「すごい雨ですね…」  
 夕食の最中に雨は突然降り出した。  
「今夜は荒れるだろうな」  
 ゼルガディスさんは全く気にせず食事を続けていた。  
「明日にはやんでるといいですね…」  
 ゴロゴロ…。  
 遠くから雷の音が聞こえる。  
 その音に体を強張らせてしまった。  
「ゼルガディスさん…」  
「どうした?」  
 いつもと変わらないその声に、私は口を閉じてしまう。  
「いえ、なんでもないです」  
 ほんの少しの気まずさを置いて私は席を立ち部屋へ戻った。  
   
 うぅ、雷キライですぅ。  
 二人きりで旅をしている今、部屋に戻ったら一人きりになる。  
 四人で旅をしているときはリナさんが同じ部屋にいてくれたから、あんまり怖くなかったのに…。  
 もう今日は早めに寝ちゃいましょう!  
 そう考えて、雷がひどくならないうちにお風呂に入った。  
お風呂から帰る途中、ゼルガディスさんの部屋の前を通ると、まだ早い時間なのに珍しく部屋の中からはゼルガディスさんの気配がした。  
 
隣の部屋にいてくれるならちょっとだけ安心です。  
そう思ってベッドに入ったのに…  
運悪く、眠りに着く前に天気は大荒れで何度も何度も雷の音が聞こえる。  
大丈夫って言い聞かせてもやっぱり怖くて…。  
 
ゴロゴロ…  
ピシャーン!!  
 
「きゃあ!  
 …うえ〜ん…雷怖いですぅ」  
 布団を頭からかぶってもちっとも怖いのはなくならない…。  
 私は毛布を掴んでそっと部屋を出た。  
 そして、隣の部屋のドアを小さくノックする。  
 でも返事はない。  
「ゼルガディスさぁん…」  
 起こさないように小さく声をかけて勝手にドアを開けて部屋に侵入する。  
『ゼルガディスさん、ごめんなさぁい』  
 部屋の隅に毛布を置いて、ベッドに向かう。  
 ゼルガディスは案の定もうすでに深く眠っていた。  
「朝になったら出て行きますから、雷が聞こえなくなるまでここにいさせてくださいね」  
 そう言って部屋の隅に行こうとした瞬間、腕を握られ思いっきり引っ張られた。  
 私は驚いて、そのままベッドに押し倒された。  
 何が起こったのか一瞬考えた。  
 
「ゼルガディスさん…起きてらしたんですね」  
 ゼルガディスさんが怒っているような表情をしてるのを見て、ドキリとする。  
「ごめんなさい。無断で入ってしまって…私…あの…」  
 理由を説明しようとするんだけれどうまく言葉にならない。  
「雷が怖いんだろう?」  
「ゼルガディスさん! 知ってたんですか?」  
「気づかないわけがないだろう。  
食事中、雷がなるたび脅えて、部屋で一人雷が怖いってあんなに悲鳴をあげてちゃな」  
私は思わず顔を赤らめた。  
恥ずかしい…、こんなだから子どもだって言われるんだ…。  
「いつもはどんなに怖くても一人で耐えるのにな…今日はなぜ俺のところに来た?」  
 ゼルガディスさんはいまだ怒ってる顔をしている。  
 大切な睡眠を私に邪魔されたのだから当たり前なんだけど…。  
「あの…今までは怖いこととかあった時は父さんのこと考えたら落ち着いたんです。  
でも、今日一緒にご飯食べてる時に雷がなって…怖かったんですけど、ゼルガディスさんの側にいたら怖いのがなくなって、一番安心するってわかったんです…だから、ゼルガディスさんの側にいたくて…」  
 
言い訳にしかすぎないんだけれど、ゼルガディスさんに説明する。  
怖くって顔を見られない。  
「ご迷惑かけてごめんなさい。お部屋に戻ります」  
そういってゼルガディスさんの腕から逃れようとしたけれど全く動かない。  
「ゼルガディスさん?」  
ゼルガディスさんを見上げると私から目をそらして顔を赤くしてた。  
「…お前は…」  
「はい」  
 ゼルガディスさんの顔がいきなり近づいて、その唇が私の唇に触れた。  
「それは…フィルさんより俺を求めてるということか?」  
「え? え?」  
 そう問われて改めて考える。  
 そう、ゼルガディスさんがいてくれるならそれでいい。  
 ゼルガディスさんの側が一番安心する。  
「俺が一番側にいていいってことか?」  
「あ、あの、あの…はい…」  
「俺は…お前がずっと一人で怖いことを耐えているのがもどかしかった」  
「え…っ。私、ずっとゼルガディスさんの足手まといになっちゃ駄目だって思って…」  
「足手まといだと思ったことはない。ずっとこうして俺が守りたかったんだからな」  
 
 私は嬉しくて嬉しくて私のほうからゼルガディスさんに抱きついた。  
 今頃になって、ゼルガディスさんからもらったキスで唇が熱くて…瞳を閉じてもう一度キスをおねだりする。  
 ゼルガディスさんは小さく笑ってさっきより深いキスをくれた。  
「ゼルガディスさんがこうして側にいてくれるなら、私怖いものなんてないです」  
 そう言って笑うとゼルガディスさんは困った顔をして私の耳元で囁いた。  
「側にいるほうが怖いかもしれんぞ」  
 ゼルガディスさんの目が私を捕らえて離さない。  
 ゼルガディスさんの言葉を反芻してその意味を考える。  
「俺はずっとこうしてお前に触れたかったと言ったら…怖いか?」  
 その言葉でやっと理解した。  
 その一瞬後で顔が一気に赤くなった。  
「あ、あの! それって…!」  
 痛いくらい強く抱きしめられて胸がドキドキする。でも、怖いとかじゃなくて。  
「お前の全部が欲しいってことだ。  
 ずっと好きだったんだからな」  
「えっ! い、いつからですか?」  
「少なくとも、お前が俺を好きになるより前だな」  
「知らなかったです…」  
「知られないようにしてたからな…。  
 それなのにお前は平気で俺に近づいてきて…」  
 
「ゼルガディスさんは特別なんです」  
 そう言って私は真っ赤になりながらゼルガディスさんにキスをした。  
「怖かったら怖いと言っていい」  
 さっきみたいに優しいキスじゃない。  
 もっともっと深い。  
 ゼルガディスさんの舌が私の舌に絡んできて…私はそれに答えることに必死になってしまう。  
 ゼルガディスさんの指が私の頬をなでて首に触れてそのまま下へ向かい私の二つのふくらみに触れた。  
「…!!」  
 そのはじめての感覚に驚いて私は目をギュッと閉じた。  
 するとゼルガディスさんの手が止まった。  
 ゆっくり目を開けるとゼルガディスさんが心配そうに私を見つめていた。  
 私はゼルガディスさんの頬に触れた。  
「ゼルガディスさん大好き…」  
 思わず漏れた言葉。  
 胸がつまって涙がこぼれた。  
 その涙をゼルガディスさんが唇で拭う。  
 再びゼルガディスさんの手が動く。  
 私のふくらみの頂点に触れられると体が震えた。  
「…ん」  
 勝手に漏れてしまう声が恥ずかしくて手で押さえようとしても、その手をゼルガディスさんに捕らえられてしまう。  
「あ...っ」  
 
「あ...っ」  
 ゼルガディスさんの手はさらに下に進んでいき、さっきまで手で触れられていた突起はゼルガディスさんの舌でやさしく舐められる。  
「あ…あ…っ」  
「アメリア…」  
 優しい、大好きなゼルガディスさんの声に安心して、少し強張っていた体がほぐれる。  
 次の瞬間、私自身も触ったことがないところにそっと指が入っていくのを感じた。  
「あっ…! いやぁ…」  
「…嫌か?」  
 ゼルガディスさんが問いかけてくる。  
 嫌じゃない…嫌なんかじゃない…。  
 恥ずかしいだけ…。  
 私は首を横に振って答えた。  
 するとゼルガディスさんは私の中から指を抜いて、その少し上に蕾にそっと触れた。  
「ん! あっ! あぁっ!」  
 その感覚に酔いそうになる。  
「ふっ!あ、あぁん」  
 声を抑えようとしても止まらない。  
 きつく目を閉じて羞恥を逃そうとする。  
「…怖いか?」  
 ゼルガディスさんが私を気遣っているのが閉じた瞼の裏からでも感じる。  
 優しい…だから大好きです。  
「…怖くないです…気持ち…いいです…」  
 恥ずかしくて仕方ないのに、もう我慢が出来なくてゼルがディスさんに何度もキスをせがむ。  
「少し痛むかもしれないが…いいか?」  
 
 痛いという言葉に少しドキリとする。  
 でも、ゼルガディスさんなら…。  
 ゼルガディスさんだから…。  
 小さくうなずいて  
「ゼルガディスさんなら怖くないです…」  
 そう言った。  
「アメリア…」  
 苦しいくらい抱きしめられて幸せな気持ちが溢れた。  
 その腕の力が弱くなったと同時に、体が裂けるほどの痛みが走った。  
「う…ん…っ!」  
 痛くて痛くて息があがる。  
 それでもじわじわとゼルガディスさんが私の中に入ってくる感覚に涙が溢れる。  
「全部入ったぞ。大丈夫か…?」  
「大丈夫です…私、幸せすぎて…」  
「アメリア…」  
 ゼルガディスさんが何度も私の名前を呼んでくれる。私の髪を撫でながら。  
 ゼルガディスさんの私を見つめる目が優しくて甘くて痛みなんてどこかに消えてしまう。  
 その後に残ったのはもっと近くに、もっと側に…という感情。  
 ゼルガディスさんの動きが激しくなる。  
 その動きに合わせて私の中にある何かが訴える。  
「あ…あ…ん…は…ん」  
「アメリア…好きだ…」  
 その瞬間、  
「ああぁぁっ!!」  
 私の中で何かがはじけた。  
「くっ…」  
 それと同時に私の中にいるゼルガディスさんも私の中で弾けた。  
 
「大丈夫か?」  
 ゼルガディスさんが心配そうに私の顔を覗き込む。  
 その仕種にゆっくり微笑んでしまう。  
「…はい。私やっぱり、ゼルガディスさんのこと怖くないです。ゼルガディスさんの側にいたら怖いものなんて何にもないです」  
 ゼルガディスさんの胸に顔をうずめて伝える。  
「だから…ずっとずっと側にいてくださいね」  
 
 

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