
輪のように細波が周囲に広がって、その中心にゼロスとリナたちがいる。  
そんな予感。  
大切な人たちが戦い殺しあう……そんな事にならないようフィリアは祈った。  
 

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