突然、だった。  
 
「ひ、うっ…!」  
アメリアのうめき声は闇に溶けていく。  
暗がりの中蠢く影は2つ。  
明かりの灯されていない部屋は月明かりで照らされてはいたが、余りにも心許なかった。  
「ひぁっ!!や、ゼルガディスさん…っ!」  
名を呼ばれた男は、既に蜜が滴り落ちている少女の秘部に舌をのばしている。  
水音と、尖らせた舌先で優しく触れられる感覚に神経を集中させるよう仕込まれているアメリアは、すぐにその快楽に身を任せた。  
しかし思考は妙に冷静だ。  
そもそも数時間前に、年の暮れだと騒ぐいつもの仲間たちとの暴飲暴食を終えたところだった。  
酔いが回ったガウリイをリナが運び、アメリアとゼルガディスは一足先に各部屋に散り散りになったはず。  
 
なのに、何故。  
 
「アメリア」  
「っん、あ……ゼルガディス、さん?」  
いつの間にか顔を上げたゼルガディスは、腕で濡れた顔を拭いながらアメリアに声を投げた。  
それは、わたしの。アメリアは一気に顔を赤らめると、とっさにゼルガディスの視線から逃げた。  
それに顔をしかめたゼルガディスは、堅くなった自身の先端をアメリアにあてがう。  
つぷ、と飲み込まれた音に、アメリアの体はゾクリと疼いた。  
「アメリア」  
同時に耳元で囁かれる名は、アメリアを追い詰めるには十分過ぎた。  
「っ!!お、おいっ!!」  
急に起き上がったアメリアに押し倒されたゼルガディスは、マウンドポジションを取ったアメリアの内部にいとも簡単に入り込んでしまう。  
「あ、あっ!!んんっ…!!」  
「くっ…!!」  
いわゆる騎乗位の体勢は、アメリアの体重と重力を受けてゼルガディスを最奥まで迎えた。  
いきなりの衝撃に、行動を起こしたアメリア自身も戸惑いの表情と痛みに耐えている。  
固い腹に手のひらを乗せ、耐える少女の痛々しさにやっと冷静になったゼルガディスは、アメリアの頬に手を伸ばした。  
初めて、という訳ではない。  
お互い、相手のどこが弱いか認識できる程度には体を重ねてきた。  
「……どうし、たんです?」  
弾力のある頬を一撫でし、首筋を指で追い、膨らみを包み込む。  
ビクリと跳ねる身体は日の光がよく似合う。  
(違いすぎるだろう)  
対比された肌の色はゼルガディスに後悔の言葉しか浮かばせなかった。  
「オレでよかったのか?」  
さらけ出された不安の声は、アメリアの耳に一瞬遅れて届いた。今更何を言っているんだろう。  
そのまま言葉にしようと口を開きかけたアメリアは、段々力を失っていくゼルガディスの手のひらを感じ、ため息をつく  
 
(ばかなひと)  
 
アメリアは胸に置かれたゼルガディスの手に自分の手を乗せると、優しく力を込める。  
突然の温かさに目を見開いたゼルガディスと視線を合わせ、まっすぐ逸らさずにアメリアは言った。  
「心配なら、試してみては?」  
不敵に笑う妖艶な姿に、ゼルガディスはドクリと全身が高鳴る音を聞いた。  
 
 
―――――  
 
 
新年早々の朝焼けを、こんな状態で拝むことになるとは思わなかった。  
アメリアはシャワーで濡れた髪を拭きながら部屋に戻ると、ゼルガディスがベッドの上で、背を丸めている姿が見えた。  
反省。  
犬の芸を脳裏に浮かべつつ、背中合わせになるようにアメリアは腰掛けた。  
そもそも、不安に思う必要なんて無いのだ。  
アメリアにはゼルガディスだけだったし、それはリナにガウリイしかいないのと同じように成り立っている。  
改まって言葉に出すのはやはり恥ずかしいので、今まで口にしたことは無かったが。  
アメリアは大きく息を吐き、ゼルガディスの隣に移動した。  
「……ゼルガディスさん」  
「…」  
「わたし、あなただけですから」  
こんなことするの。  
アメリアは微かに視線を外しながら今し方まで肌を合わせていた男の反応を待った。  
居心地悪そうに泳がせた瞳を床に固定しながら、ゼルガディスは知っている、とだけ言った。  
 
ああ、幸せだなぁ。  
アメリアはただそれだけを思い、ゼルガディスの赤い頬に唇を落とした。  
 
end  
 

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