海の神の次女アメリア姫は、嵐の海で助けたゼルガディス王子に恋をして、魔女マルチナの薬で  
人間になったのでした。  
しかし、王子は隣国の王女と結婚するという噂が……!  
うちひしがれる人魚姫の前に、姉達が現れるのでした。  
 
(リナさん!……どうしたんですか?あれ?手ぶらですか?短剣は?)  
「アメリア、残念なお知らせがあるわ」  
くうっ!と芝居がかって身をよじったリナは、涙を拭く真似をする。  
「本当は、ここで短剣を渡して『むっつりすけべぇゼルちゃんを殺して戻ってらっしゃい!』  
と言わなきゃならないところなんだけど……」  
リナは、うるうるっ、とわざとらしく涙目になった。  
「ゼルって岩だから、刃物が通らないのよね。だから、アメリア、もうアンタ  
 人魚に戻れないから」  
(な、なんですってーーーっ!!)  
アメリアは、衝撃のあまりのけ反った。  
確かに、ゼルガディスを殺して自分だけ助かるなんて、そんな正義に反することをする気は  
全くない。しかし、ここって一番の見せ場じゃないんですか?その葛藤こそが  
人魚姫の切なさで、お話の中心部分じゃないんですか?  
わたしの、わたしの立場は………。  
そんなことを考えつつ、えぐえぐと泣き出すアメリアの脳裏に、聞いたこともないはずの  
男性の声で、『刺したいけれど、刃が通らないだろう』という言葉がコダマした。  
きっとその男性は、関西在住で腰が低い猫好きな作家に違いない。  
「じゃ、そーいうわけで。あ、あんたの遺品は、ちゃーんとあさっといてあげるからー!」  
安心してねー!と軽いノリで尻尾を翻して、リナは海へ帰っていった。  
 
「あー、アメリア、その、なんだ、オレの話、聞いてくれるか?」  
ぼーぜんと海を見つめるアメリアに、声をかけた者がいた。  
「……ララァ姉様……」  
「いや、オレはララァでも姉でもないんだが……しくしく、なんでオレがまた女装……」  
(……!ララァ姉様、その髪は!)  
「無視かよ。……ま、いっか。えーと、あのな、リナはああ言ったが、他の方法を  
マルチナから髪と引き換えに聞いてきたんだ」  
(他の方法?)  
「つまりな、体液なら、血液じゃなくてもいいんだ。リナがいると言いにくいから  
行くのを待ってたんだが、つまり、精液でもいいんだ」  
ララァ姉様は、気まずそうに頬をぽりぼり掻き、ウブなアメリア姫は真っ赤になりました。  
「その……アメリアはやったことないと思うから、簡単に口で説明するぞ?  
リナと違って、胸も使えるだろうし、その方法も……」  
 
そうして、アメリア姫はゼルガディス王子のベッドに潜り込んで、ズボンを脱がせ、  
ララァ姉様から伝授された技で責めまくって、初心者とは思えない見事さで、  
王子から精液をゲットしたのでした。  
もちろんそれだけでは済まず、すっかり興奮した王子様に押し倒されて、名実共に  
お嫁さんになり、人間として幸せになることができたのでした。  
 
ちなみに、隣国の王女という噂のミワン様は、本当は王子だったということです。  
人の噂とは、実に無責任なものですね。  
 
どっとはらい。  
 

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