酒場の喧騒がどんどんうるさくなってきた。もう真夜中に近いのだろうか。  
 あたしとガウリイは海沿いの宿場町で適当に宿をとり、1階にある酒場で酒など飲みながらバカ話を  
していた。  
 「え、じゃあ、あれで手加減してたっていうの?」  
 「当たり前だろ。いきなり手の内全部見せても後がつづかないと困るからな」  
 つい先日の騒動のあと、しばらくは照れまくってしまったあたしだったが、さすがにここ何日かでもとの  
落ち着きをとりもどしてはいた。  
 でもあの日のことをなんとなく責めたくなって、お酒も入った勢いをかりて、ちょっと文句を言ってみた  
のだが・・・  
 てっきり手加減なしでガンガン攻められていたと思っていたあたしだったが、どうやら序の口、だった  
らしい。こんなのほほんとした顔しといて、なんなのこのエロクラゲ・・・  
 「だってさほら、ずっと正常位だっただろ?初めての時はあれが一番痛くないんだよ。深さコントロール  
 しやすいし。前戯だってさー、やっぱり初めのうちはひとつひとつ丹念にいじってだな、そのうち複合技に  
 もってって慣れたあたりで焦らし戦法で悶えさせてから、体位を変えつつ、やっぱひとつひとつ丹念に・・・」  
 「もういいもういいっ! わかったからっ! なんかループしていってるから!」  
 「そうそう、ちょっとずつ変えながらループさせていくのがいいんだよ。オレも楽しめるし」  
 本っ気で手加減されてたんだわ、あたし・・・  
 ガウリイ、あなどりがたし・・・!  
 「それはそうとさ・・・リナ・・・」  
 いきなり真面目な顔をしてこちらに近づいてくるガウリイ。  
 ほっぺとほっぺがくっつきそうになって、あわててガウリイの体を押し戻す。  
 「こら、ちょっと、ここ店の中なのよ。あんましくっつかないでよ!」  
 お酒で酔っていた頬がさらに赤くなるあたし。そんなあたしの耳元でガウリイが熱っぽい声でささやく。  
 「・・・じゃ、部屋にいこうぜ・・・」  
 きゅっと心臓がきつくしまる。  
 ようやく今日、借りる部屋をひとつだけにしたのだった。・・・ま、そーいうこと。  
 「オレのこと好きだって、今日こそ言わせてやるよ・・・」  
 見た目でわかんないけど酔ってんのかしら・・・なんか、男オーラでまくりなんだけど・・・  
 ・・・ガウリイって顔がいいから全然いやらしくならないのよね・・・  
 ガウリイがすっくと立ち上がり、空になっていたジョッキをカウンターに戻すと、やおらあたしの腰に  
手を回して背の高いカウンターイスから降ろさせる。  
 「自分で降りれるわよ! もうっ子ども扱いしないでよ!」  
 「何言ってんだ、恋人扱いっていうんだよ」  
 いけしゃあしゃあと言い放つガウリイ。  
 あたしは顔を真っ赤にさせて、目をそらす。  
 「ほら、いくぞ」  
 言ってガウリイは客室へ続く階段に先にのぼり、こちらに手を差し出してくる。いつものあの優しい笑みで。  
   
 あたしたちは、どこか変わったのかな・・・?  
 変わったといえば変わったような、でもいつも通りといえばいつも通りな気もする。  
 不思議だ。あたしはこーいうのって、まるで劇的に変わるもんだと思っていた。  
 それが、いつもとまるで同じだなんて。あんなに緊張していた自分がばかみたいだ。  
 
 部屋に入るなり、ガウリイがぎゅうっと抱きしめてきた。あたしも抵抗しない。  
 変わったといえば、そう、こういうとこかな・・・  
 しかしこうなることはあたしが望んでもいたことなのだから。  
 結局あの時も、さんざん色々されたとは思ったけど、よく考えたらあたしが本当に望んでいたことしかして  
いないんだ、ガウリイは。  
 抱いてほしいって思ったのも、こわしてほしいと思ったのも、めちゃくちゃにしてほしいと思ったのも、子供は  
まだだめって思ったのも、全部あたし。  
 ひどい男って思いながら抱かれてたけど、ガウリイは結局はあたしが望むことしかしなかったのだ。  
 ぎこちなく、そっと抱きしめ返すと、嬉しそうにあたしの名をささやいてキスをしてきた。  
 
 「ね、ねぇ、先にシャワーつかわせてよ・・・」  
 ベッドに連れて行かれそうになったので、あたしはどぎまぎしながら言ってみた。  
 理性が残ってるとやっぱだめだ、恥ずかしくてしょーがない。  
 この前初めてしたときみたいに勢いがないと、どーにもこーにも照れてしまう。  
 「あとでしたらいいさ・・・オレもうたまんねーんだから・・・」  
 この強引さを前面にだしてくるガウリイが、あたし、なんだかとても気持ちいいんだ・・・変なの。  
 「それに今日は、胸だけでしよっかと思ってるし・・・いいだろ、今シャワーしなくても・・・」  
 「胸?! 胸はやめてよー!」  
 「なんで?」  
 「・・・だって、そんな大きくないし・・・」  
 「あのなぁ、リナ・・・お前の胸は、大きくないじゃなくて小さいもしくは無い、って言・・・うんだぐぁぁ!」  
 最後まで言わせずにアッパーカットを決めるあたし。  
 や、やっぱし何にも変わってないじゃない! こいつ! 人が気にしてることを・・・  
 「あっやだってば、こらぁ!」  
 しまった、油断した! うしろからすばやく抱きすくめられて身体に緊張がはしる。  
 胸をさわられる、と身構えていると、耳元に甘い声でささやきかけられ、思わず力が抜けてしまった。  
 「リナ・・・オレさぁ・・・別に乳フェチじゃないんだぜ・・・」  
 「な、なに言ってんのよ・・・もっとロマンチックなこと言えないの・・・?」  
 優しい吐息が耳をくすぐり、ガウリイの唇が耳たぶにふれ、そのまま軽く噛まれたときには、あたしは  
ガウリイが抱きすくめる力強い腕にしがみつくことしかできなくなっていた。  
 かまわず言葉をつづけるガウリイ。  
 「そうだな・・・うん、何フェチかっていうと・・・」  
 「どこがろまんちっくなのよ・・・!」  
 「リナフェチ、かな・・・お前さんのどこを触っても、たまらなくなる・・・  
 声だけでも、髪一筋だけでも・・・・・・オレって変態かもよ?・・・」  
 じゃあ、それを嬉しいと思うあたしも変態になっちゃうじゃない・・・  
 当然それは口にはだせなかったが。  
 ガウリイが小さく笑うのが耳元ではっきりわかる。  
 そうしてやっぱり低い甘い声でゆさぶりをかけてくるのだ。  
 「・・・また否定しないんだな・・・わかりやすいぜ、お前さん・・・」  
 「わるかったわね、わかりやすくて・・・」  
 「うん・・・・・・可愛い」  
 あたしはもう・・・この男の思うがままだった。  
   
 「そうだ、オレさ、ひとつやってみたいことがあるんだ」  
 「なによ・・・」  
 突然言い出したガウリイに少しひるむあたし。  
 やってみたいことって・・・縛るとか目隠しとかおもちゃ使ったり?後ろの穴とか?それはいくらなんでも  
やりすぎじゃないの・・・この前まであたし処女だったっていうのに・・・  
 あたしは今までの、大人の女たちから聞いていた武勇伝(?)を思い出して逃げたい気持ちになった。  
 聞いたときはへーっと思っただけだったが、いざ自分の身にふりかかるとなると話は違う。  
 そういやガウリイは自分で変態宣言してたし、あたしも否定しなかったからこんな流れになっちゃったのか  
な・・・こんなことならおもいっきり突っ込みいれときゃよかった!  
 内心激しく動揺するあたしから身体を離したガウリイは、獣脂ランプを吹き消すとベッドに腰かける。  
 
 「おいで・・・」  
 手をこちらに差し伸べられ、優しくそう言われると、あたしはあらがう気にはなれなかった。  
 吸い込まれるように惹きつけられて、ガウリイの手をとり、目の前に立つ。  
 ガウリイはあたしの手のひらに軽く口付けしてから、服のボタンをはずしにかかった。  
 あたしどうしたんだろ、いやだって言ったらきっとガウリイは許してくれるはずなのに。  
 ここ何日かだって、まだひりひりして痛むんだって言ったら、別部屋で寝てくれた。  
 一緒に寝ると抱きたくなるからって笑いながら・・・  
 あたしは今日、自分から一部屋でいいって宿屋のおばちゃんに言ったのだ。  
 びっくりもされなかったし、あいよーって普通に鍵を渡してくれたのが意外だった。  
 緊張しまくってたのが拍子抜けした。あたしたち恋人にみえるんだ、と正直言って嬉しくもあった。  
 まぁ兄妹に見えたのかもしれないが・・・  
 ここまで自分から動いておいて、いざ!となったら拒否するなんて女がすたるっと半分意地になっている  
のかもしれない。でも正面きって服を脱がしていくガウリイにはやっぱり慣れないでいた。  
 ランプもつけない暗闇の中で、するすると器用にあたしの服を脱がしていくガウリイ。  
 後ろにある窓からの月明かりのおかげであたしはやっと目がなれてきた。  
 ガウリイのブロンドの髪が月光で淡く光っているように見える。  
 羞恥から心をそらすために、あたしはそっとガウリイの髪にふれてみた。  
 髪一筋でも・・・とガウリイは言っていた。あたしにもわかる。  
 こうやって彼の、思ってたよりも少し固い髪の感触が手に伝わっただけで、愛しさがこみあげてくる。  
 そのままさらさらとした髪を優しくなでてみると、ガウリイが手をとめてあたしを見上げた。  
 あたしの表情に何を見たのか、ガウリイは何も言わずあたしの好きなあの笑みをみせて、また服を  
脱がしていった。  
 闇の中だということに背中をおされて、ズボンに手がかけられたときも、あたしはじっと耐えていた。  
 ガウリイの髪をつかむ手にちからがこもる。見ないでほしい、そう思いながら、目をつぶった。  
 「・・・足ぬいて、ベッドにあがって・・・そう・・・こっちの足も・・・・・・仰向けに寝転んでみて・・・」  
 心臓がばくばくしてうるさいほどだった。自分だけ全裸にされて、さすがに胸は両手で隠してるけど、  
恥ずかしいことこの上ない。  
 ベッドをきしませてガウリイが上にあがる。  
 あたしはそっぽを向いたままで、当然顔なんか見れないでいた。  
 「すこしだけオレの好きにさせてくれ・・・」  
 ガウリイはそう言い、あたしの手を優しく握ると、ゆっくり自分の口元に近づけて手の甲にキスをする。  
 もう片方の手にも。それから腕、額、肩、胸、おへそ・・・あらゆる箇所にキスをする。足の指の先まで。  
 「本当は初めての時にしたかったんだけど・・・オレも余裕なかったし・・・リナ逃げそうだったから・・・」  
 あたしに聞こえるか聞こえないか、ぐらいの声でつぶやくガウリイ。  
 「今度は背中。ころんってして」  
 言われるがままにうつぶせになるあたし。  
 ガウリイが何をしたいのかがだんだんわかってきた。顔が熱くなる。  
 髪の毛からはじまって、首筋、背、腰・・・と口付けはつづく。おしりはさすがにくすぐったかった。  
 もうキスする箇所がなくなると、ガウリイはいったん離れ、あたしはまた上を向かされる。  
 そうしてあたしの唇に、何か封じ込めでもするかのようにキスをした。  
 「じいちゃんが言ってたんだ。本当に大事にしたい女ができたら、封印しとけって」  
 やはりそうだったのだ。何かの本で読んだことがある。一生自分のものでありますようにっていう封印・・・  
 ガウリイがやりたかったことって・・・あたしよりロマンチストじゃないのよ・・・  
 あたしは自分の耳年増を呪った。変な勘繰りしてごめん、ガウリイ・・・言わなくてよかった・・・  
 などと思っていると、ガウリイは心臓の真上にあたる辺りに、痛いほどに吸いついてきた。  
 左胸に赤い印が刻まれる。  
 ガウリイはそれを真剣な目で見つめると、服を脱ぎだした。  
 あたしはあらわになった胸板に無性に衝動を覚える。  
 身体を起こし、そっと彼に近寄ると、同じ位置、心臓の辺りに唇を押しつける。  
 強く吸ってみた。  
 ・・・って、あれ?赤くなってない・・・もっと強く吸わなきゃいけないのか!男の肌って無駄に強い。  
 意地でもキスマーク付けてやる!と意気込んで吸いつくと、ガウリイの身体がぶるぶる震えだした。  
 
 「ちょっと! 笑わないでよ! こっちは真剣なんだからね!!」  
 「・・・そんなこと言ったってよー笑かしてんのはお前さんだろ?ケツぷりぷりふりながら・・・  
 それにほら、まだ赤くなってないし」  
 ほんとうだ。かすかに、ほんのかすかに赤い点がある程度だった。なんかくやしい・・・  
 「いいんだよ、オレはリナのその気持ちが嬉しいんだから・・・言葉で言ってもらえるともっと嬉しいがな」  
 にやにやしながら言うガウリイ。さきほどまでの甘ったるい空気など、どこかへ飛んでいってしまっていた。  
 ・・・こんな状況じゃ、言いたくても言えないってーの。  
 ぷいっと横を向くあたしを、急にガウリイは力強く抱きしめてくる。  
 「・・・かわいすぎ・・・リナはほんっと、オレのツボをついてくるなぁ・・・」  
 ま、まあ、喜んでもらえたみたいなのでよしとしよう。  
 言いそびれると、なかなか言えないものなのだ。愛の告白ってやつは。  
 しらじらしくなってもイヤだし、軽く受けとめられるのも御免だ。少しのズレも許したくない。  
 どうやったら伝わるのだろうかと、そんなことばかり考えて、あたしは結局今の今までガウリイに好きと  
言わずじまいだった。  
 苦しいくらいに抱きしめられていたのが、ふと腕のちからが緩む。あたしは目を閉じて待った。  
 ガウリイの熱くてやわらかい唇がふれてきて、舌が差し込まれる。  
 キスは毎日していたのでディープキスにも慣れてきていた。始めのうちはあたしが焦るあまり歯があたった  
りして変な感じだったのだが、力を抜くことを覚えると、とてもスムーズにキスは進むのだと知った。  
 そんなこと誰も言ってなかった。自明の理というやつなのだろうか。  
 知識に偏っても得られるものは少ないこともある、とガウリイとつきあってからあたしはよく気づかされる。  
 ありのままを受け入れることの難しさと、それによって得られる恩恵の大きさを、惜しげもなく教えてくれる。  
 面白い男だわ、と改めて思う。あたしはこの男に自分を捧げたことを露ほども後悔してはいなかった。  
 長いこと絡まっていた舌がゆっくり離れると、ふたりの間に伝う滴が月明かりに光る。  
 
 「オレの上に来てみ。・・・もっと上、そうそう。体勢つらくなったら好きに変えていいから」  
 あたしはガウリイの顔の上に胸をさらけだす格好になっていた。両腕をつっぱねて上体を支える。  
 これけっこう恥ずかしいんだが・・・ええい、もう、好きにしてくれ!  
 胸に手がふれた。優しく、ゆるやかになでまわされていく。  
 「リナってさ、大きさばかり気にするけど、すごく綺麗なんだぜ・・・?  
 すべすべで、でも汗かくともち肌になるし、今だって手に吸いついてくるみたいだ・・・」  
 きゅっと包み込むようにふれてくるガウリイ。ぴくん、と身体が反応してしまう。  
 「感度もいいし・・・」  
 ガウリイの熱い舌が胸の先端にふれ、そのまま押し上げてくると、あたしはたまらず声をあげてしまった。  
 嬉しそうにガウリイはぺろぺろとなめつづける。あたしの荒い息がそれに応える。ぴりぴりと身体に刺激が  
はしり、それは背中を抜け、そのままクリトリスにまでつながっていった。  
 ガウリイの言葉があたしの脳を溶かして使い物にならなくしていく。コンプレックスでしかなかったところを、  
丹念に愛撫しながら男の言葉でほめちぎっていく様は、快楽以上の何かをあたしに植えつけていった。  
 ちゅっと先端を軽く吸っては、やわらかく解放する。そんなことを繰り返しされていると、快感がそこだけに  
集まっていって、しだいにゆるやかな波のような、いわく形容しがたい感覚が身体を襲う。腕を支える力が抜  
け、がくっと肘からベッドに落ちる。ガウリイの髪が頬にふれ、穏やかな香りが鼻をくすぐった。  
 あたしの姿勢が変わっても刺激は止まなかった。逆に安定したような動きになり絶え間なくなめ続けられて  
いく。腰が震え、肩が震え、シーツを掴む手がおぼつかない。  
 とうとうあたしは耐え切れなくなり、声をあげて達してしまった。・・・胸だけで。  
 「はぁああっ・・・はぁっはぁっ・・・ああ・・・ガウリイ・・・」  
 それでもなお続く愛撫に、あたしは小さい子供がいやいやをするようにして首を振った。身体がじんじんしび  
れて触られてもいないところまでどくどくと脈打っているのがわかる。これ以上されるとどうなるのか、好奇心  
よりも不安のほうが大きかった。だがその不安もガウリイの舌の動きにかき消されていく。  
 たまらなく気持ちよかった。またすぐに快感の波がくる。背がのけぞるが、身体が密着しているので微塵も  
離れない。ガウリイは躊躇なく吸いついては口の中で固くなった乳首を転がしていく。また達してしまう瞬間に、  
強く長く吸ってきた。頭の芯を快感が貫いていき、あたしはガウリイの頭にしがみついて喘いでいた。  
 「胸でイクのもいいもんだろ?」  
 ぐったりとしているあたしにガウリイが甘くささやく。あたしには・・・どこか悪魔のささやきに聞こえた。  
 「・・・うん、きもちいい・・・」  
 あたしのその応えに満足したかのようにガウリイは、こっちも・・・と言い、頭を少しずらしてもう片方の乳首に  
舌をはわしていった。あたしもそれを待っていたかのように身体を少しだけずらす。  
 ガウリイがなめやすいように・・・  
 虜になっていた。ガウリイが与えてくる快感に、未知の世界への欲望に。身も心もあずけきっていた。  
 もっとすごいことしてほしい、とさえ思っていた。  
 あたしが知らないあたしの中をもっと教えてほしい、と。はっきりいってメロメロだった。  
 それが全部ガウリイにばれているのも、もうどうでもいい。  
 ガウリイの腕の中で、この極限まで押し上げてくるような際限のない快楽の渦にのみこまれていたい。  
 もっとして、と身体が叫ぶ。  
 
 同じ回数だけイかされたあとに、ガウリイが上に伸びをしてキスをしてきた。あたしは夢中でむさぼりつく。  
 ガウリイがあたしの両脚の間にゆっくりと膝を立ててくる。  
 濃厚な蜜の感触が彼のふとももに熱くまとわりつくのがわかった。あたし濡れてる・・・?  
 それがわかった瞬間、快感にぼやけていた頭が我にかえってしまった。  
 あたしは、自分の身体がこんなにいやらしいことをまだ受け入れられないでいる。  
 ガウリイはそんなあたしを見つめながらも、無言で膝を揺すり、隠しきれない喘ぎをあげてしまう様をじっと  
ながめていた。  
 理性が羞恥を呼び覚まし、あたしの目には涙が浮かぶ。  
 ・・・何か言ってくれたらいいのに・・・・言葉責めでもなんでも、したらいいのにっ・・・  
 胸しかさわられてないのに、どろどろでぐちゃぐちゃになってしまっていることに、弁解の余地も何もない。  
 あたしはやらしいんだ、と自分が自分を責めてくる。ガウリイに責められるほうがまだマシなのに・・・  
 ガウリイはやっぱり無言のまま、指をつかってあたしの秘裂を優しくおしひろげると、クリを直接肌につけて  
さらに揺さぶり、乳首への愛撫も再開しだした。舌が、指が、肌が、これでもか、というほどいじめてくる。  
 また、まただ・・・ガウリイはあたしがやらしいことなんかとっくに受け入れてて、信じられないようなこと平気  
でしてくる。ガウリイに何か言われるより、自分の羞恥心に責められるほうがよっぽど恥ずかしいことも知って  
いて、何も言わずに三所責めなんかしてくる。・・・すごすぎる・・・  
 あたしはガウリイのさらっとした強い髪が指にからまるのも構わずに、我を忘れてしがみつき、全身を震わ  
せてあっけなくイってしまった。きゅうっと余韻を搾り取るかのように吸いあげられ、指でつままれ、ふとももが  
おしつけられる。びくびくと身体がはねるのに任せ、ガウリイの髪の毛のなかに顔をうずめて荒い息をついた。  
 ・・・もっとして、って思ったけど、ここまでされるなんて思わないわよ・・・ふつー・・・  
 絶倫というのでもない、テクニシャンというのとも違う、天性の勘なのだろうか、あたしの全てをあたしより  
知っているような、そんな感じで手加減なく責めてきて何度もおかしくされる。  
 あたしはもしかしてとんでもない男に捕まっちゃったんじゃないだろーか・・・  
 「リナ、リナ・・・だいじょうぶか?」  
 それでも、あたしの髪を優しくなでながら気遣うような口調はいつもと変わりなく、あたしは混乱してしまう。  
 ガウリイの目を見ると、まっすぐにこちらを向いていて、愛しさ以外の何も彼の中にはないんだとわかる。  
 たちわるい・・・たちうちできないじゃない・・・こんなおとこ・・・  
 「・・・どうする?」  
 ガウリイがあたしの腰に手をまわして、自分の身体の真ん中に移動させた。  
 そこには・・・彼の大きく猛ったものが熱く脈動していた。  
 入れたいんだろう・・・一気に、貫いてしまいたいんだろう。でもガウリイは待っていた。あたしがひりひりすると  
言っていたのを覚えていて、こんなになってもまだ、待ってくれていた。  
 幸せだった。  
 「・・・うん」  
 あたしはうつむきながら小さくうなずく。ガウリイは動かない。・・・・・・あれ?  
 ふと彼を見ると、ぎらぎらとした男の目が光っている。なんで?!  
 まさか、入れてほしいって言わせる気?!  
 いじわるそうにあたしの秘裂に彼のモノをゆっくりとおしつけては動かしてくる。  
 大丈夫だってわかった途端にこれか!! まさに男はケダモノ状態!  
 言いたくないに決まってんでしょーが、乙女になんてこと言わそうとしてんのよ!  
 ああ、でも、身体ぜんぶが疼いている・・・理性と欲情がせめぎあって、このまま負けてしまいそうだ。  
 でも言いたくないんだって!  
 そんなあたしを楽しむように、ガウリイは両手で敏感なままの胸をやわやわともみしだき、ときおり腰を  
かすかに揺らしてくる。彼のモノがクリを軽くこすったときには、もうあたしは我慢の限界だった。  
 手を口元にもっていき隠しながら言葉を発しようとするが、うまく声にならずにノドでつかえてしまう。  
 柄にもなく泣きそうになっているあたしをみて、ガウリイが優しく笑った。  
 「だいじょうぶだよ・・・愛してる・・・リナ」  
 あたしはもう観念した。どうあがいても無駄なのだ。彼の勝ち。そう思うと、胸のつかえがとれていくのが  
わかった。覚悟を決めて小さくささやく。いれてほしい、と。  
 ガウリイの顔が幸せそうに輝いた。あたしはそれを見ただけで、今までの、何もかもを許してしまった。  
 
 ガウリイはあたしの腰を持ち上げて、彼自身のモノにあてがいゆっくりと手を離していく。  
 その動きにはやはり何の躊躇もなく、いくぶんうっとりとした顔をしてあたしを下から見上げていた。  
 「自分で奥までいれてみな。痛かったら無理しなくていいから。はいるとこまででいい」  
 「・・・うん・・・・・・」  
 痛いです、痛いです、先生ぇ。・・・冗談は置いといて、やっぱまだ痛い。慣れる日なんか来るのだろうか。  
 とはいえ自重で勝手にのみこんでいくから、気を緩めるとどこまで入るか怖いくらいだ。  
 なのにあたしの身体は早く早くとせきたててくる。じわじわめりこんでいくのが羞恥を煽ってたまらない。  
 一気に貫かれたほうが楽かもしんない・・・ああ、ひりひりするなんて言ったばかりに、この優しい男の  
術中にはまってしまって抜け出せない。  
 「も、もう奥まで・・・ああ・・・はいっちゃったよ・・・もうムリ・・・」  
 「わかった」  
 あたしの自己申告をガウリイはあっさり受け入れ、胸をいじっていた手をそっとすべらせると熱く湿った  
短い毛をかきわけてクリを探す。愛液であふれてぬるぬるとした様をガウリイの目の前にさらけだして  
しまい、彼の指がくるくると円を描くように微妙な力加減でこすり始めたときには、あたしの羞恥はまたもや  
耐え難いほどにまで高まっていた。  
 「恥ずかしいじゃない、ガウリイ・・・あんまり見ないで・・・」  
 「気持ちよくなってるリナって普段とギャップが激しくってすげーエロいんだよなー」  
 ばかばか! 人の話聞いてんの?!  
 「もっと喘いでるとこ見せてくれよ・・・」  
 言うなり、両方の人差し指でクリを両側から挟みこむようにして、ぬるんっとこすりあげ、押し開き、また  
下から上へと愛液をまとわりつかせながらぐちゅぐちゅと音を立ててこねくりまわす。  
 「ああっ・・・んあああっ・・・」  
 「おーすげぇ、いっぱい愛液でてきたなぁ。胸もいいけどリナはクリも好きなんだよな、今度するときに  
可愛がってやるから、今日は指だけでカンベンしてくれな」  
 指でくりゅんくりゅんともてあそびながら、ガウリイは真剣な顔でつぶやく。  
 本気だわこの男・・・今日みたいなこと、きっと延々と続くんだわ・・・なんだっけ、そうだ、開発だ・・・  
 あたしの色んなところ、ガウリイに開発されちゃう・・・  
 そう思うと、あたしの中が期待に震えてか、きゅうっとガウリイをしめつけた。  
 くっとガウリイの眉間にかすかに力がはいったように見えた。  
 感じてる・・・? そうか、ガウリイも気持ちいいんだ・・・  
 ゆっくりと、ゆっくりとのぼりつめていくような絶頂への高揚感にまかせて、あたしは何度となく中をしめ  
ては力を抜いて、またしめつけるという動作を繰り返してみる。  
 その度にガウリイの息がハッともれるのが嬉しくて、あたしは夢中になっていった。  
 「やらしーな・・・リナは・・・」  
 ガウリイも嬉しそうに笑みをみせ、片手できゅっとあたしの秘裂を上にひっぱりあげ剥き出しになった  
クリをもう片方の手の指2本で挟み込み上下にやわらかくしごきだした。  
 ぬるぬるとした愛液が粘っこく指とクリにからみつき、刺激を強い快感に変えていく。  
 「はぁっい・・・いっちゃう・・・ガウリイ・・・」  
 ここまでしておいて今さら何を恥ずかしがるというのか、あたしは素直にガウリイの名を呼んで果てた。  
 しかし果てた瞬間に、ガウリイが腰を突き上げて奥の奥まで入れ込んできたので、あたしの絶頂の吐息  
はのけぞったノド元にこもり、息ができなくなるほどの充足感で身体が埋め尽くされた。  
 指をシーツで軽くぬぐったガウリイがあたしの手に手を重ね、指をからませてくる。  
 器用に腰をつかい、下から小刻みに突き上げてくる。あたしはどうしていいかわからずに、ただガウリイ  
の動きに身を任せていた。腰を掴まれていないぶん、ふわふわと頼りないが、両手を握られているから  
倒れこむこともできない。子宮が押し上げられる感触なのだろうか、あたしの中の何かが悲鳴をあげて  
いる。激しくされたら、本当に壊れてしまいそうだった。  
 
 ぶるっと背筋が震え、幾度となく感じた絶頂が近いことをあたしは知る。  
 頭の中が白く弾けて、指の先まで硬直するのがわかる。何か叫んでいたかもしれない。  
 ああ・・・また声我慢できなかった・・・ここふつーの宿屋なのになぁ・・・  
 身体中がジンジンと痺れていく感覚を堪能しながら、ガウリイもまた動かないことに気づいたあたしは、  
そっと目をあけてガウリイの顔を見ると、彼も閉じていた目を開けるところだった。額に汗が浮かんでいる。  
 「やべーオレもイクとこだった・・・騎乗位って簡単に抜けないから危険だなー、リナの締めつけすげーし」  
 騎乗位という単語を知っていた自分がなんだか汚れているようでイヤだった。できることなら、真っ白な  
状態でガウリイに全てを教え込まれたかった。  
 今さら後悔しても遅いんだけど・・・知識だけを求めるのも善し悪しね。  
 まあいいでしょ、知識でも何でも、持ってるもんは有効に使わないとね。  
 「ありがと・・・ガウリイ」  
 「おう、まかせとけ」  
 やっぱりだ。ガウリイはあたしが会話についてこれる程度の知識があることなど、お見通しなのだ。  
 そしてそれを、当然のこととして受けとめてくれている。  
 あたしに勝手な理想像を押しつけてこない。  
 処女は清純で穢れなきもの、だなんて馬鹿げた話、あるわけがない。  
 ガウリイのロマンチストぶりには感動するほどびっくりしたが、意外とこーいうところは大人なんだ。  
 ほんと、並み以上の外見と人の良さからは想像もできない。  
 これがガウリイの奥の深さ、懐の深さ、なんだろうな。  
 あたしが好きになったのもそういうところなのかもしれない。  
 「よし、じゃあこの前と同じにしよっか」  
 ガウリイが唐突に言う。あたしの髪をなでながら片手を後ろについて身体を起こす。  
 「やっぱまだ痛いんだろ?」  
 言われてあたしはハッとする。一番大事なことは、言わなくてもわかってくれる。いつもそう。  
 あたしはガウリイにどれほど愛されているのか、改めて思い知った。  
 ふんわりとあたしをベッドに仰向けに寝かせ、キスをしてくる。そっと唇を離して熱っぽくささやく。  
 「さっきのリナ、色っぽかった・・・最高だぜ・・・」  
 自分がしたことを思い出してあたしは顔が熱くなっていった。その頬を両手でつつみこむように手をそえ  
もう一度キスをするガウリイ。舌が吸われ、頭の中がぼやけてくる。  
 そのままガウリイが動きだした。  
 ゆっくりと抜き差しをくりかえし、ストロークを長めにしたり短くしたりと変化をつけてあたしの中を探って  
いく。キスをしながらあたしの反応を直に感じ取っているようで、すぐに目当ての場所をみつけたらしく、  
執拗にその箇所をこすりあげる角度をたもち貫いてくる。あたしはキスをしながらイってしまった。  
 ようやく唇を離したガウリイは、また手をとって、指をからめながら握りしめる。  
 その手を上にはねあげて、おさえつけながら、舌を胸にはわし乳首を軽くなめあげて口にふくむ。  
 決してそうではないのに、なんだか犯されているような気分になってくる。  
 身動きできずになぶられているような・・・  
 あたしの腰がまた震え、脚の先までピンとつっぱってしまった。快楽が爆発して弾けとぶ。  
 ああ、愉しいとはこういうことか・・・気持ちよくて気持ちよくて、愉しくてしかたがない。  
 あたしがイった瞬間にガウリイはまた苦しそうな顔をしたが、今度は動きをとめなかった。  
 ガウリイの顔がまた上気してきている。まるで男の子のようなきらきらした目だった。  
 大切な宝物を大事そうに抱えている、子供のように見えた。  
 それも一瞬だけで、またオスの男の顔にもどると容赦なく揺さぶり突き上げて、あたしが何度果てても  
ゆるしてはくれなかった。  
 そして初めての時と同じように、切実な呻きをあげてあたしのお腹の上に熱い白濁をぶちまける。  
 
 今日は余裕を残しているのか、シーツでそれをふき取ってくれると、あたしのまだひくつくあそこも優しく  
ぬぐってくれた。血がついていないのを確認して安心しているようでもあった。  
 ガウリイはベッドに寝転がると、うまく動けないでいるあたしを片腕で抱き寄せ、胸の上にのせる。  
 あたしがつけた小さなキスマークが目の前にあった。あたしはガウリイがつけたものに手をふれる。  
 なんだか誇らしかった。  
 「オレは今まで、こーいうことには淡白なほうだと思ってたんだ・・・でもどうやら違ったみたいだ。  
 リナの全部が好きだ、リナフェチだ、リナのこと考えるだけですげー興奮する。まいるよなー、ははは」  
 全然まいってない声で言うガウリイ、その胸の中であたしはそっと目をとじた・・・  
 
 翌日、部屋で出発の準備を終えたあたしたちは、なんとなくベッドに並んで腰かけて、窓からさし込む光で  
ひなたぼっこなんぞかましていた。あったかい春の日差しにのんびりした気分になる。  
 だからあたしがこんなことを言い出したのも単にふと思いついたからだった。  
 「だいたい、なんであたしと旅しようなんて思ったのよ」  
 急な問いかけにもかかわらず、ガウリイは即答する。  
 「最初に言っただろ、家まで送っていってやるって」  
 ああ、そういえばそうだったっけ。本当に本気だったとは。  
 「お前さんだってそれを信じてくれたから一緒にいたんだろ?  
 光の剣がどうとかじゃなくてさ」  
 「・・・家に送る途中で手ぇ出していいわけ?」  
 「問題ないだろ、今は恋人なんだし。惚れたもんは仕方ない」  
 「・・・・・・ガウリイ、あなたその時あたしになんて言ったか覚えてる?」  
 「んー、盗賊に襲われてるとこ助けたあとだよな? 覚えてない」  
 ちらっと考えた挙句にきっぱり言い切るガウリイ。  
 そーだった、こーいう男だった・・・  
 「あんたはねぇ、一目見るなり、人のことチビガキのペチャパイって言ったのよ!!」  
 「そーだっけ? まんま素直な感想じゃん」  
 むかむかっ!  
 しかしあたしが電光石火で取り出したスリッパの一撃をなんなくかわすガウリイ。  
 「殺気が多すぎ。まだまだ甘いな、お嬢ちゃん」  
 むかつく!! 死なない程度にころしちゃる!  
 「まぁ、今でもそれは否定しないけどな。チビでガキでペチャパイだもんな。でもな・・・今のオレはそーいう  
 ところもふくめてお前さんが好きなのさ」  
 後半の発言に胸が躍りだして、小声で唱えかけていた呪文のつづきがわからなくなってしまった。  
 「無茶ばっかであぶなっかしくて放っておけないとこも、憎まれ口たたくわりに心根は優しいやつだって  
 とこも、華奢で感度がいいとこも、全部ひっくるめて愛してるよ」  
 さらりと言い放つガウリイが、人のよさそうな顔をしてのほほんとこちらを見つめてくる。  
 ほめられてんのかなんなのか判別つきかねるが、ありのままのあたしを好きだって思ってることには  
何の疑いも持てない。  
 ガウリイは穏やかな笑顔のまま、言った。  
 「・・・リナは?」  
 
 聞かれると思ったんだ。でもやっぱり面と向かっては言えない。  
 あの幸せそうな笑顔が見られるのなら、とも思うが、ちゃんと伝わらないことが怖いのだ。  
 あたしの子供じみたわがままだっていうこともわかっている。  
 ガウリイがこんなにも率直に口に出してくれているのに、いつになったらあたしは大人になれるのか・・・  
 でも、この想いの大きさが、少しでも損なわれて伝わってしまうのが耐えられない。  
 「・・・あたしも、よ・・・」  
 考えた末に言った言葉は、そんなありきたりな答えだった。独創性のかけらもない。  
 使い古された、おそらくは誰もが一度は口にするであろう、陳腐な言葉しか言えなかった。  
 それなのにガウリイときたら、顔を真っ赤にしてうつむくあたしの頭をぽんぽんとなでると、照れたように頬を  
かきながら、ありがとな、と言ったのだ。心底、嬉しそうに。  
 いつもそうだった。ガウリイはあたしが伝えたいと思っていたことを、きちんと受け止めてくれていた。  
 たとえはっきり言葉には出さなくとも、あたしの全てを見て、ありのままをわかってくれていた。  
 たぶん、彼があたしのことを『嬢ちゃん』ではなく、『リナ』と呼び始めてから・・・  
 あたしたちは安心しきった子供のように手をつないで蒼く晴れた空を窓越しに見上げた。  
 きっと、これからもそうなんだろう。ずっと。  
 家に帰ろう。送っていってもらおう。最初の約束だし。  
 そしてそこから、また新しい約束をして、旅をつづけよう。  
 ずっと一緒に。愛してるわ、ガウリイ。  
 
     ...end.  
 

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