―ガウリイサイド―  
 
最近、リナの体調がおかしい。  
食事はいつも10人前食べるのに、今日も2人前しか食べなかった。  
そして―  
 
「うう、き”も”ち”わ”る”い”〜」  
次の町に続く街道沿いの繁みで、リナは今朝食べた物を吐いてしまった。  
俺はリナの背中をさする。  
「おいおい、大丈夫か?次の町に行ったら医者に行った方がいいぞ」  
「ガウリイ」  
リナが真剣な表情で、俺の瞳を覗き込む。  
「あたし、出来ちゃったみたい・・・」  
今、リナはなんて言った??俺は耳を疑った。  
「つわりよ、この症状は」  
今度こそ、俺は目の前が真っ暗になったような衝撃が走った。  
「〜〜〜リナっ、お前俺の知らない間にそんなことやってたのかっ!!  
誰だ、父親はっ!!!」  
俺はリナの細い腕が折れそうな勢いで思いっきり掴んでしまった。  
ちなみに、俺はリナとそういうことをした覚えは全くない。  
リナと旅して3年以上たってるが、リナが性の関心に疎いということもあり、俺はいまだ保護者の肩書きから抜け出せず、健全な関係なのだ。  
「父親はあなたよ、ガウリイ」  
「・・・はぁ?」  
リナが嘘をついているようには見えない。  
三年以上保護者をやってるので、嘘をつくときは勘でわかる。  
「やっぱり覚えていないのかしらね・・・  
2か月ほど前、セイルーンの北側に位置する小さな町で、私たちは魔道士協会の依頼で、とある遺跡の探索に出向いたでしょ?」  
「そういえばそんなことあったな」  
 
珍しいことに、俺はその遺跡の存在を覚えてた。  
最深部に位置するだだっ広い部屋には、不気味な悪魔の像があったことまで覚えているんだが、紫色の甘い香りの霧が部屋に充満したかと思ったら、それから後の記憶がない。  
気がつけば遺跡の外にいて、その後数日間、リナの態度が妙によそよそしかった。  
顔を見るなり真っ赤になって俺から目を逸らしたり、肩に手を置いただけで悲鳴を上げたり、俺と距離を空けて歩いたり・・・。  
「あんたはその遺跡の中で、無理やりあたしを・・・」  
「すまん、思い出せない」  
「魔風っ(ディム・ウィン)」  
俺はリナの放った魔法によって、盛大に空高くまで吹っ飛ばされたのだった。  
 
 
―リナサイド―  
 
わかっていた。  
ガウリイが遺跡の中のあの出来事を覚えていないなんて。  
だって、ガウリイはあの時脳を麻痺させる霧で、理性がなくなっていたんだから。  
どうやらその霧は、男性しか効果がないようだったが。  
 
『きゃあっ、なにすんのよガウリイ・・・』  
『・・・・・・』  
ガウリイは無言で乱暴にあたしの服をはぎ取って、強引なキスをして、無理やりあたしの中に入ってきた。  
どんなに抵抗しても、あたしの力では彼には敵わなかった。  
『やだあっ、痛いっ、やめてお願い・・・』  
どんなに懇願しても、止めてはくれなかった。  
ガウリイはあたしの身体のことなんて全くお構いなしで動いて、あたしの中で果てたのだ。  
 
全て初めてのことだった。  
ファーストキスも、SEXも。  
怖くて恥ずかしくて屈辱で、それでもあの出来事は無かったことにして、あたしはガウリイの傍から離れなかった。  
家族以上にかけがいのない大事な存在で、一緒にいるのが当たり前になってしまった。  
ガウリイなしの毎日なんて、考えられない。  
そして、まさか一回で出来るとは思わなかったが、あたしの中にガウリイの子供がいるのだ。  
 
でも・・・  
やっぱりムカつくもんはムカつくっ!!!  
ちょこっとでもいいから思い出してよ。  
 
「リナ」  
唐突に、後ろから声がした。  
・・・気配消して近づくなよ。(あたしが逃げるとでも思ったんだろーか)  
「すまなかった・・・」  
そういって、ガウリイはあたしを抱きしめて、唇に触れるだけの軽いキスをした。  
「ば、馬鹿っ、謝って済むと思うの?  
いくら記憶がないからと言って、このあたしを強姦した上に孕ませたんだからねっ」  
「じゃあ、なんでリナは俺から離れなかったんだ?  
リナの性格からして、お前さんに手出しした男は即座にドラグスレイブで抹殺しそうなんだがな。」  
うう、バレてる・・・  
あたしがガウリイのことを、本当は大好きだということを。  
「記憶にないのは申し訳ないと思ってる。  
でもなリナ、俺はいつかおまえさんとそういう事をしたいと、ずーっと思ってたんだぞ」  
「なっ!?、このどすけべっ」  
あたしはガウリイにスクリューパンチを喰らわせようとした・・・が、ガウリイは難なくそれを掌で受け止める。  
「いつか言おうと思ってたんだがな・・・  
リナは俺の中で大事で特別な女の子なんだ。  
ずっと傍にいたいと思ってた。一生な」  
あたしの顔がみるみる赤くなるのがわかる。  
「結婚しよう」  
「う、うん・・・」  
今度こそ、あたしは素直に頷いた。  
 
 
「ううっ・・・」  
あたしはつわりで再び吐き気を感じた。  
「大丈夫か、リナ」  
「し”〜ぬ”〜〜」  
再びガウリイがあたしの背中をさする。  
はぁ、少し落ち着いた・・・。  
 
「リナ、つわりが収まったらHしような!俺、リナとやった記憶ぜーんぜんないんだもんな〜」  
「こんのエロクラゲ~!!!」  
でも、まあいいか・・・。  
今度は優しくしなさいよ。  
 

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