「彼女に手を出すな。さもないと――病気がうつるぞ」
ガウリイの言葉に、部屋の空気が凍りついた――のはしかし、一瞬のことだった。
「……へ、へん」
多少引きつり気味ながら、笑いとばしたのは見張りA。
「何言うかと思えば、じゃあてめえはどうなんだ。どうせその女とさんざんヤってるんだろ?」
ちょっと待て!
誰が、誰と、ナニをしたって!!?
かあっと顔に血が上り、抗議の呻きを上げて暴れるあたしにAが近づいてくる。
「いいぜ、確かめてやろうじゃねえか」
た、確かめるって……
嫌な予感に、冷たい汗が背を伝う。
案の定、いまだどこかおどおどしているBを呼び寄せてあたしを押さえ込ませると、
Aはあたしのズボンに手を掛け、下着ごと一気に引き下ろした!
(嫌っ)
上げた悲鳴は、猿ぐつわに阻まれて、くぐもった呻き声にしかならなかった。
必死に脚を閉じようと抵抗しても、不自由な体勢の上、男の力には敵わない。
足首はロープで縛られたまま、膝をつかまれて割り開かれる。
敏感な場所が急に外気に晒されて、思わず身体が竦んだ。
Aは脚の間に顔を近づけ、覗き込んでくる。
「へえ、綺麗なモンじゃねえか。こりゃひょっとして初めてか?」
舐めるような視線をあたしのそこに這わせ、指で広げるように触れてくる、
その感触と、舌なめずりさえ聞こえてきそうな声音に、悪寒が背筋を走りぬけた。
頭に上っていたはずの血は、もうとっくにすっかり引いていた。
恥ずかしいとかそんなもんじゃない。これは恐怖だ。これからなされるであろう行為への。
凍りつき、動けなくなったあたしに気が大きくなったのか、あたしの肩を押さえ込んでいたBが、
気の弱そうな顔にいやらしい笑みを張り付かせて胸に手を伸ばしてきた。
「胸は小さいけど感度は良さそうだぜ」
いつのまにかツンと起っていた突起をいじりながら言う。
いつもならば問答無用で張り倒す台詞にも、猿ぐつわをかまされていては術を唱えることもできはしない。
そのうち布越しでは物足りなくなったのだろう、護身用に持っていたらしいナイフで
あたしの上着を切り裂くと、じかに胸を揉みしだき始めた。
その間にもAの指はあたしの股間をまさぐり、中へと侵入しようとしていた。
異物感に慄いて視線をそちらへ向けた瞬間、不意にガウリイの金髪が目に入った。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
こんな連中にいいようにされている屈辱はもちろん、それを人に――ガウリイに見られているなんて、
なおさらいたたまれない。
怒りと恐怖と情けなさと、初めて感じるわけのわからない感覚が、
きつく閉じた目から涙になってこぼれ落ちた。
「泣いてやがるぜ、こいつ」
「は、お前らだってさんざん人様を泣かせてきたんだろうが」
Bの声に、嘲るようにAが答える。
「まあ、せいぜいイイ声で鳴かせてやるぜ……って、猿ぐつわされてちゃ声も出せねえか」
己の優位を疑わない、下卑た笑みを浮かべた目であたしを見下ろしながら、
男は自分のズボンのベルトに手をかけた。